ITインフラと施工の融合で企業DXを支えるともに成長を目指すM&Aの可能性

STORY

ITインフラと施工の融合で企業DXを支える ともに成長を目指すM&Aの可能性

ITインフラと施工の融合で企業DXを支える ともに成長を目指すM&Aの可能性 ITインフラと施工の融合で企業DXを支える ともに成長を目指すM&Aの可能性

2026/02/12

2025年9月、ディクスホールディングス株式会社は、通信インフラ工事を手がける株式会社コムテックの全株式を取得しました。ITインフラの設計・運用と、設備の設計・施工・保守を一体で提供し、企業DX基盤をシステム面と設備面の双方から支援する体制を一層強化します。この背景、そしてグループ戦略について、ディクスホールディングス株式会社代表取締役社長兼CEOの戸邊 光男様と、連結親会社であるINTLOOP株式会社シニアディレクター(M&A・ファイナンス責任者)の松本 卓也様にお聞きしました。

今回のM&Aの概要

本M&Aにおける譲渡企業と譲受企業の図

インフラ事業を柱に多様なニーズに応えて成長した

まず、戸邊様自身が創業するまでの経緯を教えていただけますか。

ディクスホールディングス株式会社 代表取締役社長兼CEO 戸邊 光男様(以下、敬称略):

学生時代ガソリンスタンドでアルバイトをしていた際、常連のお客様から声をかけていただき、その方が経営するコンピューター関係の会社に入ることとなりました。これが、現在の仕事につながるルーツです。そこでは、大型汎用機の設置や保守が主な業務でした。

その後、会社の先輩と一緒に独立して会社を作り、10年近くは一緒に経営していましたが、私はネットワークの構築や保守、運用といった得意分野を伸ばしたい気持ちがありました。そこで別々の道を歩むことになり、情報通信設備施工会社として日本ディクス株式会社を設立します。これが、1998年のことです。

創業当初は、通信工事をメインの事業としていましたが、その後はネットワークエンジニアやサーバー関連のエンジニア採用に力を入れ、組織の拡大を図ってきました。現在では、インフラ事業が売上の6割強を占めています。そのほかにも、BPOサービスやエンジニア派遣事業なども手がけています。

このように、お客様や市場が求めているものを常に察知して、サービスを充実させ続けてきたことが、今日の成長につながったと考えています。

早くからM&Aにも取り組んでいらっしゃいました。

戸邊:
2005年頃から、何社かM&Aを行っています。偶然のご縁から、カスタムエンジニアの集団だった会社を譲り受けたのが最初です。私自身がカスタムエンジニア出身なので、その方々の役割や価値がよくわかったつもりです。

全国に配置されていた方々を受け入れ、皆さんが定年になるまで働いていただきました。その後もいくつかの会社を吸収してきましたが、グループが大きくなってきたこともあり、2021年にホールディングス体制に移行しました。各社に経理や人事を置くよりも、コーポレート機能を一つに集約した方が効率的だと考えたからです。

その後、2023年にINTLOOPグループへ参画されました。この経緯を教えてください。

戸邊:

INTLOOPの林さん(代表取締役 林 博文様)とは、10年ほど前からの付き合いです。私が役員を務めている東京都情報産業協会という業界団体で知り合いました。会合やゴルフなどを通じて親しくなり、年齢が近いこともあり、さまざまな相談もできる間柄になっていきました。

グループ参画を考えた発端は、当社役員の退任のタイミングです。長年貢献してくれた役員に報いるために、節目で保有している株式をなんとか形にしてあげたいという思いがあったのです。この間、大手企業からもいくつかオファーがあり、話も進んでいました。しかし、ネックになったのは役員の処遇です。従業員は守ってもらえますが、大手ほど外部の人材を取締役として迎え入れることには慎重にならざるを得ません。待遇面で折り合いがつかず、話は流れました。

こうした経緯も林さんにはよく相談に乗ってもらっていましたが、あらためて「我々と一緒にやりましょうよ」と声をかけていただきました。INTLOOPは基本的に経営はお任せしますとのことで、私自身も必要としてもらえるならという気持ちになりました。現在はINTLOOPの取締役にも就任し、グループ経営により深く関わっています。

松本様のご経歴とINTLOOPへの入社背景を教えてください。

INTLOOP株式会社 シニアディレクター 松本 卓也 様(以下、敬称略):

投資銀行やコンサルティングファームでM&Aアドバイザーとして働いた後、別のグロース上場企業で取締役CFOとして上場をリードしました。INTLOOPに加わったのは、1年弱ほど前からです。上場後も売上規模を3倍以上に伸ばすという大きな変化を目指していて、その中核として参画するチャンスが得られたため、決断しました。ファイナンスやM&Aのバックグラウンドを持つ人材が不在だったため、私のキャリアを活かせる余地が多いことを魅力に感じました。

INTLOOPはITコンサルティングが祖業です。現在は、戦略コンサルティングからシステム・アプリ開発、PMO、そしてディクスホールディングスが手がけるインフラ開発やファシリティまで、一貫してサービスを提供しています。

さらに本体事業として、フリーランスの方々に案件を紹介し、企業とマッチングさせるプラットフォームを持っています。現在、5万名以上のITコンサルタントやエンジニアに登録いただいていて、毎月数百名の新規登録があるんです。IT人材不足が深刻化する中で、働き方の多様化が進み、両者のマッチングがこれまで以上に重要になってきました。このギャップを埋めるマッチングこそが、INTLOOPの提供価値です。

従業員が安心して働ける環境を整えたい、譲渡オーナーの想い

今回のコムテックのM&Aについては、どのような経緯からスタートしたのでしょうか。

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 栗原 啓太(以下、栗原):
私が株式会社コムテック 代表取締役の直井(照彦)様と初めてお会いしたのは、約1年前の2025年3月頃。この時点では、M&Aを具体的に検討していたわけではありませんでしたが、この数か月後に気持ちが動き出されました。

株式譲渡の検討理由は、より会社の経営基盤を強めていきたいという前向きな理由とともに、経営面で社長への依存度が高まっていたことを挙げておられました。直井様は常々、「従業員が安心して働ける環境を提供し続けたい」という思いを強くお持ちだったことが印象に残っています。

パートナーとなる候補の選定は、どのように進めたのでしょうか。

栗原:

実はそれ以前から、優良な通信工事会社を探しているという要望をINTLOOPからお聞きしていました。直井様は、従業員が安心できる環境とともに、より大きな母体を持ち、共に最大限の事業シナジーを生み出せる企業様との資本提携を望まれておりました。

INTLOOP及びディクスホールディングスは、財務状況も盤石です。また、条件にも合致すると考えてお声がけしました。直井様のご意志で、トップ面談を10社近く行った中からINTLOOPグループであるディクスホールディングスを選んでいただいたというのが経緯です。

 

お会いになる前、そして直接面会した時の印象はいかがでしたか。

戸邊:
正直なところ、社名を存じ上げていたわけではありません。ただ、コムテックさんも20年以上この業界でやってきた会社です。同じ時代を同じ業種で過ごしてきた経営者同士という親近感はありました。実際にトップ面談でお会いしてみると、直井さんはとにかく真面目な方で、意気投合しました。これは良いご縁になるかもしれないと感じたのは、お会いしてからです。

松本:
私も同じく、管理面もきちんとされていて、一緒にやっていく上での安心感がありましたね。直井さんの希望として、経営をきちんと引き継いでくれる体制があること、そして電気工事関連の資格を持っている会社であることがありました。ディクスホールディングスは過去にもM&Aの実績が多く、受け入れ体制がしっかりしていることや、従業員の方々がこれまで培ってきた技術を大切にする姿勢をお伝えしたことで、安心していただけたのも印象に残っています。

デューデリジェンス(企業監査)はスムーズに進みましたか。

戸邊:
特に大きな問題はなく、スムーズに進んだと思います。当社は、付き合いのある公認会計士や弁護士を入れて準備しましたし、松本さんも経験豊富です。

松本:
同じ業種と言っても、両社の運営体制に違いがあることがわかりました。コムテックは現場の施工も従業員が行うため、従業員一人に一台ずつ車を持たせているなど、細かなオペレーションはさまざまに異なっています。それらをどう統合するか、従業員の方々に受け入れられるものになるかを考え、ディクスホールディングスと丁寧なすり合わせを行うことにしました。

戸邊:
結果として、当面はコムテックの現行オペレーションを継続しました。いきなり変えると反発も出るかもしれませんし、まずは理解を深めるプロセスが大事だと考えたためです。私たちのやり方が唯一無二の正解だとは思っていません。直井さんと話せば話すほど、今のやり方にも良さがあると感じるようになりました。生産性が低いままの状態は望ましいことではありません。できれば収益率を上げていきたいですが、まずは得意分野を活かして、慣れてもらうことのほうが重要です。

栗原:
ディクスホールディングスと戸邊様の懐の広さを象徴するようなお話だと思います。実務面でも、戸邊様、松本様をはじめ、両社がM&Aの経験が豊富だったことに助けられました。論点になりそうな箇所を事前に共有いただけたので、直井様も安心して話を進めることができたとお聞きしています。

偏ることのない仲介役に対する信頼性

M&Aキャピタルパートナーズのサポートについて、評価をお聞かせください。

戸邊:
栗原さんは見ての通り好青年で、好印象です。言うべきことはきちんと言いますし、直井さんをしっかり守っている姿勢も感じられました。オーナーの意向を正しく理解されていることは、頼れるアドバイザーの重要なポイントです。


松本:

打ち合わせの過程では、直接オーナーにお聞きすべきか分からない質問というものもあります。そうした内容は栗原さんに相談することで、事前に着地点を想定しながら対話できました。ストレスがなく「ワンチーム」で取り組む感覚になれたのは、私としても心地よかったと思います。

戸邊:
たしかに、不用意な質問によってその場の雰囲気が悪くなることは、私たちとして避けたいのが当然です。だから事前に質問内容をすり合わせるのですが、栗原さんのような方がしっかりしていないと、見込み違いが起こってしまいますし、我々も全幅の信頼を置くことはできません。どんな質問が想定されるか検討し、事前準備をしっかりしてくれていましたね。

松本:
M&A仲介会社が急増するのに伴って、私たち譲受側には情報の真偽を見極める目が求められるようになっています。その点で、M&Aキャピタルパートナーズはきちんとフィルタリングしているので、信頼性の高い内容しか私たちの目には入りません。また、オーナーに対して非現実的な高値の条件を持ちかけて、過度な期待を抱かせるようなことは決してしないでしょう。「M&Aキャピタルパートナーズの紹介だから、真剣に時間を割いて検討しよう」と考えているのは事実です。

栗原:
お褒めの言葉をいただき、ありがたい限りです。よく言われることですが、私たちはどうしても譲渡オーナー様とお付き合いする期間が長くなります。しかし、あくまで仲介という立場ですので、譲受企業様の意向も汲み取って、偏りが出ないよう注意を払っています。

PMI(経営統合)はどのように進めていますか。

戸邊:
今期決算後に、直井さんから新社長へ交代する予定で、次の社長候補は社内から選び、現在もすでに取締役としてコムテックで勤務しています。これまで、元の社長に残っていただくケースが多かったのですが、今回は退任が前提ですので、時間があまりありません。したがって、先に役員や従業員とも関係性を築いておくのが賢明だと判断しました。

先日、新社長候補とともに、私も全社員の皆さんの前で挨拶をしました。夕方からは懇親会も兼ねて、ディクスホールディングスのなりたちや企業概要を説明したのです。直井さんにもフォローしていただきながら、将来の目指す姿や、皆さんの目の前の仕事が何も変わらないことを率直に伝えました。活発に意見交換もできたので、皆さんに安心していただけたのではないかと思います。

現在の現場の様子はいかがですか。

戸邊:
通常の業務報告も随時チャットで受けていますが、安心して働けているようです。工事部門の責任者も兼務で役員に入っていて、現場長も顔を出してコミュニケーションを取っています。複数の人間が多層的に関わることで、スムーズになじむのではないかと期待しています。

栗原:
直井様もご安心されている様子です。もともと会社を大きくしたいという思いをお持ちでしたので、ディクスホールディングスの大型案件を受注する営業力と、コムテックの小回りが利くサポートの体制を組み合わせれば、期待以上のシナジーが生まれるかもしれないと喜んでいらっしゃいました。

補完関係があるから効果的なM&Aを実行できる

今後のM&A戦略についてお聞かせください。

戸邊:
工事やインフラの事業が今後も伸び続けるかという見極めは必要ですが、工事会社とのご縁があれば、積極的に話をお聞きしたいと思っています。技術力を持った人材を自社で採用するのは困難ですから、即戦力が期待できる会社とのM&Aには引き続き注目しています。

松本:
INTLOOPは、中期経営計画で2030年までに売上1,000億円、営業利益150億円を目指しています。すなわち、売上規模を3倍以上にする計画であり、オーガニックな(自社単独での)成長に加えて、前倒しで達成するためにM&Aは必須です。これからもM&A推進には、人的リソースや資金をしっかり振り分けていく方針です。

INTLOOPグループに参画するメリットはどのようにお考えでしょうか。

松本:

まず、顧客基盤です。グループ全体で大手製造業やSIerなど、約1,000社と取引がありますので、そういったお客様のご紹介やクロスセルを期待していただけます。

そして、人材です。フリーランスが5万人以上、さらに社員としてデリバリーできる人材も、グループ全体で約1,000人います。仕事は取れているのに人が足りない会社には人的リソースやノウハウを補強することで、その会社様のポテンシャルを最大限引き出したいです。

さらに、コンサルティングファームとして、経営・事業戦略・マネジメント全般のコンサルティング、業務改善の支援も提供できます。 

戸邊:
当社も今、INTLOOPにお願いしている案件がたくさんあります。グループ内で相互に仕事を融通し合える関係です。

松本:
戸邊さんと同様、従来のオーナーに続けて経営していただくことも可能ですし、勇退を希望される場合には、次の経営者への承継もお手伝いできます。また、従業員の雇用継続、ブランドの維持はもちろん、その会社様のご意向を尊重し、コーポレートカルチャーを含めた経営方針もできるだけ維持したいと考えています。

最後に、M&Aを検討されている経営者の方へメッセージをお願いします。

戸邊:
営業力や提案力はあるけれど顧客が少ない会社、あるいは技術者はいるのに仕事を獲得する力が弱い会社と、強み弱みの良い補完関係が築ける点がM&Aの魅力です。私たちのグループは規模もそれなりにありますし、いろいろな活用方法がありますので、興味があればぜひお声がけいただきたいですね。 

栗原:
今回のコムテックさんの件を通じて、盤石な財務基盤を持つグループと、小規模でも独自の特徴を持つ会社が組み合わさることで、期待以上のシナジーが生まれるのだと実感しました。それに両者が喜んでくださっていることが、何よりの成果です。設備工事業界は、特に平均年齢が上がっていて、業界再編が進んでいます。この領域には今後も力を入れて、より良いマッチングを実現していきたいと思います。

文:蒲原 雄介 写真:平瀬 拓 取材日:2025/12/1

企業情報部 栗原 啓太

新卒で大手M&A仲介会社へ入社。中小企業の事業承継を中心にM&A仲介業務に従事。
オーナー様にとってより質の高いアドバイザリー業務を提供したいという想いからM&Aキャピタルパートナーズに参画。

他の記事も読まれています

正しいM&Aを、
もっと身近に。
M&Aは、企業の想いを未来へつなぐための選択肢です。
私たちは「正しいM&A」を広く伝え、
経営者の皆さまと社会に新しい可能性を届けていきます。