デューデリジェンス
~M&Aの役割~
デューデリジェンスとは?
中小企業M&Aにおけるデューデリジェンス(Due Diligence)は、当然行われるべき(Due)注意・努力(Diligence)と直訳されます。
M&Aを行うにあたって、買収側が売却対象企業ないしは事業等に対する実態を事前に把握し、価格や取引について適切な判断をするための調査を行いますが、この調査のことを、「デューデリジェンス」といい、省略してよく「デューデリ」や「DD」、日本語では「買収監査」といわれます。
欧米では、企業を買収したり不動産を購入するときに購入者側の負担で、対象企業に対する資産の実態を外部の専門家に調査依頼し、適正価格かどうかの判断材料を取得しています。売却側から直接得た情報だけでは、一方的なもので客観性や信頼性の上でも十分といえず、買収後に事業継続に支障をきたすような大きな財務・法務・労務等に関するリスクが隠れていることもあったり、場合によっては、売主自身が感知していないリスクが存在することもあります。
しかし、買収後にリスクを背負うのは買主側のため、買主側としては、このような隠れたリスクが存在するのではないかという懸念がM&Aをする際のハードルとなります。そのため、デューデリジェンスを実施してリスクがないかどうか、事前に弁護士、会計士などの専門家に依頼して、買収側の立場に立って調査、評価を行います。
日本の中小企業M&Aにおいても、対象企業に対するデューデリジェンスが行われています。買主側がこれを省略することは、M&A後に大きなリスクを背負うことになり、M&Aを失敗させないためにもデューデリジェンスは必要不可欠な手続きとなります。
売主側であるオーナー経営者にとって、デューデリジェンスにおいて買主側から企業の内容を詳細に調査されることは、気分がいいものではとはいえません。実際の対応場面では資料の提出依頼の対応や、質問対応に追われて相当なストレスがかかるとい荒れています。
とはいえ、調査に非協力的だと、買主側に不信感を与えかねないので、積極的に協力することがM&Aの成立のために重要となります。
セルサイドデューデリジェンス
デューデリジェンスは一般的に買主側が費用を負担して、外部の専門家に買収リスクの有無と程度を調査してもらうのが一般的ですが、売主側のオーナー経営者が費用を負担して行うこともあります。これをセルサイドデューデリジェンスといいます。
セルサイドデューデリジェンスは、売却価値を最大化し、これを保護するために買主側が実施するデューデリジェンスと同様、外部の専門家に依頼して想定される提出資料の事前準備、質問事項の事前対応を売主側で行い、M&A成立まで円滑に進められるように対策をすることをいいます。
例えば、企業の財務や会計処理に問題点はないか、税務に関して問題点はないか、将来の見通しについて事業計画をきちんと作成できているか、社内の人事や労務問題について状況把握できているかといったデューデリジェンス実施時に買主側からの指摘が想定される事項についての対策をすることが該当します。
セルサイドデューデリジェンスは、売却価値を最大化し、これを保護するために実施されますが、外部の専門家によるDDを通じて、オーナー経営者自身が自社の問題点や課題を把握し、明確にできることがメリットとして挙げられます。
費用はオーナー経営者負担となりますが、今後の自社の経営にも役立つことですので、選択肢の一つとして覚えておいていいかもしれません。
ビジネスデューデリジェンス
財務デューデリジェンス
財務デューデリジェンスは、対象会社から提供されている財務情報について買主側で実態を把握し、現在の財務状況を評価してリスクを特定するとともに、将来の事業計画の基礎となる損益およびキャッシュ・フローの予測をすることです。
例えば、貸借対照表分析、損益計算書分析、キャッシュ・フロー計算書分析、事業計画分析や、過去の税務調査実績からの税務上の問題点の把握、申告書等から現在の税務リスクを分析し、さらに将来のストラクチャーの検討に役立つ情報を収集することが挙げられます。
子会社や兄弟会社など、複数の企業が対象となる場合もありますので、限られた人員と時間を有効活用して、対象範囲(スコープ)を買収側が決定して調査を実施します。
法務デューデリジェンス
人事デューデリジェンス
人事デューデリジェンスは、ビジネスデューデリジェンスや法務デューデリジェンスと重複する部分もありますが、対象事業がM&A成立後にも円滑に継続できるよう、現状の組織・人員構成・キーマンの状況と労使関連の問題点を把握し、M&A後のグループの人事制度や組織への緩やかな統合を目指すために調査を実施することです。
特に近年では、上場会社をはじめ人材の確保を目的としたM&Aや、新たな成長の柱として異業種へのM&Aが増えていますので、オーナー経営者含め、対象事業で働く人材を活用しつつ、上手にグループに統合していくことが買収側の企業に求められています。
つまり、売却側にとっては、M&Aで大手企業グループ入りすることにより、手塩に育てたご自身の企業や従業員がより大きなフィールドで活躍する可能性が広がるといえます。
ITデューデリジェンス
ITデューデリジェンスは、ビジネスデューデリジェンスや財務デューデリジェンスと重複する部分もありますが、営業、管理、会計等事業に使用するシステム関連の資産査定や、M&A成立後の買主側へのシステム統合に関する障害、投資費用について予測し、事業計画に適切に反映するための調査を実施することです。
言うまでもありませんが、近年ではビジネスにおけるIT活用の重要度が高まってきており、統合プロセスが複雑化してしまったり、統合によって業務の効率化が下がるリスクもありますので、オーナー経営者としても対象となる自社のIT資産とIT戦略に関する全体像を把握し、買主側の質問にも対応できるようになるとスムーズに進みます。
デューデリジェンスの留意点
これまで述べてきたように、M&A成立に向けてデューデリジェンスは買主側にとって必要不可欠な手続であるものの、中小企業の売主側のオーナー経営者にとっては、とてもストレスのかかる場面でもあります。
買主側がデューデリジェンスを実施する際は、リスクがなくなるまでくまなく調査するというよりは、対象事業の強みと弱み、資産・負債・実態の収益力について把握し、存在するリスクについての対応が十分できるよう調査範囲(スコープ)を絞り込むことが重要になります。
デューデリジェンスを担当するチーム編成についても、スコープに応じて必要十分な体制作りや外部の専門家に依頼するための適度な費用捻出を心がけてください。外部の専門家に依頼する費用がもったいないからといって、自社の各部門の担当者だけで実施すると重大なリスクを見逃し、M&Aが失敗に終わる原因を作ることになります。
だからといって、大手企業ばかり見ているような専門家チームを組成しても、必要以上の資料対応を迫ったり、不備事項を必要以上に追及したりと、オーナー経営者の尊厳を損ね、ディールそのものがブレイクする原因となります。
売却側のオーナー経営者としては、外部の専門家を使ってセルサイドDDまでやる必要はないと思いますが、手塩にかけて育てた自身の会社と従業員の価値を適正に評価してもらい、スムーズに譲渡できるようできる限りの準備をしておくことをオススメします。
たとえば、M&A時の自社の評価を知っておいて、そもそもM&Aが選択肢になるのか検討しておくことや、本業の業績面と財務面を充実させること、たとえオーナー経営者がいなくなっても十分に事業継続できる組織体制を作っておくことが重要となります。
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