【社員インタビュー】新商品の開発から現場の意識変革までものづくりの新たな活力を生んだM&A

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【社員インタビュー】新商品の開発から現場の意識変革まで ものづくりの新たな活力を生んだM&A

【社員インタビュー】新商品の開発から現場の意識変革まで ものづくりの新たな活力を生んだM&A 【社員インタビュー】新商品の開発から現場の意識変革まで ものづくりの新たな活力を生んだM&A

2026/10/15

香川県高松市で100年以上にわたって木材に携わってきた株式会社マルトク。2024年、企業の存続と事業のさらなる発展のために決断したのが、福岡県の日創グループ株式会社(当時・日創プロニティ株式会社)とのM&Aでした。以来2年半が過ぎ、新製品の開発など、様々なシナジーが生まれているようです。生産現場を管理する石川 心基氏と、そのサポートに力を発揮する日創グループの福田 宗太郎氏にお話を伺いました。

ものづくりの“現場”こそが最大の強み

石川様がマルトクに入社された動機を教えてください。

株式会社マルトク 生産工場課長 石川 心基氏(以下、敬称略):
地元の工業高校の先輩がマルトクの社員だったことが、入社のきっかけでした。先輩が「木工関係の仕事で、働きやすい職場だし給与や福利厚生もいい」と誘ってくれたんです。私はその先輩をとても信頼していたので、迷わず入社しました。それから9年にもなりますから、会社との相性は非常によかったと思っています。

生産工場課長とのことですが、どういうお仕事を担当されているのでしょう。

石川:
工場で木工作業を担当している現場スタッフに仕事の段取りを指示するほか、書類の作成などのデスクワークも行っています。工場のスタッフは約20名で、平均年齢が20代後半と若いメンバーばかりです。私と同年代ですから、仕事はやりやすいです。

福田様はどういう経緯で日創グループに入社されましたか。

日創グループ株式会社 グループ事業推進部 福田 宗太郎氏(以下、敬称略):
私は関西の出身なのですが、前職でたまたま福岡に赴任して以来、福岡が大好きになり、家庭もここで持つようになりました。元来ものづくりが好きでしたから、ものづくりに思い切り携われる会社を福岡で探していたところ日創グループに出会い、入社することになったのです。

お仕事内容を教えてください。

福田:
投資家様向けの広報や一般的なPR活動などに携わったのち、現在はグループ事業推進部でグループ会社の成長戦略を遂行しています。グループ会社はマルトクも含めて現在約20社あり、それぞれの強みを活かしていかにシナジーを生み出していくかが最大のテーマです。のちほどお話に出ると思いますが、グループ会社のコラボで新製品を開発したことも、そうした取り組みの一例です。

グループ全体の事業をプロデュースされる中で感じられる、日創グループの強みは何でしょうか。

福田:
金属やタイル、化成品、そしてマルトクの木材加工と、幅広く製造業を展開している当社グループにおいて、一番の強みは工場を持っていることではないでしょうか。製造業にとって、ものづくりの場・人・技術を持っていることは重要で、「企画して仕入れて売る」というビジネスモデルとは大きく違うと自負しています。

また、当社ではライフスタイル事業と呼んでいますが、住空間づくりを手がけていることも強みです。最近、マンションデベロッパーもグループ入りし、内外装や家具に加えて、マンションづくりまで行う体制となりました。

現場で一緒に汗を流すことから始まった統合

譲渡企業に所属されていた石川様は、今回のM&Aについて知ったとき、どう感じましたか。

石川:
最初に社長からM&Aのことを知らされたときは、とにかくびっくりしました。どう思ったかと聞かれてもどう答えたらいいかわからないぐらい、頭が真っ白になったというのが正直なところです。その後、次第に湧き上がってきたのが、「会社が売られちゃうんだ。自分たちはどうなるんだろう」という不安でした。

福田:
日創グループはM&Aを経営戦略の柱に掲げ、先ほどもお話ししたようにこれまで20社ほどにグループ入りしていただいてきました。石川さんがおっしゃった不安な気持ちはよくわかり、我々も非常に気を使う点です。「会社はどうなるのか」「どんな人が乗り込んでくるのか」と心配されるのは当然ですので、なるべくご心配を抱かれないよう、気をつけています。

石川:
気持ちが落ち着いたのは、日創グループから製造課長がいらして、工場で一緒に過ごすようになってからでした。

福田:
製造課長はマルトクに来て、自分でフォークリフトに乗り、倉庫の整理などを行いました。上の立場から指示を出すのではなく、現場で一緒に汗を流すことで、抵抗なく受け入れていただけたのでしょう。黙々と働く背中を見せれば、人は自然とついてくるものだと思います。

統合後、具体的にはどのような取り組みを進めましたか。

福田:
まず着手したのが、計数管理の精度向上による経営の見える化です。日創グループは上場会社ですので、当然、決算書類を開示する義務があります。そこでまず棚卸しを徹底することから始めました。もちろんマルトクも以前から在庫管理は行ってきましたが、上場会社の基準に照らすと、より厳格な管理が必要な部分があったのは事実です。我々から「こういうルールがあるから、棚卸しは厳格にやらなくてはなりません。力を貸してください」とお願いしました。

現場の皆さんにとっては、かなり衝撃だったと思います。それまでやっていなかった仕事が増えるわけですから。そこで製造課長がフォークリフトに乗って、自ら率先してお手本を示したわけです。

石川:
最初は確かに抵抗があったものの、「ルールなのだからしっかりやらなければ」と気持ちを切り替えました。そうなると、むしろルールが決まっている分、やりやすいと感じる人も増えてきたようです。

受け継がれてきた風土・文化は大切に残す

規程類の整備やガバナンス体制構築といった統合後の取り組みについて教えてください。

福田:
マルトクはオーナー系の企業でしたから、規程や運用について整備の余地がある部分もありました。最初に始めたのは、月次で予実管理や原価管理等をしっかりやるといった基本的なところです。そこから徐々に整備して、日創グループの規程に沿ったルールを導入していきました。例えば、上場会社ですからインサイダー取引規制など周知・徹底すべきルールもあります。
そうした当然守るべきルールについての意識啓発を進めました。

また、稟議書を書いたことがないという社員がほとんどでしたので、なぜ稟議書が必要なのかといったこともお伝えしました。これまでは何かを購入する際も、社長に直接聞いて「いいよ」と許可をもらえば済んでいましたが、上場会社ではそうしたやり方は通用しません。ちゃんと書面にしなくてはならないわけです。手間ではあるけれど、ルール上必要なことだからとお願いしました。

現場の皆さんからの反発はありましたか。

福田:
「面倒だ」という気持ちは当然あったと思います。しかし、一方的に命令するのではなく、「どういうルールがあって、なぜそれを守らなくてはならないのか」をできるだけ丁寧に伝えていったことで、比較的早い段階でスムーズに受け入れていただいたと感じています。そのほうがお互いに気持ちいいですから。

マルトクは創業100年を超える会社ですから、代々受け継がれてきた歴史や文化への配慮も重要だったのではないでしょうか。

福田:
その通りです。100年の重みには私たちも敬意を抱いていますし、受け継がれてきた風土は今後も大切にしていきたいと考えています。そのうえで、上場会社として守るべきルールは確実に守る。そうした濃淡は意識して取り組みました。

もしかしたらマルトクの社員の皆さんは「すべてをガラッと変えられてしまうのでは」と危惧していたかもしれません。しかし我々にはそんな考えはまったくなくて、残すべきところは残し、変えるべきところは変えるというのが基本的なスタンスでした。

新商品開発にグループシナジーを発揮

M&Aの効果は、具体的にどのようなところに表れてきていますか。

福田:
一番は社員の皆さんの意識の変化ですね。会社の業績に対して関心が高まったことは確かですし、製造の現場では納期や品質への意識が高くなりました。営業についても同様です。これまでは何となく取引先を訪問していたと思うのですが、月次のモニタリングや会議を重ねたことで、少しずつではありますが計画的に訪問するようになったと感じています。

もちろんいきなり業績に跳ね返ることは難しいので、統合から2年半かけて徐々に意識が変わってきたというところです。

新製品「Crafree(クラフリー)」の開発は、グループのシナジーという点で、M&Aの象徴的な成果ですね。

福田:
ええ。マルトクがグループ入りしたことで、もともと日創グループが得意にしていた金属加工、グループ会社が手がけていたタイルに加え、木材という身近な素材を組み合わせることができるようになりました。これらの素材を活かした新製品が、デザイン洗面化粧台などの住宅設備を展開する「Crafree」です。

アイデア自体はもともと日創グループの中にあったので、マルトクがグループ入りしたことで、一気に開発が進みました。マルトクがグループ入りしたのが2024年1月で、展示会への出展が同年の5月でしたから、非常に速いスピード感だったと言えます。

生産サイドは大変だったのでは。

石川:
いえ、マルトクは以前から短納期の仕事が多かったので、生産現場としては特にスピードに戸惑うことはありませんでした。それよりも他社と連携しながらものづくりに取り組むことが、非常に新鮮で刺激的でしたね。生産の途中では、先ほどもお話に出た日創グループの製造課長が積極的に間を取り持ち、潤滑油のように動いてくれたので、ストレスはまったく感じなかったです。

展示会の反応はいかがでしたか。

福田:
デザイン設計事務所や注文住宅工務店など、プロの方が足を止めて、「おしゃれな洗面台ですね」といった反応をいただきました。手応えはよかったです。グループ内に「Crafree」というブランドが立ち上がったことで、今後の商品展開の道が開けました。また、「Crafree」のブランド展開はグループ内の他社が進めており、そちらからマルトクへの材料の発注が増えることも期待しています。

さらにこういう形でのコラボができたことで、グループ各社のマルトクに対する認知度が上がったことも見逃せません。木材という身近な製品を扱っていることから、「我々も一緒に何かできないか」と考えたり、営業面でのシナジーを期待したりといった状態です。

例えば、グループ会社の顧客であるインテリア関連の設計事務所へ、マルトクが一緒に営業に出向くこともあれば、逆にマルトクの顧客である工務店やリノベーション業者に、タイルや家具を手がけるグループ会社が提案を行うケースもあります。少しずつですが、そうした成果が実り始めました。新たな顧客先の開拓にもつながっているようです。

マルトクの丁寧なものづくりに対する評価について手ごたえを感じている

ネット上で楽しめる「樹木キャラ占い」という試みもユニークですね。

福田:
質問に答えていくと、自分にぴったりの樹木のタイプが見つかるという占いです。材木は水や空気のようにありふれた存在なので普段はあまり意識されないですが、実は種類によって木目や色、硬さが大きく違うなど、けっこう個性豊かなんです。「そんな樹木の面白さをもっと知ってほしいね」という雑談がきっかけで誕生したのが、この「樹木キャラ占い」でした。幸いにもなかなか好評なようで、SNSで「私のタイプは××でした」という発信も見られます。

樹木キャラ占い

今までになかった試みですね。

福田:
休憩時間の雑談がきっかけで始まった、要するにお遊びではあるんです。しかし、グループのタイル会社が「面白いのでウチもタイル占いを考えたい」と言ってくれるなど、いい刺激になっているようでした。何よりも社員同士のコミュニケーションから生まれたということで、M&Aをきっかけに新しい風が吹き始めたことを示す事例ではないかと考えています。

石川:
私も「樹木キャラ占い」をやりましたが、ちょっとした思いつきをすぐにサイトでリリースしてしまう、そのスピード感が衝撃的でした。今までのマルトクになかった感覚です。

福田:
マルトクは2007年に「マルトクショップ」というECサイトを立ち上げました。EC業界は変化が速い業界ですので、ちょっと油断するとすぐに置いていかれてしまいます。実際、消費者からは「使い勝手が今ひとつ」「買い回りがしにくい」といった声が寄せられており、スピード感をもって改善しなくてはならないと考えています。そうした意識も、「樹木キャラ占い」立ち上げの背景にはありました。

互いにリスペクトして向き合うことがM&Aの本質

改めて、日創グループのM&Aに対する考えをお聞かせください。

福田:
我々は親会社の立場ですが、グループ入りした会社に社員を送り込んで経営をコントロールしたいとは考えていません。もちろん最初は統合のためにこうして腰を落ち着けて取り組みますが、一定期間が過ぎれば去っていきます。石川さんのような、現場をよく知っている人間こそがリーダーシップを発揮しないと、ものづくり企業はよくならないと思っていますから。“自走”こそがグループ入りいただいた企業様に求めることです。

後継者についても、状況によってはリリーフとして社外の人間が担うことがあるにせよ、基本的には社内の人材が担うべきだと考えています。それでこそ、ものづくりを担う現場の社員のモチベーションも高まるでしょう。

石川:
新しい取り組みを進めるにしても、親会社である日創グループに言われたから進めるのではなく、なるべく社内の人間が主体的に取り組むようにしなくてはと思います。そんな気運が高まることで、会社もさらに成長できるのではないでしょうか。

 

読者の皆さんにメッセージをお願いします。

福田:
M&Aというと会社を“売った・買った”と思われがちですが、その本質は人対人だと思います。譲渡側・譲受側、あるいは親会社・子会社という言い方はされるものの、それはポジションの違いでしかなくて、大切なのは人として向き合うことです。もちろん立場が違えば衝突することもあるでしょう。しかし、相手へのリスペクトがあれば必ず上手くいきます。その意味でM&Aが成功するかどうかは、いい出会いができるかどうかに尽きると思います。

石川:
私のような若い世代は転職に抵抗がなく、私の周囲でも会社を辞めたという話はよく聞きます。しかし、今回強く感じたのは、新しい道を外に求めなくても、M&Aによって成長できる場が得られるということでした。それが若い人材にとってのM&Aの価値だと思います。

 

文:丹後 雅彦 写真:多川 浩平 取材日:2026年9月10日

記事監修者

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広報室
武田 彩佳
新卒で地方放送局に入社し、アナウンサーとして番組・イベントの司会進行等に従事。
当社入社後は、M&Aを経験された経営者の方々への取材や各種講演会の企画立案など幅広く活動を行う。

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