

選択肢の一つから踏み出した一歩
2000年に設立し、ソフトウェア受託開発を主力としてきた株式会社システム・エムズ。システム開発の設計から保守まで一貫して手掛けることによって多くの企業の課題解決に貢献している。2024年、同社は株式会社L is Bへ株式譲渡によるM&Aを行った。M&Aの経緯と今後の展望について、株式会社システム・エムズ 横田 代表取締役、株式会社L is B 横井 代表取締役社長CEOらに伺った。
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譲渡企業
- 会社名
- 株式会社システム・エムズ
- 所在地
- 岡山県笠岡市
- 設立
- 2000年(創業1997年)
事業内容
システム開発、システムコンサルタント、インフラ構築設計保守、ホームページ制作- 資本金
- 1,000万円
- 従業員数
- 17名
- M&Aの検討理由
- 将来的な後継者不在
企業の更なる成長発展のため
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譲受企業
- 会社名
- 株式会社L is B
(東京証券取引所グロース市場上場) - 所在地
- 東京都千代田区
- 設立
- 2010年
事業内容- クラウドサービスの開発・提供及び運営サポート、スマートフォン・タブレット・パソコンアプリケーション開発、Webシステム開発及び構築サポート等
- 資本金
- 629,867,008円
- 従業員数
- 122名(グループ会社含む)
- M&Aの検討理由
- 事業領域の拡大のため
提案力と技術力で顧客の信頼を積み重ねてきたシステム開発
創業の経緯と事業についてお聞かせいただけますでしょうか。

27年前に地元の岡山にあるIT企業を退職した後、依頼を受けてパソコン教室の講師をしていました。その教室の生徒さんの中に「会社のシステム開発をしたい」というご要望を持つ大企業の役職者の方がいらっしゃいました。
しかし、思ったよりも難しく感じられたようで、4回目の講習でスキル習得を諦めてしまったのです。「横田さん、私にはとてもできると思えないので、代わりにシステム開発をしてもらえませんか」という一言をきっかけにシステム開発を受託したことが、今の事業につながっています。
ご依頼されたシステムを約2ヶ月で完成させて納品したところ「クオリティが高い」と喜んでいただけました。なぜなら、膨大な手作業のため連日徹夜でやらなければならないレベルの仕事が、「ボタン一つで解決する」画期的なシステムだったからです。人件費を大幅に削減ができたことを評価され、「この仕事には最低限見積もっても、これだけの価値がありますよ」と、翌日に400万円を振り込んでくださったのです。時給3,000円ほどのパソコン教室の講師をしていた私は、このような大金を一度にいただけたことに心底驚きました。
その後も次々と案件を紹介していただき、フリーランスとしてシステム開発の仕事をするようになりました。次第に一人では抱えきれないほどの大きな仕事を各所から依頼されるようになったため、当時パソコン教室で一緒に講師をしていた仲間やフリーランス仲間と協力してさまざまな案件を同時並行で取り組んでいくようになりました。売り上げは着実に伸びていき、年間で売り上げが1,000万円ほどになったため2000年に法人化・組織化し現在に至ります。
「今の案件が終わる前に次の依頼が来る」というサイクルが不思議と続いて、途切れることなく仕事が舞い込んできました。東日本大震災のときは例外ですが、それ以外では常に黒字を継続しておりました。
横田様ご自身やシステム・エムズの強みはどのようなところだと思われますか。
お客様の要望に対する「提案力」が評価されていると感じています。「他社に断られたが、横田さんなら解決してくれると聞いた」とご依頼いただくことも多いです。さまざまな発想で提案し、それを実現するために、「ともに働く仲間たちに恵まれてきた」ことも強みの一つです。社員はもちろん、協力企業の方々とも手を取り合って仕事をしてきました。
それだけでなく、「お客様にも恵まれている」と感じています。直接取引のあるお客様は商社やコンベンション会社ですが、その先のお客様は優良企業と呼ばれる会社ばかりです。
また、一度でも取引したことがある企業で、現在まったく取引がない事例はほとんどありません。会社を設立して27年経ちますが、保守や追加開発などの形で継続的に関係を維持することができていることは、ありがたい限りです。
事業承継と、属人化からの脱却。組織改革の必要性に気付いたコロナ禍
どのようなきっかけからM&Aを意識するようになったのでしょうか。

実は、私の父が52歳を目前に他界したこともあり、52歳以降の自分の人生がリアルに想像できませんでした。2年前に私自身が52歳になったとき、「私自身もいつどうなるかわからない」「このままの会社の状態ではいけない」と焦りを感じるようになったのです。
なぜなら、私を含めてシステム・エムズのスタッフは17名と少人数であり、仕事の規模を考えると人員不足が否めないからです。お客様との窓口はすべて私が担当していて、スタッフに都度振り分けるので、どうしても最初のやりとりが私に集中してしまいます。
また、仕事の規模が大きくなるにつれて特定の技術者に依存する傾向が強くなっていたので、「技術者のAさんがいなくなったらどうなるのか」といった不安が常にありました。
特に危機感を覚えたのは、私がコロナに感染したときと50代のエンジニアが入院したときです。社長である私が1週間休む大変さを身を持って体感しましたが、入院したエンジニアは、なんと病室にパソコンを持ち込んで1ヶ月間も仕事をしていたのです。しっかり休ませてあげられなかった状況を悔い、「これではいけない、この状態は危険すぎる」と、組織を強制的に変えなければという危機感が強くなりました。心身ともにスタッフが健康でなければ、会社は続きません。大切な社員のためにも「何か対策をしなければ」と常に考え続けておりました。
また、特定の人に依存しない組織を作るための採用活動やキャリアプランを検討したり「人材育成センター」を作って地元の学生を対象に人材確保を目指したりするなど、さまざまな取り組みを行ってきました。
しかし、私もスタッフも実務に追われて時間が割けずなかなかうまくいきませんでした。また、地方の小規模な会社のため、どうしても人が集まりにくいという課題がありました。
協力会社とは一緒に会社を大きくしたいという話もしていましたが、企業文化が違いすぎるため、ハレーションが起きて実現は難しいと感じるようになりました。それならば、システム・エムズより小規模な会社を譲り受けるのはどうかとも考えましたが、給与や立場などで折り合わずそれも実現しませんでした。
直接的に資本提携のお話もいただいていましたが、「企業文化に染まりたくない」という反対意見が社内から出たり、特定の仕事しかできなったりする点にも抵抗がありました。とてもありがたいお申し出でしたがお断りしておりました。
他に選択肢はないのかと考えていたときに、M&Aキャピタルパートナーズの深瀬さんからの手紙がきっかけで、考えが変わり始めたのです。
実は深瀬さんからの手紙も他の仲介会社からの手紙も、そこまで興味がなかったため基本的には開封していませんでした。しかし、たまたま母が深瀬さんの手紙を開封して読んだところ、「これは捨ててはいけない手紙だと思う」と手渡してきたのです。確認すると、よくある手書きをコピーしたものではなく、心のこもった直筆でした。以前にも同じような手紙をもらっていたことを思い出して開いてみると、文面が異なる丁寧な対応に一気に興味を持ちました。
それでも最初は「M&Aがどんなものかとりあえず話を聞いてみよう」というスタンスでした。なぜなら、M&Aには高額な手数料がかかるし、弊社のような会社に需要はないだろうと思っていたからです。
また、実際にM&Aを経験した人たちの話を聞くと、うまくいっていないケースが多かったので、M&A自体に対するネガティブな先入観もありました。そこで正直に「今はまだその気はないが話を聞いてみたい」と深瀬さんに連絡し、会うことになりました。
最初は「自社の課題は自分たちだけで解決できるはず」と考えていました。しかしながら、深瀬さんと相談を重ね、M&Aという選択肢も「お相手や条件次第で検討を深めていこう」というスタンスで、ステップを進めていくことにしました。
深瀬さんの第一印象をお聞かせください。
深瀬さんは紳士的で、1回、2回とお会いするたびに、誠実な人柄が伝わり、ますます好印象が深まっていきました。また、私は経営者なので従業員にすべての本音を言えませんが、深瀬さんには会社の弱みや不安、問題をさらけ出すことができました。気がつくと私にとって深瀬さんは、ストレスの発散相手にもなっていました。深瀬さんはプロ意識が高く聞き上手なので、意見を求めるとマニュアル通りの答えではなく、深瀬さんならではの意見を返してくれて、非常に頼りになりました。1年以上のお付き合いの中で、月に1回会う時間が待ち遠しく、楽しみになるほどでした。
ここからは担当アドバイザーの深瀬さんにも加わっていただきお話を伺います。横田様の第一印象をお聞かせください。

従業員の方々を心から大切にされていると強く感じておりました。また、従業員の方々だけでなく、お取引先など、全ての関係者様のことをしっかりと考えていらっしゃる点が、経営者として本当に素晴らしいと感じ、ぜひご支援させていただきたいと思いました。
株式会社L is Bをご提案された背景を教えてください。
L is Bをご紹介したのは、横田社長が抱えている課題を解決できるポイントが非常に多いと考えたからです。また、上場会社というと堅苦しいイメージを抱くオーナー様もいらっしゃいますが、L is Bの皆さまは柔らかい雰囲気で、システム・エムズと企業風土がマッチすると考えました。加えて、人を大切にする企業文化にもご両社様に共通する部分を感じておりました。
背中を押された厳しくも優しい一言。アドバイザーがくれた勇気
検討は順調に進み、M&Aを決断するに至ったのでしょうか。

実は、意向表明書を提出した後、2週間ほど検討期間をいただいたのですが、その間に驚くほどたくさんの仕事が舞い込んできて、非常に心が揺れました。1年分の仕事を受注したことで、「このまま自社だけでもやっていけるのではないか」と錯覚するほどでした。
M&Aという選択は、我々に仕事を依頼してくれた企業や仲間への裏切り行為になるのではないかという不安もありました。
M&Aは機密保持が前提となりますので、同じ経営者仲間や税理士、もちろん社員にも相談できないことが心理的に辛いと深瀬さんに弱音を吐いたことがありました。すると深瀬さんは厳しくも優しく「最終的に決断するのは横田社長です。オーナーシップを持って横田社長が意思決定をすべき局面もあります。」と言ってくれて、ハッとしました。
結論は出ていましたが、背中を押してほしかったのかもしれません。私は従業員や協力会社に「いい選択だ」と言ってもらいたかっただけなのです。
誰に相談しても結論は変わらなかったはずですが、誰にも相談できない苦しさがありました。小さい会社なので、何かを決めるときは必ず従業員に相談してきた経緯から、今回の件を事後報告するのが苦痛でした。苦しいときに深瀬さんが叱咤激励してくださったことが、とても助けになりました。
深瀬さんはなぜこのような発言をされたのでしょうか。
横田社長は会社の代表者であり、オーナーでもあります。もちろん関係者の皆様それぞれに意見を聞くという選択肢もあるのかもしれませんが、最終的には横田社長自身が関係者の皆様にとって最善と考える選択・行動をすることが重要であると考えております。そのため、オーナーシップを持って決断すべき局面があることを真っ直ぐにお伝えいたしました。これは信頼関係をしっかり築いていることと、どのような意見でも柔軟に受け止めてくださる横田社長だからこそ言えたことだと感じています。
深瀬さんは自分や自社の利益を優先するのではなく、「横田社長が決めたことはどのような結果になっても応援します」と寄り添ってくれました。本当に私自身のことを考えてくれていることに心を打たれました。
ともに未来を描く最高のパートナー。価値観が合致する企業との出会い
ここからは、譲受企業である株式会社L is Bの横井様、北嶋様にも参加いただき、お話を伺います。まずは事業についてご紹介いただけますか。

建設業のお客様を中心に「現場DX」というテーマで事業を展開しています。
その中でもお客様の声を聞きながら事業を作ること、お客様のために価値を提供し続けることが私たちのミッションです。
L is Bがテーマとしている現場DXやDXそのものは、目的ではなく手段です。建設業の現場は人手不足が深刻化していて、従来のやり方では対応できなくなっているため、抜本的に新しいやり方に変えていかなければなりません。そのため、誰でも使えるようなシンプルでわかりやすいコミュニケーションツールを提供し、現場の情報化をお手伝いしています。建設現場でのDXはかなり浸透していて、一部で導入していた企業が全社導入に切り替えるケースなども増えています。実は建設業の売上高ランキング上位20社のすべてに、我々のシステムを導入いただいております。
M&Aに対する貴社のお考えを教えてください。
「闇雲にパートナーを増やせばいいわけではない」と思っています。私たちは、顧客志向で、お客様のお困りごとを解決することに重きを置いています。同じ考え方の会社と一緒にならないと、お互いに不幸になるため、価値観を共有できる企業を探していました。お客様により早く、より深く価値をお届けするためのパートナーがいらっしゃったら積極的に協力していきたいと、成長戦略の一環として探していました。

我々の考えるM&Aは仲間作り、家族作りだと思っています。お客様に価値を提供できて価値観も共有できることがパートナーを選ぶときに大切だと考えています。システム・エムズのようなお相手と出会い、ご一緒できることは簡単なことではなく、よいご縁に恵まれたと思っています。
システム・エムズに興味を持たれ、お話を進めようと思った理由を教えていただけますか。
まさに「横田社長にお会いしたから」です。
事業に対する考え方や社員の方を大切にされているところが、L is Bと共通していると感じました。L is Bでは「仲間を大切にできる」「人を大事にできる」価値軸はずらしたくないので、採用活動でも重視しています。横田社長からは社員の皆さんを大切にされていることが、とても強く伝わってきました。実際にシステム・エムズに訪問したときにも、一瞬で社員の皆さんとの関係性が良好なのがわかりましたし、L is Bに似ていると感じました。「システム・エムズ」として社名を残して、自社のブランドを大きくしたいという横田社長の思いにも強く共感しました。
また、ご自身が率先して手を動かしていらっしゃることも安心感につながりました。私もそうですが、中小企業の社長は「社長が一番のセールスマン」です。社長は社長の仕事だけやっていればいいわけではありません。横田社長はさまざまな業務を担当されているのが伝わりました。
最初にシステム・エムズの資料を拝見したとき、建設業向けのニッチなシステムを開発していることに驚きました。また、横田社長にお会いした際に、横田社長が自分の仕事について熱く語る姿を見て、「仕事や会社が本当に好きなのだな」と、溢れんばかりの情熱を感じました。いいことも悪いことも包み隠さずお話いただいた誠実さも印象的で、良い方向にお話を進められるのではないかと感じました。
横田様は、横井様の印象をどう感じましたか。
私も横井社長がおっしゃったことに強く同感します。まず横井社長にシンパシーや、私をさらけ出せる、受け入れてくれる体制があると感じ、いろいろなことを話さずにはいられないほど好印象でした。横井社長は堅苦しさがまったくなく、信頼関係を築いた協力企業の社長と話しているような感覚でしたね。正直なところ、私は人見知りなタイプなので初対面だと、合う方、合わない方がいるのですが、「しゃべりすぎです」と深瀬さんに冗談交じりに注意されるほど心を開くことができました。「この方たちに認められたい、知ってもらいたい」という気持ちがわき上がり、自分の会社の「よいところも悪いところも知ってほしい」「その上で評価してもらいたい」と率直に思いました。それほど初対面の時点でしっくりきていたのです。
また、自社サービスを確立するまでの背景、顧客のカテゴリーが一部重なっていることなどから、シナジーをイメージしやすかったです。「私が探していた答えはここにあるのではないか」と思いました。
「グループ内で上下関係ができるのではないか」という危惧もありましたが、圧力をまったく感じませんでしたし、お客様との取引が継続していることが技術力の証と、むしろリスペクトを示していただき安心しました。27年間で培ってきた企業文化やその裏付けを認めていただいたことが嬉しかったです。
どの時点で両社の具体的な戦略が見えてきたのでしょうか。
私はある程度の段階を経て具体的な戦略が見えてきました。紙の上の情報と、実際にお会いして話を聞く情報とではどうしてもズレがあります。たとえば建設業用のニッチなシステムをシステム・エムズはご提供されていることから、我々も新規事業として一緒にできるのではないかと思っていました。しかし、そこは私たちが介入せず、システム・エムズが単独でされたほうがよい領域だと理解しました。
最初にイメージしていたこととの変化はありましたが、システム・エムズの開発力に魅力と尊敬と可能性を感じたため、M&Aを進めたいという気持ちが強くなりました。 会社にお邪魔したときに非常に緻密なプログラムを作る技術者の方の作業を実際に拝見して、「これは、すごい」と感嘆しました。システム・エムズの技術者の方のレベルは高く、ともに新しいものを将来にわたって作っていけると感じました。仮にM&Aが成立しなくても、技術パートナーのような関係でもよいかもしれないとさえ思っていました。なぜならさまざまな開発元に複数のシステム依頼をしていると、困りごとも多々あるからです。
なぜ技術パートナーではなく、「一緒のグループになる」という道を選んだのでしょうか。

横田社長の仕事への情熱に、とにかく魅力を感じたからです。私は以前から、当社の取締役メンバーを活性化させたいという思いがありました。横田社長のような営業も開発もバリバリこなすパワフルで推進力のある方が経営陣に加わることで、当社にとってもよい影響が期待できました。我々にとってM&Aは、「買う側、買われる側」という単純な構図ではなく、数字以上のものがなければM&Aをする必要はないと感じているくらいですから。横田社長やシステム・エムズの社員とL is Bの社員が交流することで、お互いにより成長できる環境になると思いました。
システム・エムズは、お客様との関係が非常に長く継続しています。この方たちであれば、お客様を大切にする姿勢を共有しながら、グループとして成長していけると思いました。
また、作っているシステムも、何年という単位で時間をかけていらっしゃるので、ものすごく細かいところまで手が行き届いています。お客様との関係もシステム開発も、我々とも時間をかけて一緒にいいものを作り上げられたら理想的だと思いました。
実は私も、資本提携でなく業務提携のほうがスムーズでよいのではないかと深瀬さんに相談したことがありました。ただ、システム・エムズの場合は組織改革への思いが強く、業務提携レベルでは、根本的な自社の課題や、事業承継問題に対する解決には繋がりませんので、今回のM&Aに至りました。これからは、良い方向に進んでいくように努力したいと思っています。
お互いの個性を大切にしながら、より良い方向へ変化をしていく
成約直後の率直なお気持ちや今後に向けた思いをお聞かせください。

システム・エムズのスタッフは今回の結果にほぼ全員が賛成し、受け入れてくれています。具体的に変わったのは私を取り巻く環境で、まだ何も変わっていないと感じているスタッフも多いようです。組織を変えるために変化を恐れてはいけない、変わらなければならないと社内で伝えてはいますが、L is Bの皆さんは、急激な変化にならないように十分に配慮してくれています。基本的に組織の体制や人事、給与体系などはこれまで通りです。労務や残業の考え方などの改善方法を早速教えていただいていて、人材教育についても近々進めていく予定です。定期的にオンラインミーティングで相談させていただいていますが、学ぶべきものが非常に多く、良い方向へ変化していることを肌で感じています。今は、我々の技術が両社の発展に貢献できるよう結果を出していきたいという使命感に燃えています。
具体的なことはこれからですが、私自身や取締役メンバーの意識の変化を感じています。L is Bは100名ほどの会社でしたが、システム・エムズが加わり130名ほどの規模になりました。システム・エムズの個性を大切にしながらグループとして成長していく道筋を描いていくために、私も含めた取締役メンバーもレベルを上げていかなければならないという緊張感が高まっています。
例えば、お客様に提供する価値を常に追求しているので、システム・エムズの力をお借りすると、どのような価値を提供ができるようになるのかを、定期的なミーティングやお客様への同行で具体的に検討しています。我々もできることが増えつつあるので、それに合わせた体制作りや具体的なアクションを取らなければならないという変化があります。
システム・エムズでも、来年は新卒採用や中途採用を行っていきたいと考えています。双方の会社でチーム力アップを目指して人材確保にも取り組んでいきたいです。
今回の取り組みにおけるM&Aキャピタルパートナーズの支援を、どのようにご評価いただいていますか。
M&Aは初めての経験だったので、どのようにステップを踏むのかまったくわかりませんでした。しかし深瀬さんは、ご自身の利益よりも、私たちや横田社長の利益のために考えて行動してくださっていると感じましたし、とても信頼できる方だと思いました。M&Aや仲介会社にネガティブなイメージがありましたが、深瀬さんと接しているとそんなことは一切なかったですね。どのような質問に対しても、すべての立場の方のことを考えて思慮深くご回答くださるので非常に勉強になりました。

深瀬さんだからこそ、最後まで安心して取引ができました。実は他社からの提案をお断りしたケースもありました。M&Aは契約書を交わすだけでなく、その後も一緒に成長できるお相手なのかが重要です。信頼できる担当者からの紹介でなければ、きっと後悔すると思います。深瀬さんはレスポンスが早いなど、ビジネスマンとして当たり前のことを自然にされているのが素晴らしいと思いましたし、こんなに短期間のお付き合いのうちに、これほど信頼感を持てる方がいらっしゃることに驚きました。「他の仲介会社がM&Aキャピタルパートナーズ に勝つのは大変だよね」と思ったほどです。
やはり、M&Aにおいては人が一番大事な要素だと思います。深瀬さんは真摯な対応をしてくださるとともに、決してゴリ押しはしない。「絶対M&Aをやるべきですよ」というような対応は成約までの1年半を通してゼロでした。深瀬さんの人柄や真摯な姿勢に魅力を感じ、揺るぎない信頼が生まれました。
ありがとうございます。最後に、これからM&Aを検討する経営者の方々にメッセージをお願いします。

M&Aという言葉自体にネガティブなイメージがある方もいらっしゃるかと思います。譲渡した方から話を聞くと、うまくいっていないケースも多いのですが、私はその選択をした当事者にも責任があると思います。私は決断をするまでに検討を重ね尽くしたからこそ、M&Aが成立した段階でも悔いはなく、もはや成功だと考えています。
どのような変化でも自ら飛び込んだからこそ起こっているものです。M&Aは変化をともないますが、変化を恐れず、受け入れる姿勢が大切ではないでしょうか。
経営者として、社員やその家族の人生も背負っているので、いろいろな思いがあると思います。自社の株式は、経営者にとって命の次に大切なものだと私は考えます。だからこそ、相手のことを尊重できるお譲受先に株式を譲渡していかないと、いろいろな後悔が生まれてしまうかもしれません。そうならないようにパートナー選びは、慎重にも慎重を期したいですよね。当社は、M&Aの経験は初めてですが、素晴らしいお相手と出会うことができました。今後も良いお相手がいればご紹介いただき、グループとして成長していきたいと考えています。
今回、ご両社のご縁組をご支援できたことを心から光栄に思っています。我々は、あくまでご両社の仲介としてお手伝いをさせていただく以上、当然ですが、我々の意向ではなく、ご両社のご意向を大切にしなければならないと考えています。本件を円滑に進行ができるよう、サポートはさせていただきましたが、最終的にはご両社の真摯なご検討姿勢があったからこそ、今回のご縁組が成立したと感じています。
上場企業でありながらL is Bのような温かくて堅苦しさのない会社は、なかなか存在しないですし、人を大事にされるシステム・エムズと社風がとても近いと思っています。当初、横田社長には「事業承継・経営手法の選択肢の一つ」として、本件をご検討いただいており、「お相手と条件次第で検討を深めていこう」というスタンスで、一歩踏み出していただいたところに今の結果があると考えております。本件のように、最高のご縁組となるケースも一定程度ございますので、ご検討にあたって「一歩踏み出すこと」も選択肢の一つとしてお考えいただけると嬉しいです。

文:伊藤 秋廣 写真:小野 綾子 取材日:2025/2/3
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