M&AのことならM&Aキャピタルパートナーズ

従業員の雇用を守りたい ただ、その一心を貫きました。

株式会社清弘エンジニアリング
代表取締役

株式会社セイコーメンテナンス
取締役会長

井畑 忠 x 関口 茂

株式会社セイコーメンテナンス 取締役会長 関口 茂

45年間にわたり空調工事やメンテナンス技術を学び、その後知人からの仕事の紹介をきっかけに独立。
1963年にはエーシーメンテナンスを設立し法人化。本件M&A後は取締役会長として残り、親会社との橋渡し役として経営に携わっている。

株式会社清弘エンジニアリング 代表取締役 井畑 忠

1992年清弘エンジニアリング入社。営業、施工管理業務に従事した後、2003年同社代表取締役に就任。
就任後はメガソーラー事業、人材開発事業などの展開や、M&Aなども活用し積極的に業容拡大を図る。現在グループ会社6社を合わせ、国内8拠点、海外2拠点を有する規模にまで成長。

――まずは関口様に、エーシーメンテナンス(現在はセイコーメンテナンスに商号変更)を
創業された経緯からお聞かせいただけますか。

起業のきっかけとなったのは、酒場での雑談でした。友人と飲んでいた時に都市銀行の関係会社である商事会社の方と知り合って、私がエアコン修理の仕事をやっていると話したら、「是非、ウチの仕事をやってくれないか」といわれたのです。支店の空調の保守を担当する人を探しているのですが、なかなかいい人がいなくて困っていると。
ところが当時、設備屋に勤めていた私には、車もないし資金もないので、それはムリだとお断りしたのですが、何と「お金の面倒見るから心配するな」とおっしゃる。当時、26歳だった私としては特に失うものもないし、大きなチャンスだと判断し、“やってみよう”と決断したのです。

初年度には30店舗ほど任され、エアコンの稼働率があがる夏と冬に必死になって働きました。その仕事ぶりが評価されてか、2年目になって50店舗ほど任されるようになりました。とにかく当初は、銀行の仕事以外に手を広げることはありませんでした。せっかく投資もしてくれましたから、それに報いるよう一生懸命に、任されたエアコンの修理だけを必死にやっていました。


独立してから6年間は、私ひとりで仕事を回していました。ピーク時になると、1日4~5件は回っていかないと間に合わない。朝6時に出かけて行って、銀行の鍵が開くのを待ってはじめて、夜遅くまで必死に働きました。昭和42年ごろの話ですから、当時の日本は「日本列島改造論」に沸く時代で、全国的に技術屋が不足していました。だからこそ、あんな酒場での話が成立したのでしょう。そんな時代の波に運よく乗っかっただけです。

――法人化された経緯をお聞かせください。

独立してから10年ほどは個人事業主としてやっていたのですが、63年に法人登記をした時点で、4人ほど従業員を雇っていましたね。法人化する数年前から、メンテナンスだけではなく据え付け工事も行うようになっていたのです。やはりエアコンを運転しない春と秋がオフになるので、これではもったいないと、銀行にも了解を得てから、工事の仕事を請け負うようになっていたのです。据え付け工事になると、さすがに一人ではできませんからね。人を増やして法人化したころには、換気扇工事も含めた、空調全般の業務を請け負うことが可能な体制と技術力を保有するようになっていました。

その後、ダイキン工業の工事店の仕事もはじめて、やれる仕事もお客さんも増えていく一方。仕事には事欠きませんでしたから、順調に業績を伸ばしていきました。当時から、社員の教育には力を入れていましたね。ダイキン工業の研修所に積極的に社員を送り込みましたし、そのうち専門校から人を採用するようにもなりました。彼らは、入社時には既にたくさんの資格を持っていましたから、自然に社内の有資格者が増えていき、技術力がアピールできる会社へと成長していました。

ガツガツ営業をやっていたわけではないのですが、年々仕事が増えていくので、それに伴って人も増やし、ピーク時には18人にもなりました。

――M&Aを検討するに至った経緯をお聞かせください。

後継者問題は常に頭の中にあったのですが、たまたま大宮そごうの工事を5年がかりで請け負っていて、昨年の春にようやく終了。ホッとしたタイミングで、強く意識するようになりました。正直言って、私がまだまだ若く、会社が順調だった時には、後継者問題なんてもっと簡単にいくものとばかり思っていました。このまま真面目に仕事をやっていって、信用と実績を残していけばうまくいくだろうと、そう思って疑わなかったのです。

ところが、今から数年前、身内に会社を託した時に、多くの社員が辞めて業績も落ち、“このままつぶれてしまうのでは?”というところまで追い詰められ、私自身がもう一度経営に復帰したという経緯があります。私には、従業員に対してはもちろん、お客様に対する道義的責任があります。この会社をしっかり継承させる責任があるのだと、その時に改めて思ったものです。

そんな矢先、何の気なしにロータリークラブに出席した際、たまたまM&Aキャピタルパートナーズさんと一緒に事業継承を進めている会社の社長が隣に座って、話を聞くことになりました。その方とは昔から懇意にしていたので、彼が言うのならば大丈夫だろうと、では話を聞くだけ聞いてみようと思って連絡を入れたのでした。実際に知人がM&Aを体験しているので、最初からM&Aキャピタルパートナーズさんという会社そのものに信頼と期待を寄せてはいました。もちろん、話を聞いているうちに、正直、複雑な気持ちにはなりましたよ。ここまで築き上げてきた会社を託すのですから。しかし、大切な会社だからこそ存続させたい、社員の生活を保障するためには、最適な選択だと判断しました。もちろん、今でもこの選択が間違いでなかったと思っています。

――ここからは、譲受企業である清弘エンジニアリングの井畑様を交えてお話を伺います。
まず、お互いの会社の第一印象はいかがでしたか。

――ここからは、譲受企業である清弘エンジニアリングの井畑社長様を交えてお話を伺います。まず、お互いの会社の第一印象はいかがでしたか。

井畑 M&Aキャピタルパートナーズさんからエーシーメンテナンスさんの情報が記載された資料をご提供いただき、じっくり拝見させていただきました。まず、決算書上の数字から、一目で“優良企業”であることは理解できました。また、年齢が若い社員が多い割に資格取得者が多く、会長の指導が行き届いている印象を受けました。当社も資格取得を奨励しているためそこから、技術に対する意識の高さを感じ取ることができました。事業内容に関しては当初、空調に特化したメンテナンスを主軸にしているのかと思っていたら、実は空調工事が主体だとわかり、そこにも興味を抱きました。

我々は元々、産業用の大型空調機を扱い、家庭向け機器の工事はほとんど実施していませんでした。とはいえ、大型の機器であっても、メンテナンスは必ず必要になってきます。空調の工事やメンテナンスというのは、豊富な経験に裏打ちされた確か技術力が必要な仕事ですし、環境意識が高まる昨今、省エネ要求に応えるための高度な知見が要望されています。そういった意味で、産業用空調および一般用空調の設計、施工、メンテナンスができる会社というのは、非常にメリットがあるといいますか、この2社が一緒になることで 一気通貫の対応が可能となり、空調分野においてどこにも負けない企業になるだろうという思いはありました。最初にいただいた書類の中から、これだけ色々な情報が見えてきたのです。

関口 M&Aキャピタルパートナーズさんから「こういう会社がありますよ」と紹介を受けたときには、特に異論があるわけではありませんでした。いうなれば、私たちは買ってもらう側の立場なので、それほど選ぶ権利があるわけではないと思いましたし、とにかくウチを救ってくれるところがあればいいなといった気持でした。私が望むのは、第一に社員を守ってもらうことでした。ですから、業種が同じ空調であれば、私たちの会社の良さも生かせるだろうし、社員もそれのほうがやりやすいだろうということで、まずは会ってみようと考えました。そこで、東京駅の近くにあるM&Aキャピタルパートナーズさんの会議室でお会いさせていただいたのですよね。
あの時は、社長と常務がいらっしゃいましたよね。第一印象は非常に良かったですね。社長はお若いし、このようにシャキッとされていますから。

井畑 私も好印象を抱きました。第一印象で受けた会長のお人柄の良さは、こうして半年たった今でも変わることはありません。会社を評価するポイントは経営者の人柄と数字だと思います。まあ、数字は嘘をつきませんからね。会社の歴史を物語っているといいますか、結局は積み重ねですから。それと、会長のお話から社員を非常に大切にされているご様子が理解できました。

これは私も同じですが、この業界は設備投資が少なく、言ってしまえば車とパソコンと道具さえあれば仕事ができます。どこで差別化を図っていくかといえば、やはり人なのです。技術は人が保有している。結局は、人が財産なのですよね。会長の会社は人を大切にしているし、しかも社員の年齢が若い。その時点でもう、大きな期待を抱いていました。

関口 あの日は、正味一時間半ほど面談させていただきましたかね。最初はお互いに会社を紹介しあいました。仕事内容やこれまでの業績や社員たちのことも。とにかく、飾りや目鼻を付けてお話ししても仕方がないので、聞かれることに対して、100%そのまま真実をお伝えしました。隠しても、格好付けても、後でわかることですからね。

井畑 それは伝わってきました。誠実な方だと思いましたね。私は最初の面談の時点で、こちらの会社とご一緒させていただきたいと、もう7~8割がたは決めていました。両社の雰囲気の違いは気になりませんでしたね。結局、私たちの会社も営業所単位でカラーが違いますから。それより、若い社員が本当にどういう気持ちで、どう理解してくれるのか?それだけが心配材料でした。そういった現場の空気に関しては、この会長との面談だけでは判断できません。そこで次の段階として、一度会社を見せてくださいと申し入れさせていただきましたよね。まずは主要幹部に会わせてくださいと。会長の甥っこさんと娘婿さん、生え抜き社員の主力3人がいるとお聞きしたので、そこがキーになると考えていましたし、とにかく継承させていただいて一緒にがんばってくれるかどうかを確認したかったのです。

関口 ウチの若い社員たちが、果たして新しい会社にどれだけ溶け込んでいけるか?という心配はありました。私も今まで彼らに、「それ家買えよ」「嫁もらえ」「子供つくれ」と散々いってきましたから、継承していただいた途端に、彼らが辞めるようなことがあっては本当に困ってしまう。 社長にもそれだけは強くお願いはしていましたが、本人たちがどう思うかについては、少しだけ心配がありました。

井畑 会ってみると、彼らは非常に誠実で正直者。話を聞いて私はとても安心したのですよ。仕事に対する姿勢は間違いないと直感的に理解しました。最初の面談時に感じた不足分3割のうちの1割はそこで解消し、彼らが「やろう」といってくれるなら御一緒させていただこうと決意しました。若いメンバーの中には、違和感を感じる者もいるかもしれません。この先、改革を進めると納得できないことも発生するかもしれません。しかし絶対に社員に対して悪いようにはしませんので、私を信用して、会長からご説明をしてくださいと。会社というのは、まさに家族そのものですから、会長に親として言い聞かせていただこうと考えました。

関口 混乱のないよう、調印の前々日になって、私の方から全社員に説明をしました。5年前に身内に会社を継承した際にうまく行かなかった経緯を正直に話し、会社の存続、従業員全員の幸せを維持するための選択だったと、M&Aに至った経緯を正直に話したら、全員が納得してくれました。

井畑 私の方は幹部に会った時点で最後の1割、全社員の総意がどうなるのかという不安はありましたが、そこは大きな問題ではないと受け止めていました。9割OKでGoをかけて、残りの1割は、その後少しずつ埋めていけばいいという意識がありました。その時点で、両者合意と言うことで話がまとまりましたね。そこでM&Aキャピタルパートナーズさんに段取ってもらって、清弘エンジニアリング側は関東拠点の全幹部、エーシーメンテナンスさん側は全社員を集めて懇親会を実施しましたね。

関口 最初は堅い雰囲気でしたね。

井畑 それは仕方がないことですよ。調印をして、新たな体制となってから3か月後、昨年9月末には、この大宮の地に一つ屋根の事務所を構えました。清弘エンジニアリングが3階、旧エーシーメンテナンスが2階、1階は共有スペースとしたことで、社員同士のコミュニケーションはスムーズになっているように感じています。

私自身、昨年の10月に実施した沖縄の慰安旅行に参加させてもらって、みんなで騒いで飲んだのですが、色々な話をしたし、そのときの話が盛り上がって、3ヶ月に1回のペースで一緒にゴルフコンペを実施するようになりました。その時から急激に距離が縮まったように感じていますし、どんどんそういう場を作って一体感を作っていきたいと思います。

12月には旧エーシーメンテナンスのメンバーを関西本社に呼んで、セイコーグループ全員の前で紹介しましたね。作業服も車も統一して、無理矢理カタチの上でも一体感をつくろうと。じわっと浸透させるのが日本流かもしれませんが、メンバーは若いので順応力があります。とにかく、スピーディに意識変革を促し、親会社、子会社ではなく、チームセイコーになろうと、融合を図っている段階です。

関口 やはり飲む回数やゴルフの回数などを重ねるごとに、社員が馴染んでいってくれているのが手に取るようにわかります。おかげで、今は余計な気を使わなくなりました。

もちろん、これから仕事の内容ややり方が変わっていくことに不安を抱いている社員もいます。これまでは宿泊を伴う現場もありませんでしたが、これからはそういったものにも対応していかなくてはなりません。完全に理解するには時間もかかるでしょうし、そう簡単にいくとは思ってもいませんが、最近は親として少しホッとしてはいます。

井畑 組織としての融合と同時に、業務的な融合やシナジーが生まれることを期待しています。これまではプラント系、一般系とテリトリーが違っていましたし、同じ空調系の会社でも部門が違うような感覚でしたが、本当の狙いは技術の融合ですから、それはこれからというところですね。この先、色々な戦略を持ち、チームとして一丸となって動いてもらう予定です。現在、両チーム一緒に千葉県に出張してもらい、通常の業者ではなかなかクリアできない難しい仕事を総動員で対応してもらっています。

関口 本当にこれからですね。1年弱で計画して、今の段階ではようやく馴染んできたかなというところまで来ました。まだ深く理解できていない部分はあるかもしれませんが、それはこれから、同じ一つの現場で骨を折っていくことで培われていくと思っています。




井畑 そうですね。旧エーシーメンテナンスの幹部3名には話しているのですが、できればこの事務所をメンテナンスチームで埋め尽くしてほしいとね。せめて会長がやってきたとき以上の規模にすることが、私から会長への恩返しになると思っているのです。ただ単に優良企業を譲り受けて、そこから利益を得るだけという意識では企業は衰退しますし、社員だってついてはきませんからね。もちろん、会長にはこれからの成長と発展をずっと見守っていただきたいですね。

関口 とにかく、ただこのまま、すくすく育ってくれさえすれば、社員たちもいずれは、本当に一緒になってよかったと、心から理解してもらえるのではないかと思うのです。私に何ができるというわけでもないのですが、しばらく、このまま見守らせていただければと考えます。とにかく、社長みたいに良い方を紹介していただいて良かったと、M&Aキャピタルパートナーズさんには大変感謝しています。

個人的な話になりますが、今は少しだけ肩の荷を下ろして、人生を謳歌しています。毎晩美味しい酒も飲めるし、今年に入って2月にバンコク、3月に沖縄、その後1週間おいてハワイに行ってきました。ちょっと飛ばし過ぎたので(笑)、今度はのんびり近場の旅を楽しみたいと思います。

(文=伊藤秋廣 写真=伊藤元章)2016/03/23

<インタビュー一覧に戻る