食品製造業界のM&A動向
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昨今の原材料価格の高騰に伴い、食品製造業界では相次いで値上げが実施されています。また、市場の多様性と消費者の嗜好の変化に対応するため、M&Aが積極的に行われているのが現状です。
本記事では、食品製造業界におけるM&Aを成功させるためのポイントや事例を詳しく紹介します。業界の課題と展望についても触れていますので、M&Aを検討中の経営者様や、今後の経営戦略に活かしたい方は、最後までご参照ください。
M&Aの前に押さえておきたい食品製造業界の情報
食品製造業界は、日本の経済に大きな影響を与えています。M&Aを考える前に、まずは、この業界の基本的な情報を理解することが重要です。
食品製造業界の定義
食料品製造業は、食料品加工業者や外食産業への原料供給を主要業務とする「素材型」と、原料を調達して加工品を製造し、小売業あるいは直接消費者に完成品を供給する「加工型」に分類されます。
素材型の生産品は、穀物・製粉・畜産素材品・水産素材品などが中心です。加工型の生産品としては、缶詰・パン・菓子・惣菜などがあります。
商流(流通)から見ると、調味料・豆腐・冷凍調理食品などは、食料品工場・外食チェーンおよびスーパーなどの小売業にも卸売りされているため、両方に含まれます。
代表的な企業
食品製造業界には、多くの優れた企業が存在します。なかでも代表的な企業として、以下の4社が挙げられます。
- ・味の素株式会社
- ・日本ハム株式会社
- ・山崎製パン株式会社
- ・明治ホールディングス株式会社
食品製造業界の特色
国内生産品に関しては、主に生モノである原料を農協や商社などから買い入れ、食料品を製造するのが一般的です。
食料品製造業者が生産品を食料品卸売業に販売して、飲食業やスーパーなど小売業に納品されてからようやく消費者に届くという、多層階構造の流通経路になっています。海外では見られない、こうした構造は今後、IOTの一般化により解消されると予想されます。
食料品製造業者の最も重要な使命は「食の安全」を守ることです。
例えば、異物混入による自主回収などの事案は、頻繁に発生しています。未然に防止することにより、健康被害にまで至っていないケースが多いものの、日本では「賞味期限」と「消費期限」という、2段階の食品衛生基準が存在している食料品が多いです。
複雑な流通経路と相まって、原材料が海外からの輸入品などになると、全体のリードタイムを緻密に計算した高度な生産計画が求められます。この計画に狂いが生じると、大量の廃棄ロスが生じ、経営を圧迫することになるでしょう。
したがって、食料品製造業者は常に、難しい経営の舵取りが求められています。
食品製造業界のM&A動向・市場規模
食品製造業界の動向と市場規模については、さまざまな要素が影響を及ぼしています。
2015年以降、国内生産額は増加傾向にありましたが、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で外食産業が大打撃を受け、その余波は食品製造業界にも及んでいます。飲食店の時短営業や休業により、仕入れ量が大幅に減少しました。
近年は、円安の影響で輸入製品や原材料の価格が上昇し、食品業界は相次いで値上げを実施しています。特に2023年は、累計で3万2,396品目の値上げが行われました。2024年4月時点では一時的に安定していますが、人件費や燃料費、物流コストの動向次第では、状況が再び変わる可能性があります。
また、日本の食料自給率は、米の消費減少と畜産物や油脂類の消費増加などの食生活の変化により長期的には低下していましたが、2000年代以降は概ね横ばいで推移しています。
食品製造業界のM&A事例
食品製造業界では、多くの企業がM&Aを通じて新たな価値を創出し、成長を遂げています。以下に、具体的な事例を紹介します。
ヨシムラ・フードHDと細川食品
株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングスは、事業拡大を念頭に、株式会社細川食品および有限会社細川フーズを子会社化しました。
細川食品側は、国産野菜を使用した、かき揚げやチヂミなどの冷凍食品を製造しています。ヨシムラ・フードHDは、細川食品の製造ノウハウや設備、仕入先を取り込むことで、グループ全体の成長を目指しました。
ツルヤ化成工業と京都フードパック
ツルヤ化成工業株式会社は2022年、京都フードパック株式会社を買収しました。
京都フードパックは、食肉の加工・卸業を行う企業です。ツルヤ化成は、甘味料や調味料、健康食品の製造・加工を行っており、京都フードパックの事業を引き継ぐことで、食品製造領域の拡大とシナジー効果を期待しました。
双日とマリンフーズ
双日株式会社は、日本ハム株式会社の子会社であるマリンフーズ株式会社を買収しました。
マリンフーズは、水産食品加工業において長い歴史を持つ企業です。双日は、マリンフーズが強みとした顧客基盤・商品開発・加工機能と、自社のグローバルネットワークやリソースなどを組み合わせることで、海外展開の強化・拡大を図ります。
キューソー流通システムと三菱食品
新しい価値提供を目指し、株式会社キューソー流通システムと三菱食品株式会社は、業務提携を実施しました。
両社の食品流通に関わる事業の一部を、双方を出資者とする合弁会社に承継させることを計画しています。
阿波銀行と有限会社うずしお食品
食品製造業界でM&Aを活用するメリット
食品製造業界でM&Aを活用すると、多くのメリットが得られます。それは、技術の獲得から商品ラインナップの拡充まで、多面的です。
食品製造技術の獲得につながる
食品製造には高度な技術とノウハウが必要で、独自技術を持つ食品メーカーも多くあります。消費者のニーズやトレンドに応じた新製品を開発する際、自社だけの技術力では限界を感じるでしょう。
M&Aを通じて他社と協力することで、その企業が培ってきた長年の技術やノウハウを活用し、質の高い製品を開発することが可能となります。
商品ラインナップの拡充につながる
自社とは異なる食品ジャンルを取り扱う企業を買収することで、商品ラインナップの拡充が可能です。売上の拡大と同時に、全体の業績悪化リスクを軽減する効果が期待できます。
海外企業の買収は、自国とは異なる食文化を取り入れることで、他社との差別化となる商材を取り扱えるようになり、自社事業の他国・他地域への事業進出を可能にします。
食品製造業界におけるM&A成功のポイント
食品製造業界でM&Aを成功させるには、いくつかの重要なポイントがあります。
食品製造業は、他業種に比べて消費者の信頼やブランド力が欠かせません。消費者は食品を厳選し、自分の好みに合ったものを探す傾向にあり、信頼感や愛着も選定ポイントの一つといえます。
SNSの普及により、異物混入や対応の不手際などがあった際には、ネガティブな情報が瞬く間に広がってしまいます。製造・仕入工程において品質は守られているか、顧客からの支持を得られているかをリサーチし、取引に足る相手であるかを見極めることが大切です。
食品製造業界における今後のM&Aの課題と展望
食品製造業界におけるM&Aの課題と展望は、多岐に渡ります。労働生産性の改善や市場の多様性への対応など、さまざまな視点から考えることが求められます。
労働生産性改善など課題は複数ある
食品製造業界は労働生産性が低く、原料の不統一性やつくりすぎによるムダ、手待ち時間や運搬のムダなどが課題です。農林水産省も、業務効率の改善が必要と指摘しています。
キャリアアップしづらい組織構造のため、給与が上がりにくく、労働者のモチベーション維持が難しいという課題もあります。
そのため、M&Aを行う際は職場の心理的安全性を確保し、離職を防ぐことが重要であり、人材確保と採用活動の強化が必要です。
課題解決に向けて今後もM&Aは増加すると見られている
日本では、さまざまな業種でM&Aの需要が拡大していますが、食品業界では、市場の多様性と消費者の嗜好の変化に対応するためのM&Aが目立っています。
自社の技術やノウハウだけでは消費者ニーズに対応しきれず、他社とのM&Aで製品開発を強化するケースが多くあります。また、後継者不足に悩む企業も多く、M&Aで経営権を引き継ぎ、会社を存続させる例も増えている傾向です。
グローバル展開を目指す企業が、持続的成長のためにノウハウが豊富な企業とM&Aを行うケースも見られており、食品製造業におけるM&Aは、今後も増加していくと見込まれています。
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