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生き残りのために規模を求めて 保険代理店のM&Aは重要な戦略

生き残りのために規模を求めて 保険代理店のM&Aは重要な戦略 生き残りのために規模を求めて 保険代理店のM&Aは重要な戦略

2026/07/22

埼玉県川口市で40年以上にわたり保険代理店を営んできた株式会社リスクマネジメントは、創業当時には珍しい生命保険と損害保険の双方を乗合方式で提供し、発展してきました。代表取締役の小林 元気氏は、攻めの営業で会社を牽引するとともに、業界の構造変化を見据えたM&Aによる規模拡大にも踏み出しています。規制強化や経営陣の高齢化が進む保険代理店業界で、「M&Aは生き残るための戦略」と語る理由、同社が描く未来についてお聞きしました。

生保・損保を一手に担い総合保険代理店として発展した

まず事業概要をお聞かせください。

株式会社リスクマネジメント 代表取締役 小林 元気様(以下、敬称略):
当社は埼玉県川口市を拠点に、40年以上にわたって保険代理店を営んできました。創業当初から、生命保険と損害保険のいずれも手がけ、複数の保険会社の商品を取り扱う乗合代理店であることが特徴です。今でこそ生保・損保の両方を手がける代理店は増えてきましたが、私が入社した20年ほど前を振り返ると、一定水準以上で両方を販売できる代理店は、全国を見てもほとんどありませんでした。
昔の損保業界はいわゆる護送船団方式で、どの会社も横並びに同じ保険料で同じ保険商品を扱っていました。生命保険も、セールスレディと呼ばれていた人たちが販売するのが当たり前という時代です。一方、創業者は保険の自由化を見越して、「日本でもアメリカのように、保険の仕事が社会的に高い地位を得る時代が来る」というビジョンを持っていたようです。こうした先見性のおかげで、私が創業者に誘われて入社した時点では、生保・損保の両方を扱うことが当社にとって当たり前の姿になっていました。

小林さんご自身は、どのような役割を担ってこられたのですか。

小林:
私は主に損害保険のなかでも、新種商品の取り扱い拡大を担ってきました。自動車保険や火災保険ではなく、賠償責任保険や費用保険のように、顧客となる企業活動におけるさまざまなリスクに対応するため、契約内容を個別に設計できる点が特徴です。その分、販売側にも専門知識が問われます。
あわせて、法人向けの生命保険にも力を入れてきました。当時は大東京火災、あいおい損害保険(現・あいおいニッセイ同和損害保険)との取引の割合が高かったのですが、東京海上日動、損保ジャパンなどその他大手保険会社との取引を確立していこうと取り組んできたんです。
そのためには、私たちが商品知識を身につけるのはもちろん、保険会社から頼られる存在でありたいと考え、難しい賠償は税理士の方たちや整備工場などと連携しながら共同で取り組みました。その結果、各保険会社からも頼れる保険代理店として認められるようになっていったと思います。複雑そうで手のかかる内容でも敬遠することなく引き受けることの積み重ねで、良い関係を築いてこられたと自負しています。

個人の営業力もさることながら、組織としての体制づくりも意識してこられたそうですね。

小林:
そこは当社の根幹です。保険代理店は、個別の営業担当者にお客様が紐づき、その人が辞めるとお客様も離れてしまうという属人的な構造になりがちです。私たちは、組織としてお客様を守るための体制を大切にしてきました。
私自身は営業の前線に立っていますが、管理面を固めてくれる存在があってこそ会社が回ります。攻めと守りの両輪があってはじめて、安心して前に進める。のちほどお話しするM&Aも、この体制があるからこそ踏み出せたと思っています。

規制強化と高齢化のなかで選ぶ「生存戦略」としてのM&A

昨今、保険代理店を取り巻く社会環境をどのようにご覧になっていますか。

小林:
段階的に厳しくなっているのは間違いありません。古くは、保険代理店というのは個人事業主の世界でしたが、これが法人化を求められる流れになりました。代理店である個人事業主が死亡すると、従業員がいた場合でも、契約はすべて保険会社に引き取られてしまうことが保険業法で定められているためです。顧客のことを第一に考えれば、不可欠な流れでした。
次にその保険業法の改正によって、コンプライアンスが強く重視されるようになりました。たとえば「同じ会社としての看板を掲げる以上、誰が対応しても同じ品質でなければならない」という考え方です。これにともなって組織化が急務となり、社内にコンプライアンス部門の設置が求められるようになりました。社内で互いのチェックが働く、ガバナンスの効いた組織であることが前提となっています。

保険会社による過度な関与も見直されていますが、どのような影響があったのでしょう。

小林:
以前なら、保険会社の担当者が代理店に出向いて見積書や申込書の作成を手伝ったり、契約の場に同席したりすることは珍しくありませんでしたが、現在はかなり厳しく制限されています。これで影響を受けているのは、主に大きな代理店と言われています。保険会社からの支援に頼り切っていた部分を急に独自で取り組むようになり、困惑しているのです。
兼業型の保険代理店も、私たち専業と同じレベルを求められるようになり、コストパフォーマンスが悪いと判断して撤退するケースが増えました。業界全体として、数が絞られていく局面に入っています。

小規模な代理店ではいかがでしょうか。

小林:
かなり重くのしかかっていると思います。コンプライアンス、採用や教育などにかかるコストやパワーを吸収するのが困難になっています。小さな組織においては、新たに1人採用するだけでも大変な負担です。組織的に人材を育てられる仕組みを整え、これからも一定数以上の顧客を確保して生き残るには、ある程度の規模が必要となるでしょう。
若い働き手が減り、ますます大企業から順に良い人材が決まっていくはずです。その中で来てもらえる、数少ない人材が定着できる環境を整えておかなければなりません。このまま何もせずにいれば、上がり続ける水位に追いつかれ、いつか飲み込まれてしまうと見ています。M&Aを通じて会社規模を大きくしたいと考えていた時期もありますが、現在ははっきりと生き残り戦略として位置づけています。

M&A仲介を担う立場から、業界全体の動きはどうご覧になっていますか。

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社(以下、MACP) 企業情報部 課長 山田 啓(以下、山田):
ここ数年で、M&Aの件数そのものが大きく増えており、2025年度には公表された件数だけで初めて5,000件を超えました。なかでも保険業界の伸びは顕著です。これは金融庁の動きが大きく変わってきたことも要因として挙げられます。
これまでは、後継者の不在をきっかけとする事業承継としてのご相談が中心でした。それらも増加傾向ですが、最近は後継者がいらっしゃる場合でも、業界の環境変化のなかで従業員の雇用や将来をどう守るかを考え、パートナー探しとしてのM&Aに目を向けられるケースが増えてきました。小林様のような若いリーダーが、経営手法の1つとしてM&Aを位置づけられることも珍しくありません。

地域や経営スタイルの違いを越えて共鳴できるパートナーを探す

譲り受けたいパートナーの特徴についてお聞かせいただけますか。

小林:
真っ先に考えるのは、現在の経営陣が、これからも前向きに事業を続けていきたいと思っていらっしゃるかどうかです。仕事が好きで、今後も継続したいと経営者自身が考えている企業とご一緒したいですね。すぐに勇退を考えていらっしゃる方との相性はよくないように思います。
お客様も従業員も、社長を信頼し、尊敬しているケースが大変多いです。そこで突然社長だけ辞めるとなれば、お客様、従業員ともに離れていきかねません。財務状況やマーケットの魅力ももちろん重要な検討事項ですが、「引き続き旗を振っていただけるオーナーか」を重視しています。
商圏についてはあまりこだわりません。むしろ拠点が一か所に集中していると、地震などで一斉に被災した場合、まとめて立ち行かなくなるリスクがあります。関東・関西と離れていれば、そのリスクは軽減できます。もちろん、いざというときはきちんと出向きますが、日常の事故対応も、現在の環境ならリモートで十分に対応可能です。地域に合った商売を継続して採用にも注力してきた会社には、生き残るだけの力も備わっていると思っています。

貴社は乗合保険代理店の強みを活かして成長してこられましたが、MACPの仲介のもとで専属保険代理店とのM&Aを実行された理由は何でしょうか。

小林:
専属と乗合、その強みと弱みは表裏一体だと思います。乗合は各社のルールが厳しく、教育コストもかかります。複数の保険会社を扱う分、システムや手続きなど覚えることも必然的に多くなるためです。専属代理店は1社について深く学べばよいので、同じ人材でも短期間で戦力になりやすいのは間違いないでしょう。
乗合代理店の維持コストが上がって耐えきれなくなる局面が来たときに、グループ内に専属代理店も持っていることが、助けになる日が来るかもしれません。グループなのだから、必要なら統一することも、あえて別々にやっていくことも選択できます。この多様性は、これからの強みになると考えています。

MACPとのご縁はどのように始まったのでしょうか。

山田:
もとはリスクマネジメントの価値算定を依頼していただいたことでした。そこで名刺交換させていただいた経緯から、メールマガジンを見ていただくようになったのです。

小林:
私たちも親族で承継させる計画はなかったので、いつか承継の課題が顕在化するのは避けられません。会社の成長とともに、株式の取得時から大幅に値上がりしているのは間違いありませんでしたので、情報交換させていただいたのがきっかけでした。
そこからはお話のあったように、メルマガに掲載されていた保険代理店の譲受に興味を持ちました。結果的には成約に至りませんでしたが、この経験から仲介会社を通したM&Aの流れを把握できましたし、MACPさんとの関係は深まりました。その後、先述の専属保険代理店である大阪のグローバルサービスとの縁につながったという次第です。

山田:
それまでのM&Aはいずれも相対取引だったので、私どものようにM&A仲介会社が介在したのは初めてだったそうですね。

小林:
仲介会社の存在意義は、今回の経験を通して強く実感しました。まず、普段はまったく知り得ない方々とのご縁をいただけることが、最大の価値だと感じています。
また相対の経験があるとは言っても、同業者に自らM&Aを持ちかけるのは独特の難しさがあります。会社の規模にもそれほどの違いがあるわけではないのに「買わせてください」と伝えるのは失礼にあたる懸念もありました。一方で、第三者である仲介会社の存在があれば、変な気遣いやしがらみもなく、フラットにお話ができます。
さらに手続きに必要なさまざまな段取りも整理していただけるので助かりました。仲介手数料以上の価値があると感じます。

流れを読み準備を重ねる。そして動きを止めない

山田さんから見て、リスクマネジメントはどのような会社でしょうか。

山田:
小林様は、生命保険の営業職を対象とする国際的な指標、MDRTのなかでも最高位とされるTOT(Top of the Table)の基準をクリアしておられる、名実ともにトップクラスの保険セールスパーソンでいらっしゃいます。社長自ら攻めの営業で会社を牽引される一方、副社長が管理面をしっかりと固めているのが、リスクマネジメントの強みだと感じております。
内部体制のレベルに加えて、生保と損保のいずれも高い水準で扱えることも、極めて魅力的な譲受企業といえるでしょう。経営陣がお若く、ここから事業の幅が広がっていくポテンシャルを秘めておられる点でも楽しみです。

小林:
今後も地域に根ざした優れた保険代理店のノウハウを、次世代に引き継いでいきたいと考えています。そのためにM&Aは、やはり有力な選択肢の一つだと捉えています。

今後の舵取りに課題を感じている保険代理店の経営者の方々に、お伝えしたいことはありますか。

小林:
世の中の流れを正確に言い当てることは難しくても、だいたいの方向性は読めます。人口が減り、保険業界のルールが一層厳しくなるのは避けられません。緩和の方向に動くことはまずないでしょう。それなら、いずれ近づいてくる現実に対して、いま準備できることをきちんとやるしかありません。
役員や社員の平均年齢が45歳の会社があったとしましょう。10年後には、単純計算で55歳。全員が定年に近づいています。その時点で20代の若手を採用しても、親世代の人しかいない職場での定着は難しいでしょう。
私たちのような自己資本型の保険代理店が、将来の環境を楽観的に考えることはできません。今動き出すしかないと感じていますし、立ち止まっている猶予もありません。すべての方にM&Aをお勧めするわけではありませんが、今後はやはりある程度の規模が必要になります。そうした同じ課題意識をお持ちの方とは、ご一緒できる余地があると思っています。

山田:
おっしゃる通りで、将来のことは誰にもわかりません。だからこそ、正しい選択をするには、選択肢を多く持っておくことも大切です。情報量が多いほど、判断の精度は上がっていきますし、いざというときに動ける幅も広がります。
急な病気など、オーナーご自身の意思とは別のところで判断を迫られる場面もあるかもしれません。何かが起きてから慌てて動くのではなく、ご自身の会社にどのような選択肢があり得るのかを知っておいていただきたいと思います。M&Aもそうした選択肢の一つです。日頃から情報に触れていただくだけでも経営判断の自由度は変わってきますので、私たちはその判断材料をできる限り丁寧にお届けしたいと考えています。

文:蒲原 雄介 撮影:平瀬 拓 取材日:2026年5月19日

記事監修者

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広報室
武田 彩佳
新卒で地方放送局に入社し、アナウンサーとして番組・イベントの司会進行等に従事。
当社入社後は、M&Aを経験された経営者の方々への取材や各種講演会の企画立案など幅広く活動を行う。

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