「お客様のために本当に良い商品を届ける」。
会社の安定性とマーケティング力を高め、
化粧品をより多くの人に届けるための決断
安心安全かつ品質重視の化粧品開発から販売まで一貫して行ってきたピースオブシャイン株式会社。2024年12月、同社はさらなる顧客満足度や認知度向上、業務拡大のため日本精工硝子株式会社とのM&Aを選択した。その経緯と今後の展望についてピースオブシャイン株式会社 代表取締役 沼辺 大地 様に伺った。
-
譲渡企業
- 会社名
- ピースオブシャイン株式会社
- 所在地
- 千葉県千葉市
- 設立
- 2016年
- 事業内容
- 化粧品製造販売、通信販売、卸販売(海外)
- 従業員数
- 20名以下
- M&Aの検討理由
- マーケティング力、人材採用・育成力等を高め更なる成長・発展をするため
-
譲受企業
- 会社名
- 日本精工硝子株式会社
- 所在地
- 大阪府大阪市
- 設立
- 1942年(1895年創業)
- 事業内容
- 硝子製品の製造・加工・販売、酒類の販売、化粧品の製造販売等
- 従業員数
- 135名
- M&Aの検討理由
- 化粧品製造事業への進出、事業拡大のため
研究開発から販売までシームレスに展開する化粧品事業
ピースオブシャイン株式会社の創業経緯と事業内容を教えていただけますか。

弊社は主にスキンケア化粧品を一般のお客様向けに通信販売しています。
私は以前、化粧品のOEM工場で働いており、研究開発、製造、品質管理などを一通り経験しました。さらに化粧品が流通するさまざまな販売チャネルである代理店営業や百貨店ビジネスに挑戦することで、営業やマーケティングスキルを磨いてきました。これらの総合的な経験を活かし、私自身が化粧品の成分を組み合わせて処方から研究開発し、「本当に作りたい化粧品」をイチから作っているのがピースオブシャインの特徴です。
また、美容が大好きな私の妻は、化粧品やコスメ、美容医療など美容に関連するありとあらゆるものを使ってきています。
その妻が歴代の中でも一番良いと感じ、自信を持ってお勧めできる化粧品を「お客様にも届けたい」というコンセプトで始めており、妻は副社長としてピースオブシャインのPRを担当してくれています。
「良い商品」という定義は人によって異なりますが、我々が良いと思えるのは、夫が社長の会社の商品であっても奥さんが自分でお金を出してでも、ずっと使い続けたいと思える安心・安全な商品のことです。
起業時は資金が少なかったので、広告費をかけずに事業を進めるためにはどうすれば良いか悩みましたが、まずは思いをしっかり込めたこだわりの化粧品をお客様に届けるべく邁進してきました。

キャリアを重ねるにつれて化粧品事業で独立したいという気持ちが湧いてきたのでしょうか。

そうですね。化粧品の代理店営業時代は、ありがたいことに売り上げが好調で、営業としての成績は良かったです。けれど、本当は化粧品の中身をよく知らないのに、化粧品の良さをアピールしている自分に違和感を覚えるようになりました。自分自身が本当に良いと思えるものを納得した状態で販売しなければ、本物の営業と言えない気がして。
そのため、さまざまなメーカーから依頼を受けて化粧品の研究や製造を行うOEM工場に転職しました。そこで化粧品の販売だけでなく開発や製造のノウハウを学んだことから、「いつしか自分の理想とする化粧品を作りたい」という気持ちが芽生えました。
その後、さらなるキャリアを積むために外資系化粧品ブランド企業へと転職しました。実績を評価されて大手外資系化粧品ブランド企業からヘッドハンティングを受けていたのですが、東日本大震災が起こったことで風向きが変わりました。
東北出身の私の父は、当時、小さな会社を経営していて、「震災の影響で会社が潰れそうなので助けてほしい」と、父は母を経由して私に懇願してきたのです。ここで親孝行をせずに会社を手伝わなかったら一生後悔すると思い、ヘッドハンティングされた会社を諦め、父の会社に入社しました。しかし、父と経営方針が合わず衝突してしまい、家族関係の悪化も危惧したため、父の会社からは身を引き、以前から考えていた化粧品事業で起業しました。
イチから始めた化粧品事業は試行錯誤の連続で大変でしたが、化粧品の原料メーカーや製造を依頼できる工場、容器などを作るメーカーの3社のご協力のおかげで、何とか始めることができました。
事業はどのように軌道に乗っていったのでしょうか。
実はピースオブシャインを立ち上げた当時は下の子が生まれたばかりで、貯金も限られている中、3歳と0歳の子育てをしながらイチから起業するのは非常に厳しい状況でした。それでも妻が「あなたなら絶対にできるから大丈夫、私も協力するから」と心強く後押ししてくれたので、始めることができたのです。
最初の頃は、自宅の一室で研究開発から製造、受注、荷造り、梱包、お客様対応などを全て行い、夜中には妻にも手伝ってもらうほど、朝から晩まで忙しかったです。半年間くらいは給料がなく、全く売れない日や、1日に1件か2件しか売れない日もザラにありました。
ところが、徐々に注文が増えて1日の受注が100件を超えるようになると、家の廊下に発送する荷物がズラッと並ぶようになりました。毎日の集荷を担当してくれた宅配会社のドライバーの方も、発注の増加を一緒に喜んで応援してくれたのが嬉しかったですね。
そこから軌道に乗ってオフィスを構え、スタッフを雇えるようになり、梱包作業を外注するなど組織化を進め、たくさんのお客様にご愛顧いただけるようになりました。
ここまで支えてくれた妻の力は本当に大きくて、私の一番の良き理解者であり、応援し続けてくれていることに感謝しています。
昔から、私は周囲の方に恵まれるタイプだと感じており、ピンチになると必ず助けてくれる方が現れます。さまざまなターニングポイントで助けていただけるのは、人に恵まれる能力が私にあるのかもしれませんね。
信頼できるアドバイザーとの出会いでM&Aを決心
事業が順調に推移する中で、どのようなきっかけからM&Aを意識するようになったのでしょうか。
まず、M&Aを検討したきっかけはM&Aキャピタルパートナーズから営業があったからです。その後、他の会社からも同様に営業があったため、一通りM&Aの話は聞いてみました。
会社もこれからという時期で忙しかったのですが、3年ほど前に妻が病気になってしまい、仕事と家庭の両立が難しくなってしまったのもあり、私自身が家族のために時間を割く必要があると判断してM&Aを検討し始めました。
その後、妻が元気になったので一旦M&Aの検討を中止した経緯があります。
その後、改めてM&Aを検討されたきっかけを教えてください。

私はビジネスにおいても「人柄」が大切だと思っています。人柄が良くないと納得できる良い結果は得られないと考えているためです。今回のM&Aに関しても一番大きなきっかけはM&Aキャピタルパートナーズの井野さんとの出会いで、ピースオブシャインはもちろんのこと、沼辺家の将来やお相手先の将来も背負う覚悟を持って対応してくれていることが伝わってきたので、安心して任せられると思ったのです。
実は、井野さん以外にも他社の複数の仲介会社の方と話したのですが、あまりしっくりこなくて。良い条件を引き出してくれるという面では頼もしく思えても、どこかビジネス的に割り切った感じだったり、一緒に進めていくビジョンが見えなかったりしました。
その点、井野さんは仕事ができるのは間違いないのですが、「この人は良い!」と直感的に感じるものがあり、信用できると思いました。
また、井野さんと話す中で、ピースオブシャインは「人材育成」が課題だとより強く感じました。
少数精鋭で運営していて、私自身がマンパワー的に対応しきれない状況なので、人を採用しても育成する時間はありません。M&Aをきっかけに人材育成を強化できるのではないかと考え、踏み切りました。
信頼できるパートナーを見極めるポイントは何でしょうか。
一言で言うと人間性ですね。井野さんの魅力は、「相手先の人生を丸ごと背負う」という気概を持っているところです。数字だけで判断するのではなく、数字以外の部分もたくさん考慮して、相手の将来をしっかりと見据えています。この気持ちがあるかないかで、結果は大きく変わると思うのです。提案内容や会話の端々からも分かりますが、人間としての裏表がなく、誠意を持って対応してくれるところも素敵なところですね。
また、井野さんは相手を見極めた上で常に適切な対応をしているのだと思います。ピースオブシャインに関して私が思っていることと、井野さんが考えていることが完全に合致していたことには非常に驚きました。
ピースオブシャインに足りないところや将来性を考えたときの改善策の方向性も同じでしたね。創業者としての固定観念を打破するためにも、M&Aで新しい風を入れる必要があるのではないかと悩む私の心情を察した上で理解を示してくれて、さらにサポートしてくれるのはありがたかったです。
課題と強みを見極めた提案で最適なマッチングを実現
ここからは担当アドバイザーの井野さんにも加わっていただきます。井野さんは、ピースオブシャインの課題や強みをどのように捉えて、どのようなお相手を提案されましたか。

まず、沼辺様は初対面でも誠実さを感じるほど人間性が素晴らしいのはもちろんですが、ビジネスパーソンとしても群を抜く優秀さを僭越ながら感じました。純度の高い、ポイントを外さない完璧な情報をいただいていたので、これを活かしたご提案をすることは至極当然のことでした。
ピースオブシャインは少数精鋭でマーケティングコストをかけず、リピート率の高い商品を提供できるビジネスモデルができています。ですが、沼辺様は社長業でフル回転されているので余白がなくリソースが不足していました。そういった中で継続性と安定性を考えると人材強化、ひいては採用、育成が課題と感じました。そのためM&Aをきっかけに人材育成を強化できれば、さらなる飛躍へと繋がるのではないかと考えました。
また、沼辺様はお客様のことを第一に考えて「お客様のために本当によい商品を届けたい」という思いが強く、努力を惜しまない方です。だからこそ、お客様ができる限り長く商品を使えるように、会社の安定性を考える必要がありました。
さらに、マーケティングにおいて広告宣伝費をほとんど使っていないので、さらなる成長の余地がありました。
副社長である奥様がSNSなどを活用して商品の宣伝をしていますが、化粧品には他にもさまざまな売り方があります。BtoCブランドとしての訴求力は非常に高いので、広告宣伝戦略を変えればより一層成長できる「とてつもないポテンシャルを秘めている会社」だと思い、今後の成長を想像してワクワクしながらご支援をさせていただいていました。
現状のポテンシャルと課題をお相手先に共有し、ともに課題に取り組みながらも、ともにポテンシャルを開花できる会社と面談する条件で進めていきました。
なぜ今回のお相手になったのか、提案した理由などを教えてください。
数社ご紹介させていただく中で最終的に決定したのは、大阪で化粧品のガラス容器等を作っている創業130年の日本精工硝子株式会社というガラスの老舗企業です。
業界のリーディングカンパニーである日本精工硝子は、財務体質が非常に良く安定しているのですが、社長が代替わりしたばかりで今後どう成長していくかを検討されている段階でした。
また、自社で化粧品を作るのは難しいとのことでしたので、M&Aで良い会社とご縁があればとお考えでした。
130年の歴史と優れた財務体質があるため、人材育成やマーケティング戦略の観点からも、熱意を持って一緒に取り組んでくれる様子も伺えました。これらが、双方ともにシナジーがあると感じた理由です。
日本精工硝子の幹部の方も、非常に優秀かつお人柄が素敵だったので、この方々なら沼辺様と合うと思い、面談を設定しました。
沼辺様はこの提案を受けてどう思われましたか。

日本精工硝子は、社長も幹部の方も第一印象がとても良く、フランクでありながら人として実直に接してくれる姿勢を感じました。
また、化粧品のガラス容器の大手企業でいらっしゃるので馴染みがあり、化粧品販売をしている弊社と親和性が高い会社だったのも大きいです。そして、130年も継続してこられた歴史は、我々にとって必ず学ぶべきものがあると思いました。
日本精工硝子の社長は、「一緒に仕事をするなら最後まで対応していく」というような気概のある方でしたので、そのお人柄なら一緒にやっていけると思い、お願いすることにしました。
その後は互いに信頼し合っていたので、デューデリジェンスも含めて特に大きな問題なくスムーズに進みましたね。
ただ、井野さん以外の方がパートナーだったら、この結果に辿り着かずに途中で諦めていたかもしれません。というのも井野さんは、ただ契約をすれば良いという観点ではなく、お互いの会社にとってどうシナジーが出て、いかにプラスになるのかを第一に考えてくださったからです。だからこそ諦めずにマッチングする会社を探し続けてくれて、ご紹介くださったのが実を結んだのだと思います。
井野さんの存在が、沼辺様にとってかなり大きかったのですね。

そうですね。タイミングという運命的なものもありますが、そのタイミングを引き寄せたのは、井野さんが諦めず、我々のために努力を惜しまなかった誠実さがあったからだと感じています。
実は、井野さんが懸命に動いてくれても納得できるM&A先が見つからなければ、もうM&Aは諦めて、自分で社内の体制を立て直してやるしかないと腹を括っていました。井野さんでダメなら、もう誰に頼んでもダメだと思っていたので。
ここまで信頼して任せてくださり、本当にありがとうございます。M&Aは、経営者や会社だけでなく、取引先やその先のお客様など、たくさんの方が関わっています。たくさんの方の人生を背負った責任重大な仕事をしているので、私が本気で取り組むのは当たり前のことだと思っています。
ですが、沼辺様からありがたいお言葉をたくさんいただきまして、率直にとても嬉しく感じています。
成約後に感じた感謝の思いと今後の展望
成約してどのようなお気持ちですか。

「とうとうこの時が来たか」と思いましたね。人生の節目というか、一つの区切りを迎えた達成感を感じ、喜びました。そして、真っ先に井野さんに感謝し、支えてくれた妻や父や母、取引先にも感謝しました。
また、ご愛顧くださるたくさんのお客様がいたからこそ、このM&Aを選択できましたので、お客様にも感謝しています。そして同時に、スタッフが不安なく働けるように今後もケアをしなければならないと思いました。
先日、副社長である妻から手紙をもらいました。
私のことを仕事の面でも夫としても信頼していて、苦労もあったと思うけれど頑張ってくれてありがとうという内容でしたね。
奥様は副社長や広告業務、ご家庭のことや子育てもされていながら、そのような言葉をかけてくださるのは、本当に沼辺様が信頼されていて、頼りになる存在だと感じられているからだと思います。
そうですね。支えてくれた妻はとてもありがたいですし、感謝の気持ちでいっぱいです。
経営者としてどのような展望をお持ちですか。
まず、ステップアップするための社内の土台作りが必要だと思っています。課題があった人材育成がやはり大切なので、現在人材採用と育成を取り組み始めています。さらに、今まで広告をあまり運用してこなかったので、今後はこの分野でも挑戦をして事業を拡大したいですね。
今があるのはお客様のおかげですので、今年はお客様に感謝を伝える会を開催したいと思っています。
ピースオブシャインはリピーターのお客様が非常に多く、創業当時からご愛顧くださるお客様がたくさんいらっしゃります。インフルエンサーの方に依頼してPRをするのではなく、本当にピースオブシャインを愛してくださるお客様に、感謝を伝える会を開きたいと思っています。
そしてその様子を動画配信して、新規のお客様も獲得できればと思っています。日本精工硝子の皆さんも共感してくださっているので心強い限りです。
売上が伸びて事業が拡大しても、お客様をないがしろにするようなことは絶対にしたくないので、ピースオブシャインを使い続けて良かったと思ってもらえるように、お客様に喜んでもらう場をこれからも考えていきたいです。
最後に、読者の方々に向けてメッセージをいただけますか。

M&Aは日本でも増えてきましたが、どうすれば良いのか悩んでいる方は多いと思いますし、金額面で良い条件を提示されるケースも多く、迷ってしまう要因の一つだと思います。
しかしながら、まずは条件面ではなく、「人」を見て選ぶことが大切です。担当者がどのような方なのかが最も重要だと考えます。例えば井野さんのように、それぞれの会社に合わせた提案ができる人でなければ、M&Aをしても意味がないのかもしれません。「経営者の将来を背負う覚悟」があるかどうか、根本的に大事な部分を見極める必要があると感じます。
課題感があるのであれば、色眼鏡で見ないで一度相談して、提案を受けてみることをおすすめします。もしかしたら、その提案を聞くだけでも会社にとってプラスになるかもしれません。
私個人としても会社としても、井野さんは大きな一歩を踏み出す原動力になってくれました。良き理解者であり良き支援者として、利害関係がある中でも、本当に誠実に丁寧に対応していただきました。私は、M&Aキャピタルパートナーズを選んで心から良かったと思っています。ぜひ相談してみてください。

お客様のために本当に良いものを作りたいという思いが強いこと、そして最も身近な人に応援し続けてもらえていることは、沼辺様のお人柄の素晴らしさを物語っています。
沼辺様とのお仕事を通して、私はそんなことをずっと思っていました。
このような素晴らしい方々と巡り合えたことが、私の一番の財産であり、本当にありがたい仕事をさせていただいていると改めて感じることができました。
お客様の人生を背負っていることを再度実感し、より一層気を引き締めていきたいと思います。
私自身、M&Aという選択肢は、唯一無二のものだとは思っていません。あくまで選択肢の一つであり、M&Aにもメリットと留意点があります。
M&Aで得られる資本力、人材採用力、新しい戦略を作ることができる点は、他の選択肢にはないメリットです。
迷われている方には、ぜひ様々な選択肢を比較検討し、会社にとって最良の選択をしていただきたいです。選ばれたものが会社の状況において、ベストなソリューションだと考えます。
私は、その選択肢の一つを、きちんと提供できればと思っています。全力でご提案させていただきますので、まずはお気軽にご相談いただければと思います。

文:伊藤 秋廣 写真:小野 綾子 取材日:2025/1/27
基本合意まで無料
事業承継・譲渡売却はお気軽にご相談ください。