【調査速報】IT業界「賃上げしても価格転嫁できない」が5割超中小SIerを襲うIT人材不足の二重苦

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【調査速報】IT業界「賃上げしても価格転嫁できない」が5割超 中小SIerを襲うIT人材不足の二重苦

【調査速報】IT業界「賃上げしても価格転嫁できない」が5割超 中小SIerを襲うIT人材不足の二重苦 【調査速報】IT業界「賃上げしても価格転嫁できない」が5割超 中小SIerを襲うIT人材不足の二重苦

2025/12/04

当社(M&Aキャピタルパートナーズ)が実施した最新調査(2025年11月実施)によると、中小SIer・システム開発企業の経営者の53.6%が「IT人材不足」を実感していることが明らかになりました。

さらに深刻なのは、人材確保のために賃上げ等の対策を行っているにもかかわらず、そのコスト増を「サービス価格に転嫁できていない」企業が半数以上にのぼるという実態です。本記事では、調査結果から見えたIT業界の構造的な課題と、その打開策について解説します。

中小SIerの5割以上が「IT人材不足」を痛感

中小SIer・システム開発会社の経営者110名を対象に調査を行った結果、30.9%が「非常に感じている」、22.7%が「やや感じている」と回答し、合計で53.6%の経営者がIT人材不足に直面しています。

また、自社のIT人材のスキル満足度については、「非常に満足している」と回答した経営者はわずか16.4%にとどまりました。多くの企業が、人員の「数」だけでなく、求める「質」の水準を満たせていない現状が浮き彫りとなっています。

出典:M&Aキャピタルパートナーズ「IT業界における人材課題と将来の展望に関する実態調査」

採用課題は「量」より「質」。技術スキル不足が深刻

人材確保に苦戦している企業に対し、具体的な課題を尋ねたところ、最も多かった回答は「応募者の技術スキルが不足している」(44.4%)でした。次いで「応募者数が少ない」(37.8%)、「応募者の経験不足」(31.1%)と続きます。

単に応募が来ないだけでなく、即戦力となるエンジニアとのミスマッチが起きていることが、中小SIerの成長を阻害する大きな要因となっています。

出典:M&Aキャピタルパートナーズ「IT業界における人材課題と将来の展望に関する実態調査」

賃上げを実施するも、半数以上が「価格転嫁できていない」

人材獲得競争が激化する中、採用対策として「給与・待遇の向上」に取り組む企業は33.6%でトップとなりました。

しかし、人件費が増加した企業(全体の約3割)のうち、実に53.1%が「人件費の増加分をサービス・製品価格に転嫁できていない」と回答しています。賃上げ原資を確保できないままコストだけが膨らむという、極めて厳しい経営判断を迫られている実態が明らかになりました。

出典:M&Aキャピタルパートナーズ「IT業界における人材課題と将来の展望に関する実態調査」

将来の脅威は「人材確保」と「人件費高騰」

今後3年間で直面する脅威・課題としては、「人材確保の困難さ」(35.5%)と「人件費の高騰」(32.7%)が上位を占めました。

「経済情勢の悪化」や「顧客ニーズの変化」以上に、人的リソースの問題が経営の足かせになると予測されています。

出典:M&Aキャピタルパートナーズ「IT業界における人材課題と将来の展望に関する実態調査」

未だ浸透していない「M&A」という解決策

こうした課題に対する解決策として、「新たなビジネスモデルの開発」や「新技術の導入」を挙げる企業が多い一方、「M&Aによる事業拡大(買い手として)」は4.4%、「事業譲渡(売り手として)」は0%でした。

単独での採用難や価格転嫁の限界を感じている場合、大手グループへの参画やM&Aによる人材獲得は、即効性のある解決策になり得ますが、まだ多くの経営者にとって選択肢に入っていない現状が伺えます。

記事監修者

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企業情報部 部長
山﨑 研
大手証券会社にて上場・未上場企業オーナーの資産運用およびIPO支援・M&A支援に従事。
2011年から当社に参画し、現在は社内トップクラスのM&A成約実績を重ねている。

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