選択肢のひとつとして、誠実に。経営者に「任せたい」と思われるアドバイザーの流儀
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選択肢のひとつとして、誠実に。 経営者に「任せたい」と思われるアドバイザーの流儀
選択肢のひとつとして、誠実に。 経営者に「任せたい」と思われるアドバイザーの流儀
2026/05/11
「決断を急かすのではなく、選択肢のひとつとして提示する」。その姿勢を貫いた先に、経営者から全幅の信頼を寄せられる瞬間があるのだと、M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 課長の林聡一郎さんは、言います。業界や規模を問わずさまざまな経営者のそばに寄り添い、信頼を得てきた源は、自らの知的好奇心でした。すべての出会いから学びを得続けるアドバイザーの仕事観に迫ります。
「選択肢のひとつとして届ける」という一貫したスタンス
アドバイザーとして大切にしてきた考え方を教えてください。
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 課長 林聡一郎(以下、林):
入社してからずっと変わらないのは、オーナー様に選択肢のひとつとしてM&Aを提案したいという意識です。その会社にとって、M&Aが唯一無二の解決策であるケースというのはほとんどありません。承継の方法や事業成長のプロセスは、その他にもさまざま用意されているためです。
あくまでも目の前にいくつか広がっている選択肢のなかのひとつとして、しっかりお伝えできることが自分の役割だと考えています。だからこそ、私の方からM&Aを強く押すことはありません。「こういう方法もあります。メリットはこうです。一方でこういった懸念点が想定されます」とお伝えした上で、オーナー様ご自身にじっくり考えていただけるようにしています。私の意見を求められれば率直にお伝えしますが、こちらからM&Aに誘導したり、押し付けたりすることはありません。
そのスタンスが評価されるのはどのような時ですか。
林:
2年ほど前に、M&Aをご支援した方からかけていただいた言葉から、このやり方でよかったのだと感じられた経験があります。3代続く製麺会社を営まれていて、ご自身も50代になったばかりで事業承継が目下の課題というわけではありませんでした。
ただ将来を見越して、また事業成長を模索して、私だけでなく複数のM&A仲介会社から話を聞かれていたそうです。ただ私が他と異なっていたのは「選択肢のひとつとして、こういう方法があります」という伝え方をしてくれたのが心地よかったとおっしゃったんですね。私が押し付けない姿勢だったから、話を聞き続けられたという趣旨でした。
押し付ける営業は、あまり良い結果につながらないと感じており、相手が決断するまで待つというスタイルがより一層確立されたように感じます。実はその方ご自身も、そして中華麺の製造会社も「問い合わせてきた人にしっかり向き合うが、プッシュはしない」という営業スタイルを大切にされていて、その考え方にも深く共感しました。3代目社長として老舗企業をV字回復に導いた実績のある経営者様の考えと重なるものがあると知り、自分なりのやり方を大切にしていこうと思うようになりました。
百戦錬磨の経営者の心を読むのではなく誠実に寄り添う
その経営者との出会いは、どのような経緯だったのですか。
林:
当初はオーナー様ご本人ではなく、従業員の方を通じてやり取りをしていました。どのくらいの評価が得られるのか情報を収集されている段階で初めて訪問しましたが「社長がまったく話にならないと言っている」との返答だったことははっきり覚えています。決算書など財務情報をいただき、企業概要のレポートを提出したのですが、希望価格との折り合いがつかなかったのです。それで一度はご縁がなくなった形になりました。
翌年に新たな決算書が出たタイミングで再度お伺いした時も、条件は合いませんでした。ただ業績がとてもよかった上に、中華麺ビジネスの面白さを語る従業員の方々に魅力を感じ、「社長と一度だけでもお会いできませんか」とお願いしてみたんです。
それが実を結んだわけですね。
林:
結果的には、初めてお会いした当日に「林さんに任せます」と言っていただいて、アドバイザリー専任契約にも押印していただき、驚きました。条件が合わないとお聞きしていましたし、成約につながる確率は低いと判断せざるを得ないと思っていました。
さらに後日お聞きしたのは、オーナー様の描いていたライフプランでは、M&Aを行うとしてもあと数年は先だと考えていたそうです。それが、私たちがご紹介したお相手が魅力的で「この方たちと一緒になれるなら早い方がいい」と翻意してくださったそうです。それをお聞きした時は、本当にうれしかったですね。
良縁がスケジュールを変えたわけですね。それはアドバイザーの力だけではコントロールするのが難しいのでは。
林:
自分たちが「コントロールする」なんて、身の程をわきまえなくてはいけないと感じました。数年後を見据えていた経営者様からは「実は最初、冷やかしのつもりだった」とも打ち明けられましたが、そのときは正直、全く見抜けませんでしたね。百戦錬磨の経営者様を相手にする仕事の難しさ、だからこそ駆け引きなく誠実に向き合う大切さを、改めて強く感じました。アドバイザーにできることは、オーナー様の希望をできる限り具現化して、意思決定に必要な情報を丁寧に整理することだと考えています。繰り返しますが、その先の決断は、経営者ご自身のものですから。
成約後も良好な関係が続いているとお聞きしました。
林:
ご満足いただいたおかげで、その後もご縁が続いています。弊社のセミナーでご自身の体験をご講演いただいたこともありますし、経営者のお仲間をご紹介いただき、新たなM&Aご成約にもつながりました。人とのつながりの重要さも噛み締めています。
支援した株式会社瑞穂食品工業 代表取締役 知見 芳典様とM&Aセミナーを実施
熱意をもって教わる姿勢が距離を縮める
林さんはヘルスケアや化粧品の分野に強いですね、これはなぜですか。
林:
これまで医療・介護・調剤薬局といったヘルスケア領域や、化粧品の企業様を多く担当させていただいてきました。社会の変化や制度の動向と密接に結びつく業界なので、経営者の方が抱える課題を理解するには、業界の構造や取引の慣習を頭に入れた上でお話を聞かないと、経営者の方が本当に守りたいものが見えてこないと感じています。
また地域の医療や介護を支えるインフラとしての側面があるため、従業員の方々はもちろん、患者さんや利用者さんの生活にも直結するので、責任の重さは常に感じています。当社はヘルスケア分野に精通した経験豊富な仲間が多く、チームとして知見を持ち寄ることができる環境があります。私単独の知識ではなく、周りの力も借りながら、質の高いご支援を届けられるよう心がけています。
一方であらゆる業界の成約実績をお持ちですね。
林:
知的好奇心というとややカッコよく聞こえるかもしれませんが、単純に私が面白いと感じるからです。地方の病院も、町工場で化粧品を作る会社も、二つとして同じ会社はなく、知らない業界に飛び込むには勉強が必要なので、効率が良いとは言えません。
ただ経営者様には熱心に教えてくださる方が多いです。ご自身が懸命に取り組んできたビジネスのこと、盛り上げてきた業界の歴史、他社との優位性など、自信を持って話してくださいます。こちらから必要な情報を届けるのが大前提ですが、私も常に教えを受ける姿勢で面会させていただきます。ありがたいことに結果的に自然と距離が縮まっていくことが多いんです。新卒では製薬会社のMR(医薬情報担当者)でしたが、医師から治療方針や患者さんのことを教えていただきながら関係を築いていくことがありました。その経験が今も経営者の方と話すときに生きていると感じます。
今後、どのような経営者のお役に立てるアドバイザーを目指していますか。
林:
事業承継にお困りの方のご支援もさせていただいていますが、会社をもっと成長させたいとお考えの経営者様と実現する「成長発展型のM&A」が、私には向いていると感じています。ご自身が先頭に立ってまだまだチャレンジできるけれど、単独での成長を目指すより、よいパートナーと組むことでビジネスチャンスが大きく、速く広がるとお考えの方です。
そういう方には、M&Aが選択肢のひとつとして受け入れられやすい部分もあります。背中を押されたいのではなく、可能性を広げるために話を聞いてくださる経営者の方が、私のスタンスにもマッチしやすいのだと思います。
今後、より規模の大きなご支援をしたいという気持ちもありますが、入社してからずっと変わらない目標は、ご縁をいただいたオーナー様に、きちんと選択肢をお届けすることです。1社ずつ目の前のオーナー様に対して、誠実に向き合い続けた先に、少しずつ自分の目指す姿が見えてくるのだと思っています。
文:蒲原 雄介 写真:蔵屋 憲治 取材日:2026年3月26日
成約事例インタビュー:それぞれの選択
記事監修者
当社入社後は、M&Aを経験された経営者の方々への取材や各種講演会の企画立案など幅広く活動を行う。