福祉と医療を結んだ、2件目の成約。若手アドバイザーが支えた“想いをつなぐ”M&A
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福祉と医療を結んだ、2件目の成約。 若手アドバイザーが支えた“想いをつなぐ”M&A
福祉と医療を結んだ、2件目の成約。 若手アドバイザーが支えた“想いをつなぐ”M&A
2025/11/05
ハウスメーカーからM&A業界に転身して1年余り。自身が支援した2件目の成約は、強烈な個性を放ち、福祉業界に革命的インパクトをもたらしたリーダーと、急成長を続ける医療法人の出会いだった。小里 光は、経営者の強い思いをどのように受け止め、そして譲受企業との劇的な出会いへと結びつけたのか。経営者に寄り添いながら、重大な決断をサポートしたM&Aアドバイザーの目線で、今回の成果を振り返ってもらった。
入社1年で任された2件目の成約の意味
自身にとって2件目の成約とお聞きしました。率直な気持ちをお聞かせください。
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 主任 小里 光(以下、小里):強い成功体験を積ませていただいたという手応えがあります。最初に担当したのはブライダル関連企業の支援でしたが、今回も含めて譲渡側と譲受側の双方から本当に喜んでいただけたこと、これを何よりも自分の誇りだと感じています。
M&Aの仕事において、このような当事者からの評価は必要不可欠だと思います。私たちM&A仲介会社の成功は、成約ではないからです。成約によってお客様が喜んでくれるのかどうか。その小さな成功体験があると、次なる案件に対するモチベーションもさらに高まるのだと、2件の成約を通じて実感しました。
今回のアイム様 のご支援では、先輩の細目からさまざまな援護やサポートを受けましたが、前回より主体的に動くことができました。1件目の成約直後にこちらの支援が動き出したため、初成約で学んだことを、すぐに実践に移せる機会をいただけたことも幸運だったと感じています。
1件目との違いを感じた部分はありますか。
小里:最も大きいのは、M&A全体の流れが見えるようになったことです。初回は正直に言って、目の前に起きることに対応することで精一杯でした。次にどんな展開が待っているのか、どんな障壁が出てくるのか、予測できない中で走り続けていたように思います。
今回は、デューデリジェンスの際にどのようなポイントが論点として浮上するか、金額に関する交渉がどのタイミングで入るのかなど、ある程度予測しながら動けるようになりました。細目が先回りして準備していた意味が、少しだけ理解できるようになったと思います。
今回最も印象に残った「学び」を教えていただけますか。
当社では、M&Aアドバイザーが備えるべきマインドを凝縮したMACPスピリッツが語り継がれています。その中で「十手先まで読む」という言葉の重みを知りました。これは同行者である細目(企業情報部 課長 細目 正太)をはじめ、先輩アドバイザーが多く口にする言葉です。実際にM&Aの成約に至るまでは予期せぬ事態が次々に起こるもの。しかし、経験を積んだアドバイザーは、起こりうる展開をある程度予測し、事前に手を打っておくことができます。この考え方が「十手先まで読む」という意味だと理解しています。
今回は決算上の利益が少ないことは、1つの論点になりうると予測していました。そこで「過去の数字ではなく、将来の成長性で評価すべき」という論理を事前に組み立てておきました。実際にその論点が出たとき、準備していた説明によって算出した企業価値に対して譲渡側はもちろん、譲受側からも納得していただいたことを実感しています。
仲介手数料に関して、経営者様から注文が入るケースもあります。できる限り要望にはお応えしたいと思うものの、すべてを受け入れられるわけではありません。こうした場面では、対応できる範囲を決めておくことが重要で、やはり細目のような経験豊富な先輩がいることで、動じることなく職務を遂行できたと思っています。
形のないものを正しく評価しその魅力を伝える
小里さんの前職での経験は、現在のM&Aの仕事にどう活きていますか。
小里:前職はハウスメーカーで7年ほど営業を担当していましたが、終盤の2年、地主の相続対策を担当させていただきました。土地という大きな資産の相続が生じる前に、アパートなどを建てて負債を作り、相続税対策をするという内容が主な仕事となります。ここで「資産を持つ方特有の悩み」を知りました。このままでは困ってしまうからこそ、しっかりと課題を客観的に分析し、選択肢を示した上で提案する。そのアプローチは、M&Aでも共通しています。
また住宅や不動産では、サポートの幅が限られていると感じていたのも事実です。風呂、トイレ、キッチンなど、どの住宅でもお客様の基本的なニーズは同じで、8割は同じ話をお聞きし、同じ提案を行うわけです。感謝していただくことは励みになっていましたが、相続対策とは本来、個人ごとに状況や課題は異なり、それに提案する個別性も高いはずです。家の話だけをし続けるだけでは、解決できないさまざまな悩みにも寄り添ってみたいという気持ちが大きくなっていきました。
一方で、M&Aには形のないものを評価し、最適な相手と結びつける仕事で、可能性の広がりを日々感じています。ある企業という組織体や扱う商品、そこで働く人々、培ってきた文化や技術などを見つめ、その魅力を新たな継承者に伝えていくこと。これは自分が求めていた「困っていることに対してコンサルティングを行う」という理想像に極めて近い形だと感じています。
だからこそ1件目のブライダル関連企業のことも大切に話されていました。
小里:株式会社インターメディア様のときには、仲介業の本質を学ばせていただきました。M&Aの仲介は、売り手と買い手のちょうど真ん中に立つバランス感覚が必要だと知りました。どちらかに寄りすぎてはいけません。そう教わり、実際の交渉の場面で上司の調整力を目の当たりにし、住宅の営業にはなかった難しさを感じたのは事実です。
たとえば譲渡金額を例にしても、経済的合理性で言えば少しでも高く売りたい側と、少しでも安く買いたい側の論理があります。両者を結びつけるために、私たちが単なる伝書鳩になってはまとまる話もまとまりません。時に背中をそっと押したり、適切と思われる落としどころにご案内したりする必要もあります。この際に、私たちが公平な立ち位置にいると信頼を勝ち得ていることは絶対条件です。
スピード成約のために心がけたこと
アイム様の案件で特にご自身が心がけたことを振り返ってください。
小里:両者の熱が冷めないように、極力迅速にお話が進むようにサポートしました。
譲渡企業であるアイムの前社長である佐藤様は、経営戦略を明確にお持ちの経営者様です。M&Aのお相手を選ぶうえでも「地方に本拠のある医療法人が理想」と条件を掲げていらっしゃいました。桜十字グループ様は、この条件に合致しており、さらに初回面談から、佐藤様との相性の良さも明らかでした。
佐藤様のように強力なリーダーシップと能力をお持ちの方は、経営者として大変魅力的である一方、譲受企業のカルチャーに合うか合わないかというのは大切な観点です。一般的には保守的で大規模な企業体ほど、強烈な個性を受け入れることをリスクと捉える場合もあります。しかし、桜十字グループ様は、間違いなく佐藤様の性質をプラスに評価されていました。この奇跡的な出会いを成就させるために、スピード感も重要だったと思います。
デューデリジェンス(企業監査)も非常にスムーズだったとお聞きしました。
小里:ここは当社ならではの、きめ細かなサポートができたと自負しているところです。通常なら数ヶ月かかるプロセスが、約1ヶ月で完了しました。もちろん、桜十字グループ様が大局観に立って事業の本質的な理解に注力してくださったこと、それにアイム様の全面的な協力があってこそです。ただ、佐藤様の書類用意などの負担は最小限にできたと思います。
ここは社内に公認会計士をはじめ、有資格者のスタッフが多数在籍する当社の強みだと考えています。
ヘルスケア領域でこれから恩返しをしたい
今後、どのようなアドバイザーを目指していますか。
小里:ヘルスケア領域で「この分野なら小里」と内外から認められる存在になりたいと思っています。現在は介護系の案件をご相談いただくことが多いのですが、薬局や医療なども重要です。ヘルスケア全般を任せていただけるように成長したいと考えています。
長年、私の母は特別養護老人ホームで働いてきました。叔父が医師で、従兄弟にも歯科医がおり、医療・福祉はずっと身近な存在でした。兄弟が数年前に大病を患った時も、医療のおかげで、現在は元気に生活できています。そんな体験があるからこそ、この領域で働く方々に恩返しできるアドバイザーになりたい。そういう思いが強くあります。
今後に向けた決意表明をお願いします。
小里:M&Aの仕事のやりがいをもっと体言していきたいと思います。この仕事は、成果が出るまで1年以上かかることも珍しくありません。その間、自分の仕事が正解なのか自信が持てない瞬間もあります。合意にいたりながら、最後に破談になるケースもお聞きします。年単位で育てた種が、花咲く寸前で枯れてしまうのは、厳しい世界と言わざるを得ません。
しかし、その分成約したときの喜びは格別で、これまで2件の成約を通じて関わった計4社の方々からかけていただいた感謝の言葉は、一生忘れることはありません。
私は、入社後2年で5件の成約を自らのコミットとして設定しています。これは会社から課せられたものではなく、私自身との約束です。先輩からは「意欲的で野心的な目標だ」と言われました。しかし、このコミットから逃げず、自分で決めた数字に対して真摯に向き合い続けるのはM&Aに限らず、どんな営業、どんな仕事でも汎用性のある考え方だと思います。私なりに挑戦と反省、成長を続けていくことを誓います。
株式会社アイム 前代表取締役 / 佐藤 典雅氏(左)
桜十字グループ 歯科支援事業本部 東日本歯科支援事業部長 / 増田 修一(中央)
弊社 企業情報部 主任 / 小里 光(右)
文:蒲原 雄介 写真:平瀬 拓 取材日:2025/9/18