産業別では、「農・林・漁・鉱業」「建設業」「製造業」「卸売業」「小売業」「金融・保険業」「不動産業」「運輸業」「情報通信業」「サービス業他」の10のカテゴリーのうち「運輸業」を除く全業種で前年の休廃業・解散件数を上回っていることが分りました。特に「不動産業」は前年比2ケタを超える増加となっています。休廃業・解散件数の産業別構成比でみると、「サービス業他」「建設業」「小売業」で全体の3分の2を占めています。
廃業と倒産
~廃業のデメリットと危機回避の選択肢~
廃業の実態
企業の廃業が増加しています。まずは廃業の実態についてまとめたアンケートを確認します。東京商工リサーチが2017年1月に発表した「2016年休廃業・解散企業動向調査」では、29,583件が休廃業・解散をしているという結果が出ました。これは、2000年以降増加傾向で、2016年が過去最高の件数となっています。
年 | 休廃業・解散 | 前年比 |
---|---|---|
2007 | 21,122 | 3.38% |
2008 | 24,705 | 16.96% |
2009 | 25,178 | 1.91% |
2010 | 26,086 | 3.61% |
2011 | 25,273 | ▲3.12% |
2012 | 27,266 | 7.89% |
2013 | 29,047 | 6.53% |
2014 | 27,167 | ▲6.47% |
2015 | 27,341 | 0.64% |
2016 | 29,583 | 8.20% |
「2016年休廃業・解散企業動向調査」

産業別 | 2016年 | 2015年 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
件数 | 構成比 | 前年比 | 件数 | 構成比 | 前年比 | |
農・林・漁・鉱業 | 372 | 1.3% | 2.76% | 362 | 1.3% | ▲5.24% |
建設業 | 7,527 | 25.4% | 7.42% | 7,007 | 25.6% | ▲3.72% |
製造業 | 3,017 | 10.2% | 6.38% | 2,836 | 10.4% | 2.72% |
卸売業 | 2,660 | 9.0% | 1.45% | 2,662 | 9.6% | ▲1.80% |
小売業 | 4,196 | 14.2% | 4.745 | 4,006 | 14.7% | 0.75% |
金融・保険業 | 514 | 1.7% | 1.98% | 504 | 1.8% | 13.77% |
不動産業 | 2,171 | 7.35 | 14.38% | 1,898 | 6.9% | ▲4.53% |
運輸業 | 466 | 1.6% | ▲1.06% | 471 | 1.7% | ▲1.67% |
情報通信業 | 711 | 2.4% | 2.89% | 691 | 2.5% | 12.725 |
サービス業他 | 7,949 | 26.9% | 14.47% | 6,994 | 25.4% | 5.58% |
(出典)「2016年休廃業・解散企業動向調査」
法人格別では、構成比トップ5の「株式会社」「有限会社」「個人企業」「特定非営利活動法人」「医療法人」のうち、「株式会社」と「有限会社」で3分の2以上を占めています。
明細 | 2016年 | 2015年 | 2014年 | 2013年 | 2012年 | 2011年 | 2010年 | 2009年 | 2008年 | 2007年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
株式会社 | 11,568 | 10,299 | 9,851 | 10,008 | 10,238 | 10,184 | 10,612 | 10,483 | 10,117 | 8,562 |
有限会社 | 9,141 | 8,400 | 8,187 | 9,024 | 9,338 | 8,517 | 9,330 | 8,980 | 9,186 | 7,847 |
個人企業 | 6,711 | 6,530 | 6,665 | 7,480 | 5,669 | 5,055 | 4,899 | 4,709 | 4,519 | 3,899 |
特定非営利 活動法人 |
1,322 | 1278 | 1273 | 1009 | 857 | 587 | 448 | 260 | 177 | 114 |
医療法人 | 356 | 268 | 255 | 195 | 227 | 177 | 156 | 84 | 52 | 34 |
代表者の年代別構成比では、60歳代以上が8割以上を占めています。
年 | 2016年 | 2015年 | 2014年 | 2013年 | 2012年 | 2011年 | 2010年 | 2009年 | 2008年 | 2007年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
20代以下 | 0.08% | 0.12% | 0.13% | 0.11% | 0.16% | 0.14% | 0.14% | 0.15% | 0.22% | 0.18% |
30代 | 1.21% | 1.52% | 1.43% | 1.71% | 1.83% | 1.97% | 1.97% | 2.00% | 2.11% | 2.26% |
40代 | 5.57% | 5.92% | 6.10% | 5.79% | 6.30% | 6.01% | 6.32% | 6.72% | 7.01% | 6.84% |
50代 | 10.75% | 10.73% | 11.08% | 11.85% | 13.06% | 14.01% | 14.90% | 16.52% | 19.28% | 20.21% |
60代 | 34.73% | 35.25% | 35.52% | 36.22% | 38.70% | 40.07% | 39.94% | 39.62% | 37.81% | 37.08% |
70代 | 33.67% | 33.53% | 33.69% | 32.83% | 30.75% | 29.38% | 28.67% | 27.67% | 27.32% | 27.30% |
80代以上 | 13.98% | 12.935 | 12.04% | 11.50% | 9.21% | 8.42% | 8.07% | 7.32% | 6.25% | 6.13% |
合計 | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% |
「廃業」と「倒産」の違い
「廃業」というと赤字で事業が立ち行かなくなった企業をイメージし、「倒産」と同じに考える方もいると思いますが、同調査では「廃業」と「倒産」は別の定義として集計されています。
年 | 休廃業・解散 | 前年比 | 倒産 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
2007 | 21,122 | 3.38% | 14,091 | 6.39% |
2008 | 24,705 | 16.96% | 15,646 | 11.04% |
2009 | 25,178 | 1.91% | 15,480 | ▲1.06% |
2010 | 26,086 | 3.61% | 13,321 | ▲13.95% |
2011 | 25,273 | ▲3.12% | 12,734 | ▲4.41% |
2012 | 27,266 | 7.89% | 12,124 | ▲4.79 |
2013 | 29,047 | 6.53% | 10,855 | ▲10.47% |
2014 | 27,167 | ▲6.47% | 9,731 | ▲10.35% |
2015 | 27,341 | 0.64% | 8,812 | ▲9.44% |
2016 | 29,583 | 8.20% | 8,446 | ▲4.15% |

「2016年休廃業・解散企業動向調査」
この調査の「休廃業」は債務超過ではなく、資産超過状態で経営者が自主的に判断した事業停止をさします。別の調査になりますが、日本政策金融公庫研究所が2016年2月に発表した「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」の「廃業予定企業」と「廃業決定企業」の回答を見る限りは、同業他社と比べた業績が悪く、今後10年間の事業の将来性がなく事業を辞めざるを得ないから廃業を選択している経営者が少数派であることがわかります。

2016年2月 日本政策金融公庫研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」(再編・加工)
廃業を検討・選択する理由
廃業を検討・選択する理由については、「もともと自分の代でやめるつもり」が4割弱でトップですが、それを以外の理由として、事業の将来性に対して不安があることと、経営者の高齢化と後継者不在による事業承継問題が廃業を検討・選択する理由として考えられます。

2016年2月 日本政策金融公庫研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」(再編・加工)
廃業のデメリット
廃業により、これまでお付き合いをしてきた多くの取引先・仕入先・顧客との関係が消滅するおそれがあります。 従業員も全員解雇しないといけませんし、これまで築き上げてきた独自のノウハウ、ブランド、技術、特許、人脈といった目に見えにくい経営資源が後世に引き継がれない点も重大な損失となります。
オーナー経営者自身の目で採用し、一生懸命働いてきた愛着のある従業員達が次の働き口を探さないといけない状況になったり、後世に残すべき経営資源が自分の代限りでなくなってしまうというのは、心苦しいことです。
「自分の代でやめる」つもりのオーナー経営者も、廃業一択ではなく、従業員に対する周知とフォローの過程で、引き継いでくれる従業員や第三者への承継の可能性も検討する必要があります。
廃業した場合に残る財産についても、十分に考慮する必要があります。創業者利潤が他のスキームより少なくなる事業の清算・廃業の場合、残余の財産について株主に分配されますが、M&Aと比べると利潤が少なくなるケースが多いです。
主な相違点として、清算・廃業時は事業停止を前提としているため「換金価値(=処分価格)」しか値がつきません。「簿価上の金額」と「換金価値」では大きく異なるケースも多く、「簿価で資産を売却して現金化すれば借入も返済できて無事に事業をたためる」と見込んで資産を売却しようとしても、資産の売却が思うように進まないリスクが想定されます。また、会社の帳簿上にある資産をすべて換金処分した後に借入金等の債務をすべて返済しきれないといったリスクが想定されます。
一方でM&Aの場合は、事業継続を前提としているため将来の超過収益力等を加味した「のれん」が評価額に加味されのれんがつくことが一般的です。
また課税方法の違いについても、清算・廃業時には法人税と所得税(配当所得課税)の二段階の税が課せられるのが一般的ですが、M&Aを活用して株式で譲渡した場合は、株式の譲渡益に対して20.315%(所得税+住民税+復興特別所得税)の課税のみで済みます。
M&Aキャピタル
パートナーズが
選ばれる理由
私たちには、オーナー経営者様の
決心にこたえられる理由があります