保険業界の変革期に当事者として関わる。本気で学び本気で教われば縁はつながる
STORY
保険業界の変革期に当事者として関わる。 本気で学び本気で教われば縁はつながる
保険業界の変革期に当事者として関わる。 本気で学び本気で教われば縁はつながる
2025/12/10
金融庁による規制の厳格化や販売手法の多様化など、保険業界を取り巻く環境は変革期に直面しています。だからこそ、保険業界に精通したM&Aプロフェッショナルが必要になると山田啓さんは、自らの専門性に磨きをかけてきました。オーナーに寄り添い、向き合ってきた結果、今では別の経営者を紹介されることも絶えなくなりました。保険業界の主要な3分野のM&A成約実績を持つ山田さんに、保険業界に取り組む意義、留意しているポイントなどを聞きました。
保険のプロフェッショナルになり経営者をご支援
山田さんと保険とのかかわりを教えていただけますか。
M&Aキャピタルパートナーズ 企業情報部 課長 山田 啓(以下、山田):
新卒で大手金融機関に入社し、金融商品(保険を含めた)を活用した資産運用、相続対策、リスクマネジメント等のコンサルティング営業に7年ほど従事しました。金融に関わる仕事をしてみたいという希望は漠然としたものでしたが、営業の現場で様々な企業のオーナーや富裕層の方々とお付き合いする機会が多い環境はとても刺激的だったことを覚えています。
保険の提案を続け、少しずつお客様に信頼を寄せていただく中で、事業承継という課題が多くの経営者の方たちを悩ませていることを知りました。後継者不在、または株式承継の最適解や手順が分からない方たち。自身が手塩にかけて育ててきた企業の将来が不安だという状態に対して、保険を提案するだけでは解決できない問題があることを痛感しました。この頃、M&Aという事業承継の選択肢を初めて知ったのだと記憶しています。
M&Aキャピタルパートナーズに入社を決めたのはなぜだったのでしょう。
山田:少しずつ違うことをやりたいという想いが膨らみ、やがて「それはM&Aだ」と思うようになったためです。保険営業では、全国でも上位の成績を残すことができていましたが、このまま続けるべきなのかという迷いも生まれていました。より経営者の想いや人生の決断に関わる仕事をしたいと考えて、転職エージェントにはM&Aに携わりたい旨を明確に伝えていました。当社に入社したのは2018年のことです。最初の成約は先輩方のサポートもあり比較的早期に達成できたのですが、しばらく思うように成果を出せない時期がありました。
幅広い業種、業態に取り組んだ結果、知識が分散し、専門性を深められなかったことが1つの要因だと考えました。そこで、特定の業界におけるM&Aの専門家になろうと決意したのです。前職での経験を活かせる保険業界に特化することで、より価値の高い支援ができるはずだと考えました。この後、状況は変わりました。私の決断は、正しかったと思っています。
業界に押し寄せる激動の波。M&Aも選択肢のひとつになればいい
保険業界に特化した理由を詳しく教えてください。
山田:やはり業界の知識がある程度備わっていたこともあります。ただ保険業界が、大きな変革期に差しかかっていることを肌で感じていたためです。
特に保険代理店は今、大きな変化を迫られています。金融庁から「顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)」という方針が強く打ち出されるようになり、保険代理店の体制強化が求められるようになりました。これまでのような中小規模の保険代理店による群雄割拠の状況から、大手企業による大型化や組織化を進めたいという政策上の思惑があるのではないかと考えています。
その一例が保険代理店ポイント制度の改正です。一定規模以上の売上を持つ保険代理店には高ポイントが付与され、より高い募集手数料が得られる仕組みです。このハードルが年々厳しくなっており、求められる高レベルな業務品質、業務運営についていけなくなる恐れが高まっています。
今後もまた新たな大規模規制が入るとの観測も出ています。近年、急速にM&Aを選択する保険代理店が増えていますが、この1~2年ほどの期間でさらにM&Aの話題が増えるのではないかと予想しています。
これまでの常識が突然覆るかもしれないというのは、大きな留意点ですね。
山田:もちろん経営者の方々は独自に情報を集めて、変化の予測をもとに会社の舵取りをされています。一部には、規制がどれほど厳しくなるかを見極めてからM&Aを検討しようと待っている方もいらっしゃいました。
ただ、私としては早めに選択肢を広げておくことをお勧めしています。いざ規制が厳しくなってから慌てるよりも、今のうちに情報収集をして、自社にとって最適な選択肢を見つけておく方が良いと考えております。
保険3分野のM&Aをすべて経験したからできる提案がある
ご自身は、保険業界の知識をどのように習得、蓄積していますか。
山田:もちろん新聞、業界誌を読んだり、金融庁のホームページをチェックしたりといった基本的な勉強は続けています。ただ、それ以上に大きいのは、経営者の方々との会話から教えていただくことも多い点です。
結局のところ、本や記事を読んで制度の仕組みを理解するだけでは、現場で応用できません。どんな課題や悩みがあるかは、保険代理店のオーナーとお話ししてこそ分かることです。
それに皆様も、かつては営業でトップセールスだった方がほとんどです。個人事業から始めて、組織を大きくしていった方が多いので、同じような経験をしてきた者として、共通の話題で盛り上がりますし、私なりの経験をご理解いただけると「山田さんも同じように苦労してきたんだ」とシンパシーを感じていただいた経験も多くあります。
一口に保険といっても、広範囲な領域をカバーする必要がありますね。
山田:中小企業の保険関連事業には大きく分けて3つのパターンがあります。生命保険の代理店、損害保険の代理店、そして少額短期保険会社。さらに損害保険は、1社の保険商品だけを扱う専属型代理店と、複数の保険会社の商品を扱う乗合型代理店に分かれます。私はこの3分野すべてのM&Aを経験させていただきました。加えて、M&Aのスキームとして株式譲渡と事業譲渡の両方とも経験済みです。3分野すべてをカバーできる経験者は、業界中を見渡してもあまりいないように思います。
細かい話になりますが、事業譲渡の場合、従業員の転籍手続き、保険会社への頭出しや保険契約の移管手続き、その他付随取引等、株式譲渡とは異なる複雑な手続きが必要になります。株式譲渡では、先ほど説明した代理店ポイントは変わりません。しかし事業譲渡によって移管すると、譲受企業のポイントが上がり、より高い手数料を得られる可能性があります。こうしたルールを理解していなければ、最適な提案はできません。
現場に学び、オーナーに教わり、成長を続ける
これだけM&Aが活発になると他社も仲介に参入してきますね。
山田:たしかに競合となる存在はあります。ただ、保険ならではの知識をあまり持たない競合関係者も多いです。制度の仕組みは理解していても、現場の実態や業界特有の商慣習まで踏まえた提案ができるかどうかで、大きな差が生まれると感じています。
保険代理店のM&Aでは、従業員の処遇、お客様である契約者の保護、そして保険会社との関係性など、配慮すべき点が多岐にわたります。こうした細かな調整を丁寧にサポートすることで、信頼と安心を感じていただけるよう努めてきました。
今回の中央保険プラザ様について振り返っていただけますか。
山田:中央保険プラザ様とJALUX様のご縁組みでも、過去に蓄積してきた知識や経験を活かせたと思います。JALグループという大企業の名前をお伝えしたところ、最初はオーナーの中島様(広輝会長)には、会社の規模が違い過ぎると戸惑いと警戒するお気持ちがあったそうです。そこでJALUX側がなぜ真剣に関心を寄せているのか、客観的にご説明することで、真の狙いを理解いただけました。中島様には「正確な知識に基づいた誠実な説明だったから信じてみようと思えた」と仰っていただきました。
私はM&Aを勧めることを目的とせず、企業がより良くなるための手段をオーナー様と同じく真剣に考えています。こうした私の姿勢が中島様の安心感につながったのなら、大変嬉しく思います。
そうしたご縁からお知り合いをご紹介されることも多いそうですね。
山田:ありがたいことに、成約したオーナーから別のオーナーをご紹介いただくケースが増えているのは、素直に最も嬉しいことです。「よいディールは信頼につながり、そして新たなご紹介につながる」これは当社でさかんに言われている教えですが、まさにその通りだと思います。誠実に、お客様のために最善を尽くす姿勢を、今後も常に忘れないようにしなくてはなりません。
今後の目標を教えてください。
山田:引き続き、保険業界に特化して支援を続けていきたいと思います。金融庁の動向を見ても、業界の再編はこれからさらに加速していくでしょう。事業継続の選択肢を広げるための情報収集として、M&Aに関心を持っていただけたらと考えております。従業員やお客様である契約者を守るという視点から、いろいろな角度で検討していただければと存じます。。
保険は契約者の安心にとってなくてはならないものであり、そんな受け皿である保険会社、保険代理店を支える存在として、私たちも微力ながらご支援を続けていきます。研鑽を重ねることによって、一人でも多くのオーナーが行う一生に一度の決断に寄り添い、最適な選択肢を提供できる存在でありたいと考えています。
文:蒲原 雄介 写真:北川 友美 取材日:2025/10/29