2025年の後継者不在率は50.1%と引き続き改善傾向へ帝国データバンクによる2025年の動向調査

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2025年の後継者不在率は50.1%と引き続き改善傾向へ 帝国データバンクによる2025年の動向調査

2025年の後継者不在率は50.1%と引き続き改善傾向へ 帝国データバンクによる2025年の動向調査 2025年の後継者不在率は50.1%と引き続き改善傾向へ 帝国データバンクによる2025年の動向調査

2025/11/28

帝国データバンクの調査によると、日本企業の後継者不在率が過去最低の50.1%に改善しました。官・民による事業承継支援の広がりが追い風となり、全国的に前進が見られる一方、2025年問題が叫ばれるように、中小企業では依然として経営者の高齢化や後継者不足が深刻です。また、地域や業種ごとの課題も浮き彫りとなり、M&Aによる非同族承継が拡大するなど、事業承継のスタイルは大きな転換期を迎えています。

日本企業の後継者不在率が過去最低の50.1%に改善

帝国データバンクが発表した2025年の後継者動向に関する全国調査によると、全業種約27万社のうち後継者不在と回答した企業は13.8万社で、後継者不在率は50.1%となりました。後継者不在率は2019年以降、7年連続で改善傾向が続いており、国内企業の事業承継問題は全体的に前進している結果となりました。

出典:帝国データバンク 全国企業「後継者不在率」動向調査(2025年)

官・民による事業承継支援が後継者不在率改善の追い風に

後継者不在率が改善された背景には、M&A仲介業者や自治体など、事業承継に関する相談窓口の普及や支援内容が拡充されたことで、これまで支援が届きにくかった中小企業にも門戸が広がったことが挙げられます。

また、自治体やM&A仲介業者に加え、地域の金融機関による取り組みによって事業承継の重要性が広く認知され、経営者の意識変化を促したことが大きいとみられます。

中小企業の後継者不足は依然として改善されず

その一方で、企業規模による後継者不足の格差は依然として大きいと言えます。大企業の後継者不在率は24.9%と低水準となったのに対し、中小企業は51.2%、小規模企業では57.3%と全国平均を上回り、企業規模が小さくなるほど後継者対策が遅れていることが浮き彫りとなったのです。

中小企業白書によると、中小企業の経営者の過半数が60歳以上となっており、依然として経営者の高齢化が続いていることがわかります。なお、中小規模の企業は家族が承継する親族承継が一般的ですが、家族や親戚に承継を考えているものの、後継者が見つからないパターンも多いようです。

自分の代で廃業を考えていると回答した企業が全体の約4割を占めていましたが、後継者選びがうまくいかず、事業の継続が困難となっていることも一因としてあるようです。この傾向が続くと、中小規模の企業が持つ技術力やノウハウ、顧客基盤が途絶えてしまうおそれもあります。

都道府県別では秋田県が後継者不在率70%超でトップ

全国で後継者不在率が最も高いのは秋田県の73.7%で、唯一の70%超えとなりました。秋田県は2023年以降、全国で唯一、3年連続で後継者不在率が上昇しており、後継者問題の深刻さが際立ちます。

秋田県は同族承継の企業が多く、第三者への承継に抵抗感が根強い地域性に加え、若年層の都市部流出による人材不足が深刻化している地域です。つまり、人口減少や高齢化が地域経済に影を落とし、事業承継の停滞を加速させていると推察されます。

こうした地域ごとの後継者不在率の差は、経営環境や人材流出、文化的背景など複合的な要因に左右されるため、地域特性に応じた支援策の需要が一層高まっていると言えます。

業種別でも全体的に改善傾向にあるが、ワースト1は「建設業」

業界別の後継者不在率は2011年以降、全業種で初めて60%を下回りました。このうち「建設業」が57.3%と最も高いですが、2018年のピーク時(71.4%)以降は、緩やかな改善傾向が続いています。

一方、最も後継者不在率が低かったのは「製造業」で、42.4%です。製造業では、自動車産業を中心に事業承継問題がサプライチェーン全体へ深刻な影響を及ぼすと懸念されてきたことから、後継者不在率の改善に大きく進展したとみられます。なお、帝国データバンクによると、このペースで今後も改善が進めば、2020年代中に40%を下回る可能性もあると指摘しています。

M&A(非同族承継」が初の40%超えから見える事業承継スタイルの変化

後継者候補が分析可能な全国約13.8万社のうち、後継者候補の属性で最も多かったのは「内部昇格(内部承継)」の36.1%で、2025年の速報値で同族承継の32.3%を逆転しトップとなりました。これは、事業承継のあり方が大きく変化していることを示しています。

その背景として、コロナ禍や物価の高騰、人手不足、地政学リスクなど、経営環境が激変する中で先行きの見通しが立てづらくなり、かつては主流であった同族への承継に二の足を踏む経営者が増えていることが背景にあります。

また、「M&Aほか」の第三者承継も速報値で20.6%となり始めて20%を超えました。経営者の高齢化による事業承継問題が深刻化する中、M&Aによる第三者は一般的な経営戦略として浸透してきており、今後もさらに増えていくことが予想されます。実際に、MACPでも、同族の後継者を育成する中、先行き不安からM&Aによる事業承継に方針を転換する経営者様も増えてきています。

かつて、日本企業の事業承継は「家族内承継」が主流でしたが、今や、ファミリー企業でも親族外への承継=脱ファミリーの流れが加速しています。経営環境の変化や人材確保の難しさを背景に、血縁にこだわらず適任者を選ぶ姿勢が広がっていることは、企業の持続性を高める新たな潮流と言えます。

全国企業「後継者不在率」動向調査(2025年)出典:帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2025年)」

事業承継をするにあたって重要なのは「情報収集」

円滑な事業承継は、企業の安定的な未来を築くうえで欠かすことのできない、経営者の重要な仕事だと言えます。そのため、経営者の高齢化や突然の引退に備えるとともに、後継者の選定や相続トラブルの防止、税負担の軽減といった課題に適切に対応することが求められます。

事業承継の主要な方法として「親族内承継」「社内承継」「M&A」「株式公開」の4つがありますが、企業の状況や将来のビジョンによって最適な方法は異なります。

それぞれにメリットと留意点があるため、最適な決断をするためにも、M&Aの仲介会社など専門機関に相談し、早めの情報収集を行い、時間をかけて検討を進めるが非常に重要です。

記事監修者

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広報室 室長
齊藤 宗徳
2007年、立教大学経済学部経営学科卒業後、国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。
2021年M&Aキャピタルパートナーズ入社後は、広報責任者として、TV番組・CMなどのメディア戦略をはじめ広報業務全体を管掌、2024年より現職。

一般社団法人金融財政事情研究会認定M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者

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