神道と日本文化の繫栄を願って。
50年間守り続けた同族企業を譲り渡す決断
長崎県佐世保市から全国の神社に神祭具を届ける株式会社民俗工芸。創業50年を超える優良企業が、2024年、PINECONE Holdings株式会社へ株式譲渡によるM&Aを行ったのはなぜか。株式会社民俗工芸の市村 由都子 様、市村 隆之 様、PINECONE Holdings株式会社 服部 周作 様、アンドリュー・チョウ 様、服部 知宏 様、岡崎 貴彦 様に話を伺った。
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譲渡企業
- 会社名
- 株式会社民俗工芸
- 所在地
- 長崎県佐世保市
- 事業内容
- 神祭具の仕入れ販売、企画製造
- 従業員数
- 24名
- M&Aの検討理由
- 後継者不在のため
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譲受企業
- 会社名
- PINECONE Holdings株式会社
- 所在地
- 東京都中央区
- 事業内容
- 投資持株会社
- 従業員数
- 4名
- M&Aの検討理由
- 優良日本企業への投資のため
全国の神社にとって“なくてはならない”存在に
まずは、株式会社民俗工芸の事業内容、および沿革についてご紹介ください。
日本全国、北海道から沖縄まで、神職がいらっしゃる1万1,000もの神社に、鳥居からおみくじ、賽銭箱など約1万8,000点のアイテムを取り揃えたカタログ販売を展開しています。妻の両親がこの事業を始めて、創業50年を超えました。伝え聞いた話では、妻の父が実家の神社で神職を務めていましたが、かつてデザイン事務所で家具のデザインをしていた際に学んだ知識を生かし、組み立て式の祭壇を開発したそうです。その祭壇が評判を呼び、全国の神社から注文を受けるようになり、今では、どの神社でも置いていただけるまでに普及しました。
やがて祭壇だけでなく、関連する購入品を、いわば商社のような形で卸すようになったのですが、自動車で営業するだけでは持続性がないと考え、カタログ販売を開始。当時はインターネットもなければ、訪問先ではコピー機もない時代です。メモ帳に1件1件記入して顧客名簿をつくっていくのは非常に大変だったと思います。そういったことを積み重ねていって、1万1,000件の顧客リストになったのです。
【株式会社民俗工芸が取り扱う商品の一部】
由都子様が事業を継がれたのですね。
はい。私の父が実質会社を作ったのですが、実家の神社の禰宜(宮司を補佐する立場の職位)だったので、まさか企業の社長をやるわけにはいかないという事情もあり、母が社長となり家族で経営をしていました。私も子どもの頃から、親の仕事を手伝っていたので、半ば当たり前のように受け継いだという感覚です。
義父はアイデアマンで、義母は会社の運営が得意という、絶妙なバランスで経営も順調に推移していたのですが、7年前に義母が脳出血で倒れてしまいました。当時義母は72歳。普通の企業経営者であれば引退する年齢です。しかし後継者がいなかったからそこまで頑張ってしまったのでしょう。私は4年半ほど前までは、エンジニアとして通信機メーカーに勤めていましたが、妻の実家の先行きを懸念し、会社に参画することにしました。会社を運営していくうえで、後継者問題は急務の課題でした。
中小企業は、次期経営者を育成するシステムがありませんし、そもそも次期経営者候補も採用できません。入ってこないうえに教育もしていない、育成もしていない、経験もさせていないのに、いきなり社員の誰かに「会社を継いでほしい」というのは難しい話です。ですので、私が役員に就任したときに、まずは社内で育成し、難しければ外部から入社してもらおうと、妻をはじめとする他の役員に提言しました。
まず、50代後半の中途採用者を社長に据え、彼が引退するまでに後継者を社内で育てようと考えましたが、現実問題としてなかなか思ったようにはいきませんでした。地元の銀行経由で人材を紹介してもらい、入社いただいたこともありました。しかし、言われたことは一生懸命取り組む力はあるものの、ビジョンをもって舵取りをすることができないと感じる部分があり、なかなか上手くいかない状況が続いておりました。民俗工芸は中小企業としては業績が良く、ニッチな分野でポジションを確立している優良企業だという自負はあります。それでも経営者を育てるのは容易ではありません。そこで私が立候補しようと考えたのですが、オーナー家である妻からの反対を受けました。
夫は、研究や分析は得意ですが、人を巻き込んで何かを動かしていく経営者タイプではありません。それでは夫も苦労すると感じましたし、親の代から守ってきた会社の先行きを考えると、創業家としては厳しい目線にならざるを得ませんでした。私は経営の一線からは手を引いていましたが、最初は私のオーナーという立場と経営を担う社長との間でうまく役割が分担され、バランスがとれていました。しかし、そのバランスが、年月が経つにつれて崩れていっていると感じていました。このままでは会社がダメになってしまうと考え、会社を譲渡する方向で動き始めていました。
筆頭株主である妻は、複数のM&A仲介会社から情報収集をし、取締役会にかけるまですべて一人で進めていました。そして、会社を譲渡することを取締役会の議題に挙げた時に、後継者候補として手を挙げていた私以外は全員賛成でした。そこから私も妻の動きと連動し、M&A仲介会社の方にお会いするようになり、M&Aキャピタルパートナーズの担当者の二人ともお会いしました。
自分たちが実現したいと考えていたことを提案してくれた
M&Aキャピタルパートナーズの担当者の第一印象はいかがでしたか。
M&Aキャピタルパートナーズのお二人は、堅すぎるくらいにキチっと丁寧な対応をしてくださりました。真摯に仕事をしてくれていると好感が持てました。当初は複数の仲介会社ともお話をしていたのですが、対応の丁寧さや資料のクオリティの差が明らかに違いました。他社の仲介会社の担当者は、M&Aのような重大な決断を任せるには相応しくない言動や対応があったこともあり、“これでは一緒に仕事できない”と感じていました。
私が初めてM&Aキャピタルパートナーズのお二人にお会いした時に見た資料のレベルの高さに驚きました。ご依頼してから、数日しか時間がない中で“ここまで頑張ってくれるのだ…”と思いました。私は元エンジニアで、データ分析が得意だったため、根拠のない資料はすぐに見抜いてしまいますが、お二人の資料はとても整理されたものでした。これは後になってわかったことですが、非常に正確なデータを用いていました。また、お話に嘘がないように感じ、好印象を持ちました。
ここからは、担当アドバイザーの深瀬さん、円谷さんにもお話を伺います。業界的に前例のない、難しい支援ではありませんでしたか。その中で、PINECONE Holdings株式会社を提案された理由を教えてください。
神社でよく目にする商品をお取り扱いされている点は、馴染みがありイメージが浮かびやすい部分であるかと思いますが、その裏側でどのようなビジネスモデルが構築されているのかという点は、外部情報では把握しきれない部分がございました。そのため、市村ご夫妻にもご協力をいただきながら、ビジネスモデルや独自の強みを的確に捉えることに尽力いたしました。PINECONE Holdingsの皆さまとは、別件でお打ち合わせをする機会があり、“こんな企業を紹介してほしい”というご要望をお預かりしておりましたが、民俗工芸がまさにその全てに合致しておりました。市村ご夫妻から専任でご譲渡の支援をお任せいただけるとなった際に、実は一番最初にお声掛けをさせていただいたのがPINECONE Holdingsでした。
もちろん幅広い視野で複数の候補先を選定のうえ、市村ご夫妻にご提案し、結果として8社の候補先とのトップ面談を実施いただきましたが、PINECONE Holdingsから伺っていた「地味に尖っているところへ投資したい!」というご要望と民俗工芸がまさに合致していることから、真っ先にご提案した次第です。
ご提案をうけてどのように感じられましたか。
譲渡先の選択肢としては、正直、PINECONE Holdingsのようなファンドのイメージはありませんでした。ただ先方とのトップ面談のなかで「私たちがこれまで実現したいと考えていたものの、なかなか叶わなかったこと」を先方から提案いただき、考え方や価値観の近さを感じ、安心感が醸成されていきました。
私たちも企業であるからには、利益をあげなくてはなりませんが、それだけではなく、日本人の生活、習慣を大切にしてきた民俗工芸の思いが伝わり、とても内容の濃い話ができて嬉しかったですね。一族経営ですから、私よりも妻の方が、それは特に強かったと思います。極端な話、儲けに走らずに私たちはあえてそちら側を大切にしてきたわけですから。会社として守らなくてはいけない大切なことを理解してくださりました。
また、他の候補先を含めた各社との面談と比較しても、民俗工芸を将来どうしていこうという観点では断トツでした。ただ他の候補先を含む、8社8人の経営者のお話をそれぞれとの面談の際に伺えたのは、非常に有意義な時間でした。同じ民俗工芸という会社を見ているのに、今後の事業計画や今後のどのような経営方針をするかについてそれぞれ意見が違うのですから。だからこそ、私たちの考えにマッチする会社を選択すべきだと改めて思いました。
日本の優良企業の想いをつなぐ未来への架け橋でありたい
ここからは、譲受企業であるPINECONE Holdings株式会社の皆さまにも参加いただいて、お話を聞かせていただきます。まずは貴社の事業のご案内、およびM&Aに対するお考えを教えてください。
弊社は、一般的なPEファンド(プライベートエクイティファンド)ではなく、株式の長期保有を目指している会社です。短期保有では“何かを変えなくてはいけない”という時間軸で動く必要がありますが、イグジットせずに長期的に取り組むことで、“当たり前のことを当たり前にやっていける”ところにフォーカスができます。この差は非常に大きいですね。
その裏には、投資先企業の“自主性を保ちたい”という考えがあるからです。私たちは、事業承継で、良いものをそのまま未来につなげていく架け橋になりたいと思っているのです。企業が今まで培われてきたものを生かし、最終的には、価値の向上を考える、そのような役割と使命を掲げています。
私は、20年以上の投資経験がありますが、3年から5年の短期間で投資をする場合は、期間内に反映する投資判断しかできません。利益を追求するために、長期的な“利益の創出ではなく、短期的な“利益の喪失”と考えてしまいがちです。私たちは、投資家目線で長期的に支援していける企業を探し、長期的な利益を追求していこうと考えています。
“問題のある会社を譲り受けてうまく立て直す”ということは考えておらず、既に事業基盤がしっかりされている会社のお譲受をさせていただき、その会社がそのままあり続けることのできる土台を作ることを目指しています。短期間でゴールが見えるものではなく、長い時間をかけて達成していくものかと存じますので、支援を長続きさせることが我々のミッションでもあります。
一般的なファンドであれば、従業員の方々の目線では、“3~5年後に別の会社に再び譲渡されてしまうかもしれない”ことが前提としてあるかと思います。我々は、そのようなビジネスモデルではなく、5年後も10年後もご一緒させていただき、共に成長をしていきたいと考えていますので、その部分が大きな違いかと思います。
株式会社民俗工芸をどのように評価し、支援していきたいと思ったのでしょうか。
民俗工芸は、これまで50年、伝統と文化をつないでこられました。地味に尖ったところにフォーカスをして、黒子に徹したいという私たちの思いや姿勢に合致する投資先であることに間違いありません。PINECONE Holdingsには、企業を投資していくかどうかを判断するためのインベストメントチェックリストという厳しい採点があるのですが、その採点で満点を取ったのは、民俗工芸が初めてでした。我々4人全員がとても驚きました。それほど奇跡的な出会いだったと感じています。先程、“地味に尖った”という表現をしましたが、他の人がその会社を見たときに、ビジネス以上の存在意義を感じる位置づけが重要です。「商品やサービスは日々当たり前のように目にしているが、そのようなことを事業として行っている会社があったのですか!」と言われるのが、我々にとって最大の褒め言葉であると考えております。
“地味に尖っている”の意味合いは、その会社がなくなると社会的なインフラやサービスが成り立たなくなることでもあります。例えば、民俗工芸がなければ、我々が初詣に行ったときにおみくじやお守りが買えなくなります。黒子として神社やその先の日本文化を支えている民俗工芸、我々はその黒子の黒子でありたいと思っています。
民俗工芸はいろいろな要素が詰まっており、我々が求める会社の要件と非常に合致していました。市村ご夫妻とのご面談の場でも、考えや文化がマッチするところがたくさんあり、盛り上がりました。偶然的なことがあまりにも続いたため、必然的なことだと思うようになりました。
民俗工芸は単なるビジネスに留まらず、日本の文化、社会に溶け込んで価値を創出しています。社会を動かす上で極めて重要な役割を果たされていることに、非常に魅力を感じました。
トップ面談はいかがでしたか。
PINECONE Holdingsからはアンドリュー以外の3名が参加しました。M&Aキャピタルパートナーズのお二人から、民俗工芸に関し非常に的確な情報を得ていましたので、会社の真髄や強みをよく理解でき、事前準備も十分にできました。我々は、まず企業のあり方を非常に深く分析して理解することからはじめます。本質的な競合環境や、10年~20年後に事業環境がどのように変化しているかを理解し、未来を描くことが重要です。その未来に応じて、違った観点を掛け合わせられるか、その観点を譲渡オーナー様と一緒に共感できるのかが大切だと考えております。
M&Aキャピタルパートナーズからは、毎回、企業のことを把握するためのクオリティの高い資料をいただいています。今回も深瀬さんからいただいた資料を土台として、社内で検討を重ねました。もちろん本当の意味でわかり合えるには時間が必要ですが、我々がどのようなかたちでご一緒できるかを考えるにあたっては、土台の情報提供と、我々の準備が重要です。M&Aキャピタルパートナーズからの的確な情報提供もあり、今回は非常に効率的かつ効果的に検討を進めることができました。
トップ面談の際には、将来的には物販だけでなく、体験をご提供できるような会社にしていきたいという思いをお話させていただきました。その話題は市村ご夫妻にも共感をいただき、我々の思っていることと、民俗工芸が今後目指していこうとしている姿が合致していると感じました。
PINECONE Holdingsの皆さまのプレゼンが面白く、共感を持つことができました。お話を聞いて、私と同じことを考えている人がいるんだと驚き、イリュージョンのような感覚がありました。私の目指す未来は、神社を廃れさせないようにすることです。大きなスケールで考えると、日本国を滅ぼさないということに繋がると考えています。私が考えていたのは日本国内の話だったのですが、PINECONE Holdingsは世界まで視野を広げて考えられておられました。提案を聞き、私が考えていた未来のもっと先まで考えていることに驚き、感銘を受けました。
トップ面談では、すべての会社に民俗工芸の経営理念である神道の発展と貢献について説明しました。それは一般企業としては聞き慣れない内容だったと思います。そんな中、周さんが、「神道の発展と貢献」をとても丁寧にノートに書き留められている姿を見たとき、“企業の文化を非常に大事にする会社だ”と感じました。我々が情報開示してからトップ面談まで9日程しかなかったのですが、たった9日の間に、私たちが何年間にもわたって積み上げてきた会社の内容が、ほぼ全て網羅されていました。周到に準備していたと話されましたが、この会社の20年先を9日間で考えてこられたのはすごいと感じました。
M&Aキャピタルパートナーズの二人はトップ面談をどのように見ていましたか。
ご両者の文化や考えが非常に合致していると感じました。民俗工芸は、歴史がある業界のなかで、“斬新なアイディア“によってポジションを確立してきたことは1つの特徴であると考えております。また、PINECONE Holdingsは、日本の文化に根ざした“地味に尖った“企業とご一緒したいというご希望を持っていました。“クリエイティブさ”という部分で、非常にマッチしていると確信しました。
PINECONE Holdingsは、トップ面談の場を盛り上げることがとてもお上手でした。まずはお会いして話を聞き、その内容を持ち帰って検討される企業が多い中で、PINECONE Holdingsは非常に準備をしっかりしてこられていました。条件提示の前であるにもかかわらず、今後を見据えた新たなストーリーが始まっているような感覚で、市村ご夫妻としては、親近感の湧くお相手だと感じました。
創業家としての役割を果たし、人生の中で一番強く願ったことが叶った瞬間だった
成約時の率直なお気持ちをお聞かせください。
大切にしてきた会社を安心できるお相手に引き渡すことができて、本当に嬉しかったですね。人生の中で一番強く願ったことが、叶った瞬間でした。一族の中での私の使命は、“これだったのではないか”と思っていますし、その務めを果たせたと思いました。“こんなにうまくいっていいのか?”と、少し怖くなったくらいです。
長い間、気持ち的にもきつかったので、“ようやく終わった”という気持ちになりました。この先は、大丈夫だろうとホッとしましたね。
PINECONE Holdings株式会社の皆さまは今後どのような経営を進めていこうと考えているのでしょうか。
どのような企業であれ、トップの方はとても孤独です。相談もできず、いろいろと迷いながら根拠のない自信を持って前に進むしかありません。そんな中で我々と組むことで、我々が壁打ち相手として常にいて、必要に応じてご相談に乗っていきますので、まずは対話から始められればと思っています。
また、金融、投資、コンサルティングファームなどさまざまなバックグラウンドを持つ我々ならではの視点と経験から、日々見落としてしまいがちな点を俯瞰的に考えることができます。PINECONE Holdingsの総合力で、少しでも企業の発展に寄与できればと考えています。
今回のお取り組みの中で、M&Aキャピタルパートナーズはどのようにお役立ちになりましたでしょうか。
言葉に言い表すことが非常に難しいほど素晴らしいサポートをいただきました。常に何が大切かを理解しているので、一緒にやっていてとても清々しい気持ちで本件を進行できました。IQ、EQ(心の知能指数)、両方の面で必要不可欠な要素を持ち合わせていますね。頼りになる存在です。
深瀬さんと円谷さんがいなかったら、このM&Aの成立はありえませんでした。私たちも黒子に徹する業種ですが、お二人も黒子に徹してくださいました。売り手と買い手の両方に貢献するということは難しいと思いますが、常に公平に両者のことを考え、円滑に本件を進行いただき、真摯な対応や姿勢に誠実さを感じました。本当に感謝しています。
ありがとうございます。最後に、皆さまから、これからM&Aを検討する経営者の方々にメッセージをお願いします。
読者の方の中には、民俗工芸のように何十年もビジネスをされている方たちがいらっしゃると思います。そのような方々にとっての会社とは、我が子も同然です。会社を譲渡する過程では困難な場面に陥ったり感情的になったりすることもあるため、価値観が合うパートナー選びがなによりも重要だと考えています。我々は価値観のつながりを重視して、どのような話でも快くお聞きさせていただきたいと思っていますので、ぜひお話しできますと幸いです。
我々は信頼に値するだけの価値を提供できるかどうかを常に考えています。価値が提供できないのであれば“Walk Away”、立ち去るべきです。信頼を得られるような重要な価値を企業に提供できるかを常に心に刻み、大切に考えています。
M&Aを成功させるためには、仲介会社の担当者に絶大な信頼を置くことが一番のキーポイントだと私は思います。そして、その絶大な信頼を置いた方に、情報や想いを全て開示することが重要だと感じました。
一概には言えないことではございますが、中堅・中小企業のオーナー様は、私たちの理解に及ばないほど、何らかの「会社のしがらみ」や「重圧」を抱えていらっしゃることも一定数あるものと認識しております。市村ご夫妻は長年ご経営に尽力をされてきたからこそ、「新しい人生を踏み出したい」という想いもあり、第2の人生のスタートのお手伝いができたことは、勝手ながら嬉しく感じております。
PINECONE Holdingsにとっては、本件が国内第一号ということで、今後、更なる高みを目指していくにあたって、その第一歩をお手伝いできたことを大変光栄に思います。
M&Aは、事業承継や経営手法のひとつの選択肢です。また、本件のように単なる事業承継問題の解決に留まらず、新しい可能性を見出す選択肢のひとつでもあると考えております。単独経営と共同経営、どちらが会社の未来にとって良い影響を与え得るのか、経営者の皆さま、会社オーナーの方々には、フラットにご相談いただければと思っております。
民俗工芸の市村ご夫妻とは、1月末にお話を始めさせていただき、9月から繁忙期に入るので、M&Aで現場に負担がかからないように8月末までに完結させたいというご要望を伺っていました。PINECONE Holdingsの皆さまや市村ご夫妻のお力添えもあり、6月末にご成約に至るというご要望を上回るスピード感で進めることができました。市村ご夫妻には、PINECONE Holdings 以外にも、選択肢として複数のお相手候補先をご検討いただき、最終的にはPINECONE Holdingsという素晴らしいお相手とご一緒になる支援ができ、私たちの価値を提供できたと感じています。ご両者の良縁を支援することができ、非常にうれしく感じています。
とはいえ、M&Aは、あくまで選択肢のひとつに過ぎません。M&Aが最善ではないケースもあると思いますので、着手金をいただいていないという私たちのサービスをご活用いただくことで、納得いくまで情報収集いただき、最終的に正しいご判断ができるのではないかと考えています。昨今、仲介会社の不祥事や、あまり良い支援になっていないという事例も耳にします。我々は“正しいM&A”を掲げて、良い会社を良いお相手に引き継ぐことにプライドを持って取り組んでおりますので、ぜひ、安心してご相談いただければ幸いです。
文:伊藤 秋廣 写真:小野 綾子 取材日:2024/7/22