外食業界のM&A・再編動向とうどんチェーンの成長戦略─「つるとんたん」承継に見るブランド獲得とグローバル展開─

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外食業界のM&A・再編動向とうどんチェーンの成長戦略 ─「つるとんたん」承継に見るブランド獲得とグローバル展開─

外食業界のM&A・再編動向とうどんチェーンの成長戦略 ─「つるとんたん」承継に見るブランド獲得とグローバル展開─ 外食業界のM&A・再編動向とうどんチェーンの成長戦略 ─「つるとんたん」承継に見るブランド獲得とグローバル展開─

2026/09/25

コロナ禍以降、外食業界のM&Aは増加を続け、2025年のM&A件数は過去最多を更新するなど高水準で推移しています。一方で、帝国データバンクの調査によると2025年の飲食店倒産件数は900件に達し、「中華・東洋料理店」に分類されるラーメン店などの倒産も179件と、ともに過去最多を記録しました。成長を見据えたM&Aと経営難による倒産という「再編と淘汰」が同時進行する中、外食産業は大きな転換点を迎えています。
本記事では、外食業界で活発化するM&Aの背景にある構造的課題を紐解きながら、話題のM&Aが相次ぐ「うどん業界」に焦点を当て、各社の成長戦略と今後の動向を考察します。

過去最多で推移する外食業界のM&Aと「ブランド獲得」へのシフト

近年、外食業界のM&Aは従来の「事業承継」にとどまらず、業態拡大やブランド獲得、事業ポートフォリオの組み替えを目的としたものが増えています。買い手となる上場大手は、中堅・中小企業の事業承継ニーズを取り込みつつ、多業態化や事業規模の拡大を進める狙いがあります。

外食事業のM&Aでは、単に企業をグループに迎え入れるだけではなく、消費者に支持されているブランド、既存店舗、顧客基盤、商品開発力、従業員、店舗運営のノウハウなどを一体で取得できる点が大きなメリットとして挙げられます。買い手にとっては、ゼロから新ブランドを立ち上げて顧客を獲得するよりも、すでに知名度のあるブランドをM&Aで取得したほうが事業展開を大幅に早めることも可能になります。さらに、「自社にない業態を取り込み、多角化を推進する」という動きも目立っており、外食企業同士のM&Aを通じて、新業態への参入やブランドポートフォリオの強化を目的とするケースが増加しています。

コスト高・人材難を背景に広がる「戦略的パートナーシップ」という選択

M&Aが活発化している背景には、コロナ禍で一時停滞していた再編が再び動き出したことに加え、飲食店の経営を圧迫している構造的な課題があります。深刻な人手不足に加え、食材費、光熱費、人件費などの複合的なコスト上昇が続いており、特に中堅・中小の外食企業にとって、採用、出店、物流、システム投資、マーケティングなどをすべて自社単独で進めながら持続的な成長を描くことが難しくなっています。
こうした環境下において、資本力や経営資源を持つ大手企業とM&Aによるパートナーシップを組むことで、事業基盤を強化し、次の成長につなげるという考え方が広がっています。「事業を残したい・さらに成長させたい」売り手と、「強いブランドや新しい業態を取り込みたい」買い手の双方の成長ニーズが合致していることが、現在の外食M&A市場を牽引していると言えます。

1.3兆円市場を牽引するうどん業界の再編と大手各社の動向

日本フードサービス協会によると、2023年のそば・うどん店の国内市場規模は1兆3774億円に上り、インバウンド需要も追い風となって市場は拡大傾向にあります。うどんチェーンは、注文から商品の受け取りまでを消費者自身で手掛けるセルフ型が主流であり、各社はM&Aを効果的に活用しながら成長を遂げてきました。

うどんチェーン各社の戦略比較

出所:企業HPなどをもとにMACPが作成

「丸亀製麺」を展開するトリドールHDは、2000年に1号店をオープンして以来、国内外での多店舗展開を軸に事業を拡大してきました。直近では海外市場の環境変化に直面しているものの、「丸亀製麺」という単一ブランドだけでなく、現地で成功している外食業態を買収してグループに組み込む「マルチブランド戦略」を推進しています。
吉野家HDは、牛丼事業への依存から脱却する多角化戦略の一環として、第4次讃岐うどんブームの火付け役となった「はなまるうどん」と2004年に資本・業務提携を結び、2012年に子会社化しました。吉野家グループの持つ多店舗展開のインフラとセルフサービスの強みを活かし、牛丼に次ぐ「第2の柱」として成長させています。
また、すかいらーくHDは2024年に九州地盤の「資さんうどん」を買収し、大きな話題になりました。当初は「高値掴み」が懸念されていましたが、2025年12月期にはすかいらーくグループ全体の売上の約5%を占めるまでに拡大し、強力な成長ドライバーへと進化しています。
他にも、サガミHDによる「味の民芸」の承継と黒字化、グルメ杵屋レストランによる周辺麺類や他業種の継続的なM&Aなど、大手チェーン各社は「うどん」を軸に多様な成長戦略を描いています。

サンマルクHDの「つるとんたん」承継 ─ セルフ型と一線を画すブランド戦略

うどん業界のM&Aで直近の大きな話題となったのが、先日発表されたサンマルクHDによる「つるとんたん」の事業承継です。サンマルクHDは、高級旅館やリゾート施設などを運営するカトープレジャーグループから「つるとんたん」事業(国内14店舗、海外2店舗、製麺・ギフト商品販売事業)を128億円で承継することで合意しました。
「つるとんたん」の価格帯は1杯1000〜2000円台が中心で、割安なセルフ型が主流のうどんチェーンの中では中高価格帯に位置付けられるフルサービス型のブランドです。1989年の開業以来、豊富なメニュー展開やボリューム感、高いホスピタリティで若者や訪日客を中心に厚い支持を集めてきました。
サンマルクHDは、中期経営計画においてM&Aを重点施策の一つに掲げています。同社は2024年にも、約220億円を投じて牛カツブランド「京都勝牛」や「牛かつもと村」を買収しており、「牛カツ」に続く和食ブランドを拡充し、セルフ型と明確に差別化できる第3のブランドを確立する狙いがあります。さらに、同社は「買収先の持つ商品開発力を自社グループに生かしていく」という逆のシナジーも見込んでいます。
一方のカトープレジャーグループも、協議を重ねる中で、サンマルクHDが持つ全国規模の出店ノウハウやインフラを活用することで、ブランドの希少性を損なわない範囲でスケールの拡大を図れると確信し、事業承継を決断しました。インバウンド需要の取り込みと和食文化のグローバル展開という双方のビジョンが合致した、戦略的パートナーシップの象徴的な事例と言えます。

アジア市場を照準に加速するうどんチェーンのグローバル展開

サンマルクHDが「つるとんたん」を通じて和食文化のグローバル展開を推進する方針を示したように、日本のうどんブランドを海外へ発信する動きは業界全体のトレンドとなっています。国内市場の成熟化を見据え、各チェーンは成長著しい海外市場、特にアジアへの展開を加速させています。
すかいらーくHD傘下の「資さんうどん」は2026年6月、台湾に海外1号店を開業しました。低価格帯と豊富なメニューは、経済成長に伴い購買力が高まるアジアの中間層の需要を取り込むのに適していると見られています。今後はマレーシアやインドネシアへの展開も検討されており、すかいらーくHDのアジア市場戦略において重要な役割を担っています。

また、ガーデンは「シンハー・コーポレーション」の子会社とタイに合弁会社「シンハー・ガーデン」を設立しました。2026年9月に開業した「山下本気うどん」の海外1号店を皮切りにタイ各地で店舗展開を進め、「プレミアム讃岐うどん」としての地位確立を目指しています。
「つるとんたん」や「山下本気うどん」のように、中高価格帯で独自の付加価値を打ち出すブランドから、「資さんうどん」のように日常食として大衆層を狙うブランドまで、それぞれが強みを活かしながら海外市場の開拓に挑んでいます。

多角化と事業ポートフォリオ拡充に向けたM&Aの展望

外食業界のM&Aは、引き続き高水準で推移すると見られています。2025年の外食業界のM&A件数のうち買収が過半を占めていることから、上場大手による中堅・中小企業のM&Aが増加しており、今後も複数のブランドや業態を組み合わせて事業ポートフォリオを強化する動きが続くと考えられます。
特に、ラーメンやうどんといった麺業態のM&Aは「ブランドを残しながらさらなる成長を目指す譲渡側」と、「強いブランドを取り込んで事業ポートフォリオを広げたい譲受側」という、双方の成長ニーズが一致しやすい領域です。外食業界のM&Aは単に店舗数を増やすだけでなく、ブランド、立地、商品開発力、人材、店舗運営ノウハウなどを最適に組み合わせることがより重要になってきます。
経営環境が激変する中、企業規模にかかわらず、M&Aは企業価値を最大化するための「スタンダードな選択肢」として定着しつつあります。自社の強みと課題を客観的に捉え、戦略的なパートナーシップをいかに構築していくかが、外食産業企業のさらなる成長のファクターの一つとなっているのです。

記事監修者

齊藤 宗徳の画像
広報室 室長
齊藤 宗徳
2007年立教大学経済学部経済学科卒業後、国内大手調査機関へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者を歴任。
2019年大手M&A支援機関へ入社し、広報責任者として広報業務に従事、厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当。
2021年M&Aキャピタルパートナーズ入社、グループ全体の広報責任者として広報業務全体を管掌、2024年より現職。MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者。
レコフ リサーチ部を兼務し、主に「事業承継M&A分野」を担当。
創業110年を超える実家の米穀・酒販会社で、実際に「事業承継M&A」を経験。

一般社団法人金融財政事情研究会認定M&Aシニアエキスパート
一般社団法人M&A支援機関協会広報分科会委員

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