【社員インタビュー】300種類の麺を守りながらも、攻める。製麺業の現場が変わったM&A後の2年

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【社員インタビュー】300種類の麺を守りながらも、攻める。 製麺業の現場が変わったM&A後の2年

【社員インタビュー】300種類の麺を守りながらも、攻める。 製麺業の現場が変わったM&A後の2年 【社員インタビュー】300種類の麺を守りながらも、攻める。 製麺業の現場が変わったM&A後の2年

2026/05/11

生中華麺の製造・卸を手がける株式会社瑞穂食品工業(麺屋 棣鄂・ていがく)は、300種類以上のオーダーメイド麺で全国の有名ラーメン店から厚い信頼を獲得しています。2023年、同社の持続的成長を目指して中小革新基盤株式会社へのM&Aを決断。それから2年余りが経過した今、現場はどのように変わったのでしょうか。社長の右腕として営業や製造現場を支える幹部社員の服部翔氏と小田 尚史氏、そして日々の奮闘を見守る中小革新基盤株式会社ディレクターの郡辰樹氏にここまでを振り返っていただきました。

製麺業に対する誇りと将来に対する備えが発端に

お二人がそれぞれどのような経緯で入社したかを教えていただけますか。

株式会社瑞穂食品工業 営業責任者 服部 翔様(以下、敬称略):
もともとラーメンが大好きで、自分でラーメン店を出したいという夢がありました。そのきっかけで知見社長と知り合い、「麺を学ぶならうちに来い」と誘ってもらい、入社したのが2013年です。はじめの2年ほどは麺製造に関わり、出荷作業をひたすらこなしました。その後営業に転じて、さまざまなラーメン店のもとでオリジナルのオーダーメイド麺を提案しています。

株式会社瑞穂食品工業 製造責任者 小田 尚史様 (以下、敬称略):
私は、棣鄂に原料を納入していた業者に勤務していました。退職のタイミングで知見社長に声をかけてもらったのが入社のきっかけです。取引先として「面白い会社だ」という印象を持っていましたし、社長を中心に突出した勢いと情熱があるのを感じていました。入社後は出荷業務を3年ほど、総務・事務を2年、営業を3年と経験を重ねて、2年ほど前から製造の仕事に就いています。

棣鄂の営業および製造、それぞれの特徴を教えてください。

服部:
当社のお客様は、個人のラーメン店が9割ほどを占めます。取り扱う麺は300種類以上あり、それぞれのお店のスープや方向性に合わせてオーダーメイドの麺を選んでいただくのが棣鄂のスタイルです。新しい麺の提案のために、1日6件ものラーメン店を回ることもありますし、サンプルの麺を試食してもらいながら「この麺を使うとこういう味になりますよ」と提案します。

ただし、ご提供するのは麺だけにとどまらず、自分の知識をフル活用するつもりで働いています。麺のコンサルタントのような感覚に近いかもしれません。

 

小田:
多くの種類の麺を扱うということは、切り替えが日常的に発生するため、生産効率は悪くなってしまいます。同じ種類の麺を延々と作り続ける製麺会社に比べれば、かなりの違いがあることでしょう。ただ裏返せば、これこそが棣鄂の強みでもあります。効率性や利益を優先すれば、多品種を作り続けることは合理的ではなく、他社はこの領域に参入しようとしません。ラーメン店のスープにマッチする麺を一から作り上げるような作業は、棣鄂だからこそできたことです。オリジナル麺を使って唯一無二の一杯を生み出すことにこだわる経営者のためにも、製造現場としては新しい種類の麺を生み出し続けることが務めだと考えてきました。

「社長の代わりに話を聞いてみようと思った」

そんなユニークな会社がM&Aを選択したわけですが、当時はご自身の将来をどのように考えていましたか。

服部:
入社して1年ほど経ったころには、もともとラーメン店を開業したかった私が、この仕事こそ自分の天職だと感じられるほどに没頭していました。すでに、この会社に骨を埋めるつもりになっていたんです。社長には後を継ぐ子どもがいなかったので「じゃあいつか自分が継ぐことになるんじゃないか」とまで思っていたほどです。とは言っても、今となっては当時の倍以上の規模にまで会社が成長してしまい、とても私一人で経営できるレベルではなくなってもいました。それでも従業員のためにも、自分のためにも、この会社が長く続いてくれなくては困ると考えていたんです。

小田:
私は社長と年齢が近いので、お世話になった社長がリタイアするころには自分もそれに合わせて辞めるのだろうと、ぼんやり考えていました。服部ほどは、会社の将来について深く考えたことはなく、そうした心配も社長の仕事だろうという気持ちでした。服部さんに「自分が社長、やるんやろ?」と冗談半分、本気半分で話したこともありましたしね。

服部:
そんな経緯もあって、後に知見社長が大変お世話になったM&Aキャピタルパートナーズの林さんとは、私が先に面会しているんです。

オーナーではなく、従業員の方が最初に面談するケースは極めて珍しいですね。

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 課長 林 聡一郎(以下、林):
私の経験上では初めてのケースです。珍しいと思いつつも、服部さんはM&Aについて一生懸命聞いてくださるので、一つひとつ丁寧にお答えしました。

服部:
林さんは、私の初歩的な質問にも嫌な顔ひとつせず答えてくれたのが印象に残っています。なぜ私がお会いしたかというと、M&Aキャピタルパートナーズから届いたお手紙を知見社長から渡されて、「興味があるなら聞いてみたら」と言われたからなんです。もし突然、社長に万一のことが起こったら、この会社はどうなってしまうのかとずっと心配していたので、M&Aが本当に対策として有効なのか知っておきたかったのは事実です。ただ、興味本位な点もあり、「冷やかし」と言われても仕方ありません。

林:
いえ、服部さんが会社の将来について真剣に心配して、リスクヘッジとして「どんな手段があるのかを知っておきたい」という姿勢は、こちらにも伝わっていました。会社への想いが強い方だと感じていました。

服部:
林さんから説明を受けるうちに、M&Aのイメージが変わっていきました。会社は売り飛ばされるのではなく、成長のきっかけをつかむことや、パートナー企業によっては従業員の活躍のチャンスが増すのだと知り、「良い相手がいるなら、可能性としてあるかもしれない」と知見社長にも報告したのを覚えています。

中小革新基盤とのM&Aを決断したのは社長ですが、皆さんの当初の印象はいかがでしたか。

服部:
正直に言うと、最初は投資ファンドのような経営を迫られるのではないかと警戒していました。数字面で徹底的に追及されるとか、命令されるけれども結果に対しては責任を取ってもらえないのではないかと、ネガティブな想像もあったんです。ただ、結果的には不要な心配でした。

小田:
中小革新基盤という耳慣れない会社名を聞いたときは、なんと特徴的な社名だろうと感じました。親会社になることで、社長もしくは重要なポストに外部から人材をヘッドハンティングして送り込んでくるのではないかと想像していたんです。それが、会社を伸ばすためなら仕方ないとも感じていましたが、実際には社内をよく理解している人間が上に立つべきだと体制を維持し、私たち社員を成長させようとしてくれている姿勢を感じ取りました。

会社にとってよいことは現場の判断で実行する

M&Aから2年余り、現場はどのように変わりましたか。

服部:
一番わかりやすいのは、採用面です。以前は、私が営業をしながら採用もやっていたのですが、エージェントの活用など私たちでは実行できない方法を、すべて郡さんたちが引き受けてくれるようになりました。一般的な求人媒体しか知らなかった私たちにとって、採用のやり方自体が大きく変わりました。

小田:
人材確保が難しくなる中ですが、昇給の額が上がったことで、現場のメンバーも喜んでいますし、新しい人も集まりやすくなっています。最低賃金の上昇ペースに給与水準が追いつかなかった時期は、もどかしさがあったのも事実です。それがM&A後は、制度を整えてもらい、頑張った分が報われる仕組みになりました。この結果、製麺という仕事がもっと多くの人に憧れられる職業になってほしいと感じています。当社が率先して、経営状況を高めて、社員のがんばりにも応えていかなくてはなりません。こう考えられるようになったこと自体が変化だと思います。

郡様から見た、棣鄂の変化についてはいかがですか。

中小革新基盤株式会社 ディレクター 郡 辰樹様(以下、敬称略):
棣鄂は、ほかの製麺会社には真似できない手間のかかる仕事をしっかり提供し、付加価値を生み出しています。それに対して、きちんと還元するのは当然のことだと思います。知見社長の経営者という立場からすれば、固定費の増加は経営課題でもありますが、小田さんが言ったように従業員が誇りを感じられ、持続可能な形にアップデートしていくことが大事だと考えました。

業務の進め方に関する変化はいかがですか。

服部:
決裁の部分が大きく変わりました。「棣鄂にとってよいことなら、どんどん判断してよい」というベースとなる共通認識が生まれたことで、以前は社長に確認してからでないと動き出せなかったことが、自分たちで判断してスムーズに進められるようになっています。

小田:
以前は部門長が集まる定例会議の開催を飛ばしてしまうケースが散見されました。ただ「今忙しいから」という理由で、会社の行く先を話し合う場を後回しにしていたわけです。しかし郡さんが毎回来てくれている以上、そんな無責任なことはできないので、毎回決まった時間に開催されるようになりました。進捗を数字で確認したり、期日への意識が強くなったりしたのも変化の一つです。身内だけだとどうしても緩くなってしまうものですが、その緊張感がいい意味で保たれています。

郡:
お二人のお話だけ聞くと、私たちが加わったことで劇的に変わったように聞こえるかもしれませんが、決してそういうわけではありません。もともと、棣鄂のみなさんは堅実で、なおかつお客様のほうを向いて一生懸命誠実に麺づくりをし、成果も出ていました。強いて言えば、皆さんがこれまでよりも主体的に自分事化できるようになったことがポイントかと思います。

現場の想いを後押しする中小革新基盤の伴走

テストキッチンに関するプレスリリースも出されました。これも変革だったのではありませんか。

小田:
テストキッチンとは、麺を試作できる設備のことです。これは、製造現場としてはとても助かる改革でした。従来は、新たな麺の試作を行うには、通常の製造ラインが止まっている夜間や休日に取り組むしかありませんでした。自宅に小さな製麺機を持ち込んで、夜な夜な作業をしていた麺の開発担当者もいたほどです。テストキッチンが稼働後は、基本的に自由な試作ができます。今後、画期的な新商品が生まれるかもしれません。

服部:
新たにお店をオープンするお客様にも使ってもらえるはずだと、構想自体は以前からあったのですが、どのくらい使われるか確信がなかったため、踏み切れずにいました。ところが郡さんに相談したら、「そんな計画があるなら、今すぐやりましょう」と即座に背中を押してくれました。その決断力にも感謝しています。

郡:
これも、あくまで棣鄂社内から自発的に出てきたアイデアです。私たちの役目は、客観的によいこと、よさそうなことを後押しすることです。特にしっかりと取り組んできたベースがあるので、我々が何かをお願いするというよりも、これまで以上に皆さんが動きやすい環境を整え、棣鄂としてお客様に付加価値を生み出せる業務がより推進されるように意識しています。

これから、どのようなことに挑戦していきたいですか。

小田:
個人的には、中小革新基盤グループの拡大とその中の人材交流がさらなる成長のカギを握っているのではないかと考えています。私たちがグループに加わってからも、新しい仲間が次々に加わっていますよね。しかも、業態もさまざまです。それらに出向という形でさまざまな仕事を体験できれば、従業員のリテンションにもなりますし、それぞれのノウハウがグループ内に行き渡ると思います。私自身も製麺は好きですが、他の仕事もやってみたいです。

郡:
昨年、M&Aキャピタルパートナーズに仲介していただいた鳥取県にある青果店・岡田商店の現場に行きました。朝5時から夜まで野菜の加工現場で、ひたすら人参を袋詰めするという貴重な体験をしてきました。ここにもプロの技があるのは、勉強になりましたし、刺激にもなりました。小田さんが行ったら、歓迎されるはずですよ。

服部:
1社単独ではありえなかった経験や出会いが生まれるのが、グループの面白さですね。私は、棣鄂というブランドがもっと世間に響き渡るように広めていきたいと思っています。私たちが努力を続けるのはもちろんのこと、やはり中小革新基盤の支えが不可欠です。月並みですが二人三脚で歩んでいければ、前進できると信じています。

郡:
やや目先の目標になりますが、現在、第二工場の建設を進めています。設備投資に向けた補助金の申請も済ませていますが、製麺機は購入から納品まで1年以上も待たなければならないので、早期に購入の決断もしなくてはなりません。生産ラインが増えれば、人員補強も必要になりますから、採用強化にも引き続き取り組まなければなりません。

小田:
工場が増えれば、今いるメンバーが活躍できるポストも広がります。会社としてより多くの人を育てていけると思うと、楽しみですね。

郡:
東京に営業拠点を作ることも考えていますし、同業の製麺業をM&Aで迎え入れる構想も持っています。ポテンシャルはまだまだ隠されており、これから一緒に成長を実現できることが本当に楽しみです。

林:
服部さんとの最初の面談から、もう3年以上になりますが、棣鄂の進化には感慨深いものがあります。知見社長がM&Aを検討し始めた段階から、棣鄂の人気は高く12社が関心を示しました。そのうち6社とトップ面談をしていただいたのですが、中小革新基盤の橘社長そして郡さんが、棣鄂の麺を食べてから来社されたことを本当に喜んでおられました。
そして今日のお話を聞いても、中小革新基盤とのご縁組みが、まさにベストマッチだったと改めて感じています。特に採用強化や制度設計など着実に形となっている姿を確認できたことは、私にとっても嬉しい事実でした。

郡:
棣鄂のような会社と出会えることは、私たちにとっても決して当たり前ではありません。すでに長年かけて築いたブランドがあり、それを支え、さらに伸ばそうとする皆さんの努力が報われてほしいと思い、私たちはパートナーとして共に歩む決断をしました。それに中小革新基盤は、一般的な投資ファンドと違い、株式売却によるキャピタルゲインを得ようとしていません。あくまで永続的な保有を前提としているので、10年後も20年後も棣鄂と一緒にいるつもりでいます。黒子として、棣鄂の成長や社員の方々の活躍を見届けることが、私たちの仕事だと思っています。

文:蒲原 雄介 写真:蔵屋 憲治 取材日:2026年3月26日

成約事例インタビュー:それぞれの選択

経営者がどのようにM&Aを決断したのかをインタビュー形式でご紹介します。

株式会社瑞穂食品工業
代表取締役 知見 芳典 様

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記事監修者

武田 彩佳の画像
広報室
武田 彩佳
新卒で地方放送局に入社し、アナウンサーとして番組・イベントの司会進行等に従事。
当社入社後は、M&Aを経験された経営者の方々への取材や各種講演会の企画立案など幅広く活動を行う。

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