物流(運送会社)
業界別M&A動向

物流(運送会社)業界のM&A動向

更新日

監修者プロフィール

  • 企業情報部 部長 菊池 尚人

    企業情報部部長菊池 尚人

    大手証券会社にて未上場企業(大手・中堅)の資産運用や富裕層の資産運用コンサルティングに従事。
    当社入社後、M&A案件開発、M&Aアドバイザリー業務に従事。主に、物流・運送業界、飲食・ケータリング業界、建設コンサルタント業界を手掛ける。

業界の定義

物流業は、製造業や流通業など他の業界内で「輸配送・荷役・流通加工・梱包・保管・情報管理」の役割を担っており、単体で独立したものではない、特殊な形態となっている。 物流業は、輸送・配送サービスを提供する「運送業」と、保管サービスを提供する「倉庫業」に大別される。
運送業は、その中でも輸送機関ごとに、トラック運送業、宅配便業、鉄道業、海運業、空運業に分けられ、日本の産業競争力の強化や豊かな国民生活の実現と地方創生を支える、社会インフラとされる。

業界の特色

物流業界、トラックのイメージ

物流業界は、多重下請け構造となっており、ユーザーとなる企業から大手企業へと受注されたのちに、子会社または中小企業に下請けがなされていく仕組みになっている。労働集約型であることから、個人が対応可能な業務量には限界があり、規模の優位性(=スケールメリット)が特に重要視される。 陸上・港湾などで行われる運送業は「陸運」と呼ばれ、主にトラック運送業や宅配便などの業務がそれらに該当し、物流業界の約7万5千の事業者のうち、8割以上をトラック運送業が占めている。
国内では、日本郵便や日本郵船、日本通運など大手の物流会社が全国に物流網を展開しており、小規模なものから大規模なものまで広範囲に物流サービスを提供している。しかし、その一方で、中堅以下の企業は特定の地域・荷主・貨物種別などに特化して事業を行なうことが多い。また、小資本でも業界参入が可能なため、零細企業も多いことが特徴として挙げられる。

市場環境の変化

物流業界の、特に自動車運転業務で深刻なのが人手不足だ。国土交通省が2021年に公表した「最近の物流政策について」によると、トラックドライバーが不足していると感じる企業は全体を通して増加傾向にある。2019年を例に見ると、約7割もの企業がトラックドライバーが不足、またはやや不足していると回答した。人手不足は有効求人倍率にも表れており、全職業平均の約2倍だ。

労働力経済動向調査、トラック運送業界の景況感

出典:最近の物流政策について
https://www.mlit.go.jp/common/001388194.pdf



2021~2025年の「総合物流施策大綱」はこれらの課題を踏まえたものとなり、例えば、労働力不足に対応するため、自動化・機械化などの物流のデジタル化へ向けた取り組みが推進されている。これらに加え、新たな労働力の確保に向けた対策にも力が入れられている。女性や高齢者、外国人等の多様な人材が物流業界で活躍できるようにと、環境整備やオペレーションの定型化が推進されている。

1990年以降、国内貨物輸送量は長期的には減少傾向だが、2010年以降はほぼ横ばいの状態が続いている。このうち4割は内航海運が、5割は自動車による輸送が占めている。自動車輸送の中でも特に注目されるのが、宅配便市場だろう。

宅配便市場は、1976年にヤマトホールディングスが取引を開始してから、広く一般の家庭にも普及し、2020年度には宅配便の取扱個数が4,836百万個(前年比約11.9%の増加)となり規模を拡大し続けている。宅配便市場の成長の背景には、楽天やAmazonなどの企業がEC市場をリードした点や、メルカリなどのフリマアプリを利用する消費者が増加したことでCtoC(=顧客間取引)の市場が拡大した点が考えられる。




近年の宅配便、メール便取り扱い個数の状況

出典:令和2年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法
https://www.mlit.go.jp/common/001388194.pdf



実際に、国土交通省「令和2年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法」によると、宅配便取扱個数個数は2018年度で前年比101.3%、2019年度は100.4%と横ばいだが、2020年は111.9%と急激に増化した。

ただ、メール便の取扱個数は4,239百万個(前年比約9.9%の減少)となり、2016年度から減少が続いている。EC市場やフリマアプリによるCtoCなど、インターネットを活用した市場の拡大に伴い、広告もインターネットが主流となった。これにより、企業はダイレクトメール広告費を縮小し、物流会社も宅配便に割くリソースを増やさなければならなくなった結果と推測される。また、2020年度まで減少が続く結果となったことで、市場が成熟期へと移り始めているとも捉えられている。
今後さらに成長すると予想されるEC市場において、「宅配事業」は欠かすことのできない事業であるため、宅配便市場も順調に推移すると推測できる。




課題と展望

宅配サービス

物流業界は、EC市場拡大による宅配需要の急増によって、順調に景気が推移している。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、EC市場と宅配需要はさらに拡大した。 一方、大手ECサービスの台頭により、競争が激化。競合他社との差別化を図るため、より良いサービスが求められ、今までよりも迅速な配送を目指そうとするなど、負担は増加している。

また、宅配個数の増加により、再配達の問題も顕著になっている。国土交通省の「宅配の再配達削減に向けた検討について」によると、宅配便の約2割が再配達になっているという。そのうち3.9%(約17万個)が2回以上の再配達であり、再配達全体(約82万個)の中で2割を占めている。これは労働力に換算すると年間約9万人分、CO2の排出量に換算すると年間約42万トンになる。SDGsや低炭素化が世界的に叫ばれる中、大きな問題だ。

結果、急激な宅配需要の増加は、現場に大きな負担をもたらしており業務量や1人当たりの労働時間の増加など、労働環境の悪化が問題視され、物流業界における労働人口の獲得は喫緊の課題とされる。また、賃金の引き上げによって労働環境を改善することはできるものの、企業利益は減少してしまい、送料引き上げで賃金分の相殺は可能になるものの、顧客満足度の低下や、利用客減少に繋がりかねないのではないかという不安があり、多くの企業が課題を抱えている。


物流業界のM&A動向

近年のEC市場拡大に伴って、利便性の高い宅配便輸送は消費者からの支持を受けており、運送業界の需要は増加し続けている。 EC市場は今後も成長が見込まれており、国内の貨物輸送量も前年比0.3%増と増加傾向にあるため、宅配便の需要は今後も継続して伸びていくと予想され、需要増加の解決策としてのM&Aが注目されている。

・鴻池運輸株式会社(大阪府)は、2022年3月、自社が100%出資する連結子会社である前川運輸の81%を株式会社ベストラインに譲渡することを発表した。このM&Aの目的は、陸運事業の基盤や幹線輸送の連携等の強化することであり、鴨池運輸とベストラインは業務提携契約を結んだ。

・安田倉庫株式会社(東京都)は、2019年7月、北陸3県を拠点に配送ネットワークを持つ大西運輸株式会社及びオオニシ機工株式会社の全株式を取得し、子会社化。さまざまな物流事業と不動産事業を展開する安田倉庫は、このM&Aによって、大西運輸グループの持つ物流網やノウハウを自社と結びつけ、輸配送網の更なる拡大とサービス向上を見込んでいる。

・日本通運株式会社(東京都)は、2016年4月、陸運事業を展開する名鉄運輸株式会社(愛知県名古屋市)の株式のうち、20%を取得し、資本業務提携を締結。 このM&Aを通じて、日本通運はその親会社となる名古屋鉄道株式会社に次ぎ、第2位株主となった。日本通運は、この資本業務提携によって、輸送網の相互利用や、物流の連携強化、仕入れや購買を共同で行うことによる原価削減を狙った。



弊社のM&Aご成約実績

  • 成約年数
    2022年9月
    対象会社(譲渡会社)
    食品輸送
    地域:東北
    譲受会社
    運送業
    地域:東北
    取引スキーム/問題点・概要
    55歳以上,株式譲渡
    譲渡企業は、北海道で食品運送を展開。業績は順調であったが、燃料高に伴う将来の業績悪化やドライバーの安定確保に不安を感じていた。...
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  • 成約年数
    2022年9月
    対象会社(譲渡会社)
    運送業
    地域:関東
    譲受会社
    運送業・倉庫業
    地域:関東
    取引スキーム/問題点・概要
    55歳以上,株式譲渡
    譲渡企業は、東日本で物流業を展開。大手の取引を有し、業績は順調であった。燃料高や人手不足に伴う経営環境の変化により、業績悪化や...
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新着案件情報
  • 詳細業種 伝統商品商社
    所在地 九州・沖縄
    概算売上 5億円~10億円
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  • 詳細業種 SES、ソフトウェア開発
    所在地 関西
    概算売上 1億円~2.5億円
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  • 詳細業種 プロテイン・機能性表示食品の企画販売
    所在地 関東
    概算売上 1億円~2.5億円
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  • 詳細業種 QEHSアウトソーシング、人材アウトソーシング
    所在地 非公開
    概算売上 30億円~50億円
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  • 詳細業種 旅館
    所在地 中部・北陸
    概算売上 2.5億円~5億円
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  • 詳細業種 ソフトウェア受託開発業
    所在地 関西
    概算売上 1億円~2.5億円
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  • 詳細業種 土木工事業
    所在地 東北
    概算売上 10億円~30億円
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  • 詳細業種 スマホ・タブレット用画面フィルムのEC販売
    所在地 関西
    概算売上 2.5億円~5億円
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  • 詳細業種 不動産販売業・工事業
    所在地 関東
    概算売上 10億円~30億円
    案件詳細を見る

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