企業評価アプローチの体系と特徴
M&A検討時の企業価値を評価する代表的なものとして、大きくネットアセット・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチの三つに分類される。
ネットアセット・アプローチによる株式評価では、帳簿上の純資産を基礎として、一定の時価評価等に基づく修正を行うため、帳簿作成が適正で時価等の情報が取りやすい状況であれば、客観性に優れていることが期待される。
一方、一時点の純資産に基づいた価値評価を前提とするため、のれん等が適正に計上されていない場合には、将来の収益能力の反映や、市場での取引環境の反映は難しいといえる。
マーケット・アプローチは第三者間や市場で取引されている株式との相対的な評価アプローチであるため、市場での取引環境の反映や、一定の客観性には優れているといえる。一方で他の企業とは異なる成長ステージにあるようなケースや、そもそも類似する上場会社が無いようなケースでは評価が困難で、評価対象となっている会社固有の性質を反映させられないケースもあるといえる。
インカム・アプローチは、前述のとおり、一般的に企業が将来獲得することが期待される利益やキャッシュ・フローに基づいて評価することから、将来の収益獲得能力や固有の性質を評価結果に反映させる点で優れているといえる。また、市場での取引環境の反映については割引率等を通じて一定の反映がなされるといえよう。一方でフリー・キャッシュ・フロー法などを前提とすると、事業計画等の将来情報に対する恣意性の排除が難しいことも多く、客観性が問題となるケースもある。