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経験を重ねても、挑戦は続く。 前例のない業界に、M&Aの可能性を拓く

経験を重ねても、挑戦は続く。 前例のない業界に、M&Aの可能性を拓く 経験を重ねても、挑戦は続く。 前例のない業界に、M&Aの可能性を拓く

2026/09/29

入社から7年、数多くの業界でM&Aを支援してきた企業情報部 次長の天本祐輔さん。経験を重ねる中で、案件の論点や成約までの道筋を先回りして考えられる場面が増えてきた一方で、一社として同じ会社は存在せず、過去の経験だけでは答えを出せないこともあります。今回向き合ったのは、M&Aの前例がほとんどない業界。一から業界を学び、オーナーと向き合った先に見えてきたものとは。

一度きりの人生で抱いた仕事への憧れ

M&Aの世界に入ったきっかけから教えてください。

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 次長 天本 祐輔(以下、天本):前職は銀行で、法人営業に携わっていました。中堅中小企業の経営者とお会いする中で、事業承継のお悩みを伺う機会は少なくありませんでした。ただ、銀行の一担当者という立場ではお手伝いできる範囲にも限界があります。そうした経験を重ねる中で、経営者の大きな決断により深く関わり、最後まで伴走できるM&Aという仕事に次第に惹かれるようになりました。

銀行の仕事にもやりがいがあり、充実していました。一方で、「一度きりの人生で、自分は何を成し遂げたいのか」と考えるようになり、自分自身の知識や判断、行動がより直接的にお客様への価値につながる仕事に挑戦したいという思いが強くなっていきました。

転職にあたっての迷いはありましたか。

天本:
銀行での仕事を続けるか、思い切って辞めるか悩んだ期間はありました。結局、転職活動にあたってエントリーしたのはMACP(M&Aキャピタルパートナーズ株式会社)だけでした。なぜ一社だけMACPを受けたかというと、非常に謎めいた会社だったからです。今ではテレビCMも放映され、オウンドメディアや動画などで社内の様子が垣間見えますが、当時はそうした手段もありません。ただ、業界内でも優秀な人材が多く集まり、高い水準で仕事をしているという話は耳にしていました。好奇心もありましたし、挑戦するならこういう環境がいいと思い、MACPだけ受けてみようと決めました。

入社後の率直な感想を教えてください。

天本:予想通りだったのは、高度な知識が求められることです。やはり会社の譲渡に関わるわけですから、さまざまな知識を備えていなければ、そもそも仕事として務まりません。経営者であるお客様と直接向き合う仕事ですから、質問をいただいたときに、その場で一定の見解をお返しできるだけの知識は必要です。もちろん、分からないことを曖昧に答えるべきではありません。その場で答えるべきことと、専門家に確認して正確にお返しすべきことを判断する力も含めて、アドバイザーの専門性だと思っています。

一方で、良い意味で予想外だったのは、外から見ているよりも魅力的な仕事だったことです。世の中に、一社として同じ会社は存在しません。無事に1つの成約を迎えても、次はまったく違う状況のオーナー様との出会いがあり、「この方のために全力でサポートしたい」という気持ちが芽生えます。だからこそ、常に新鮮な気持ちで向き合える仕事ですし、気付けば前職よりも長く続けられているのは、そこが大きいと思います。

経験則が通用しない業界に挑む

今回ご縁のあった株式会社アルファーのM&Aでは、まずどのようなところから着手したのでしょうか。

天本:
株式会社アルファーは、鹿児島県にある家賃保証会社です。特徴のある業界で、まずはビジネスモデルそのものを一から理解するところからのスタートでした。

住宅を借りるとき、賃貸契約書の保証人という欄があります。かつては連帯保証人として親族の名前が記入されるのが当たり前でしたが、今では企業名が書かれることが珍しくありません。「借り主が家賃滞納をした場合、代わりに家賃保証会社が家賃を払う」という家賃保証の仕組みを知ったのも、オーナーである烏川様との面談が決まってからです。

まずは、この業界にどのような主要企業があるのか、M&Aの事例はあるのかを調べるところから始めました。すると、インターネットで調べられる範囲ではありますが、M&Aの事例が非常に少ない業界だと分かりました。

前例のない中で、どのように業界への理解を深めていったのでしょうか。

天本:
自分で調べられることは徹底的に調べます。それでも分からないことは、率直に「そこはまだ理解できていないので、教えていただけますか」と申し上げます。中途半端に分かったふりをすることの方が、かえって信頼を損ねると思っているからです。M&Aについては私たちが専門家ですが、その事業について最も詳しいのは、何十年も経営してこられたオーナー様です。こちらが十分に準備したうえで、本気で理解しようとしていることが伝われば、多くのオーナー様は丁寧に教えてくださいます。分からないことを曖昧にしないことも、プロとして大切な姿勢だと思っています。

“慣れ”が通用しないから惹きつけられた

今回を振り返って、難しい点はなんでしたか。

天本:
デューデリジェンス(企業監査)の過程で、家賃保証というビジネスならではの論点が現れました。家賃が支払われない場合、保証会社が立て替えを行い、その後に回収を試みますが、なかには回収困難となってしまうケースがあります。これをどのように評価するのか、意見が分かれた場面があったのです。決算書だけでは判断しづらく、これまで私がM&Aをご支援してきた業界のビジネスモデルではまず起こらない論点だったため、私自身も勉強になりました。

オーナー様は、難しい決断を迫られることになります。即答はできず、話し合いは翌日に持ち越されました。その夜、私自身も改めて考えました。M&Aアドバイザーとして情報を整理し、選択肢を提示することはできますが、最後の決断はあくまでオーナー様ご自身のものです。こちらの都合で結論を急がせるようなことだけはしたくありませんでした。ただ、その思いを口頭だけでお伝えするのではなく、きちんと形にしてお伝えしたいと思い、夜中にホテル近くのコンビニでルーズリーフを買って、手紙を書きました。直接お渡ししたのは翌朝のことです。「どのような結論になっても、ご決断を尊重したいので、ご自分の気持ちを大切にしていただきたい」とお伝えしました。結果として、この話を前に進めたいと言ってくださいました。最後まで、ご自身の損得よりも社員や会社の将来を大切にされる、烏川様らしいご判断だったのではないかと思います。

こうした経験を重ねて、今までと変わったことはありますか。

天本:
経験を重ねる中で、案件の初期段階でも「この先どこが論点になりそうか」「どこで交渉が難しくなりそうか」を、ある程度先回りして考えられるようになりました。一方で、経験が増えるほど、過去の経験則で物事を捉えてしまう怖さも感じるようになりました。経験則だけで案件を見るようになると、その会社固有の事情を見落としかねません。今回の案件は、これまでの経験だけでは答えを出せない論点が多く、改めて一社一社をゼロベースで理解することの大切さを感じました。

いつか前人未踏の地へ

なぜこの家賃保証という業界では、M&Aがほとんど起こらなかったのでしょう。

天本:
構造的な特殊さが原因にあると、私は考えています。市場規模は全国で2,000億円以上に成長しましたが、まだ特殊でニッチな分野であり、全国各地に根を下ろした企業が地域のシェアを獲得しやすい構造です。その影響から、業界最大手でもシェアは1割程度にとどまります。企業数は全国に200社ほどあると見られていますが、地域性が非常に強く、管理会社との関係も、その土地で長い時間をかけて築かれたものです。
一定以上の規模を追求することでより効率的にビジネスを成長させられる業界では、M&Aが起こりやすくなります。家賃保証の分野では長年、規模追求という発想が生まれにくかったのではないでしょうか。
一方で、まだ手つかずであり、これから再編が起こる余地が残されているという見方もできます。起きにくいことと、余地があることは、同じ事実の両面です。狭い業界だからこそ、トップ同士が意気投合しやすいという側面もあるかもしれません。

同じビジネスに取り組んで来た方だからこそ通じ合えるということでしょうか。

天本:
その通りだと思います。今回の初めてのトップ面談で、譲渡オーナー様が譲受企業のトップのもとへ近づき、万感の思いを込めて握手されるシーンがありました。まだM&Aが成立するはるか前の段階だったので、特に印象に残る場面でした。それだけ特殊な業界で、ともに長い年月をかけて成長してきた方同士だからこそ分かりあえるものがあるのでしょう。

この経験から、「M&Aの実績が少ない業界だから難しい」と捉えるのではなく、「まだM&Aが根づいていないからこそ、多くのオーナー様の役に立てる可能性があるのではないか」と考えるようになりました。産業分野に優劣はありませんが、他の人が取り組んでこなかった、言わば前人未踏の領域でお役に立てたらと思っています。

これから、どのようなアドバイザーを目指しますか。

天本:
今回のように、心から喜んでいただけるM&Aを一件でも多く手掛けたいと考えています。その結果として、業界に新たな選択肢を示せるような仕事ができればと思っています。私自身、幅広い案件を経験してきましたが、今回のように前例の少ない業界では、その経験があるからこそ見えるものもあれば、一度経験則を脇に置いてゼロから考えなければならないこともあります。そういう仕事に面白さを感じます。前例が少ないから難しい、ではなく、前例が少ないからこそ、まだお役に立てる余地がある。これまで培ってきた経験を土台にしながら、前例のない領域にも臆せず踏み込めるアドバイザーでありたいと思っています。

左から天本、
譲渡企業・アルファー株式会社 前代表取締役 烏川様、
譲受企業・NSグループ株式会社 代表取締役社長 大塚様

文:蒲原 雄介 写真:加藤一樹 取材日:2026年7月17日

成約事例インタビュー:それぞれの選択

経営者がどのようにM&Aを決断したのかをインタビュー形式でご紹介します。

株式会社アルファー
前代表取締役社長 烏川 義生様

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