加速するIT業界のM&ADX時代を支える成長戦略の最前線
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加速するIT業界のM&A DX時代を支える成長戦略の最前線
加速するIT業界のM&A DX時代を支える成長戦略の最前線
2025/11/11
2025年に入り、国内のM&A市場ではIT業界が引き続き高い存在感を示し、2025年1月から9月のM&A件数は、全体の約3割を占めました。技術革新の波が加速する昨今、IT分野はM&Aを通じて新たな時代の輪郭を築こうとしています。
IT業界のM&A取引が増加する背景「2025年の崖」
IT業界のM&Aが活発化している背景のひとつに、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進があります。経済産業省のDXレポート内で取り上げられた「2025年の崖」では、既存システムの複雑化・老朽化・ブラックボックス化への対応が急務とされ、クラウド化やAI導入、データ活用などの取り組みを加速させました。
また、レガシーシステムの存在が日本企業におけるDX推進の障壁となっているとも指摘。ユーザー企業・ベンダー企業・サプライチェーンそれぞれの立場で制約が複雑に絡み合い、結果として日本全体の産業競争力を低下させる懸念が示されています。
出典:ITシステム「2025年の崖」の克服と DXの本格的な展開
こうした状況を受け、自社単独での開発体制構築が難しい企業が、技術力や人材を持つIT企業を買収し、体制を強化する動きが広がっています。
さらに、人口減少による労働力不足も、IT業界のM&Aを後押しする要因のひとつです。技術を持ったエンジニア不足が深刻化するなか、即戦力となる人材を抱える企業をグループ化することで、体制の強化を図る動きが進んでいます。
M&Aが集中する分野
IT業界のなかでも特にM&A件数が多いのは、システム・ソフトウェア関連の企業です。 SES(システムエンジニアリングサービス)、ITコンサルティング、データ分析、パッケージソフト開発などは、いずれも人材規模が大きく、業界再編が進みやすい分野といえます。
当社でも、システム・ソフトウェア関連のM&A案件を手がける機会は多く、技術力や優秀な人材を求めて新たなパートナーシップを築く動きが顕著です。
そのほか、ハードウェア領域(特に組み込み系)や、3G・4G・5Gなどのネットワーク技術を提供する通信分野にも一定数の取引が見られます。一方で、インターネット関連分野は大手企業が少なく、中小規模の取引が中心となっている点も特徴的です。
異業種によるテック領域への進出
近年におけるIT企業のM&Aは、同業種間だけに留まりません。他業種によるIT企業のM&Aも増加傾向にあり、不動産・建設・物流といった分野がその代表例です。これらの取引は、既存産業のデジタル化を目的とするだけでなく、ITと他産業の融合による新たなシナジー(相乗効果)を生み出す取り組みでもあります。各企業がIT人材やシステム開発機能を自社内に取り込みながら、事業の付加価値を高めようとする動きが強まっているのです。
テクノロジーの波が、これまでデジタルとは縁の薄かった業界にも、静かに、しかし着実に広がりを見せているといえるでしょう。
景気動向と今後の見通し
IT業界のM&Aは、他産業と比べて景気変動の影響を受けやすい側面もあります。過去にはリーマンショック時に取引件数が大きく落ち込んだ例もあり、資金繰りや投資マインドの変化が市場全体に波及しやすい点は否定できません。
しかし一方で、AIやクラウド、生成AIといった新技術の普及を背景に、中長期的には大きな成長余地を持つ分野でもあります。新たな技術が次々と登場する中で、IT業界のM&Aは「未来への投資」としての意味を強めています。
実際、IT業界のM&Aは「事業承継型」よりも「成長戦略型」が中心です。創業10年前後の企業が、採用や営業力の限界を理由により大きな企業グループ入りを選ぶケースも少なくありません。単独では難しいスケールアップを、M&Aによって補完する流れが定着しつつあるのです。
IT業界のM&Aが、技術革新と人材不足の架け橋に
DXやAIの進展により、企業が「どんな技術を持つか」だけでなく「誰と組むか」が競争力を左右する時代になりました。その中で、IT業界のM&Aは単なる経営判断ではなく、技術進化のスピードに対応するための“組織的アップデート”の手段として位置づけられつつあります。
不動産や建設といった異業種間でのM&Aが増加している点も見逃せません。いまや「IT企業だけの市場」ではなく、あらゆる産業がテクノロジーを軸に再構築される時代です。
その中で、M&Aはこうした変化を後押しし、業界の進化を加速させる重要な役割を担っています。
景気の変動リスクは残るものの、長期的に見ればIT業界のM&Aは引き続き成長軌道にあるといえます。それぞれの企業がどの領域に強みを持ち、どのパートナーと手を結ぶのか――その選択が、これからの10年を左右していくことでしょう。
記事監修者
2011年から当社に参画し、現在は社内トップクラスのM&A成約実績を重ねている。