業界再編の中で強く生き残る薬局の姿を描く。トラストファーマシーのM&A戦略

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業界再編の中で強く生き残る薬局の姿を描く。 トラストファーマシーのM&A戦略

業界再編の中で強く生き残る薬局の姿を描く。 トラストファーマシーのM&A戦略 業界再編の中で強く生き残る薬局の姿を描く。 トラストファーマシーのM&A戦略

2026/05/29

東京都豊島区を拠点とする株式会社トラストファーマシーは、1都3県で30店舗を超える調剤薬局を展開しています。トラストホールディングス代表の田中一成氏は、創業社長からバトンを引き継ぎ、20年にわたって会社の基盤を築き上げてきました。グループの中核・株式会社トラストファーマシーの代表には、2025年10月より白水崇雄氏が就任。「町の暮らしと医療をつなぐ」をブランドメッセージに掲げ、新たな形の薬局づくりや人材育成に挑んでいます。業界再編が加速するとともに、調剤報酬改定によって難しい舵取りが求められる今、どのような未来を描こうとしているのかをお聞きしました。

「町の暮らしと医療をつなぐ」ために歩み続ける薬局チェーン

まずトラストホールディングスおよびトラストファーマシーの事業概要をお聞かせください。

株式会社トラストホールディングス 代表取締役 田中一成様(以下、敬称略):
私たちトラストホールディングスの中核会社であるトラストファーマシーは、「たから薬局」を中心に1都3県で30店舗以上の調剤薬局を展開しています。創業者である父から経営を引き継ぎ20年で、当時の約10店舗から現在の規模に成長することができました。2025年10月にホールディングス体制へ移行し、2030年までのグループ売上100億円を定量的な目標に掲げています。

株式会社トラストファーマシー 代表取締役CEO 白水崇雄様(以下、敬称略):
ホールディングスの発足に伴い、グループ全体の代表に田中が就任し、私がトラストファーマシーの代表を拝命しました。トラストファーマシーは、新店開発とM&Aを両輪に、店舗網の拡充と質的な進化を同時に進めている段階です。その一環として、2026年4月、東京・八王子に新たな旗艦店をオープンしました。私たちの今後の店舗モデルを占う試金石として位置づけている重要な店舗です。

並行して、M&Aキャピタルパートナーズ(以下、MACP)さんのお力添えもいただきながらM&Aによる店舗承継も進めており、主に首都圏での基盤強化に努めるとともに、地域における薬局の役割を定義し直す取り組みも行っているところです。

ブランドメッセージとして「町の暮らしと医療をつなぐ」を掲げていらっしゃいますが、どういった想いが込められているのでしょうか。

田中:
このメッセージには、「調剤」や「薬局」という言葉を入れていません。薬や健康のお悩みをお聞きするのはもちろんですが、それだけに留まらないという決意があるためです。介護の悩み、通院先など、そもそも相談しづらいさまざまな困りごとがあります。生活の中には、医療領域と隣り合わせの不安も多いものです。私たち薬局はその入り口に立ち、行政やケアマネジャー、医師へとつないでいくハブになりたいと考えてきました。

白水:
処方せんを持って来店する方への対応だけが調剤薬局の役割だとは考えていません。既存の調剤薬局でもドラッグストアでもない、いわば「第三の薬局」を目指す必要があると考えています。
先ほどもお話しした八王子の新店は、その思いを形にした店舗です。カウンターの接客スペースの代わりに個室ブースを3室設け、プライバシーに配慮した服薬指導ができるようにしました。個室自体は、すでに他社でも事例があります。実際に参考にもさせていただきました。特に重要だと感じたのは、患者さんから提供いただける情報量が圧倒的に増える点です。なんでも話せるという心理的安全性を確保しやすい空間では、これまでは気づけなかったサインを見落としにくくなり、服薬指導の質向上も期待されます。

田中:
検体測定室を用意したのも、身近で頼れる存在として地域住民の健康をサポートしたいという思いの表れです。野菜摂取量の測定、血管年齢や認知症のセルフチェックができるという仕掛けで、処方せんがなくても気軽に立ち寄っていただける場を目指しています。

人材育成にも独自の取り組みをされていると伺いました。

田中:
薬局チェーンは、いわば薬剤師の集団です。その職能をどう活かすべきか、会社として問い続けてきたつもりです。たどり着いた答えとして「高い人間性と高い専門性を持つ集団になる」と人材イメージを定めています。服薬フォローや多職種連携、地域医療への積極的な関与などの専門的な業務に対応できるよう、福岡大学薬学部、福岡大学病院薬剤部で活躍された神村英利先生を学術顧問に迎えて、社内資格制度の構築にも着手したところです。

白水:
専門性とともに重要な人間性の育成という点では、田中自らが「リーダーシップ勉強会」を主宰しています。対象は課長職以上、オンライン形式でテーマも田中が用意します。たとえば世界的名著である「7つの習慣」(スティーブン・R・コヴィー著)を題材にして、一つひとつ議論しながら学ぶ、といった内容です。これからさらに参加対象を広げていきたいと考えていますが、役職に応じた給与体系だけでなく、専門知識が豊富で患者さんからの信頼が厚い薬剤師がきちんと評価される仕組みを整えたいと計画しています。

業界の構造変化とM&A戦略に与える影響

調剤報酬の改定なども含めた変動とその対応について考えをお聞かせください。

白水:
調剤報酬改定は2年に一度、薬価改定は毎年行われます。私たちは、かねてから変化を見越して経営の舵取りをしてきましたので、最新の令和8年度改定によって大きく方針が変わるものではありません。潮流としては、特定の医療機関への依存度が高い経営スタイルではなく、複数の医療機関や地域住民とつながる「かかりつけ型・地域密着型」へ、薬局の期待される役割がシフトしてきたのは、はっきりしています。

田中:
国が、処方せんの集中率、つまり薬局が受け付ける処方せんのうち単一の医療機関が占める割合が85%以下であることを実質的な基準として示してきたことも、その方向性の一つの表れだと考えています。
一方、私たちの戦略もより明確になってきました。新店開発でもM&Aでも、集中率が極端に高くならないように、処方元が複数あって地域に開かれた立地を狙うと決めています。今後もただちに人口が減少しない地域、高齢者が多く在宅医療の伸びしろがある地域、クリニックが過密になっていない地域などの条件を満たすエリアにこそ、私たちが届けたい薬局の姿があると考えているためです。

白水:
提携先を探すという観点では、これまで以上に丁寧な確認作業やコミュニケーションが必要になるかと思います。収益率や売上規模、店舗の状態などは当然ですが、特に重視したいと考えているのは処方元である医療機関についてです。地域に必要とされている程度や、患者さんがどれほど頼りにしているのか、正確に把握したいと考えています。

田中:
M&Aの効能として、時間を買うこととともに、人材を譲り受けられる点も重要です。薬局そのもの、そして働く薬剤師やスタッフの方たちも大切な資産として譲り受ける感覚を持っています。MACPさんのIM(企業概要書)や初期のヒアリングの中で、どのような方々が働いているのか、どんな雰囲気の組織なのかも丁寧に確認させていただいています。

MACPのお二人にもお聞きします。業界全体の再編はどのように見えていますか。

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 上席執行役員 土屋 淳(以下、土屋):
M&Aという観点では、投資ファンドが本格的に参入した点が、ここ数年の大きな潮流です。ファンドは投資回収を前提としているモデルのため、エグジットによる再編が連鎖的に起きています。ドラッグストアや商社といった異業種からのプレイヤーも参入してきており、譲受企業の層が確実に厚くなりました。

調剤薬局業界の寡占化はまだ進む余地があります。他業界では大手10社で50%のシェアを占めるところまで再編が進む例もありますが、薬局業界は大手20社でも全体の20%程度にすぎません。つまり、これからが本格的な再編の局面だと言えます。

林さんはオーナー経営者と日々接していらっしゃいますが、変化を感じる場面はありましたか。

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 課長 林 聡一郎(以下、林):
5年ほど前から調剤薬局のM&Aを担当させていただいていますが、最近は特にタイミングの重要性を再認識せざるを得ません。5年前ならよりよい条件で進められただろうというケースも多く見られます。単独の経営努力だけでは対応しきれない構造変化が業界全体に起きている以上、判断の材料を早めに揃えておけたかどうかが、結果に直結する局面が増えてきました。
必ずしもM&Aがすべてのケースで最適なわけではありませんし、譲渡が早ければいいという単純な話ではありません。ただ、情報収集だけでも早めに動き出された経営者は、選択肢を多く持たれているようには感じています。

価値観がフィットすることの大切さ

譲受企業の出身者が、その後どのように活躍されているか教えてください。

田中:
パート勤務だった方が今では薬局長を務め、正社員として会社の方向性を引っ張ってくれているケースがあります。まもなく60代に差しかかる年齢ですが、先日行われた経営計画説明会後のパーティーでは「引退するときには社員のOB会を作ってもいいですか」と申し出てくれたほど、中核の人材になっています。退職後も仲間たちとつながっていたいと言ってくれたのは嬉しい瞬間でした。

白水:
私たちが心から尊敬する薬剤師の一人でして、投薬の内容、仕事ぶり、薬剤師としての使命感、すべてが本当に素晴らしい方です。こういう方々と出会えることが、M&Aの最も価値ある成果だと感じます。

そうした出会いをつくる起点はトップ面談なのではないでしょうか。

田中:
トップ面談では、私たちが素をさらけ出すことを意識しています。格好つけないということですね。事前に2人で打ち合わせをすることもほとんどありません。

白水:
あえて特別な準備をせずに伺うことにしています。その場で感じたことをそのまま話すというのが基本です。田中がどんな話をするかも事前には聞いていません。自分が素を出すことで、相手の人間性も自然と引き出される。「人間を尊重する」という姿勢だけは、ずっと大事にしてきました。私たち2人で臨むからこそ別々の角度で同じ社長を見ることができます。

田中:
面談終了後に感想を交換すると、たいてい同じ印象を持っているのですが、それぞれの視点で見えていたものを突き合わせるのは重要視していますね。

白水:
これまでの経験から、よい経営をしてきたかは、PLにも表れると感じています。その人間性や経営者の個性もPLに表れますから、そういう部分をきちんと整えていらっしゃる方とは、譲り受け後も同じカルチャーになりやすいと感じてきました。

直近の事例として福岡県の調剤薬局を展開する健康一家とのM&Aがありましたがいかがでしたか。

田中:
MACPさんに仲介していただいた、福岡の株式会社健康一家との成約は、一都三県を基盤としてきた当社にとって初めて九州へ進出することとなった事例です。以前より福岡大学薬学部との教育提携を続けてきており、薬剤師が福岡大学病院で研修を受けるなどのご縁がありました。福岡大学を卒業して当社に入社し、いずれ地元に戻りたいと希望する薬剤師の受け皿としても、福岡に拠点を持つことには意味があると考えていたのです。

白水:
成約から間もなく1年になりますが、PMI(M&A後の経営統合)はこれまでの譲受事例の中でも、最もスムーズに進んでいる手ごたえがあります。当社のマネージャーを健康一家に出向させ、業務の標準化、KPIや営業報告書の浸透、グループのコアバリューの共有などを少しずつ進めてもらっています。当初は売上や利益の数字を皆さんがあまり意識されていなかったのですが、営業報告を通じて、現場のスタッフが数字を自分ごととして捉えるようになってきました。

田中:
健康一家の皆さんが、当社の文化を受け入れようとしてくれているのが大きいですね。これまでに当社が経験したさまざまなM&Aを通じても、ここまでスムーズに当社の考え方が浸透した例は記憶にありません。とはいえ、これは一都三県に基盤を置く当グループにとっては「飛び地」です。今回の経験から得た学びを、首都圏での次のM&Aにどう活かすかが、今後重要なテーマだと考えています。

経営の難しさが増す時代にM&Aという選択肢を

スムーズなM&Aおよび、その後のPMIを実現するうえで、MACPのサポートはいかがでしたか。

白水:
仕事の質の高さは、最初から一貫して感じていました。最初に拝見するIMの段階から要点が整理されていて、譲渡企業への理解の深さが伝わってきます。他とはレベルが明らかに違うと率直に思いました。

田中:
仲介会社によっては譲渡企業のことを十分に理解しないまま、情報だけを持ち込むケースは少なくありません。そんなときに企業の内情を質問しても、その場で答えが返ってこないことがほとんどです。その点、MACPさんは譲渡企業の状況を本当によく把握された上で、こちらの質問にも即答してくれます。単に紹介するのではなく、両社のシナジーまでイメージしてつないでくれていることに感謝しています。

林:
ありがたいお言葉です。オーナー様にとっては一生に一度の決断ですし、譲受企業様にとっても大きな投資ですから、双方をしっかり理解した上でご紹介することを常に心がけています。これまで多くのオーナー様をご紹介してきましたが、トラストファーマシー様はご紹介しやすい譲受企業の一つです。オーナー様の希望や要望に対して柔軟に検討してくださいますし、意思決定のスピードも非常に速いのです。
トップ面談後のオーナー様のご感想も、印象が良く「この方々なら会社を、薬局を、従業員を任せてもいいと思った」と直後におっしゃっていただくのを何度も経験しています。

土屋さんは、調剤薬局業界のM&Aを長年ご覧になってこられました。今後、業界はどのように動いていくとお考えでしょうか。

土屋:
業界全体の再編は、これからさらに進んでいくと考えています。薬局の姿はいくつかに色分けされるでしょう。全国展開を進めるナショナルチェーン、エリアごとに強みを発揮する地域トップの薬局、そして個人経営でしっかりと足元を固めるパターンです。それぞれに居場所は見つけられるものと思います。
ただ、一定の規模を持って成長を志向する薬局にとっては、グループに加わるという選択肢は確実に重みを増していくはずです。かつては100対0、つまり譲渡したら経営から完全に手を離れるというイメージで捉える経営者が多くいらっしゃいました。しかし、業界環境が動く中、患者さんや地域の医療機関、社員を守るには、どのような形で次の体制を作るかという視点が大切になってきます。より大きな傘下に入ることで良い形になるケースも多くあるのです。

最後に、これからM&Aを検討される経営者の皆様へメッセージをお願いします。

田中:
M&Aは、経営トップ同士の相性がほぼすべてです。経営者を見れば、会社の文化が分かります。数字や事業内容も重要ですが、最終的には人と人との信頼関係です。トップ面談の場で自分が感じたことは、おそらく一番正しい答えなのではないでしょうか。

白水:
M&Aは成長手段の一つに過ぎません。描いている将来像に向かって最適な道に進むための、選択肢の一つとして検討していただければと思います。重要なのは、会社を次の段階に進めるために何が必要かを見極めることです。私たちは、ともに地域医療を支えていける仲間との出会いを心から楽しみにしています。

林:
将来的にM&Aを検討される可能性が少しでもおありでしたら、まずは情報収集の一環として、お気軽にご相談いただきたいと思います。当社では、具体的な条件提示をご覧いただくところまでは費用をいただかない料金体系をとっておりますので、ご自身の会社の選択肢を広げる材料として、活用していただければ幸いです。

土屋:
事業成長の選択肢の一つにM&Aを加えていただくこと、それだけでも経営判断の幅は確実に広がります。私たちは、将来の経営判断のための材料を可能な限りご提供させていただきます。まずはそこから、ご一緒に考えさせていただけたらと思います。

文:蒲原 雄介 写真:一ノ谷 信之 取材日:2026年4月14日

記事監修者

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広報室
武田 彩佳
新卒で地方放送局に入社し、アナウンサーとして番組・イベントの司会進行等に従事。
当社入社後は、M&Aを経験された経営者の方々への取材や各種講演会の企画立案など幅広く活動を行う。

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