ゴールデンパラシュートとは? 概要、メリットとデメリット、具体的な事例について、詳しく説明します。

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日本の企業間におけるM&A(Mergers and Acquisitions、合併・買収)の動きは、近年、増加しています。M&Aは企業の成長戦略の一環として行われる一方、敵対的な買収として進められる場合も存在します。企業が敵対的な買収から身を守るための数々の手段のひとつとして認識されているのが「ゴールデンパラシュート(Golden parachute)」です。今回は、ゴールデンパラシュートの概要、メリットとデメリット、具体的な事例について、詳しく説明します。
ゴールデンパラシュート

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1. ゴールデンパラシュートの概要

1-1. ゴールデンパラシュートとは?

ゴールデンパラシュートとは、買収価格を高騰させることで買収意欲を削ぎ、抑止効果を高める買収防衛策のことをいいます。
ゴールデンパラシュートという名前の由来は、経営陣が会社から追い出されることになっても、高額な手当てをもらって脱出できるという特徴から来ています。
1960年代のアメリカでは、トランス・ワールド航空の社長であるチャールズ・ティンガリスト Jr氏との雇用契約に、仕事を失った際に多額の退職金が支払われるという条件が挿入されていたことをきっかけに、ゴールデンパラシュートという言葉が広まったといわれています。
その後、企業買収が盛んに行われた1980年代には、アメリカの多くの企業が買収防衛策として導入されていました。

2. M&Aにおけるゴールデンパラシュート

M&Aにおけるゴールデンパラシュートとしては、敵対的買収などで経営権が移動した場合、経営陣側に支払われる退職金を通常よりも高額になるよう、企業があらかじめ経営陣と契約を結んでおきます。そうすると、買収者側にとっては買収コストが大幅に上昇するため、これが抑止力となり、敵対的買収を防ぐことにつながります。

3. ゴールデンパラシュートのメリットとデメリット

3-1. ゴールデンパラシュートのメリット

まず、ゴールデンパラシュートのメリットとしては、主に以下が挙げられます。

  • 退職金が高額であるほど高い効果を発揮する
    経営陣の退職金が高額であるほど買収後のリスクも跳ね上がるので、金額次第では買収元の意欲を一気に削ぐことができます。
  • 解任されても利益が発生する
    ゴールデンパラシュートは敵対的買収を防ぐ手段のひとつですが、仮に買収が成立したとしても経営陣には退職金が発生します。これは、失業保険と同じような役割を果たすため、経営陣にとっては安心できる要素になります。
  • 資金を使わずに敵対的買収を防げる
    ゴールデンパラシュートの実施にあたり、多額の資金が必要になることはありません。諸経費は多少発生するかもしれませんが、資金に余裕がない企業でも実施可能な手段といえます。

3-2. ゴールデンパラシュートのデメリット

次に、ゴールデンパラシュートのデメリットとしては、主に以下が挙げられます。

  • 株主や従業員の反発を招きやすい
    ゴールデンパラシュートが発動すると経営陣だけがメリットを受けることになるため、株主や従業員からの反発を招く可能性があります。
  • 買収を強行されると経営陣の個人信用度が下がる可能性がある
    買収する側にとって、経営陣の退職金が大きな損失にならないと判断して買収を強行する可能性もあります。その場合、経営陣だけがメリットを享受したと認識されて、経営陣個人の信用度が低下することが予想されます。
  • 利益相反義務に違反するリスクがある
    ゴールデンパラシュートが買収によって発動しても、退職金が上積みされる経営陣にとっては必ずしもデメリットにはなりません。そのため、買収されても、されなかったとしても経営陣にとっては都合が良い状況になると判断された場合は、利益相反義務に違反するリスクがあります。

4. ゴールデンパラシュートの事例

ゴールデンパラシュートの事例としては、ゴールデンパラシュートの発動事例として広く知られている事例は、アメリカで食品・タバコ産業を営んでいたRJRナビスコをめぐる買収劇です。1980年代後半に起きたこの事例は世界中に広く知れ渡っており、後に書籍化や映画化などもされました。
RJRナビスコ社は、1989年に投資ファンドKKRによって敵対的買収が仕掛けられます。結果的に買収は実行され、当時CEOだったロス・ジョンソン氏は経営権を明け渡すことになりますが、ゴールデンパラシュートを設定していたことにより、同氏には5,800万ドルもの巨額の退職金が支払われました。

5. まとめ

ゴールデンパラシュートは、買収防御策のひとつとして位置づけられています。敵対的買収の阻止は企業の継続的な経営や文化を保つ上で重要な要素となる場合もありますが、その手段によって企業価値を自ら損なう行動は、長期的な視点での経営の健全性や株主の利益をどう捉えるかという観点からも慎重な判断が求められると考えられます。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
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コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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