

独自手法で急成長を遂げた正社員600名を超える大型保険代理店が “日本最大のFP会社”を目指して決断した戦略的M&A
株式会社Do itプランニングは、多数の保険会社の商品を扱う乗合型の保険代理店として2015年の創業以来、異例の成長を遂げてきた。わずか10年で全国に54拠点、660名もの保険募集人が在籍する規模に達した実績は、多くの保険会社から注目される存在だ。そのような中、M&Aによって日税グループに加わったのはなぜだったのか。創業者でありDo itプランニングの成長をけん引してきた大澤誠社長、譲受側である日税ホールディングス・吉田雅俊会長にM&Aの経緯と今後の展望について話を伺った。
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譲渡企業
- 会社名
- 株式会社Do itプランニング
- 所在地
- 東京都新宿区
- 設立
- 2015年
- 事業内容
- 保険代理店
- 売上高
- 約57億5000万円
- 従業員数
- 約660名
- M&Aの検討理由
- 更なる成長・発展のため
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譲受企業
- 会社名
- 株式会社日税ホールディングス
- 所在地
- 東京都新宿区
- 設立
- 2022年(グルーブ企業17社※最初の会社は1972年に設立)
- 事業内容
- 金融・不動産コンサルティング業等
- 売上高
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- 従業員数
- 約1,189名(グループ従業員数)
- M&Aの検討理由
- 既存事業の強化のため
「みんなでやろうよ(=Let's do it)」環境重視の独自スタイルで急成長を実現
大澤様のご経歴を教えていただけますか。

1977年に東邦生命保険(現ジブラルタ生命保険)に入社し、営業所長から始まり、支社長、法人部長などさまざまな役職を経験しました。その後、会社はGEエジソン生命保険、そしてAIGエジソン生命保険と変わりましたが、周囲にも恵まれて新規開拓という点でトップクラスの実績を残し続けることができました。生命保険や金融サービスの専門家による国際的な組織であるMDRT(Million Dollar Round Table)に加わる者を何人も育成できたことは、誇りに感じています。
振り返ってみると、私にとって最大のやりがいは、人と会って話をし、その方に喜んでもらいたいという気持ちで仕事に取り組んできました。だから私たちの会社に、営業ノルマという概念は存在しないのです。これは保険業界では非常に珍しいことかもしれませんが、お客様を第一に考えた結果でした。ノルマに縛られると、営業はどこかで無理な販売をしがちで、その結果、最適ではない商品を勧めるなどといったことが起こり、お客様に迷惑がかかることになります。私自身は、常に目標数字を達成してきた自負がありますが、無理な営業によるひずみも目の当たりにしてきました。自分が経営者となった時、この弊害は取り除かなくてはならないと思っていました。
Do itプランニングを創業するまでの経緯をお聞かせください。
AIG時代にエージェンシーマネージャーとしてターゲットスカウト、つまり銀行員の方々などに声をかけて、保険の販売を行ってもらう取り組みによって加速度的に仲間が増えていきました。そんなメンバーたちから「大澤さんを中心に独立したい」という声があがったことがきっかけです。当初は別の代理店にメンバーとともに移籍しましたが、2015年6月に独立することとなり、約40人の仲間と設立したのがDo itプランニングです。
設立時点で40名の所帯だったこともよく驚かれましたが、やがて東京の1拠点だけだったものが全国へ拡大を続けて、54拠点660名の規模に成長しています。社名の由来は「Let's do it」すなわち、みんなでやろうよという願いを込めたもので、社員全員が主役として活躍できる環境を目指してきました。
ここまで急速に発展した理由はどのようにお考えですか。
さまざまな要因がありますが、まずは多くの保険会社の商品を取り扱うことで、お客様に幅広いサービスを提供できるようにしたことです。取り扱い商品が多ければ多いほど、保険募集人には広範囲の知識が求められますが、お客様にはより最適なご提案ができることになります。次に、手数料水準を安定させるために、募集管理態勢を整え、業務品質を向上させることに取組みました。社員の報酬が安定すればモチベーションも向上します。さらに、顧客の新規開拓を続けるために、お客様を紹介してくれる提携先企業とのパイプ作りも徹底して行いました。これによって恒常的に顧客の紹介が受けられるわけです。そして、顧客サービスレベル向上のためにお客様の情報を会社全体で共有するため、独自の顧客管理システムを早期に導入し、各保険会社から支払われる手数料の管理と顧客情報の一元管理を実現したことも生産性向上に寄与しました。
それが入社を希望する人の増加にもつながったということですね。

働きやすい環境を作ることにはこだわり続けましたね。その結果、気がついたらこれだけの規模になっていたという感覚です。本社には約200人が集まれるオフィス環境を作ったことで、各保険会社の担当者が当社に集まり、情報を提供してくれるようにもなりました。私たちからすれば、一度にさまざまな保険商品の情報が得られるのはメリットでしかありません。提供する側にとっても、一度に多くの営業担当者と接触できるのは効率的です。
そして、ノルマなどに頼らなくても社員は自然と成果を出すという考えが私の信念です。社員への還元率を業界最高水準に設定し、成果を出せば出すほど社員自身の収入に直結するからです。強制されるのではなく、自発的に努力するという環境が、結果的に健全な成長につながってきたと考えています。
事業は順調、経営は安定。しかし激変する環境の先行きは不透明だった
順調な経営、成長を続けていたにもかかわらずなぜM&Aを検討したのでしょう。
やはり目まぐるしく変化する経営環境に、今後もいかに対応するかは重要な課題でした。ただ、以前からさまざまな企業からM&Aの打診がありましたが、大手企業グループや投資ファンド、保険会社からのオファーは、どれもしっくり来ない印象でした。
私たちは「日本最大のFP(ファイナンシャルプランナー)会社」を目指し、個人のお客様のライフプランニングを通じて保険を提供しています。FP2級以上の資格を保持する社員はすでに200名を超えていますが、これをさらに増やしていく計画です。しかし、これまで保険営業で一般的な家族の典型とされてきた「夫と専業主婦の妻、子どもが2人」といった家族形態は激減しつつあります。
ご存知のとおり、日本では資産の大部分が65歳以上の方たちに集中しています。したがって今後、資産運用や相続対策に関心が高まるのは明白です。保険に関して言えば、老後の暮らしをどのように守るかを主眼に商品のラインナップもだいぶ変わってきています。保険会社によっては被保険者の年齢が90歳以上でも契約できるという商品も登場していますが、かつてなら考えられないことでした。さらに将来を見据えると高齢者向けの提案力が不可欠になります。また、これまで私たちが得意としてきた個人単位だけでなく、法人マーケットへの進出も必要だと考えるようになりました。
業績自体は好調なものの、こうした改革を自社の力だけで成し遂げられるかと言われれば疑問符がつきます。私は今年で72歳になります。いつまでもこのままの体制ではいられません。設立時から一緒に会社を支えてくれた長女には、営業経験がないためこの営業集団を率いるのは難しいでしょう。一方で、営業経験を優先するとなれば、私の身内以外がトップになることになりますが、それもイメージはできませんでした。
さまざまなお誘いがある中で、M&Aキャピタルパートナーズには面会の機会を作ってくださいました。
お誘いのお手紙は、さまざまな会社から毎日のように届きます。どうやって調べたのか、自宅に送付されてくるものもありましたが、ほとんどは開封することさえありませんでした。
そんな折にM&Aキャピタルパートナーズの山田さんから電話を受けました。その電話で、ある企業がM&Aに強い興味を持っていると言われたのです。それはある商社でしたが、ブランド力のある有名な企業でしたので、仮にこんな企業と話がまとまれば従業員のプライドが向上してさらに張り切って働いてくれるのではないかと思いました。そこで話だけは聞いてみたいと答え、山田さんとお会いすることにしました。結果的に、その商社だけでなく、いくつもの企業をご紹介いただくこととなり、その中に日税グループもあったというわけです。

大澤様は、これほど大規模の保険代理店にまで育て上げた実績があるにもかかわらず、優しく、温和なお人柄が初めてお会いしたときから印象的でした。だからこそ、これだけ短期間で企業が成長したのだろうとも感じました。さらに親族が経営陣に加わっていらっしゃるので、後継者の問題に悩んでいるわけではないことも理解していました。経営は非常に順調で、日本最大のFP会社を作りたいというビジョンも明確でした。しかしながら、年々利益が積み重なっていくため、大澤様に万一のことがあったときには、株式などの承継が課題になってしまうリスクもあります。そうしたこともご説明しながら、M&Aも選択肢の1つとしてご提案しました。
山田さんは、仕事に対して熱心でしたね。その姿勢は終始一貫していたと思います。頻繁に連絡をくれるだけでなく、そのたびに新しい情報提供をしてくれたのが印象的です。しかも、M&Aを勧めるのではなく、私たちの会社がより良くなるための選択肢を真剣に考えてくれていることが伝わってきました。こうした真面目さ、熱心さというのは、やがて安心感に変わるものです。私も長年営業をしてきましたが、たいしたものだと感心していました。
別の保険代理店と経営統合の話が進んでいた時期がありましたが、その件が白紙になったタイミングで、偶然のように山田さんから連絡があったことはよく覚えています。このタイミングの良さは、天の助けだったように思いますが、よく考えるとそれだけ私たちの会社のことを気にしてくれていたのですね。
どのような狙いのもとで紹介先が絞り込まれたのでしょうか。
私は金融業界、特に保険関連のM&A案件をこれまで多く担当させていただいてきました。すでに2社、日税グループ様のM&Aを支援させていただいた実績がありましたので、日税グループが税理士マーケットにさまざまなサービスを提供している他社にはないビジネスモデルや企業文化をお持ちであることを理解していました。一方で、多くの保険代理店が個人事業主の規模感で留まっている中、Do itプランニング様は堅実な法人組織として全国展開を実現し、保険会社からも最高ランクの評価を受けている稀有な存在です。
その中で、税理士やその関与先である企業にさまざまなサービスを提供している日税グループ様と組むことは、法人向けビジネスを拡張させたいという大澤様のねらいにも合致して大きな相乗効果が生まれると考えました。Do itプランニング様には保険に精通した経験豊富な営業マンが全国に在籍しており、日税グループ様には税理士マーケットへのアプローチに強みがあります。両者の相性がよいことは確信していましたが、私たちはあくまでも選択肢を提供する立場ですので、複数の候補先をご紹介したうえでご判断をお待ちしていました。
以前から継続してFPやIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)の育成に努めてきましたが、その先には法人マーケットを開拓したいという思いがありました。候補先リストに、日税グループの名前を見つけたとき、税理士とその関与先に幅広い接点を持っていることから、仮に話がまとまったら大きなメリットが得られることはすぐに想像ができました。
さまざまな形で税理士とのタイアップが実現すれば、当社の社員もさらに士気が高まるだろうと期待が膨らみました。そこですぐに一度会って話をしたいと返答したのです。
フロントランナーとして。両者の思惑が一致した理由
日税グループの概要と、Do itプランニングの印象についてお聞かせください。

日税グループは、税理士とその関与先を顧客として、税理士顧問料集金代行、保険代理店、不動産、信託、ファクタリング、経営コンサルティングなど幅広い事業を展開しています。創業時は、税理士業界に特化した保険事業から始まり、徐々に事業領域を拡大してきました。M&Aについては、単に規模を拡大するだけでなく、互いの強みを活かして新しい価値を生み出せるかどうかを重視しています。私たちは不易流行という言葉を大切にしており、変えてはならない本質的な価値を守りながら、新しい変化を取り入れていくことを心がけています。
今回の話を聞くまでDo itプランニングのことは知りませんでしたが、昔から大澤さんはよく知っていました。生命保険会社に在籍されていた頃から敏腕のマネージャとして高名だったからです。だから最初にお会いしたときは、まさかあの大澤さんがこういった会社を率いているとは、と驚いたものです。
特に印象的だったのは、大澤さん独特のマネジメント手法です。ノルマを課すのではなく、遵守すべきルールを明確にしたうえで、大胆に任せるやり方を聞いて、丈夫で強い組織を作ってきたそのプロセスは大いに参考になると感じました。
実際に初めてお会いしたときの印象はいかがでしたか。

まず嬉しかったことは、吉田さんが「このまま大澤さんに続けてほしい。好きなだけやってほしい」と言ってくれたことです。M&Aの話を進めるうえで、社内の体制が不安定な状態になることを最も不安に思っていたからです。現状、私が突然いなくなった場合には、経営方針に変化が出るだけでなく、組織そのものが崩れてしまうのではないかと懸念していました。もし社員がバラバラになれば、築いてきた会社の価値も大きく損なわれてしまいます。 しかし、株式は全て譲渡しても、経営体制はそのままという方針を示していただいたことに驚くとともに、安心感を覚えました。
私たちがM&Aを検討する際に最も重視しているのは、その会社の持つ独自の強みや価値です。Do itプランニングの場合、大澤さんのリーダーシップと独自の経営哲学によって構築された組織文化が最大の強みであることは明白でした。数値目標やノルマが当たり前という常識に反するように、目覚ましい成果をあげてきたことは、大澤さんならではの経営スタイルです。同時に大澤さんご自身の経験と信念から生まれたものであり、外部から簡単に真似できるものではありません。
私は組織は生きているんだ、ということを常に意識しています。会社それぞれの良さがあり、時代や環境にあわせて変化したからこそ、ここまで成長してこられたわけです。M&Aそのものを、ネガティブに捉える方もいますが、事業承継の一つの形に過ぎません。親族が継ぐか、従業員が継ぐか、あるいは我々のような第三者が引き継ぐか。どのような形であれ、その会社が培ってきた価値や強みを活かして、事業を継続していくことが最も重要です。
したがって我々が株式を譲り受けるのは、株式上場と同じだと考えていただきたいと常々話しています。株式上場は、株を不特定多数の方に保有いただくわけですが、経営そのものは変わりません。今回のケースは、上場のように不特定多数が株主になるのではなく、私たちのような特定のパートナーが株主になるだけのことです。
事業面のシナジーについても解説いただけますか。

我々とDo itプランニングには、共通のコアとなる部分があります。それは保険事業であり、保険に対する基本的な考え方も非常に近いものがあります。日税グループは、私が社長になってから多角化を積極的に進めてきました。現在、保険事業がグループ全体の売上に占める割合は1割ほどですが、これは保険事業の重要性が低いということではありません。むしろ今後の展開において、保険事業は極めて重要なフロントランナーとしての役割を担うと考えています。
経営者保険を例に挙げると、企業の財務を守る企業防衛や、円滑な事業承継、役員の退職金準備といった、さまざまな重要課題に対応するためのものです。つまり、保険はさまざまな経営課題の入り口、最初の接点となるのです。我々の不動産事業へのご相談は年間6,000~7,000件ほどありますが、そのほとんどは残念ながら相続が発生した後の相談です。しかし、相続発生後に、実行できる対策は限られてしまうのです。
しかしDo itプランニングが課題意識をお持ちの顧客へ早期にアプローチすれば、相続が発生する前の段階から、我々が持つ多様な選択肢を提示できます。これはお客様と私たちの双方にとって、Win-Winの関係だと言えます。そして、この連携によって生まれた利益は、最初にきっかけを作ったフロントランナーのDo itプランニングの営業担当にも適切に還元されるべきです。このような理想的な協力関係を築けると考えたからこそ、一緒になることが最善の道だと、すぐに確信できました。
日税グループと一緒に、税理士とその関与先という巨大なマーケットをご一緒できることに期待が膨らんでいます。まもなく当社は創業10周年を迎えますが、そのタイミングで「税理士担当社員制度」を立ち上げたいと準備を進めています。税理士と関与先企業に対応できるFPを育成することで、私たちの課題である法人マーケットの開拓につなげることがねらいです。
全国の社員を東京に集めた研修を実施する予定ですが、全社員の3分の1にあたる200人以上が参加を表明しており、税理士とのコミュニケーションや企業への提案手法などを学ぶ最初の機会となります。日税グループとの連携によって、税理士の先生方のニーズを理解し、その顧客である企業に対して適切な提案ができる人材を育てることが、当社の次の成長ステージにおいて非常に重要だと考えています。
私たちは「ビジネスエコシステム」と呼んでいますが、企業のライフサイクルに合わせたさまざまなサービスを提供しています。Do itプランニングの持つ独自のシステムや全国展開の強みと、私たちの持つ税理士ネットワークや多様なサービスが組み合わされば、保険業界全体に変化をもたらすようなインパクトをもたらすことができると考えています。
早くもシナジーの萌芽の兆しが現れる。安定した基盤をもとにさらなる成長への期待
山田さんは交渉の行方をどのように見守っていましたか。

顔合わせでのお二方の対話を拝見していて、まさに理念とビジョンが共鳴し合う様子を感じました。吉田様がよくおっしゃる不易流行の考え方と、大澤様が築いてきた経営スタイルには共通点が多く、相互理解が驚くほど早く進みました。この顔合わせから、わずか3か月後には合意に至るという、極めてスピーディな進展でした。当初から私たちが予感していた両者の相性の良さを裏付けているのではないかと思います。
相性の良さもさることながら、これほどスムーズに交渉が進んだのは、山田さんのサポートがとても丁寧だったおかげです。業界に関する基礎的な知識が備わっているのはもちろんですが、こちらが大切にしたい思い、理念といった個別の事情もしっかり受け止めてくれる姿勢には信頼と安心を感じていました。
案件を重ねるごとに、私たちが目指すビジネスエコシステムを理解していただき、質の高い提案をいただいていると感謝しています。両者の企業理念やビジョンの一致点を見抜く眼力と、適切なタイミングでの仲介が素晴らしかったと思います。
私自身が常に「思い立ったが吉日」「幸運の女神には前髪しかない」と好機を逃がさないのだと肝に銘じながら経営していますので、相性とタイミングの2つが重なりあったことが今回の結果を生んでいますし、山田さんの貢献がなければ成立しなかったと思います。
反応が不安だったと言われていた社内の様子はいかがでしたか。
M&Aの事実を発表したときに受け入れてもらえるか不安はありましたが、結果として全く問題はありませんでした。社員に宛てて発表する文書を幹部社員とともに何度も推敲したことが奏功したと感じています。手紙には、会社と社員の将来を最優先に考えたうえで経営者としてベストな判断をしたという思いを盛り込みました。日税グループの安定した地盤のもとで、永続的にビジネスを継続できることと、同時に体制は従来と何も変わらないことを伝えることで、社員は動揺することもなく、安心してくれました。
日税グループ入りしてからまだ3か月ですが、当社としての自主性を尊重していただきながら、日税グループの各社との連携も少しずつ始まっており、社員たちも新しい可能性に前向きに取り組んでいる様子を嬉しく思っています。
なによりも、社員が安心して働ける環境をさらに強化できたことが嬉しいです。「日本最大のFP会社」という目標に向けて、日税グループの一員として新たなステージに進めると確信しています。

大澤社長が築いた独自の経営手法と、私たちのネットワークやサービスが融合することで、すでに新しい化学反応が起き始めています。特に、保険代理店のあり方そのものを変えていくような新しいモデルを一緒に構築できると期待しています。今後もお互いの強みを活かしながら、税理士とその関与先、そして多くのお客様にとって価値あるサービスを提供していきたいと思います。
後継問題について現在は、創業から支えてくれた私の長女が、全社員のことをよく知っているため、最も適任だと思っています。しかし、これで親族承継以外の選択肢も生まれました。当面は私が現体制のまま経営を続けますが、将来的には日税グループと相談しながら、適切な時期に適切な人材にバトンを渡すことが可能になります。それが社内からの登用になるのか、グループからの人材になるのかは、今後の状況を見ながら判断していくことになるでしょう。
慌てる必要はないと思います。せっかく同じ仲間になったのだから、できるだけ現在の経営体制を尊重しながら、将来的なサクセッションプランを一緒に考えていくというアプローチがよいと思っています。
それぞれの子ども世代の年齢が近いこともあり、将来に本格的な代替わりが行われる頃には今よりも一層、両者の化学反応が起きていると思います。私としては、次世代にバトンを渡す前に、日税グループのフロントランナーとしての役割を果たせるように、きっちりと事業を軌道に乗せきることが役割だと考えています。
今後M&Aを検討する経営者に向けたメッセージをお願いします。
いまだに「身売り」「乗っ取り」などと、M&Aにネガティブなイメージを持っている経営者もいるでしょう。しかし実際には、事業承継の一つの形に過ぎません。特に、経営者の高齢化や後継者問題に直面している中小企業にとって、有効な選択肢になり得ます。重要なのは、相手の企業との理念やビジョンの一致です。それが合えば、お互いの強みを活かした新しい価値創造が可能になります。
M&Aは「買収する・される」という二項対立で考えるのではなく、互いの価値を認め合い、共に成長するためのパートナーシップだと捉えるべきです。後継者がいなくても事業が継続できる価値に加えて、パートナーを組む相手によってはさらに事業を発展させるチャンスでもあるのです。
人間が会社を率いることのできる期間は有限ですが、会社そのものは永続する存在です。承継という方法により、人間は会社という器を通じて、思いを託していけるのだと考えてもよいのではないでしょうか。
お二方がお話ししてくださったように、互いを高め合い、補い合えるパートナーと巡り合えることは双方にとって大きなプラスになるはずです。今回、両者が同じように意義を感じてくださったご決断を微力ながらご支援できたことを非常に嬉しく思っています。そのシナジーが最大化することを期待するとともに、今後も激変する保険業界においてお力になれるよう精進していきたいと思います。

文:蒲原 雄介 写真:松本 岳治 取材日:2025/4/2
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