それぞれの選択 #118 建具工事×株式譲渡 

大城 岡島
大城 岡島

「大事な娘を嫁に出す」気持ちで
社員の幸せを願い、想いを託した決断

1973年の創業以来、40年以上にわたり住宅建材の販売・施工を手がけてきた浜松トーヨー住器株式会社。「より快適でゆとりのある空間づくり」をモットーに地域密着型のサービスを提供してきた。2025年、同社は株式会社岡島ホールディングスへ株式譲渡を決断した。その決断に至った経緯と今後の展望について、浜松トーヨー住器株式会社 取締役社長 大城 英彦 様、株式会社岡島ホールディングス 代表取締役 岡島 寿樹 様に伺った。

  • 譲渡企業

    会社名
    浜松トーヨー住器株式会社
    所在地
    静岡県浜松市
    設立
    1974年
    事業内容
    金属製建具工事
    M&Aの検討理由
    後継者不在のため
  • 譲受企業

    会社名
    株式会社岡島ホールディングス
    所在地
    岐阜県不破郡関ケ原町
    設立
    1932年
    事業内容
    住宅用・ビル用建材の販売・施工など
    M&Aの検討理由
    事業エリアの拡大のため

“基本に忠実”な姿勢で信頼と実績を積み上げた住宅関連事業

創業の経緯と事業内容を教えていただけますでしょうか。

大城
浜松トーヨー住器株式会社 取締役社長 大城 英彦 様(以下、大城)

1974年頃に父が始めた建具業が、現在の浜松トーヨー住器の創業に繋がっています。私自身は、東京でトステム(現在のLIXIL)に10年間勤務した後、32歳で浜松トーヨー住器へ入社しました。長男という立場であり、「いずれは家業を継がなければならない」という意識と、会社員としての10年間の勤務が一つの区切りとなったことが、入社を決めた主な理由です。

また、帰郷を決意した背景には、当時の会社の状況も大きく影響しています。父が60歳で社長を退任して会長となり、叔父が社長に就任した時期であったことや、子供を授かるなど自身の家族構成の変化も重なったためです。もし結婚していても、夫婦二人だけの生活であれば、まだ東京で仕事を続けていたかもしれません。

入社後は、顧客の新規開拓に注力しました。浜松トーヨー住器は創業から20年以上経っていたため、地域からの信頼や技術力といった基盤はありましたが、建築業者であるお取引先の数は、まだ満足いくものではありませんでした。現在、主要なサッシメーカーは3社ほどに集約されています。しかし当時は、多数のメーカーが乱立し、複数のメーカー製品を扱う工務店も多くあったため、今よりも新規開拓がしやすい状況でした。これを好機と捉え、積極的に顧客基盤の拡大を図っていきました。

また、社内には既に3〜4名の営業担当者がいましたが、業界全体としても営業担当者を配置して、その営業力で勝負する流れに変わりつつあるのを肌で感じていました。「営業力を持ってお客様に対応し、基本に忠実な業務を積み重ねる」ことが、事業の継続と成長には最も重要であり、浜松トーヨー住器のこれまでの成長も、まさにこの姿勢を貫いてきたからこそだと考えています。こうした取り組みが実を結び、2000年頃のピーク時には売上7億円程度、従業員数も20名ほどに成長しました。この成長を後押しした要因としては、顧客数が増えたことはもちろん、当時の住宅着工件数が比較的好調だったこと、そして人材へ積極的に投資し、常に営業マンに余力を持たせて需要に対応できたことなどが挙げられます。

入社後、事業は順調に推移されたかと存じますが、
前職で培われたどのようなスキルが、事業の推進に貢献されたのでしょうか。

大城
大城

営業職を経験していたため、まずはそのスキルが活きたと自負しています。

しかし、私が勤務していた当時のトステムと地元企業である浜松トーヨー住器とでは、営業の進め方に大きな違いがありました。前職では、会社の知名度や営業所長を経験した私の肩書きによって、どのような方でも容易に話を聞いていただけました。ところが、浜松トーヨー住器の一員として営業を始めると、「どこの会社か分からない」と門前払いされたり、軽くあしらわれたりすることもあり、そのギャップに愕然としました。まさに「会社の名前で仕事をさせてもらっていた」と痛感しました。入社当初の2ヶ月ほどは、メーカー勤務時代の感覚が抜けていなかったこともあってか、相手にされませんでしたが、それではいけないと気づき、そこからは基本に忠実に取り組むようになりました。この状況を打開するには、「日々の仕事ぶりを実直にお客様に伝え、ご理解いただくことの積み重ねしかない」と考えるようになったのです。私たちのような販売店の場合、お客様より数段低い謙虚な姿勢で接しなければ、話すら聞いてもらえません。まずは話を聞いていただくところから始まり、実績を示し、信頼を得ていくという地道なプロセスを大切にしました。特別な方法があったわけではなく、「基本に忠実に業務を遂行すること」に尽きると考えています。

長年抱えてきた事業承継の悩みと経営の行き詰まりから、選択したM&A

どのようなきっかけからM&Aを意識し、検討を始めるようになったのでしょうか。

大城

当初は、「会社を現状のままではなく、より良い形に変革したい」という強い思いがあり、その実現に向けた有効な手段として、どこかの会社を譲り受けたいとM&Aに興味を持ちました。具体的には、会社として事業エリアを拡大するという目標があり、M&Aをそのための効率的な手段と捉え、検討を進めていたのです。一から新しい拠点を出して事業を拡大していくのは、場所の選定から顧客開拓、社員の採用まで、非常に大きな労力と時間がかかります。それならば、既にその地域で事業を行っている会社を買収する方が合理的ではないかと考えたのです。一般的なM&Aの動機(年齢や後継者問題)とは異なり、「会社を変革する」という目的のために、売却・買収の両面からM&Aを有効な手段として考えていた点は、特徴的かもしれません。

2015年頃にはM&AキャピタルパートナーズではないM&A仲介会社が主催するセミナーに参加し、2018年頃には情報交換もしていました。当時はまだ明確な計画があったわけではなく、「将来的な選択肢の一つ」として、自分が会社を譲り受ける側になるのか、あるいは譲渡する側になるのかも分からないまま情報収集をしていました。

しかし、コロナ禍でM&A仲介会社の方と直接お会いするのが難しくなり、その関係は途絶えてしまいました。

今回譲渡する立場としてのM&Aを進めた背景には、どのような事業上の課題や経営判断があったのでしょうか。

大城
大城

2014年頃から、従来の工務店向けのBtoB事業だけでは将来的な行き詰まりを感じ、BtoC、つまり一般のエンドユーザー向けの事業にも挑戦しました。4年ほど力を入れ、当時は増員や専門店舗の開設など積極的な投資も行いましたが、残念ながら店舗の不動産トラブルに見舞われ、2018年に撤退せざるを得ませんでした。今振り返ると、このBtoC事業に注力したことで、結果的に主業であるBtoB事業への投資や人材投入が手薄になり、会社全体の成長が鈍化してしまったという反省があります。さらに、世の中の不況やコロナ禍が追い打ちをかけ、利益は確保できていたものの、会社として明確な成長軌道を描けない状況が続いていました。こうした経営課題が、M&Aによる会社譲渡という選択肢を具体的に考えるようになった背景の一つです。

2019年頃からは事業承継についても考えるようになりました。長男はいますが、彼が必ずしも家業を継ぐという状況でもなく、私自身も会社の将来をどうすべきか、正直なところ深く悩んでいました。時間を経ても事業承継の問題は解決せず、モヤモヤとした思いを5年以上抱えていました。その間にコロナ禍で売上も減少し、さまざまな経営課題が重なったことが、M&Aに至った経緯です。

M&Aを本格的に進めるにあたり、実際にアクションを起こすきっかけはありましたか。

大城

特別なきっかけがあったわけではありません。M&Aキャピタルパートナーズの担当者と初めてお会いしたのは2022年のことですが、その当時もまだ情報収集の段階でした。お話を聞くだけで具体的な進展はなく、私自身もすぐに事が進むとは考えていませんでした。「まだ50代の後半で、65歳くらいまではこのまま会社を続けたい」という気持ちもあり、「65歳頃にM&Aが成立するのが理想的だ」と漠然と考えていたほどです。2024年の夏頃、具体的なM&Aのプロセスとしてノンネームシート(匿名での企業概要書)を作成し、買い手候補を探し始めたものの、その段階では、買い手はなかなか現れないだろうと予想していました。事業内容、年商、社員数、所在地という限られた情報だけでは、どこも興味を示さないだろうと。しかし、実際には名前を出さない段階でも興味を持ってくださる企業がいくつかあり、さらに社名を公開すると、予想に反して多くの会社から関心が寄せられ、トップ面談の提案も次々といただくようになったのです。思ったよりも速く話が進展したのは、M&Aキャピタルパートナーズの中村さんのご尽力によるところが大きいと考えています。

「私より自社を深く理解してくれた」M&Aを加速させたアドバイザーとの出会い

ここからは、担当アドバイザーの中村さんにも加わっていただきお話を伺います。大城様の第一印象をお聞かせください。

中村
M&A キャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 主任 中村 喜人(以下、中村)

大城社長は、“非常に丁寧な方”という印象です。ご依頼した財務・法務資料のご提出は的確かつ迅速で、管理レベルの高さは過去に担当させていただいた中でもトップクラスでした。細かい点まで具体的にご質問してくださり、コミュニケーションも非常にスムーズでしたので、「ぜひいつかご一緒にお仕事ができれば」と強く感じていました。

ただ、初めてお会いした段階では、特に差し迫ったお困り事がある様子ではなかったため、M&Aが急を要する話ではないと認識しておりました。そのため、具体的なタイミングはお任せし、いつでも動けるよう準備を進めていくというスタンスで、企業概要書の作成や企業価値評価のための資料のやり取り、定期的な面談などを通じて関係を築いていました。2024年の秋頃に社名を公開してからは、お相手先からのご提案もより具体的なものとなっていき、2025年の3月に成約というスピード感で話が進むとは、まったく予想していませんでした。

中村さんの印象をお聞かせください。

大城

具体的に話が進むにつれて、「この方はとてもしっかりされているな」と感じました。まるで、「浜松トーヨー住器を私よりもよく知っているのではないか」と思うほどでした。

M&Aプロセスはどのように進んでいったのでしょうか?

大城
大城

社名を公開してからは、多くの会社からお話をいただき、その中からどの企業とより具体的にお話を進めるか検討するなど、話が本格化していきました。当初は、同業者に情報が渡ることで根も葉もない噂が立つことを懸念し、同業の企業へのアプローチは控えていただくようお願いしており、実際に初期の候補からは外していました。

しかし、最終的に成約したお相手先は、浜松トーヨー住器と同じマドリエ加盟店(LIXILのフランチャイズチェーン)である同業者だったのです。オファーをいただいた当初は、ビル関連の部門が中心の会社だと認識していたので、お会いすることに支障はないと判断しました。お相手が多角的に事業展開をされているため、同じ事業も手がけていらっしゃるとは気付かなかったのです。その後、実際にお会いする前に中村さんから詳しいご説明を受け、私自身も調べた結果、同業者であることが明確になりました。それでも、事業を展開されている地域が浜松トーヨー住器とは異なりましたし、当初の方針とは異なるものの、お話を進めることに問題はないだろうと最終的には考えました。これは本当に不思議なご縁だと感じましたね。結果的に、私たちと同じ事業を深く理解されている点が、今回のM&Aを決断する上で非常に大きな要因となりました。やはり、単なる情報収集の段階から一歩踏み出し、情報を開示して具体的なプロセスを進めたからこそ、M&Aに対する自身の意識も固まってきたのだと実感しています。良いお話とこのご縁に恵まれたことで、最終的にアクセルを踏むことができたのです。

マドリエ加盟店と必ず一緒になりたいと強く思っていたわけではありませんが、「もしご縁があるならそれが最善だろう」とは以前から考えていたのです。実は、面識のある加盟店の経営者も何人かいるため、直接話を持ちかけることも検討しましたが、株式譲渡などの専門的な手続きを考えると、やはりM&A仲介会社に入っていただくべきだと判断し、控えていた経緯があります。加盟店同士であれば、オーナーと代表者の変更のみのため、社員にとっての大きな環境変化やそれにともなう戸惑い、ストレスを最小限にできると考えました。もちろん、お客様への影響も少ないはずです。

また、決算情報もある程度共有できるので、相手の財務状況を把握しやすく信用がおけます。さらに、8割方のことは共通認識としてお互いの話を理解できるだろうという安心感もありました。もし相手が違っていたら、今回のM&Aは成立しなかったかもしれません。

双方が理想的と感じるパートナーに出会えた奇跡

ここからは、譲受企業である株式会社岡島ホールディングス 岡島 寿樹 様にも参加いただき、お話を伺います。まずは事業についてご紹介いただけますか。

岡島
株式会社岡島ホールディングス 代表取締役 岡島 寿樹 様:(以下、岡島)

岡島ホールディングスの起源は、私の祖父が「岡島建具店」として始めた建具屋にあり、その後、叔父と父が会社組織として大きく発展させました。ビル用建材や住宅用建材など事業の拡大に伴い分社化を進め、グループ経営体制を築いてきました。多くの失敗も経験しましたが、さまざまな挑戦を重ねながら現在の形に至っています。昨年まで、複数のグループ会社の代表を私が務めていましたが、これからはグループとして多様な事業に挑戦するため、約1年前から各事業会社をそれぞれ強化し、次世代のリーダーを育てる方針を打ち出しています。

どのようなきっかけでM&Aの検討を進められたのでしょうか。

岡島

M&Aについては以前から関心を持っていましたが、その背景には、過去に太陽光発電事業を立ち上げたときの事業経験が大きく影響しています。一人で始めた事業でしたが、世の中の追い風もあって、ある程度の成果が出ていました。そんな矢先、創業者の叔父から「なぜもっと人材を投入して積極的に事業展開しないのか」と問われたのです。当時の私は、着実に少しずつ事業を拡大していくイメージを持っていたため、戸惑ったのですが、「だから大して伸びないのだ。大きなビジネスチャンスがあるのに」と重ねて指摘されたのです。当時はその言葉の重みを理解できませんでしたが、後に振り返ると叔父の指摘通り、「あの事業拡大の好機にこそ人材や資金といったリソースを積極的に投入すべきだった」と痛感しました。それができなかったことへの心残りがずっとありました。そして、また一から同じような挑戦をする難しさを考えると、「既にその分野で実績のある企業と手を組む方がはるかに効率的ではないか」という考えに至ったのです。M&Aの有効性については早くから認識していましたが、やはりご縁がなければ進みません。今回は組織を変革していくという私自身の強い決意と、浜松トーヨー住器という素晴らしいお話をいただいた機会が重なりました。これまでも新しいことに積極的に取り組んできましたが、今回のM&Aも新たな挑戦の一つと捉えています。

今回のお相手とお話を進めようと思った決め手を教えてください。

大城

トップ面談では、岡島社長に本当に丁寧にご対応いただき、ご説明からも誠意と熱意がひしひしと伝わってきました。やはり、実際にお会いして感じた岡島社長への信頼感や相性の良さが、最終的な決め手として最も大きかったように思います。もちろん、さまざまな条件が合致したことも重要でしたが、特に同じマドリエ加盟店であったことは、話のスムーズな進展や情報共有のしやすさといった面で大きな利点であり、複数の会社とトップ面談をさせていただいた中で、岡島社長の会社に特に強い魅力を感じる要因となりました。その結果、2025年1月末頃には岡島社長の会社とご一緒したいという気持ちが固まり、その後、意向表明をいただいてからは、手続きもスムーズに進みました。

大城 岡島
岡島

私どもにとっても浜松トーヨー住器が同じマドリエ加盟店だったことが、まず大きな決め手となりました。まったくの初対面ではなく、加盟店同士であれば7〜8割方は共通言語で意思疎通ができ、無用な摩擦も避けられるだろうという大きな安心感と期待がありました。マドリエ加盟店を絶対条件としていたわけではありませんが、さまざまなお話をいただく中で、直感的に「これだ」と感じる相性の良さがありました。さらに、「同業者で、かつ自社の営業エリア外」という当社の理想形にも合致していました。中村さんにはかなり幅広くお相手を探していただいていた中で、これほどピンポイントで理想的なお話をいただけたのは幸運であり、この貴重なご縁を活かし、絶対にまとめるべき重要なM&Aだと確信しました。

加えて、大城社長のお人柄も重要な要素でした。事前に中村さんから「慎重な一面もお持ちですが、しっかり話を聞いてご理解されれば前向きに進む方」と伺っていましたが、実際にお会いした大城社長はまさにその通りで、真摯にご対応いただき、一つひとつを確実に進められる誠実な方だと感じました。

最終的な決定打となったのが工場を見学させていただいたときの体験です。隅々まで整理整頓が行き届き、細かなルールが従業員の皆様に徹底されている様子は、言葉以上に「本当に実直な仕事をされる会社だ」という強い信頼感を抱かせました。その細やかな経営姿勢は、自社では徹底しきれていない点でもあり、深く感銘を受けました。この光景を目の当たりにし、「この会社となら間違いなく良い関係を築ける、ぜひご一緒させていただきたい」という気持ちが確固たるものになったのです。

互いの歴史と強みを尊重し、手を取り合って未来へ向かう

成約直後の率直なお気持ちや今後に向けた思いをお聞かせください。

大城

私には既に嫁いだ娘が一人おりますが、成約の日は娘を嫁に出したときと同じような心境でした。寂しさというよりも、何よりもまず社員たちが幸せになってくれることを願い、「どうかよろしくお願いいたします。何とか幸せにしてやってください」と託す気持ちで一杯でした。今後の会社運営については、急激な変化は避けたいと考えています。一番大切なのは社員の流出を防ぐことであり、そこには細心の注意を払っています。徐々にではありますが、変革すべきところは変革し、1年ほどかけて新しい形を築いていきたい所存です。

幸いなことに、現状では社員に大きな影響はなく、むしろ良い刺激になっていると感じています。成約は一つの区切りでしたが、今は岡島ホールディングスとご一緒させていただくという、新たな気持ちでいます。これまでの28年間は、ある意味で自己流の経営判断が中心でした。サラリーマン時代とは異なり、すべての責任を自身で負う形で経営にあたってきましたが、これからは岡島社長や会長、そしてグループの皆様からご指導をいただきながら、会社をさらに発展させていくことが私の務めだと考えています。

岡島

大城社長には引き続き取締役社長として経営の舵を取っていただいており、ほとんどの業務はこれまで通り円滑に進んでいると認識しています。私自身はホールディングスの代表という形で関与させていただいておりますが、互いを理解し尊重し合いながら、時間をかけて徐々に理想の形を築いていこうとしている段階です。まだ本当に始まったばかりですね。M&Aを検討し始めた当初は、叔父や父が築き上げた健全な財務基盤をより有効に活用し、会社を成長させていくというイメージを強く持っていました。良いご縁があれば、お相手企業にグループに加わっていただき、共に成長することが、私たちにとってさらなる発展に繋がる手段だと考えていたのです。

岡島

しかし、先ほどの大城社長の「娘を嫁に」というお言葉に非常に胸を打たれ、M&Aに対する考え方が変わりました。「会社を大きくしたいから一緒になるのではない」と、今は深く感じています。もちろん、今後も2社、3社と新たな仲間を迎え入れていきたいという目標はありますが、その際には「互いに価値を感じられるお相手と手を取り合い、共に成長していく」ことを何よりも重視したいと考えています。単に企業数や規模を追い求め、「大きなグループだ」と言われることが私たちの目標ではありません。それよりも、一社一社と一緒になることの真のメリットや価値を心から共感し合えるような、特徴ある企業と深く繋がり、お互いに得られるものを増やしていくこと。そうした質の高い連携こそが重要だと考えています。今回の浜松トーヨー住器とのM&Aは、まさにそうした理想の連携を築く上で大きな学びの機会であり、私たちグループにとっても非常に大きな価値があると感じています。私たち自身、グループとしての規模はそれなりになりましたが、至らない点も多々ありますので、大城社長や浜松トーヨー住器の皆様から多くのことを教えていただきたいと考えています。

今回の取り組みにおけるM&Aキャピタルパートナーズの支援を、どのようにご評価いただいていますか。

大城

株式の売買やさまざまなプロセスは、専門知識を持つプロの仲介業者なしでは円滑に進まないものだと改めて痛感しました。多くのM&A仲介会社からダイレクトメールが届いたり、お電話をいただいたりする中で、M&Aキャピタルパートナーズは特にブランド力があり、信頼できる会社だと当初から感じていました。手数料もそれなりにかかるとは承知していましたが、それは確かなサポートへの対価であり、信頼の証だと考えております。

中村 大城 岡島

特に、プロセス後半からの中村さんのご尽力には目を見張るものがありました。浜松トーヨー住器のことを私以上に深く理解され、非常にご多忙な中でも細部にまで行き届いた配慮ときめ細やかな対応でサポートしていただき、本当に助けられました。担当者の方の力量がM&Aの成否に大きく影響すると実感しましたし、中村さんでなければ今回のM&Aはこれほどスムーズには進まなかったかもしれません。会社の財務状況や決算情報などをすべて開示することに、最初から抵抗がなかったわけではありません。中村さんとは、一つひとつの着実なやり取りや適切なタイミングでの的確なアドバイスを通じて徐々に信頼関係を築くことができ、どのような情報でも安心してお伝えできるようになりました。お相手企業に正確な情報を伝えることが肝要だと理解していましたので、求められた資料はすべて迅速に提出させていただきました。振り返ると、中村さんはスケジュール的にもかなりご無理をされていたのではないかと拝察しており、その点でも深く感謝しております。

岡島

本当に大城社長と同じ感覚です。もし再びM&Aを検討する機会があれば、またお願いしたいと強く思っております。中村さんのレスポンスの早さや対応の的確さには感服するばかりで、「うちの営業担当者が同じレベルで対応できているだろうか」と、省みることも多々ありました。例えば、お電話で20分、30分と多岐にわたるお話をさせていただいた際も、その内容を後からメールで的確にまとめてくださるなど、こちらがお願いするまでもなく準備が整っており、結果としてお互いに「言った」「言わない」という認識の齟齬も一切生じませんでした。現時点で何らトラブルなくスムーズに進んでいるのも、そういったきめ細やかな対応の積み重ねが、現在の良好な状況に繋がっているのだと深く感謝しております。本当に素晴らしい手腕だと実感しています。

ありがとうございます。最後に、これからM&Aを検討する経営者の方々にメッセージをお願いします。

大城
大城

これからM&Aを検討される経営者の皆様に、私自身の経験から3点ほどお伝えしたいことがあります。1つ目は、社員とお客様双方にとって、最も働きやすく、安心して関係を継続できる環境を維持することを最優先に考えていただきたいということです。私自身これがM&Aを考える上で最も大切な核となる部分だと感じています。2つ目は、タイミングの重要性です。私自身は、M&Aはもっと先のことだと漠然と考えていましたが、将来の特定の時期が必ずしも最適なタイミングとは限りません。その時々で状況を見極め、的確な判断を下すことが非常に重要だと痛感しました。3つ目は、信頼できる良いM&A仲介会社に恵まれることの重要性です。この記事を読まれている方はM&Aにご興味をお持ちなのだと思いますが、何よりも信頼できるパートナーを選ぶことが肝要です。M&Aのプロセスが進むと、自社の内情に深く関わっていただき、ときには会社の代行のような役割までお願いすることになります。だからこそ、心から信頼できるパートナーを見つけることが、M&A成功への鍵だと強く感じています。いくら同業者同士であっても、それだけではお互いの内情まで深く理解できるわけではありません。そのため、M&A仲介会社の方が間に入り、一つひとつの段階を丁寧に進め、詳細な話し合いを重ねていくプロセスが不可欠です。そうした地道な積み重ねが、最終的な成功に繋がるのだと改めて感じました。

岡島
岡島

M&Aにおいて仲介会社は絶対に必要だと痛感しました。直接交渉によって仲介手数料を節約できるというお考えも理解できますし、かつては私どももそのように考えていた時期がありました。しかし、今回のM&Aを経験して強く実感したのは、もし仲介会社のサポートがなければ、買収自体は成功したとしても、その後の良好な関係構築や期待されるシナジーの創出は難しかったであろうということです。間に入っていただくことで、当事者同士が感情的なわだかまりを残すことなく、本当にスッキリとした状態で新たなスタートを切ることができるのです。今回、M&Aキャピタルパートナーズには、まさにそのような理想的な状態を整えていただいたと深く感謝しております。仮に、後々何らかの問題が生じて社員の流出といった深刻な事態を招いてしまえば、当初の仲介手数料を惜しんだことは何の意味もなさなくなります。そうした将来的なリスクや不安を抱えることなくM&Aを進められたことは、計り知れないほど大きな価値があったと確信しています。買い手側の立場から、これからM&Aを検討される皆様に特にお伝えしたいのは、この“M&A仲介会社の重要性”に他なりません。

中村
中村

M&Aのタイミングを最終的に決定されるのは、オーナー様ご自身です。私ども仲介者がそのご判断をコントロールしたり、無理に急かしたりするようなことは決してございません。しかし、オーナー様が「ここぞ」という最良のタイミングでいつでも動けるよう、日頃から密なコミュニケーションを通じてリレーションを深め、万全の準備を整えておくことが私たちの重要な役割だと考えています。

今回も、そのような思いでサポートさせていただきました。近年、M&Aの活用は広がりを見せており、以前に比べてご検討されるオーナー様も増えています。しかしながら、依然として心理的なハードルは高く、検討の第一歩を踏み出せない方が多くいらっしゃるのもまた事実です。事業の将来を考えた際、廃業、親族承継、役職員承継、そしてM&Aという主に4つの選択肢がございます。このうち廃業や社内での承継は、自社内である程度具体的な将来像を描きやすい側面がありますが、M&Aは常にお相手企業様あってのことであり、自社単独では完結し得ないという大きな特性があります。だからこそ、オーナー様がこれらの選択肢を公平にかつ深く比較検討できるよう、M&Aに関する解像度の高い情報を提供し、オーナー様が最善のご決断を下せるよう多角的な視点から誠心誠意サポートさせていただいております。今後も、お一人おひとりのオーナー様にとってまさに「一世一代のご決断」となるM&Aを、真摯に、そして全力で支えさせていただく所存です。


 

文:伊藤 秋廣 写真:臼井 美喜夫 取材日:2025/5/19

担当者プロフィール

  • 企業情報部 主任 中村 喜人

    企業情報部主任中村 喜人

    新卒でメガバンクへ入行。法人営業担当として中小~大企業に対し、融資、運用、事業承継提案、海外取引支援等に従事。当社入社後は一貫してM&Aアドバイザー業務に従事し、医療法人、介護、IT、工事業界等の幅広い分野において経験と実績を有する。

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