【M&A勉強会 開催レポート】2025年度M&A総括と次なる潮流―地政学リスク、金利上昇、地域金融機関のエコシステムから読み解く―

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【M&A勉強会 開催レポート】2025年度M&A総括と次なる潮流 ―地政学リスク、金利上昇、地域金融機関のエコシステムから読み解く―

【M&A勉強会 開催レポート】2025年度M&A総括と次なる潮流 ―地政学リスク、金利上昇、地域金融機関のエコシステムから読み解く― 【M&A勉強会 開催レポート】2025年度M&A総括と次なる潮流 ―地政学リスク、金利上昇、地域金融機関のエコシステムから読み解く―

2026/06/04

M&Aキャピタルパートナーズグループ(以降、MACPグループ)でM&A仲介業界で唯一のシンクタンク機能を持つレコフのリサーチ部が、直近のM&A動向を振り返りながら今後の市場を多角的に考察する勉強会を開催しました。

今回は「2025年度M&A総括と次なる潮流」と題し、レコフ リサーチ部の岩口とMACP広報室の齊藤が、大型案件の裏側やマクロ経済の影響、法規制の動向までを深く掘り下げた当日の模様をご紹介します。

2025年度は過去最多件数・金額を記録。多様化する大型再編

カレンダーイヤー(2025年)と同様に、2025年度(2025年4月〜2026年3月)のM&A市場も件数・金額ともに過去最高となり、極めて活況な1年となりました。特に金額面では前年度比でほぼ倍増(プラス100%)となっており、日本を代表する大企業によるTOBやMBOなど大型案件がM&A市場を牽引しました。

上場企業の動きを見ると、買い手・売り手(非上場化を含む)となったM&A件数が、いずれも前年同期比で増加傾向にあります。また、事業の選択と集中を目的としたカーブアウト(子会社や事業部門の売却)も活発化しています。

このほか、投資ファンドの関与も高水準を維持しています。PEファンドやアクティビスト(物言う株主)によるM&Aやマイノリティ出資が一般化してきており、依然として勢いを増し、市場を牽引する重要なドライバーとなっています。

ガバナンス改革と市場ルールの徹底 ―豊田自動織機のTOB事例―

2025年度の象徴的なディールとして、豊田自動織機の非上場化(TOB)をピックアップ。この案件は、強固な持ち合いで知られてきたトヨタグループが、現代的なガバナンス体制へ移行するための重要なステップとして進めたTOBでしたが、その過程でエリオットなどのアクティビストが介入し、大きな話題を呼びました。

結果として、アクティビスト側の主張によりTOB価格は跳ね上がり、当初約4兆7,000億円と想定されていた買収資金が、最終的に約5兆9,000億円まで膨らむ異例の展開となりました。

かつてであれば「グループ内再編」としてスムーズに進んでいた案件も、現在では一般株主やアクティビストが参加する厳しい市場環境の中、対応せざるを得なくなっています。また、買収プロセスにおける「価格引き上げの有無」に関する情報開示のあり方など、今後のM&A市場に多くの論点を投げかける歴史的とも言えるディールとなりました。

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個人の売り手を守るフェーズへ。事業承継M&Aの「法制化」

大企業の再編が進む一方で、中小企業を中心とする「事業承継M&A」も件数を伸ばし続けており、年間1,000件を超え、公表されたM&Aの約2割を占めており、引き続き活発に推移しています。しかし、支援機関(仲介業者等)が約3,400機関にまで急増する中で、悪質な買い手によるトラブルなどが顕在化しており、社会問題にもなっているのが現状です。

これを受け、行政側(経済産業省・中小企業庁など)はルールの厳格化に本腰を入れています。大企業間のM&Aが「プロ対プロ」の取引であるのに対し、事業承継M&Aは「個人(オーナー経営者)」が当事者となります。そのため、個人を詐欺的な被害から守るべく、法制化(ハードロー化)への議論が進んでいます。

具体的には、中小企業庁がM&Aに必要な知識や倫理行動規範を問う「中小M&A支援資格制度(仮称)」の新設を急ピッチで進めており、2026年度以降の運用開始に向けて準備が進められています。そうした動きから、2026年度は売り手側を守るためのルール整備が大きく進む1年になると予想されます。

金利上昇とマクロ環境は2026年のM&Aにどう影響するのか?

中東情勢の緊迫化による原油高や、「金利のある世界」への移行など、マクロ環境の変化についても考察しました。

過去のデータを見ると、リーマンショック時にはM&A件数が大きく落ち込み、回復に5〜6年を要しました。これは、金融システムそのものが機能不全に陥ったためです。一方、コロナ禍のような実体経済の一時的な停滞では、約1年半で回復しています。現在のプライベートクレジット市場の状況などを鑑みても、当時のような深刻な金融システム危機に発展する可能性は低く、極端な市場の冷え込みは想定されていません。

また、「金利の上昇」はM&Aにネガティブに働くと思われがちですが、実際は「ニュートラルからポジティブ」に作用すると分析しています。金利ゼロのデフレ時代は「現状維持」でも生き残れましたが、金利のある世界では、企業は借入コストを上回る利益(利回り)を出し続ける必要があります。この「成長へのプレッシャー」こそが、リスクを取ってでもM&Aを通じた事業拡大を進める強力なインセンティブとなるでしょう。

今年度の最大テーマの一つ「地域金融機関(地銀)」主導の地方創生エコシステム

2026年度、最大の注目テーマとして挙げられるのが「地域金融機関(地方銀行)のM&A支援の取り組み強化」です。金融庁の「地域金融強化プラン」の後押しもあり、地方銀行が続々とM&A仲介を専門とする子会社を設立しています。なお、地方銀行による子会社化は、独立した事業として黒字化できる「地力」がついた証拠でもあると見てとれます。

さらに注目すべきは、地銀などが主導する「地域ファンド(地域活性化ファンド/地域創生ファンド)」の急増です。これまで、地方銀行は「融資(デット)」が中心でしたが、おそらくM&Aの目利き力が向上したことで、地域ファンドを通じて企業に「出資(エクイティ)」を行うケースが増加していると思われます。これは、出資を通じて企業ガバナンスの一翼を担い、5年〜10年かけて企業価値を向上させ、最終的に事業承継M&Aでエグジット(売却)するという新たなモデルです。

今年度は、地方銀行を中心とした「地域再生・地方創生のエコシステム」が本格的に稼働し始める、象徴的な年になると予想されます。

【FAQ】2025年度〜2026年のM&A市場動向に関するQ&A

勉強会の質疑応答セッションで寄せられた、参加者からの主な質問と回答をご紹介します。

Q. 企業業績の悪化やマクロ環境(金利上昇・地政学リスク)によるM&Aへの影響は、いつ頃の指標で判断すべきでしょうか?

A. 一つの大きな目安となるのが、11月下旬に発表される各企業の「9月中間決算」および通期予想です。この段階で、企業業績への具体的な影響がある程度明らかになります。また、現在の高い株価水準による「資産効果」が消費の堅調さを支えている側面もあるため、業績だけでなく株価の動向も重要な先行指標となります。

Q. 中東情勢などによる「原油高」は、足元のM&A案件に影響を与えていますか?

A. 現状、直ちに案件がストップするような影響は出ていません。現在発表されている案件は半年以上前から動いているものが大半であり、クロージング間近で取りやめになるケースは稀です。影響が顕在化するとすれば、3ヶ月から半年ほど先の見通しになりますが、現状では計画の微調整にとどまっており、交渉打ち切りに至るような動きは確認されていません。

Q. 中小企業のM&Aにおいて、「事業承継」以外の売却モチベーションとして目立つものは何ですか?

A. 現在特に注目されているのが、税制改正による「ミニマムタックス(最低税率)の引き上げ」です。税率が22.5%から30%へ引き上げられることを背景に、2026年までにM&A(株式譲渡など)を完了させたいと考える中小企業経営者が増えており、市場を活性化させる大きな要因の一つとなっています。

Q. 金利上昇やプライベートクレジット市場の不安により、PEファンドの「買収意欲」は減退していませんか?

A. PEファンドの買収意欲に衰えは全く見られません。日本の市場にはPBR1倍割れの企業やカーブアウト(事業切り出し)のニーズが依然として豊富にあり、グローバルなポートフォリオから見ても、日本の相対的なポジションはむしろ上がっています。また、金利上昇によるLBO(借入を伴う買収)への懸念についても、現状の2〜3%という水準であれば、ファンド側が出資(エクイティ)と借入(ローン)のバランスを工夫することで十分に対応可能です。

Q. IPO(新規株式公開)のハードルが上がる中、ファンドの投資回収(エグジット)戦略に変化はありますか?

A. ファンドのイグジット戦略は、IPOよりも「M&Aでのイグジット(他の事業会社やファンドへの売却)」をメインに想定するケースが標準化しています。中小企業庁が推進する『売上高100億円企業』の創出支援策などを背景に、買い手側の成長意欲が非常に強いため、未上場の中堅企業を対象としたM&Aの受け皿は十二分に機能しています。

勉強会には多くの方々が参加

終わりに:経営の標準選択肢となるM&A

AIのイノベーション、人口動態の変化、企業の競争激化など、M&Aを後押しする構造的な要因は不変です。マクロ環境の不確実性は注視しつつも、深刻な企業業績の大幅悪化が起きない限り、今年度もM&A市場は高水準で推移することが見込まれます。

今回も、会場とオンライン参加を含めて多くの方にご参加いただき、大変盛況となりました。MACPグループでは、今後も定期的にM&A動向に関する勉強会を開催し、時流を踏まえたマクロ・ミクロ双方の視点から、皆様の知見を深めていただく場を提供してまいります。

記事監修者

齊藤 宗徳の画像
広報室 室長
齊藤 宗徳
2007年立教大学経済学部経済学科卒業後、国内大手調査機関へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者を歴任。
2019年大手M&A支援機関へ入社し、広報責任者として広報業務に従事、厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当。
2021年M&Aキャピタルパートナーズ入社し、グループ全体の広報責任者として広報業務全体を管掌、2024年より現職。MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者。
レコフ リサーチ部を兼務し、主に「事業承継M&A分野」を担当。
創業110年を超える実家の米穀・酒販会社で、実際に「事業承継M&A」を経験。

一般社団法人金融財政事情研究会認定M&Aシニアエキスパート
一般社団法人M&A支援機関協会広報分科会委員

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