DCF法とは? 概要や計算方法、メリット・デメリットを解説

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DCF法とは、ディスカウントキャッシュフロー法の略語で、日本語では「割引現在価値法」と訳されます。DCF法は、株式価値を算定するうえで広く用いられており、主要な方法の一つです。
理論上、もっとも合理的な企業価値評価法と言われ、ファイナンス理論に裏付けられています。こちらの記事では、DCF法の概要、具体的な計算方法、留意点やメリット・デメリットについて説明します。

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1. DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法とは

DCF法とは、ディスカウントキャッシュフロー法の略称であり、英語で記載するとDiscounted Cash Flow Methodです。表記のとおり、キャッシュフローを現在価値に割り引く方法で、企業が将来獲得するであろうキャッシュフローを割り引くことで計算します。
事業計画に基づいて算出された将来のキャッシュフローを割引率で割り引いた「現在価値」を合計し、評価対象として算定する方法です。
DCF法は不動産鑑定でも用いられ、対象となる物件の収益額を現在価値に割り戻すことで計算します。

2. DCF法の計算方法

DCF法は、以下の流れで算出します。

  1. FCF(フリーキャッシュフロー)の設定
  2. 割引率の算定
  3. TV(ターミナルバリュー)の設定
  4. 株式価値の算定

それぞれの内容、具体的な計算方法について解説します。

2-1. FCF(フリーキャッシュフロー)の設定

DCF法で株式価値を算定するには、FCF(フリーキャッシュフロー)の計算が必須です。
FCFは、企業が事業を営んでいくうえで自由に使えるお金を指しており、借入金などの財務活動により発生するキャッシュフローは含まれません。
FCFがマイナスとなる場合には、そのままにしておくと企業の存続が難しくなるため、銀行借入や新株発行、資産売却などをすることで資金調達する必要が生じます。

【FCFの計算式】

FCFの計算方法について説明します。
フリーキャッシュフローは一般的に、「営業活動によるキャッシュフロー」と「投資活動によるキャッシュフロー」によって計算が可能です。
ただし、DCF法で算定する際には、上記の計算では煩雑となるため、以下の計算式を用いて算出します。

  • FCF=営業利益 ×(1-税率)+ 減価償却費-設備投資額 ± 運転資本の増減額

営業利益は会社が作成した事業計画をもとに、減価償却費と設備投資額については会社がまとめた設備投資計画に基づき、それぞれ計算します。どちらの数字も恣意性が入りやすいため、使用する際は留意が必要です。
M&Aを実施する場合には「デューデリジェンス」を実施して、事業計画や設備投資計画の妥当性などをあらかじめ検証しておきましょう。

2-2. 割引率の算定

DCF法は、「時間の経過とともにその価値が変化する」という考え方が根底にあります。それに基づき、キャッシュフローを現在価値に割り引くことになるため、割引率を算定する必要が生じます。
DCF法における割引率は、加重平均資本コストを用いるのが一般的です。
加重平均コストとは、資金調達する際の「借入コスト」と「株主資本コスト」を加重平均で計算したものです。要は、その会社が資金を調達した際のコストを示しています。
加重平均コストの計算式は、以下のとおりです。

  • WACC=負債コスト ×(1-実効税率)× 〔有利子負債総額 ÷(有利子負債総額+株式の時価総額)〕+資本コスト × 〔株式の時価総額 ÷(有利子負債総額+株式の時価総額)〕

負債コストは支払利息などの負債で、資金を調達する際のコストを指します。類似会社もしくは対象会社の有利子負債の利率などから設定されるのが通常です。
また、株主資本コストは株主が期待する収益を用いることになりますが、直接的な算出が難しいため、一定の前提を置いて計算する「CAPM理論」などに基づき算定します。

2-3. TV(ターミナルバリュー)の設定

株式価値を算定する際は、企業の継続を前提に計算しますが、将来を予測することは難しく、会社の事業計画も「5年前後」が一般的です。
その後の算出を行うために必要となるのが、TV(ターミナルバリュー)です。
会社の事業計画以降の計算において、ターミナルバリューを設定することで、事業計画期間以降のキャッシュフローを事業価値に取り込むことができます
上記をベースに計算するため、事業計画期間以降の成長率も考慮することになります。
ただし、その際に用いられる成長率は「インフレ率」を基準にしていることが多く、IMFによる世界経済の成長率予測などを使用するのが一般的です。各国におけるインフレ率がベースとなり、日本であれば1%程度に設定されます。

【TVの計算方法】

ターミナルバリューの具体的な算定方法を解説します。以下の計算式を用いるケースが大半です。

  • TV=事業計画の最終年度のFCF ×(1+成長率)÷(割引率-成長率)

ターミナルバリューは、「事業計画の最終年度のFCF」をベースに算出するため、事業計画最終年度のFCFが経常的な水準となっているかが重要です。
例えば、成長企業で事業計画の最終年度が成長途上の水準である場合は、株式価値に正しく反映されなくなるでしょう。

2-4. 株式価値の算出

株式価値を算定するためには、調整が欠かせません。
先述のとおり、事業計画期間のFCFとTVを現在価値に割り引いて合計することで、事業価値を計算する流れです。「事業価値」と呼ばれるように、事業から生み出された価値を表します。
事業資産に対して、事業に関係の無い資産である「事業外資産」を加算することによって、企業価値を算出するのが特徴です。
事業外資産の例を挙げると、事業に使っていない遊休資産や有価証券などが該当します。これらの資産は売却価値を前提にしており、各資産の時価で調整されるのが通常です。
最終的に、企業価値から有利子負債を控除することで、株式価値を算定します。
企業価値とそれぞれの関係性

3. 税効果会計を適用する際の留意点

DCF法において、含み益のある事業外資産があるケースでは、税効果会計の適用の要否に注意が必要です。
例えば、買収対象企業が含み益のある遊休土地を保有し、売却を予定している場合、買い手企業は土地の時価を事業価値に加算します。
ただし、売却により発生した売却益には税金が課されるため、その分を考慮せずに株式価値を上乗せすると、企業価値にマイナスが発生します。
そのため、土地の時価を株式価値に加える際は、含み益に対する税金(繰延税金負債相当額)を同時に減額することになるでしょう。

4. DCF法を用いるメリット・デメリット

DCF法は理論的でメリットも大きいのですが、その一方でデメリットもあります。DCF法を用いる際のメリットやデメリットは以下のとおりです。

4-1. メリット

DCF法の主なメリットは、将来の予想フリーキャッシュフローを現在価値に割り引くことで事業価値を算出するため、将来の収益性を反映した評価が可能となる点です。
また、割引率やフリーキャッシュフローの予想を適宜調整することにより、多様なシナリオを評価するのに適しています。

4-2. デメリット

DCF法の主なデメリットは、将来のキャッシュフローを予測する必要があり、予測が困難な場合や不確実性が高い場合には、評価結果が不正確になる可能性がある点です。
適切な割引率を設定するのは難しく、割引率の多少の変動でも企業価値に大きな影響を与えることから、DCF法は専門的な知識と経験を必要とします。

5. まとめ

ここまで解説したように、DCF法は会社の将来性などを織り込めるといったメリットが大きい評価法ですが、一方で専門的な知識や経験が欠かせません。知見が無ければ対象会社の評価を正しく行うことができず、高値で買収してしまうなど、失敗に直結するリスクも高まります。
専門家を活用することにより、評価の精度を高めていくほうが良いでしょう。適切な評価に基づいてM&A取引を行いたい経営者様は、東証プライム上場のM&Aキャピタルパートナーズへぜひご相談ください。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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