M&Aには合併や株式取得等の様々な取引形態があり、対等な経営統合や一方が他方を支配するものもあります。M&Aは、企業グループ全体の価値を高めることが目的で、十分なシナジーを見込んだ上で実行されます。統合によってシナジーを最大限発揮できる方法はあるのか、そのシナジー効果測定を定性的、定量的に計画した統合プランを策定する必要があります。
PMIは、一般的には基本合意書を締結する前の段階から検討され、デューデリジェンスで収集された情報をもとに具体化されますが、実際には、M&A実行後にも新たな情報が出てきたり、M&A後の環境変化を取り込みながら、より定量的、測定可能な指標が設定されます。企業は統合が完了してシナジーが十分発揮される状態になるまでは、策定された統合プランのPDCAサイクルを回しながら進めていきます。
まずは、統合方針を決めます。M&Aの対象企業をどの程度の早さで自社および自社グループに統合していくか、どのような手順・スキームで統合していくか検討します。DDでの検出事項、業界における競争環境、被買収企業や買い手従業員の感情などを総合的に判断して方針を決めます。対象企業を子会社として存続させ、できるだけ経営の自主性を維持する「連邦型統合」、対象企業を子会社として残すものの、自社が積極的に関与していく「支配型統合」、吸収合併、吸収分割、事業譲渡を用いて対象企業の組織を自社に吸収し、一体化する「吸収型統合」に分かれます。
次にランディング・プランを策定します。ランディング・プランとは、クロージング後数ヶ月以内に行うべき統合作業を計画したものを指します。通常はクロージング後3ケ月~6ヶ月以内に実施すべき作業を実行計画に落とし込みます。譲渡側だけでなく、譲受側での作業も含めて計画する。検討領域は経営全般において様々な領域がありますが、主に管理面と事業面の見直しが挙げられます。管理面では組織・規定類の見直し、コミュニケーションの推進、人事・労務面の変更、経営管理の見直し、経理・財務、庶務・その他の見直しが行われ、事業面では原材料費や研究開発投資といった原価の見直し、販管費・管理費の見直しが行われます。
そして、具体的な100日プランに落とし込みます。100日プランとは、 クロージング後100日間で策定する被買収企業の中期事業計画を指します。M&Aでは中長期的な経営効果が求められるため、100日プランの策定により中期的な課題を整理しておくことが重要です。特に、M&Aを機会に自社グループの経営改革を実施する場合に有効な手法です。
これらのランディング・プランや100日プランに沿って、PMIを実施します。PMIは、その成果がマネジメントによってモニタリングされ、測定されなければなりません。詳細なアクション・プランに基づいて進捗状況を管理するとともに、シナジー効果の実現など定量的な目標だけでなく定性的な目標に対しても管理指標(KPI)を設定して定期的に達成状況のモニタリングを行うことが重要です。
また長期にわたるPMIにおいては、運用状況を加味して随時見直しを行う必要があります。特にM&Aを頻繁に行う企業は個々の案件が想定どおりのシナジーを発揮できたか検証し、その経験を次のM&Aに活かすことも重要です。