株式上場
~上場の基準とメリットデメリット~
株式上場とは?
株式上場とは、証券取引所の各市場において、発行済みの自社株式を、投資家が自由に売買できるように公開することをさします。株式上場後の公開価格の決定については、ブックビルディング方式と一般競争入札方式とがあり、近年ではブックビルディング方式が主流です。
なお、ブックビルディング方式とは「需要(ブック)積み上げ(ビルディング)方式」とも言い、株の新規発行や売出しの際に、引受先となる主幹事証券会社等が仮の発行条件を提示して投資家の意見をリサーチしたうえで、価格を設定するやり方です。
株式市場の種類
市場の種類としては以下の通りです。
証券取引所名 |
市場種類 |
特徴 |
---|---|---|
東京証券取引所 |
一部 |
日本を代表する株式市場。大企業向けの市場。 国内の90%以上がここで取引される。 |
二部 |
東証一部に上場する一歩手前の企業が上場している。 中堅企業向けの市場。 |
|
マザーズ |
ベンチャー企業向けの市場。 |
|
大阪証券取引所 |
一部 |
関西に拠点を置く大企業向けの市場。 |
二部 |
大証一部に上場する一歩手前の企業が上場している。 関西地区の中堅企業向けの市場。 |
|
ヘラクレス |
関西地区のベンチャー企業向けの市場。 |
|
名古屋証券取引所 |
一部 |
名古屋周辺、中京地区に拠点を置く大企業向けの市場。 |
二部 |
名証一部に上場する一歩手前の企業が上場している。 中堅企業向けの市場。 |
|
セントレックス |
2001年に新規開設された、ベンチャー企業向けの市場。 |
|
札幌証券取引所 |
既存市場 |
北海道に拠点を置く有力企業向けの市場。 |
アンビシャス |
2001年に新規開設された、ベンチャー企業向けの市場。 |
|
福岡証券取引所 |
既存市場 |
福岡周辺に拠点を置く有力企業向けの市場。 |
Q-Board |
2000年に新規開設された、ベンチャー企業向けの市場 |
|
ジャスダック証券取引所 |
中堅企業やベンチャー企業向けの市場。 |
上場企業数は?
まず、現在(2018年4月時点)における、代表的な取引所である東京証券取引所の上場会社数は以下の通りです。
- 第一部:2,084社
- 第二部:515社
- マザーズ:249社
- JASDAQ:742社
また、全市場の新規上場(IPO)数の推移は以下の通りです。
1999年 | 2000年 | 2001年 | 2002年 | 2003年 | 2004年 | 2005年 | 2006年 | 2007年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
東証一部 ・二部 |
8 | 25 | 16 | 20 | 18 | 22 | 18 | 29 | 13 |
新興市場 | 75 | 157 | 149 | 100 | 101 | 150 | 139 | 155 | 106 |
その他 | 27 | 22 | 4 | 4 | 2 | 3 | 1 | 4 | 2 |
計 | 110 | 204 | 169 | 124 | 121 | 175 | 158 | 188 | 121 |
新興市場は、マザーズ、ジャスダック、ヘラクレス、セントレックス、アンビシャス、Q- Boardの合計
その他は、大証(一部・二部)・名証(一部・二部)・福証・札証の合計
株式上場の基準
東京証券取引所の各市場に上場するために必要な条件や審査基準は以下の通りです。
項目 |
第一部 |
第二部 |
マザーズ |
JASDAQ | ||
---|---|---|---|---|---|---|
スタンダード |
グロース | |||||
株主数 |
2,200人以上 |
800人以上 |
200人以上 |
200人以上 |
||
流通 |
流通株式数 |
20,000単位 |
4,000単位 |
2,000単位 |
- |
|
流通株式時価総額 |
10億円以上 |
10億円以上 |
5億円以上 |
5億円以上 |
||
流通株式比率 |
35%以上 |
30%以上 |
25%以上 |
- |
||
公募又は |
- |
- |
公募500単位以上 |
①1,000単位以上 |
||
時価総額 |
250億円以上 |
20億円以上 |
10億円以上 |
- |
||
事業継続年数 |
3年以上 |
1年以上 |
- |
|||
純資産額 |
10億円以上 |
- |
2億円以上 |
正 |
||
利益の額又は |
次の①又は②に適合 |
- |
直前期1億円 |
- |
オーナー経営者が株式上場をするメリット
- 経営と資本の分離
株式上場を果たすとビジネスモデルの構築や組織体制が整備され、企業としての実力・ブランド力がともなうことになります。特に株主が増えることで経営と資本の分離は進み、万が一経営者に何かあっても上場会社であることによって代わりの人材がすぐに確保しやすくなり、創業一族に依存しない永続企業としての発展をとげることになります。 - 相続税納税時に株式現金化が可能
非上場会社の株式は市場で価格がつかず売却できないことと比べ、上場会社の株式は常に時価で株価がつくことになるため、相続税の発生時など資金が必要なときに比較的容易に換金可能となります。よって一族にとっては将来の資金使途に備えることができます。 - 人材の採用や資金調達力の向上
上場することによって、企業の事業や業績が情報開示されるようになり、世間から注目されるようになります。上場によって企業の知名度が上がり、優秀な人材が集まりやすくなるというメリットがあります。また、会計監査を行っているため、業績開示に対する信頼度が高まり、直接金融から間接金融まで、資金調達の手段が増えるといったメリットがあります。
株式上場のデメリット
- 資本承継につながらない(すぐに株を売ることができない)
取締役の選任・解任や合併など経営上の最重要事項は株主総会の決議によりなされます。株主総会では各株主が議決権を行使することにより決議が行われますので、安定的に経営をしていくためには一定の議決権を確保する必要があります。よって、上場後も安定株主対策のために株を放出できず、オーナー経営者様は上場によってすべての創業者利潤を確保できない点に注意が必要です。また、上場後は特に、主幹事証券会社による縛りもありオーナー経営者様は株を手放すことはできないため、一般的に直近の承継を目的とした手段としては不向きです。 - 上場基準の厳格化
株式上場については上述したように高いハードルが設けられており、クリアするためには相当な負担がかかります。日本国内に250万もの株式会社が存在する中で、株式上場を果たしている企業は僅かに約3,500社強しかなく、株式会社全体に占める上場企業の割合は0.2%とごく僅かです。上場時には基準の厳格化に加え、監視強化や法制度の充実による上場コストの増加が負担になるだけでなく、上場後も管理のための維持コストがかかります。 - 数年単位で時間を要する
具体的に上場準備を始める際には、監査法人と監査業務契約を締結し財務諸表監査を受ける必要があり、直前2期間の期首からの監査証明の準備が必要となります。実際にはこれよりも多少短い期間での申請も可能となりますが、審査に耐えるためのガバナンスの構築、管理・運営体制の充実など多くの時間と費用をかけて上場会社としての継続的な体制を整えていくことが必要です。そのうえで、上場の最大のハードルは業績の達成になることから、実際の申請期まで安定的に一定規模の収益を確保できている会社や継続的に高い成長を示している会社でない限り、上場を断念せざるを得なくなるリスクがあります。
M&Aキャピタル
パートナーズが
選ばれる理由
私たちには、オーナー経営者様の
決心にこたえられる理由があります