それぞれの選択 #101 機械器具卸×株式譲渡

四柳 吉田
四柳 吉田

両社が生み出すシナジーについて議論を尽くし、
選択したM&A

ポンプや周辺機器類の販売からメンテナンスまでを一気通貫で手がける株式会社四柳。高い技術力と豊富な知識を強みとして顧客の多様な要請に応えてきた同社は、2024年、株式会社南出キカイへ株式譲渡によるM&Aを行った。M&Aを決断した経緯と今後の展望について、株式会社四柳 代表取締役の四柳 晴雄 様、株式会社南出キカイ 専務取締役 営業本部長 吉田 武明 様に伺った。

  • 譲渡企業

    会社名
    株式会社四柳
    所在地
    大阪府大阪市
    事業内容
    各種機械器具の選定販売
    機器の保守・点検・整備
    建設工事施工
    プールクリーナーの製造販売
    資本金
    3,600万円
    従業員数
    17名
    M&Aの検討理由
    さらなる成長発展のため
  • 譲受企業

    会社名
    株式会社南出キカイ
    所在地
    大阪府大阪市
    事業内容
    水処理機器・空調機器・熱関連機器を中心とした産業機械卸売業
    資本金
    3億3,000万円
    従業員数
    188名
    M&Aの検討理由
    メンテナンス事業強化のため

事業拡大やビジネスモデルの転換を経て、持続的な成長を実現

まずは、株式会社四柳の事業内容、および沿革についてご紹介ください。

四柳
株式会社四柳 取締役会⻑ (前代表取締役)四柳 晴雄 様(以下、四柳)

株式会社四柳は、祖父が60年ほど前に創業した会社です。大手ポンプメーカーで機械類の設計・開発・製造に従事した経験を活かし、ポンプや建設機械などの販売を軸として事業を展開。その後、プールクリーナーをはじめ自社設計商品の開発も手がけ、販売商品を拡大していきました。
当初は、国が支援する農業集落排水施設の整備といった公共事業を中心に会社を成長させていきましたが、やがてこれらの公共事業の縮小に伴い、業界にも陰りが見られるようになりました。私がポンプの製造・メンテナンスの修行を経て家業である四柳を継いだのは、業界や会社にとって苦しいこの時期のことでした。
そこから経営の立て直しに向け、事業の拡大やビジネスモデルの転換に着手しました。ポンプ類の販売だけでなく分解整備工事なども行うようになったほか、大型の公共事業案件については、直接の請け負いではなく二次下請企業として参画する方針に舵を切りました。

事業の変革を経て、機械器具の販売から取り付けやメンテナンスまで一貫してご支援できる、そして公共案件の推進方法に対する理解と経験があるという付加価値が生まれたことで、おかげさまで売上や利益率を回復し成長を続けてこられたと捉えています。

 

募る将来への危機感から、戦略のひとつとしてM&Aを検討

どのようなきっかけからM&Aを意識するようになったのでしょう。

四柳

コロナ禍で生まれた時間を使って業界や経営に関するたくさんの情報に触れる中、世の中の目まぐるしい変化や成長を知り、会社の将来に対して危機感を抱いたことがきっかけでした。地道に仕事を続け、会社の継続的な成長も実感できている一方で、果たして私たちの成長速度は十分か、周りに遅れてはいないかという懸念が生じたのです。

そんな折、M&Aキャピタルパートナーズから直筆の手紙が届き、手紙をくださった担当者に会ってみたいなと、面談をお願いしました。ただこの時点では、まだM&Aをしたいと考えていた訳ではありませんでしたね。

ここからは、担当アドバイザーの林さん、藤田さんにも加わっていただきお話を伺います。四柳様の第一印象からお聞かせいただけますか。

藤田
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 課長 藤田 晃市(以下、藤田)

社長を務められている方の中では比較的お若いこともあり、これからも第一線で経営に携わっていかれる方だと感じました。初めての面談では具体的なお話には至らず、主に情報交換をさせていただいたかと思います。
面談を通して、会社の将来を真剣に考えている四柳様の姿を拝見して、何らかの形で私たちがご支援できればと感じ、四柳様にとって一番良い選択肢は何かを二人で考えていきました。

林
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 主任 林 聡一郎 (以下、林)

最初にお会いしたのは四柳様が40歳の時のこと、会社の業績が右肩上がりの時期でした。それでも将来に対する危機感を持たれていたことが非常に印象に残っています。四柳様が感じる危機感などのお気持ちを少しでも前向きなものにできればと、長期的な視野で幅広い提案をさせていただきたいと考えていました。

四柳

お二人と面談した際に話した危機感は、その後も募っていきました。業界の先行きに不安を覚えていましたし、より俯瞰してみれば、日本は少子高齢化や人口減少、グローバル競争力の低下といった数多くの問題を抱えており、今後ますますの衰退が危惧されます。
そうした中今の四柳のままでは、お客様から選ばれ続けることも、テクノロジー活用などに挑戦し世の中の動きに追随していくことも難しいのではないかと感じました。そんな将来性が乏しいと分かっている現状から目を背けて事業展開を続けるのは無責任だと、思えたのです。

そこから、M&Aを戦略のひとつとして本格的に考え始めました。四柳単独で将来を考えるのではなく、ある程度の規模があり、私たちのことを理解してくれるような会社とパートナーになるのが得策ではないか。もしパートナーを探すのなら、業績が好調な今が良い機会ではないか。そしてM&Aを考え始めた今、林さんや藤田さんの話を聞けば何か見えるものがあるのではないか……そんな思いから、最初の面談から半年が経つ頃に改めてお二人に連絡を差し上げました。

林さん、藤田さんはどのような提案をされたのでしょうか。

四柳

検討やご提案の軸としたのは、譲受企業とともに生み出す“シナジー”の観点です。これは四柳様が会社の20年先、30年先を見据えるにあたり特に重視されていた点です。四柳社の強みを活かしてどう新しい価値を生み出せるのかを考えながら、候補先の選定などを行いました。

四柳

例えば「ポンプに関する仕事は四柳に回す」といった形ではなく、2社が一緒になった結果、お客様に喜んでいただける新たな価値が生まれることが重要なのだと考えていました。シナジーの生み出せるお相手と共に、単独ではできなかったサービスの提供や成長の加速を描いていきたいと感じていました。

藤田

私は林と連携をしながら、M&A実行「後」も四柳様が理想的な譲受企業と円滑にご経営をしていただく為に必要な事は何かをイメージして、財務・税務・法務面のご支援を行いました。

M&Aで生まれる“シナジー”について、納得がいくまで議論を尽くした

ここからは、譲受企業である株式会社南出キカイの吉田様にも参加いただき、お話を伺います。まずは事業のご案内からお聞かせください。

吉田
株式会社南出キカイ 専務取締役 営業本部長 吉田 武明 様(以下、吉田)

昭和14年創業、いわゆる“機械工具商”として歩み始めた会社です。現在は機械工具やポンプ、チェーンブロックなどの産業機械の販売を広く手がける商社として、大阪を中心に、東京や北陸、福岡などにも事業を展開しています。

会社の長い歴史の中で初めてM&Aを検討するようになったのは、5年ほど前のことです。メンテナンス事業を強化するべく十数年前に立ち上げた、新会社の経営に対する課題意識がきっかけでした。
当時は技術者を一人前まで育てて定着させることに苦心し、建設業許可を取得していながら思うような事業展開ができておらず、この状況を打破しようという気運が社内で高まっていました。

そうした中、「技術者育成のノウハウや仕組みを外部から取り入れる」という考えから視野に入れたのがM&Aです。成約には至りませんでしたが、過去に他の仲介会社のご支援のもとお話を進めたことがあり、今回は二度目の検討でした。

どのように話が進んでいったのでしょうか。

四柳 吉田
四柳

さまざまな候補先と面談をしながらも、なかなか考えに合致するお相手を見つけられずにいた頃、偶然「南出キカイがメンテナンス事業へ乗り出そう」と耳にしたことが今回のご縁の発端になりました。

大規模な会社がメンテナンスの領域に参入されることに脅威を覚えたものの、“南出キカイと一緒に何か面白い仕事ができるのでは”との思いもあり、当時の支店長にお会いして話をお聞きすることにしました。この時印象的だったのが、南出キカイの営業担当者が施工管理の資格を取得して現場に立とうとされている、というお話でした。

初めからM&Aを考えてお会いした訳ではありませんでしたが、これをお聞きして “この会社となら一緒になる意味がある”と感じ、以前から知り合いだった吉田さんに私から直接ご連絡を差し上げることにしたのです。

吉田

そこから四柳さんとは何度もお会いして、一年半ほどの時間をかけて対話を重ねました。私たちもM&Aのお相手を探していたため前向きに考えていましたが、四柳さんがどこまで本気で考えていらっしゃるのかを確認したかった、そのための時間だったのだと思います。

四柳

両社が影響し合って生み出せるシナジーを軸に議論を続けましたが、何度会っても話しきれないなと感じました。そこで、さらに話を前に進めるために信頼できる方のお力を借りようと、吉田さんの合意のもと林さんに“仲人”のお立場をお願いしました。

お二人で対話を深められていた中改めてお声がけいただけたことが大変嬉しく、その期待にしっかりお応えしたいと思いました。

両社の融合により、他社から羨まれるような強みを持つ存在へ

今回のM&Aを振り返って、どのように感じていらっしゃいますか。

四柳
四柳

成約に至れて大変嬉しく安堵していますが、これはあくまで通過点にすぎません。今後しっかりと両社が融合し、他社から羨まれるような会社になれて初めて今回の取り組みが完結するのだと考えています。

吉田

今回四柳を迎え入れたことで、南出キカイとしてメンテナンス事業の展開に本気で取り組む姿勢を業界に示せたと捉えています。また四柳の技術力はもちろん、生産性の高さと、その背景にある育成体制は大変な強みであり、これを吸収することで売上を飛躍的に伸ばし、株主に還元していけるという期待もあります。

今回のM&Aの基本的な考え方は「それぞれの会社が存続する」というもので、給与体系など四柳の既存の良い仕組みはそのまま残しています。法令に則り整備すべき部分は整備しながら生産性を維持できれば、業界においてモデルケースになるのではないでしょうか。

今回のお取り組みにおいて、M&Aキャピタルパートナーズの支援をどのように評価いただいていますか。

吉田 四柳 林 藤田
四柳

明敏な藤田さんと、情熱的で人間らしい林さん。大変信頼できる、そして「人生の岐路に立つ経営者を支援できて楽しい」という熱心な姿勢に何とか応えたいと思わされるお二人でした。

吉田

四柳さんとの一対一の対話から始まった今回のM&Aを振り返ると、やはり当事者のみで進めるのは相当難しいのではないかと感じます。お二人の迅速なご対応に助けられましたし、自分たちではうまく言語化できない部分は文章や資料を通じて後押ししてくださり、とても話を進めやすかったとも感じます。“仲人”のお力がなければ、話がまとまっていなかったかもしれませんね。

ありがとうございます。最後に、皆さまから、これからM&Aを検討する経営者の方々にメッセージをお願いします。

四柳

信頼できるお相手が見つかれば潔く身を引くつもりでおりましたが、幸運にも譲受企業である南出キカイと同じ未来を見据えることができ、その実現に微力でもお力添えできればと会社に残ることを決断しました。
このようにM&Aを前向きに受け止められたのは、M&Aを会社の成長戦略として捉えることができたからだと思っています。さまざまな見方があり、M&AをEXIT戦略と捉える方も多くいらっしゃると思いますが、前向きな、“楽しい”M&Aを望まれるなら、成長戦略として考えてみることをおすすめしたいですね。

今回のお取り組みは、両社の強みとビジョン、タイミングが合致した奇跡のようなM&Aだと思っており、決意を固められたお二人からお声がけいただけたことを大変嬉しく思います。お二人がシナジーにこだわって作り上げたこの象徴的な事例が、ロールモデルとして全国へ、ひいては海外へ展開される未来を楽しみにしております。

藤田

どの様な場面でも「誠実」に従業員と会社のことを心から大切に考える四柳様と、南出キカイだからこそ提供できる「価値」を考えて会社全体を動かすべく入念に準備される吉田様、このお二人であったからこそ、唯一無二のマッチングを実現し、本件は成立したのだと思っています。

様々な場面で難易度が高い様々なハードルを乗り越えられて今日があり、また今後本件の様に卸売会社と工事会社の提携の「輪」が広がっていく起点ともなり得るという意味で、業界を代表するM&Aといえるのではないでしょうか。ご一緒させていただき、ありがとうございました。


 

文:伊藤 秋廣   写真:鈴木 厚志 取材日:2024/10/22

担当者プロフィール

  • 企業情報部 主任 林 聡一郎

    企業情報部主任林 聡一郎

    大学卒業後、大手製薬会社にて医薬品情報提供業務に従事。その後、外資系IT企業に転職し、食品・製薬会社へのコンサルティング業務に従事。親族が経営する会社の事業承継問題をきっかけに当社に参画。当社入社後は一貫してM&Aアドバイザー業務に従事し、建設・設備工事、ヘルスケア、食品、アパレル・雑貨、IT業界等の幅広い分野において経験と実績を有する。

  • 企業情報部 課長 藤田 晃市

    企業情報部課長藤田 晃市

    新卒で野村證券(株)へ入社し、法人・個人富裕層向けのコンサルティング業務に従事。その後、海外修練制度の適用を受け、インド(ムンバイ)にて社会貢献活動を行う。
    帰国後は、法人向けのM&A支援業務も含めて行い、当該経験からM&Aキャピタルパートナーズに参画する事を決意。
    当社入社後、調剤薬局、医療法人、IT業界、建設業、製造業等の幅広い分野にて全業務を一気通貫で行い、成約実績を重ねている。


M&Aキャピタルパートナーズが
選ばれる理由

創業以来、報酬体系の算出に「株価レーマン方式」を採用しております。
また、譲渡企業・譲受企業のお客さまそれぞれから頂戴する報酬率(手数料率)は
M&A仲介業界の中でも「支払手数料率の低さNo.1」となっております。