急がず、押さず、意思決定に向き合う。経営者と向き合い続けて見つけた、仕事の本質と自分のスタイル
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急がず、押さず、意思決定に向き合う。 経営者と向き合い続けて見つけた、仕事の本質と自分のスタイル
急がず、押さず、意思決定に向き合う。 経営者と向き合い続けて見つけた、仕事の本質と自分のスタイル
2026/02/16
入社以来、成約件数・売上ともにトップクラスの実績を積み重ねてきた安田さん。その仕事ぶりに憧れる若手社員も少なくありません。しかし入社から2年ほどは、まったく思うような成果が出ず、試行錯誤の日々を送っていました。がむしゃらに飛び回る方法を捨てて、自身の得意パターンを確立できたことが今につながったと振り返ります。多くの顧客から信頼を集めるようになった転機と、結果を出し続けるマインドの秘密に迫ります。
成約に結びつかなかった葛藤の日々を過ごした
M&A業界を志した経緯から教えていただけますか。
安田:
新卒で入ったのは信託銀行で、オーナーの資産承継や相続対策を担当していました。資産運用の相談を受ける中で、未上場の株式を保有するオーナー経営者も少なくありませんでした。この未上場株の相続が、トラブルの火種になってしまうことがあります。たとえば、経営に関わっていない親族が株式を相続する場合、残された経営陣との間に軋轢が生じるケースがあるのです。こうした問題に触れるうちに、M&Aという解決策があることを知りました。
前職での営業成績はトップだったこともあり充実していましたが、よりお客さまの本質的な役に立てる仕事がしたいという想いがありました。また、M&Aのニーズが今後さらに増えるという予測もあり、実力主義、成果主義の環境に身を置いて自分を試したいという思いもありM&Aキャピタルパートナーズへの転職を決意しました。
入社後、すぐに現在のように活躍されたのでしょうか。
安田:
入社から2年ほどは結果が出ず、苦労しました。未知の分野とは言え、前職での実績もあったので、本気で努力すれば何とかなるだろうという自信がありました。ところが、オーナー経営者様への訪問を増やしてアドバイザリー契約をお預かりしても、最終的な成約にはなかなかつながらなかったのです。もちろん上司や先輩には相談し、同行いただきながら教育いただいてたくさん助けてもらいました。ただ、今ほど社内のマッチング体制や教育制度、資料、サポート体制などが整っているわけではなかったため、課題に直面した際に独力で進めなければならない部分が多くあったんです。何からどう手を付けて良いのかわからないまま時間だけが過ぎていく、そんな焦りを感じる日々でした。
今振り返ると、どのような点に課題があったのでしょう。
安田:
M&Aへの関心や必要性が低い方に無理にご提案していたことが多かったかもしれません。そういった経営者に何度お会いしても成約につながりにくいのは当然でした。また、当時は活動エリアが地方に集中していて移動時間も長くかかり非効率な活動をしていました。
打席に立ち続ける中で「自分と合う経営者像」が見えてきた
そこからどのように状況を変えていったのでしょうか。
安田:
効率は良くありませんでしたが、多くの経営者とお会いし続けたことで得られたことがあります。それは、私自身と相性の良い経営者像が、うっすらと見えてきたことです。私の場合、これまでのご成約案件のオーナー様のほとんどが、年齢50代後半から60代前半の創業オーナーで、成長中の企業という共通点があります。またロジカルなコミュニケーションを好む方に気に入っていただきやすく、こちらのご提案も喜んでいただけるという傾向に気づいたのです。
M&Aのプロセスでは、経営者の方にご理解いただかなければならない内容や、条件面で歩み寄りが必要な場面が必ずあります。こうしたお伝えしづらい点も、対話を重ねていける信頼関係が築けないと、最後まで伴走することが難しいと感じていました。
20代という若さがハンデになった経験はありましたか。
安田:
私は25歳で入社して当時では最年少くらいの若さでしたが、お会いする方は50~60代の経営者が多く、訪問すると「若い人が来たな、大丈夫かな」という反応をされることは少なくありませんでした。会社の将来を左右する大きな決断を、若く経験も浅そうな人に任せられるか不安に思うのは当然です。そして、経験を積み内面は成長できても、若い見た目を急に変えることはできません。
そこで「見た目」をカバーするために、提案資料を徹底的に作り込むように努めました。業界環境の理解、対象会社の強みの分析、財務データの整理、想定される成長シナリオの提示など、完成度の高い資料を持参すれば、「若くてもしっかりしている担当者」に見えるはずです。実際に資料を見ながら話を進めるうちに、徐々に前のめりになってくださる経営者の方も多数いらっしゃいました。この経験から言えることは、客観的に自分を俯瞰して弱みを把握し、どう補うかを考えることが重要であり、今も大切にしている考え方です。
弱みを知ることはさらに強い自分になる第一歩
弱みを把握することが、どのようにして成果につながるのでしょう。
安田:
たとえば、私は常に4〜5社の企業を並行してサポートするようにしているのですが、もともとは「燃え尽きやすい」という弱点を克服するためでもありました。優秀なアドバイザーは常にどんな状況でも高いモチベーションと熱量を何年もキープし続けられる人だと思いますが、実は私自身はそこまで強い人間ではありません。この仕事は成約を迎えるまでに時間もかかりますし、責任も伴います。そのため、無事に成約まで来るとどうしてもバーンアウトしてしまいやすいのです。しかし、他の仕事が待っていれば、そうも言っていられません。だからこそ常に、複数の企業を担当しておくことが大切なのです。
担当が少ないと、目の前の数少ない企業にしがみついてしまいそうですね。
安田:
まさにそれは、こちらの都合になってしまいます。経営者のメリットを最優先するのではなく、成約を急かしてしまいがちになります。それに本来、私たちM&AアドバイザーがM&Aするかをコントロールするなど、おかしな話です。それを防ぐためにも、心のゆとりをもってフラットに経営者とお話することが大切です。
今回、成約を支援した株式会社キャラットの佐野様も「他の仲介会社と安田さんの違いはM&Aをプッシュされないのが心地よかった」と言ってくださいました。同社はIPO(新規株式公開)の準備を進めており、すでにM&Aの知識も十分にお持ちでした。言うまでもなく、上場かM&Aを選ぶかは、会社の将来を左右する重大な決断です。経営者ご自身のペースを尊重しながら、それぞれのメリット・留意点はもちろん、上場を選んだ会社がその後どうなったかなど、必要な情報を必要なタイミングでお伝えするように心がけました。
M&Aキャピタルパートナーズの総力を結集して
佐野様は「安田さんの作った資料の完成度に驚いた」ともおっしゃっていました。
安田:
これは、社内にいる専門家チームとの連携の賜物です。今回、税務や法務の観点から複雑なスキームの構築が必要となりました。社内には会計士、税理士、司法書士といった士業の専門家が在籍しており、彼らと連携しながら一つひとつ詰めていきました。このような体制は、当社ならではの強みです。
佐野様からお褒めいただいた企業概要書(Information Memorandum=IM)は、譲渡企業を評価する際の根拠となる重要な資料です。この作成についても、専門のチームがデータ分析からデザインまで担当してくれます。また、M&Aのプロセスで発生する論点や最適なスキームの構築においても、社内の専門家はなくてはならない存在です。こうしたサポート体制があるからこそ、アドバイザーは経営者との対話に集中できるのです。
最後に若手アドバイザーに向けて伝えたいことはありますか。
安田:
この仕事は、人によって経営者からの信頼を得るためのスタイルが違いますし、私のやり方を真似すればうまくいく、というわけでもなく、ノウハウの伝承が難しいと日頃から感じています。ただし、打席に立ち続けることでしか、自分に合うスタイルは見えません。多くの経営者とお会いする中で、「自分はこういう方と相性が良い」「この領域は得意」といった感覚が、少しずつつかめるのだと思います。
そして、自分が相手からどう見られているかを客観視することも大切です。若かりし頃に、自分の弱点を認め、それを補うために編み出した提案資料を徹底的に作り込むスタイルは、何年後かにはっきりと強みになりました。強みを最大化する試行錯誤を続ければ、必ず自分だけのやり方が見つかるはずです。
成約事例インタビュー:それぞれの選択
記事監修者
当社入社後は、M&Aを経験された経営者の方々への取材や各種講演会の企画立案など幅広く活動を行う。