【社員座談会】「指示を待つ」から「自ら動く」組織への進化M&A後に生まれた変化を社員が語る
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【社員座談会】「指示を待つ」から「自ら動く」組織への進化 M&A後に生まれた変化を社員が語る
【社員座談会】「指示を待つ」から「自ら動く」組織への進化 M&A後に生まれた変化を社員が語る
2026/04/02
M&Aが成立してから約2年。譲渡企業である民俗工芸の現場を支える社員にはどのような影響があったのでしょうか。日常の業務や社内の雰囲気の変化、経営陣の奮闘などをどう受け止めてきたのか。今回は、総務・経理、営業、商品発送、企画など各部署から8名が参加した座談会の様子をお届けします。成約を知らされた日の率直な思いから、これから目指す自身の姿まで、等身大の言葉で語ってもらいました。
座談会参加者(順不同・敬称略)
- 高橋 亮至 【営業部 営業課|主任】
- 木村 尚登 【営業部 営業課|主任】
- 山本 亮 【管理部 梱包発送課|主任】
- 松井 美月 【管理部 商品管理課|課長】
- 林 愛子 【 管理部 経理総務課|主任】
- 川島 光輝 【管理部 経理総務課|主任】
- 副島 麻衣子 【営業部 企画課|課長】
- 福田 由美 【管理部 縫製課| 課長】
風通しが変わって意見しやすい環境になった
率直にお聞きします。体制が変わる前と比べて、良くなったと感じる方はいらっしゃいますか。
高橋(営業):
当社は長崎県佐世保市に本社がありますが、以前は地元の神社さんに積極的に営業をかける取り組みをしておらず、地域への営業には慎重な姿勢がありました。体制が変わってから、ある意味で遠慮がなくなり、営業としては動きやすくなったと感じています。
木村(営業):
仕事の内容自体は変わっていないのですが、周囲からの協力体制は、より強固となりました。以前はカタログを送って注文を待つのが基本で、外回りに出ることはあまり多くありませんでしたが、今は周りの協力を得ながら、気持ちよく営業に出ることができていると思います。
山本(梱包):
雰囲気は確実に明るくなりました。以前は、方針が示されると、方針に沿って動く体制でしたが、今は自分たちの意見をしっかりと持つように意識改革ができていると思います。部署内、他部署ともコミュニケーションが増えましたし、風通しはよくなったと感じます。
福田(縫製):
以前は緊張感のある組織運営だった時期もありましたが、今はそういうことがなくなりました。自分の意見を出しやすい雰囲気になってきたと感じています。
M&Aを知った日の驚き、不安、そして安堵
M&Aの件を最初に聞いた際は、どのように思いましたか。
山本:
M&Aという言葉は、テレビや新聞でなんとなく聞いたことがありました。でもこんな地方で、しかも自分の勤め先でそんなことが起こるなどと思いもしませんでした。「まさか」という感覚です。
川島(経理):
私が入社したのがM&Aと同じタイミングで、入社後1週間も経たないうちにこの話を聞いたため、正直驚きました。業界のこと、会社のこともまだよく分からない状態でしたので、このままで大丈夫かと頭に浮かびました。松井にも「こういうことってよくある話なのですか」と思わず聞いてしまいましたね。ただ結果的には、仕事内容や勤務条件が変わるなど、何もありませんでしたので杞憂に終わりました。
松井(商品管理):
はじめは私もただ驚いていたので、「いいえ、こんなことは初めてです」と答えるのがやっとでした。偶然とはいえ、川島の入社時期があまりにも特殊でしたね。私たちもどのような変化が起こるか分からなかったため、この先どうなるのかとは思いました。ただ、それも方向性が見えてくれば解消されたと記憶しています。
福田:
ベテラン社員ほど、慣れ親しんだ仕事の進め方が変わることへの潜在的な不安はあったかもしれません。「このやり方に変えなさい」などと一方的に指定されるかもしれない。そうなったら対応できるだろうか、という変化に対する不安と覚悟でしょうか。ただ割と早くに、大切な部分は変わらず、進め方がより前向きになったと感じました。
林(総務):
私は、みなさんと少し違う受け止め方でした。この会社は創業家を中心に長く経営されてきた会社です。後継者問題のため、事業を継続できない会社も多くあると聞いていたので、内心では、自分の働く会社の事業承継がどうなるのかということは気にはなっていました。私は定年まで働きたいと思っていましたが、将来に対する漠然とした不安を感じていたのは事実です。だから、オーナーが変わると聞いた時は、永続的な事業継続の面では非常に安心できるのではないかと直感的に思いました。私のことだけでなく、若い社員たちが長く働き続けられる場所が確保される見通しが立ったことが、何より嬉しかったですね。
高橋:
私は不安はありませんでした。これまで通り湯川社長などの運営メンバーがいる限りは大丈夫だと確信していました。
木村:
営業職として湯川社長と日常的に会話することも多いため、はっきりとM&Aのことは聞かなくても薄々感じ取れるところがあったのを覚えています。常に前向きな話を聞いていたので、他の社員に比べると心構えはできていたほうだと思います。
オーナーが変わる前の段階で、すでに前オーナーから湯川さんへの社長が交代されていました。現場としては社長が変わったときの方がインパクトは大きかったのではありませんか。
高橋:
私個人としては、どちらも同じぐらい大きな変化だったと思います。仕事をやりやすい環境を作ってくれていると思うので、良い方向へ改革がさらに進むことをただ期待していました。
林:
先ほどの不安が解消された話とも共通しますが、私はオーナーが変わるインパクトの方が大きかったです。湯川社長をはじめ経営陣がいくら頑張っても、もし株主が事業を辞めると判断したら会社はそこで終わってしまいます。もし、前オーナーが譲渡ではなく廃業を選んでいたら、今のようにはなっていません。会社の存続と発展を願う湯川社長自身も、M&Aの直前は祈って見守るしかなかったそうです。社員に相談するわけにもいかず、今思えばつらかっただろうなと思うこともあります。
松井:
今は役員がいるとはいえ、同じ目線で話せる人が社内にいなかったのは確かだと思います。そこが変わったのは大きいですよね。自信をもって改革すべきことを推し進めているように見えます。
部署の壁を乗り越えて。動き出した改善の連鎖
具体的に、業務のやり方が変わったことはありますか。
松井(商品管理):
上司、部下ともに相談しやすくなりました。パートさんからの意見も拾い上げて、他部署に提案できるようになったのは大きな変化です。
長年勤めていると、多少非効率なことがあっても、慣習が定着してしまいます。当然のように受け継がれてきた商品の管理方法を、「変えた方が効率的ですよ」と提案してくれたことがありました。新しく加わった人ならではの視点があったからこそだと思います。部署間の調整を行って、新方式に変わりました。以前だったら「おかしいかも」と気づかないか、気づいたとしても黙っている人が多かったように思います。
副島:
カタログの制作方法も今年から見直されました。以前は、企画課と印刷課のメンバーだけで作っていたのですが、一部の商品の偏った知識しかありませんでした。その結果、情報を誤って掲載してしまうケースも少なくなかったのですが、梱包発送の山本さんたちにも校正作業をサポートしてもらうようになったんです。よくよく考えると、何千というアイテムに日常から幅広く触れているのは、梱包のグループだったんですよね。
山本:
梱包の仕事をしていると、日々商品に触れるので自然と商品知識がつきます。それをカタログに活かせるようになったことで、私たちもやりがいがアップしました。自分たちのスキルがさまざまな面に活かせること自体、とても嬉しいことですから。
林:
部署間の協力という点では、印刷コストの削減もそうです。当社はまだまだ社内でのコピーを使うことが多いのですが、社内印刷よりインターネットで印刷会社に注文したほうが安くて品質も優れるケースがあると分かりました。企画課に相談したらすぐに利用に賛成してくれて、社内での利用ルールをまとめてもらえました。部署をまたいだ協力が自然にできるようになり、小さな節約とはいえ、結果が出始めています。
松井:
棚卸の業務も変わりつつあります。月次決算が導入されたのに伴い、年1回だった棚卸処理が毎月必要になりましたが、これは大きな変化です。なんとかついていっているのが現状です。
川島:
システムの整備が追いついていない中でスタートしましたが、月初の締めまでだいぶ短縮できました。会計ソフトの移行も進行中でまだまだ効率化の余地はあります。
売上などが積極的に社員へ開示されるようになり、皆さんの意識は変わりましたか。
福田:
最近は朝礼でさかんにさまざまな数字の話題が飛び交いますし、目標額が書かれた手のひらサイズの紙も配られますので、自然と意識するようになりました。入社した頃はまったく気にしていなかったのが正直なところです。
副島:
カタログ印刷や製造など直接的には営業に関わらない部署でも、月の売上を聞いて、前年比を意識するようになりました。前年を下回っていたら、「業務スピードを上げよう」と部署内で声をかけ合います。湯川が社長になってから意識するようになりました。
M&A後、さまざまな改善が進む現場
立ちはだかる共通の課題とそれぞれの決意
最後に、今後の展望をお一人ずつお聞かせください。
高橋:
地元の皆さんに愛される民俗工芸でありたいと思っています。せっかく地元のお客様にアプローチできる環境が整ったので、何かあったら頼ってもらえる存在を目指していけば、自然に営業にも身が入るのではないかと思います。
木村:
個人でできることには限界があります。これからはチームで出せる最大値を追求したいと思います。そのためには教育体制をしっかり整えたり、仕入れ先との関係を強化したり、取り組むべきことはさまざまです。カタログ価格と実際の販売額に差が出ると、お客様に負担をかけてしまうので、仕入れ元との健全な価格交渉も課題の一つだと思っています。
山本:
梱包発送に関わるのはパートさんを含めて13名で、どの部署よりも人数が多いので、皆の意見を集約しながら、働きやすい環境を追求したいと思います。新しい人を迎え入れやすい職場を作っていきたいです。
松井:
月次棚卸をもっと効率よく回せるようにしたいです。今はまだまだかなりのパワーを棚卸の対応に取られているので、これについてもチーム内で出されるアイデアを大切にしながら、難しい問題は他部署の協力も得ながら改善していくつもりです。
林:
総務で取り組むのは属人化の解消です。3人の小さな部署のため、その人しか知らない属人化してしまっている業務がまだたくさんあります。そのため業務マニュアルの作成を率先して取り組んでいますが、細かな仕事まで想定してマニュアルを用意しておかなくてはなりません。そうでないと病欠などによっても、組織が回らなくなってしまうからです。
川島:
連結決算への対応が経理としての優先事項ですが、この他にもやりたいことがあります。お客様の注文が電話やFAX、ハガキ中心で、ネット経由の売上はずっと横ばいなので、そこをテコ入れしたいのです。販売チャネルは多角化した方が売上も伸びやすいですし、前職でECに関わった経験も活かして、そんな貢献ができたらいいなと思っています。
副島:
私がいなくなったら印刷が1週間止まるという状況を、まず変えなくてはなりません。
松井:
うちの部署も同じです。
副島:
そうですよね。脱却するためには、しっかり人材を育成し、品質を維持できる体制を作りたいです。企画という点では、売れ行きがよくない商品の扱いも営業や商品管理と一緒に考えて、商品を必要とするお客様のもとへ届けられるようにしたいです。
福田:
縫製課もマニュアルを今作っている最中です。完成させることがまず目標ですが、営業さんが頑張ると、お客様から特注品の注文を取ってきてくれます。こうした例外事項にもしっかり対応できるように、社内体制を充実させたいと思っています。
林:
どうやらマニュアルと属人化解消は、全社共通の課題ですね。
山本:
本当にそうですね。各部署で共通の壁にぶつかっているのだから、お互いにノウハウを共有していけたらいいですね。
高橋:
営業も自分自身のスキルを磨くのは当然として、部全体で、会社全体で最適化を考えて、生産性を高めていけば、まだまだ発展できます。今年のスローガンは「挑む」ですから、まさにこれからです。
文:蒲原 雄介 写真:笠原 徹 取材日:2026年2月2日
成約事例インタビュー:それぞれの選択
記事監修者
当社入社後は、M&Aを経験された経営者の方々への取材や各種講演会の企画立案など幅広く活動を行う。