考え抜くことが、決断を支える力になる。残りの1割を追求するアドバイザーの歩み
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考え抜くことが、決断を支える力になる。 残りの1割を追求するアドバイザーの歩み
考え抜くことが、決断を支える力になる。 残りの1割を追求するアドバイザーの歩み
2026/10/20
M&Aキャピタルパートナーズの佐野 晃大さんがM&Aという仕事を初めて間近で見たのは、前職の証券会社で働いていたときでした。顧客だったある経営者が一度は廃業を決断したものの、M&Aによって会社が引き継がれ、涙を流して感謝する姿を目の当たりにしたのです。入社から4年、佐野さんは「9割がた大丈夫」と思える状況でも、「まだ自分にやれることはないか」と残りの1割を考え続けると言います。その1割を追求する時間が何のためにあるのか、話を聞きました。
顧客から涙ながらに感謝された日
なぜM&Aの仕事を志すようになったのですか。
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 主任 佐野 晃大(以下、佐野):
かつて証券会社でリテール営業をしていたときのことです。私のお客様で鋼材を加工する会社の社長から、会社を畳むつもりだと知らされました。ご子息はいらっしゃいましたが、社長ご自身が長年、長時間労働を続けてきたので、自分と同じ仕事を強いることはできないとお考えだったのです。それで、自分の代で終わらせるしかないとのご意向でした。
第三者承継であるM&Aという事業承継の方法があることは知っていましたが、証券会社に入社して間もない若手だった私にできる直接的な支援はありません。ただ、長く続けてこられた会社を終わらせてしまうのはもったいないと感じ、M&Aを専門に扱う会社の方とお引き合わせしました。当時、私ができたのはそれだけです。しかし、これがこの仕事を志すきっかけとなりました。
その会社は、どうなったのでしょうか。
佐野:
M&Aによって、引き継がれることとなりました。成約の日、社長は涙を流していらっしゃいました。人前で泣くような方ではありません。そんな方が「佐野さんが声をかけてくれなかったらこうなっていなかった」とまで言ってくれました。一度は廃業を決意した会社が存続することが、その方にとってどれほどの意味があったのか、そのとき初めて分かった気がします。
営業の仕事でもお客様から感謝される機会はあったかと思いますが、どんな違いを感じたのでしょうか。
佐野:
たしかに、株式や投資信託でお客様に利益が出たときに「いつもありがとう」と言っていただくことはありました。ただ、資産運用でいただく感謝の言葉と、会社そのものが残ると決まったときの言葉では、私自身が感じた重みがまるで違いました。
前職にもM&Aを手がける部署はありましたので、社内異動も可能です。しかし、次の異動を考えると、その部署に入れたとしてもずっとM&Aに携わることは難しいでしょう。それならば外に出ようと考え、M&Aキャピタルパートナーズを志望しました。すでに同期や先輩、後輩で先に入社している人が何人もいたので、いろいろと話を聞いたうえで、ここが最もよい環境だと思えたんです。
9割は大丈夫でも、残りの1割を追求してきた
入社から4年が経過し、成約件数を積み上げていますが、どのような意識でここまで歩んできましたか。
佐野:
入ったばかりの頃はとにかく量を追求し、上司や先輩などすでにできている人に聞くことを繰り返してきました。教えてもらったやり方を真似することで、自分のものにしてきた感覚があります。
佐野さんらしい特徴という点ではいかがでしょうか。
佐野:
自分でそこまで意識してはいないのですが、会社にいる時間はもちろん、休みの日でもずっと、ご支援中のプロジェクトについて考えてしまうんです。一言で言うと、私はかなりの心配性なんですね。
「9割がた、もう大丈夫」という状況でも、残りの1割がどうしても気になってしまいます。どこかに落とし穴があるのではないか、ミスがあるのではないか、などと用心深くなってしまうんです。M&Aで言えば、両者が基本合意した後に行われるデューデリジェンス(企業監査)から最終契約にかけての時期は、寝ている時間以外、頭の中をほぼそのことが占めています。
心配し過ぎて苦しくなりませんか。
佐野:
悲観的な心配ではないんです。「まだやれることがあるのではないか」という前向きな心配だと、自分自身では捉えています。最初のうちは、先輩方がどこまで先を見ているのかを学ぶことで精一杯でした。今でも勉強中ですが、ある程度自分で経験を重ねると、三手先まで読めば十分と思っていたものが、五手先、十手先まで見ないといけないと分かってきます。これは、オーナー様に寄り添う仕事の難しさでもあります。
そして見通していたとしても、その精度を高めなくてはなりませんし、上限はありません。だから、どれだけやっても「もう大丈夫だ」とはならないんです。
その感覚は、周りの方と比べていかがですか。
佐野:
生まれつきの性格なのかもしれません。先輩や上司からは「大丈夫じゃない?」と声をかけていただくこともあるのですが「いや、でもな」と思ってしまいます。
思い返すと、証券の営業では、「この方にはこれをご購入いただけるだろう」「これくらいの規模で決まるだろう」と思えば、だいたいその通りになりました。読み違えることが、あまりなかったんです。しかしM&Aでは、予測が覆されることが多く起こります。自身の会社の将来を預けるかという話ですから、考えが変わるのは当たり前です。投資信託と同じように行くはずがありません。ただ、期待がひっくり返されるのは嫌ですから、そこからとことん考えるようになりました。
確信があるなら、待たずに伝える
今回ご支援した事例は、どのようなものでしたか。
佐野:
60年以上にわたり、大手メーカーの生産現場を支える機械をオーダーメイドで手がけてきた会社です。ロボットによる自動化事業を展開する上場企業が関心を寄せたことがきっかけとなりました。
私の中で今回のお相手がベストパートナーだという確信は、早い段階からありました。その他の選択肢も調べ尽くした上で、これ以上のお相手はいないと思えたからです。ただオーナー様としては、時間とともにもっと良いお相手や条件が出てくるのではないかと期待されるのも自然なことです。そうしたさまざまな意見も踏まえながら、なぜ今なのか、なぜこのお相手なのかを整理し、判断材料をお伝えすることが、今回の私の大切な役割でした。
まず資料で、なぜ今なのか、なぜこのお相手なのか、表現1つを考え抜きました。さらに2日ほどかけて一語一語を選び、理屈と気持ちで後押しできたらと考えたのです。今動くならこのお相手が一番だとお伝えしました。
一緒になってよかった」を一件でも多くかなえる
オーナー様のご決断を待つ、という考え方もあるのではないでしょうか。
佐野:
最終的に決めるのはオーナー様です。私は正直な性格なので、決めないほうがよいと思えばそれもお伝えします。業績が伸びている会社であれば、3年後のほうが良い結果になるかもしれません。そういう場合も、そのままお話しします。
ただ今回は、技術の中核を担う方が引退を見据える年齢に差しかかっていました。3年後に同じような条件でお相手を探せるとは限らないと考えていました。そんな確信があったので、はっきりとお伝えしました。自分に自信があるときは、それが相手に伝わるものです。自信のなさそうな相手の言葉を信じる人はいません。心配性で考え抜いた私の言葉だから、信じてくださる方もいらっしゃるのだと思います。
心配性を長所に変えながら、これからどのようなアドバイザー像を描いていますか。
佐野:
M&Aでは、私の力ではどうにも変えられない事情で話が止まってしまうこともあります。それは仕方がありません。ただ、アドバイザーが理由でまとまらないということだけは、私は嫌なんです。だからこれからも考え続けて、不安の種を一つでも多く取り除いていきたいと思っています。
これまでご支援した事例では、皆さんに「一緒になってよかった」と言っていただけています。そういうお手伝いを、一件でも多く重ねていくことが私の務めです。両者がこのお相手と一緒になりたいと思っている。それなのに、それを実現させられない理由が自分でありたくない、それがM&Aという仕事に従事している私の想いです。
文:蒲原 雄介 写真:平瀬 拓 取材日:2026年9月1日
成約事例インタビュー:それぞれの選択
記事監修者
当社入社後は、M&Aを経験された経営者の方々への取材や各種講演会の企画立案など幅広く活動を行う。