JALグループ初のプロ代理店提携で実現する全国展開戦略。
組織力で切り拓く事業の発展
岐阜県を拠点に、組合マーケットを中心とした保険代理店事業を展開してきた株式会社中央保険プラザ。創業者からの事業承継を果たした後も、業界の変化を見据えてさらなる成長を模索していた。一方、JALグループの商社株式会社JALUXの子会社である株式会社JALUX保険サービスは全国拠点化戦略を推進する中で、中核となる保険代理店との提携による新たな展開を検討していた。両社の価値観が合致し、JALグループで初めてとなるプロ代理店との提携が実現。その経緯について、詳しくお話をうかがった。
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譲渡企業
- 会社名
- 株式会社中央保険プラザ
- 所在地
- 岐阜県岐阜市
- 事業内容
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損害保険・生命保険代理店業、金融コンサルティング業
- M&Aの検討理由
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スピード感をもった企業の発展成長、経営基盤の盤石化、従業員のさらなるスキルアップ(JALグループのリソースを活用したセミナー運営、社員交流等)
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譲受企業
- 会社名
- 株式会社JALUX保険サービス
- 所在地
- 東京都品川区
- 事業内容
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JALグループ及び個人・法人向けの損害保険・生命保険代理店業、フィナンシャルコンサルティング業
- M&Aの検討理由
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JALグループ向け顧客(JALカード、マイレージバンク等)及び既存顧客へのサービス強化、営業力の強化(セミナー運営等)、新規エリアの開拓(コンタクトセンターの新設等)
創業時点で組織化と勇退を見据える中長期的経営
創業のきっかけと保険業界への参入について教えていただけますか。

中央保険プラザを創業するまでは、自動車関連の仕事をしていましたが、やがて自分自身の手でビジネスをしたいと考えていました。自動車関係の保険に少しだけ携わった経験があったこと、そして保険業なら手元の資金がなくてもできる仕事だと考えて選択したのです。知り合ったAIU損害保険株式会社(現:AIG損害保険 株式会社)の独立研修生をされている方から、岐阜支店の支店長を紹介いただき面接を受けることになりました。
AIUの独立研修生制度は5年のうちに、年間の収入保険料が3,000万円以上になれば独立できるという基準がありました。逆に言えば、そのラインに到達できなければ、独立は認められません。10人中2人程度しか達成できない厳しい基準でしたが、私は4年でこのハードルをクリアし、独立が認められたのです。
どのような営業戦略で、短期間に成果を上げられたのでしょうか。
私が狙ったのは組合マーケット、いわゆるアソシエーションです。岐阜県内の水道工事組合、電気工事組合などの団体商品として採用してもらい、それを販売できるようになったことが大きなきっかけです。月2回、3回と訪問を続け、相手にとってためになる情報を提供し続けることで、信頼関係を築いていきました。社名については、将来的な組織化を見据えて、個人名ではなく「中央保険プラザ」としました。お客様に電話する際に保険代理店だとすぐわかるようにし、「プラザ」には親しみやすさを込めたつもりです。
同業者の中には、個人事業の延長のような形で小規模で小回りの利く経営を行うケースもありますが、私ははじめから組織化を意識していました。1人では24時間365日お客様に縛られてしまいますし、もし私が病気や怪我になればお客様のために動くことができません。だからこそ属人性をなくし、今で言うところのワークシェアができる体制を早期に作りたいと考えていました。また、私個人の人生設計として、当初から55歳でのリタイアを考えていました。こうした背景からも組織化、脱属人化が不可欠だったのです。
誰もが相談しやすく適切なサポートが受けられる保険代理店として発展
小島様が保険業界に転身されるまでのキャリアについて教えてください。

はじめは医療機器関連の会社で修理や販売の仕事をしていました。その後、製造業で工程管理を経験し、さらに商品先物の業界で営業を2年半ほど担当していたのです。最終的にそこでは総務や人事まで広範な業務を十数年にわたって担当していました。しかし、経営がうまくいかなくなった時期に人員整理の業務を任されるようになり、その中で大きなストレスを感じていました。その経験をきっかけに、クリーンなイメージのあった保険業界に挑戦することに決めたのです。
直接的に保険業界を選ぶ決意を固めたのは、2004年に新潟県で起こった中越地震がきっかけです。トンネルの崩落に車ごと埋もれた親子のうち、小さな子どもだけが救出された様子が盛んに報道されていました。その様子を見て、この子が将来にわたって困らないようにする1つの答えが保険だと感じたのです。AIU損害保険の研修生になったとき、私はすでに40歳で、年齢制限のギリギリ上限でした。ただし、ラストチャンスだと知ったからこそ、勇気をもって飛び込むことができたとも思います。
中央保険プラザとの出会い、そして入社の経緯についてもお聞かせいただけますか。
初めて中島と会ったのは、研修生として修行を積んでいた時、代理店が集まる忘年会だったと記憶しています。その後、ちょうど中央保険プラザの新事務所がオープンしたばかりというので、何人かで見学に伺いました。まだ珍しい来店型の保険ショップという先進的な取り組みに感銘を受けたことをよく覚えています。
私は研修生として活動しながらも、同じ保険会社の商品しか扱えないことにジレンマを感じ始めてもいました。お客様の状況によって、他社の商品がマッチする場合もありますが、ルールとして提案できません。この制度をとても歯がゆく思っていました。しかし、中央保険プラザでは複数の保険会社を扱っており、お客様目線で最適な提案ができる理想的な環境だとも感じました。
外資系保険会社のルールには、一定の売上を超えれば他社商品の取り扱いも認めるという規定がありました。いわゆる乗り合い方式です。日本の損害保険に加え、生命保険も扱うようになり、最終的に20社ほど取り扱いができるようになりました。
多くの会社の乗り合いを行ったのは、やはりお客様目線で考えたからです。保険は、お客様の年齢、職業、家族構成、予算など様々な条件によって最適な商品が変わるため、選択肢が多いほどお客様に喜んでいただけるという信念を持っていました。
県内初となる来店型のオフィスを作ったのも、来られたお客様が私たちの取り扱っている商品の中から自由に選んで契約してほしいと思ったからです。今では当たり前になった来店型の形態にこだわったことで、お客様には相談しやすい環境をご提供できたと思っています。
そこに小島様が加わったのですね。

岐阜県は南北に広いため、北部の拠点として美濃加茂の支店長を務めてもらいました。小島は様々な会社で人材管理の経験をしていたので、支店の立ち上げから力になってくれると期待していましたし、本当に頑張ってくれました。
そして、私が定めたタイムリミットが近づいていましたので、2年ほど前から小島に「社長になってほしい」と話していました。しかし、すぐに「はい」という返事はもらえませんでした。
最初は引き受けられないと思っていました。私のほうが年齢は上ですし、中島の姿を見ていると、どうしても同じようにやらなければいけないという思いが先行していたからです。人格が違うので、同じようにはできません。しかし、中島は粘り強く、毎朝二人だけでミーティングを重ね、考え方や会社に対する思いを繰り返し伝えてくれました。特に従業員のことを本当に大切に思っていること、この会社をもっと良くしていきたいという強い気持ちが伝わってきました。さらに、「自分なりのやり方でいいから、会社を発展させてほしい」という中島の言葉があったから決断できました。「それなら自分にもできることがあるかもしれない」と思えるようになったのです。
小島をはじめとして、大切な人材が次々に加わってくれたのは幸運なことでした。組織は拡大し、売上は増え、順調に発展していたと思います。私も公私を充実させられるようになりましたし、従業員もやりがいを持って働いてくれたと思います。組織化を進める中で、会社の文化作りにもこだわり、コンプライアンスを大切にするとともに、人間関係も良好な職場環境を作ることを心がけてきました。おかげで従業員からは「中央保険プラザで働けて良かった」「お客様のために頑張りたい」という声をよく聞くことができました。単純に売上や利益を追求するだけでなく、働く人たちが誇りを持てる会社にしたいという思いは、ある程度実現できていたのではないかと思います。
事業承継が完了したにもかかわらずM&Aという戦略をとった理由
事業承継という点では小島様に社長が交代し決着したように思われます。
その後、なぜM&Aを検討されるようになったのでしょうか。
保険業界は保険業法の改定により大きく変わってきています。保険会社の合併が進む一方で、保険代理店はまだ数多く存在しているのが現状です。金融庁が顧客保護の観点から代理店の体制強化を求めるようになり、一定規模の代理店でなければ生き残れない時代になると感じていました。
規模拡大に向けては、これまでのような一軒一軒の訪問営業だけでは追いつきません。会社を譲り受けて一気に規模を拡大するか、逆にM&Aされる側になることも選択肢として考える必要がありました。お客様をしっかり守り、従業員とその家族を支えていくためには、より大きな資本と組織力が必要だと考えたのです。
M&Aキャピタルパートナーズとの出会いについて教えてください。
そもそも10年ほど前、M&Aに関するセミナーを受講したことがありました。このときは、自社のためよりも顧客企業のために情報を収集しておきたいという気持ちが強かったのです。顧客企業の経営者の高齢化が進み、後継に関して悩んでいる企業は少なくありませんでした。ただ、ここで聞いた話では、M&Aには着手金のほか、成約時の仲介手数料も1,000万円単位でかかるのが普通だと聞いて大いに驚いたものです。
去年の初めごろ、全国展開している代理店の社長から「会社を譲り受けたい」と話をいただいたことがきっかけで、具体的にM&Aを検討するようになりました。小島とも話し合い、従業員のためになるなら業界の流れとして当然だという結論に至ったのです。
M&Aキャピタルパートナーズからは以前からDMをいただいていました。山田さんが偶然、知り合いの社長と同姓同名だったこと、大手企業のM&Aを支援しているという記載があったことで興味を持ち、連絡してみました。

中央保険プラザは東海エリアでも有名な会社として認識していました。直接的なきっかけとしては「アプローチしてもらえないか」と譲受候補先企業側からのご依頼があったため、お声がけさせていただいたという経緯があります。それまでに何度かDMをお送りしていたこともあり、今回タイミングが合致しお会いさせていただく流れとなりました。
中島様と初めてお会いした時は、誠実な方だという印象を抱いたことを覚えています。後継者もいらっしゃって、事業の承継にはなんら不安がない状況でしたが、JALグループの商社であるJALUXグループが初期的に興味をもっているというお話に関心を持っていただきました。
山田さんから初めて話を聞いた時は、驚きと戸惑いが入り混じった複雑な気持ちでした。もちろん、誰もが知る大企業のグループから関心を持っていただけることは、非常にありがたく、光栄なことです。一方で、私たちのような地方の代理店に、なぜそれほど大きな会社が興味を持つのか、最初は理解できませんでした。会社規模が大きく異なるので、本当にそんな話があるのだろうかという疑問も正直なところありました。
これまでM&Aといえば、同業他社や同規模の企業からのアプローチが中心でしたから、全国規模の大企業の話は想像もしていませんでした。最初は、警戒する気持ちさえあったのが本音です。しかし、山田さんとお話を重ねる中で、私たちのような組織的な体制を持つ代理店を求めている理由が、だんだん理解できるようになりました。山田さんの誠実な人柄も感じ取れましたし、これは本当なのかもしれないと思うようになったのです。
JALUXの全国拠点化戦略を実現するためのプロ代理店との提携
JALUX保険サービスの事業概要と、今回の提携の背景について教えてください。

JALUX、以前は日航商事という社名でしたが、祖業が保険代理店業です。日本航空が民営化される際の航空保険から始まり、やがて不動産や物販業へと展開していきました。子会社であるJALUX保険サービスは2008年に設立し、主に日本航空関連の保険からスタートして、JALカードやマイレージバンクのお客様にもサービスを提供してきました。

私たちはこれまでも品質の高いお客様サービスを提供し、評価を得てきたという自負があります。コールセンターをしっかり作り、丁寧な対応を心がけてきた結果として、他の代理店からお客様をお預かりし、私たちがハンドリングするという業務も行っています。
一方で、課題となってきたのが、全国にお客様が散在している点です。お客様が増えても、均一的に高品質なサービスをお届けするために必要となるのは、各地の拠点化です。これまでは転勤という形で、当社の人材を派遣していました。しかし、せっかくお客様との関係を構築しても、数年で再び転勤しなければならないという、会社員ならではの課題があったのです。そこで地元に密着した保険代理店とパートナーシップを結んで、一緒に拠点を作り上げていくことを構想していました。

航空・空港ビジネス領域における多岐にわたる事業展開と
非航空・空港ビジネス領域における幅広い商品・サービスの提供により事業ポートフォリオの最適化を目指している。
中央保険プラザに関心を持ったのはなぜだったのでしょうか。

これまで私たちは、インハウス系代理店との提携を進めてきました。インハウス系代理店は、企業グループ内の保険代理店のことで、企業と企業のつながりで契約が進むという特徴があり、安定した基盤を持っています。九州や関西の3社と提携を実現してきました。しかし、日本全国を網羅するには、まだまだ道半ばです。
そして事業を拡大していくうちに、プロ代理店の営業力とノウハウが必要だとも気づきました。保険販売を専業とする独立したプロ代理店は、お客様のもとへ個別に足を運び、保険商品の知識を駆使して、最適な提案を行うプロフェッショナルです。我々も含め、インハウス系代理店の企業には、企業間のネットワークがありますが、個人のお客様に対するきめ細かい営業活動という点では限界がありました。一方、プロ代理店は営業のプロとして、お客様一人ひとりのニーズを深く理解し、最適な保険を提案する力を持っています。
この両者の強みを掛け合わせることで、企業ルートで得た機会を、プロ代理店の営業力で確実に成果につなげることができる。それが、私たちの描く理想的な拠点展開の姿だったのです。東海地方で影響力を持つ中央保険プラザとの提携は、地域的にも魅力でしたし、理想を実現する第一歩として位置づけていました。
企業規模が大きく異なる点はネックとなったのではありませんか。

確かに規模だけを見れば、私たちとは大きな差があります。前例のない提携だったので、社内の手続きに時間がかかったのは事実です。しかし、私たちが重視したのは規模よりも、組織としての信頼性と品質でした。
中央保険プラザがプロ代理店として最も魅力的だったのは、組織でお客様を守る考え方が徹底されていることです。一般的には、個々の営業担当者にお客様が紐づいているケースが多く、その営業担当者が辞めた時にお客様も一緒に移ってしまうという属人化のリスクがあります。しかし中央保険プラザの会社全体でお客様を守る体制は、私たちJALUXグループの価値観と非常に近いものがありました。私たちも航空業界で培った安全・安心を重視する企業文化を持っており、組織全体でお客様に責任を持つという姿勢を大切にしています。
実際に事務所を見学させていただいた時の印象も決定的でした。パンフレットの整理状況、机上の管理、書類の保管方法など、すべてが非常に整然としていました。保険業界では個人情報の管理が極めて重要ですが、どこに何があるかを組織として完璧に把握されていることに同じ会社風土を感じました。また、中島さんや小島さんが従業員一人ひとりに目を配り、個人のスキルに依存するのではなく組織力で事業を運営されている点も素晴らしいと感じました。この組織運営の質の高さこそが、私たちが求めていたパートナーの条件だったのです。
JALUXが求めるレベルは非常に高いものでしたが、中央保険プラザの組織的な体制やお客様に対する姿勢を拝見していて、間違いないと確信してご紹介しました。今のお話を聞いても改めて、すばらしい会社だと感じています。
ありがたいご評価をお聞きして、これまでやってきたことを認めていただいたのは素直に嬉しく思います。ただ、私たちにとってはこれが当然のやり方でした。お客様の大切な情報をお預かりする以上、きちんとした管理体制を整えるのは保険代理店として当たり前のことだと思ってきました。
おっしゃっていただいた通りです。こうした組織運営は一朝一夕でできたものではなく、長年かけて積み上げてきたものです。お客様からいただく1枚の書類の書式さえ、改良に改良を重ねてきました。お客様にとって、そして会社にとって最善は何かを常に考えて選択してきた結果だと思います。
デューデリジェンス(企業監査)についてはいかがでしたか。
デューデリジェンスの過程では、様々な書類の準備が必要でしたが、山田さんのサポートのおかげで、スムーズに進めることができました。私は必要な時だけ打ち合わせに参加するという形で対応させていただき、普段の業務を継続しながら進められたのはありがたかったです。
大変さはありながらも、私たちにとって当然のプロセスだと理解していました。JALUXのような大手企業との提携ですから、しっかりとした審査は必要です。これをクリアできれば本当に信頼できるパートナーシップが築けるという期待の方が大きかったように思います。資料を1つずつ準備する過程で、改めて自分たちの会社の状況を整理することもでき、良い機会だったと振り返っています。
私たちにとっても初めてのプロ代理店との提携だったため、稟議を通すために詳細な資料や説明が必要で、中央保険プラザの皆さんにはご負担をかけてしまったかと思います。それでも、私たちの質問や要求に対して丁寧に対応していただきました。どんな質問にも正直に、包み隠さず答えていただき、今後の信頼関係を築く上で非常に重要なポイントだと感じました。
資料の準備という点で大変さはありましたが、隠すとか、ごまかすといった発想は一切ありませんでした。取り繕った回答をしても、お互いの信頼を積み上げるうえでプラスにはなりません。透明性とスピード感を大事にしようということは、中島とも話していました。
中央保険プラザの皆様の準備の良さ、対応の速さには本当に助けられました。組織的な体制がJALUXの求める水準に十分応えられるレベルにあったことが改めて確認できました。これは、長年にわたって真摯に会社経営に向き合ってこられた証だと思います。
お客様のため、従業員の未来のため、発揮されるシナジーに期待が膨らむ
パートナーシップによって今後どのような効果を期待していますか。

私たちは一軒一軒のお客様のドアをノックして、説明して契約していただくという営業を続けてきました。一方、インハウス型代理店は企業と企業のつながりで契約が進みます。私たちの保険商品の知識と営業力を組み合わせれば、もっと大きな成果が期待できますし、お客様にも本当に喜んでいただけると思います。
私たちには企業とのつながりはありますが、個人のお客様に対するきめ細かい対応という点では課題がありました。中央保険プラザの営業力とノウハウを組み合わせることで、より質の高いサービスを提供できると考えています。
提携から日が浅いので、まだまだ細かな事例ですが、中央保険プラザの事務センターに、私たちの事務作業でまかないきれない部分を移管し始めました。転籍していただいた中央保険プラザの優秀な社員をリーダーに据え、業務効率化を図っています。ファシリティと人材が揃っているからこそ、こうした素早い判断を実行できましたし、こうした細かな積み重ねが大きなシナジーにつながっていくのだと信じています。
私が社長を引き受けた時は60歳で、あと10年は「やらなければならない」と思っていました。しかし、今はできるだけ長くやらせてもらいたいという気持ちに変わりました。新卒の気持ちで、JALUXという土壌の中でどこまでやれるか挑戦してみたいと思っています。すでに従業員からも前向きな提案が多く寄せられているのです。
私たち単体では想像もできなかった、JALグループという大きなグループに加わったことで、新たなサービスや商品の展開にも着手したいと思っています。たとえば航空機や宇宙産業のロケット保険など、これまで見ることもできなかった分野に触れる可能性があるのです。保険の可能性を知ることができますし、保険会社に商品を提案できる立場になれるかもしれないと思うとワクワクします。
中央保険プラザの社員から、「セミナーを受けたい」といった自発的な提案がすでに寄せられています。自己研鑽を惜しまないという中央保険プラザのアグレッシブで前向きな社風に私たちもよい影響を受けています。
今回、東海地方に重要な拠点を作ることができました。北海道や東北、中四国といった地域にも早く拠点を充実させたいと考えています。大阪のように我々の拠点がすでにある地域でも、相乗効果を生み出せる代理店があれば提携を検討したいと思います。
私自身は最高の形でバトンを渡せたことにホッとしています。顧問という立場に変わりますが、培ってきた人脈やスキルを活用して、引き続き貢献していきたいと思っています。従業員には人生設計をしっかり考えて、より幸せになれるよう頑張ってもらいたいです。活躍できる舞台を整えることはできたので、存分に活かしてほしいです。
M&Aを検討している保険代理店の経営者に向けて、アドバイスをお願いします。
M&Aはいかに前向きに考えるかが非常に大事だと思います。古くからの仲間は「会社を売却したのか」などとマイナスな意味で質問されることもあります。しかし、私の考えは逆で、最先端の生き残り策がM&Aだと考えて決断しました。従業員のこと、自身のこと、業界のことを考える上で、前向きに考えられるM&Aを目指していただければ、きっと良い結果が得られるのではないでしょうか。
保険業界で最も大切なのは、お客様に安心と安全を提供することです。そのためには、個々の代理店が持つ力だけでは限界があります。今回、中央保険プラザとの提携を通じて改めて実感したのは、お客様により良いサービスを提供するために、それぞれの強みを結集することの重要性です。
インハウス型代理店の企業ネットワークと、プロ代理店の営業力や専門知識を組み合わせることで、これまで以上に最適な保険を提案できるようになります。「時間を買う」といった効率性の話も重要です。しかし、お客様のために、より多くの力を結集し、より質の高いサービスを提供するための戦略的な選択であることは、ぜひ強調したいと思います。今後もM&Aという手法を通じて優秀なパートナーとの提携を積極的に進めていきたいと考えています。
会社が困っているから売るのではなく、さらなる成長のための戦略的な選択として捉えることが重要だと、今回の件を通じて強く感じました。中島がリードしてくれたM&Aによって、後進の私たちが新しい環境で自らの力を試せる環境ができたことは本当に意義があることだと感じています。
今回のM&Aは、特徴の異なる両社が手を取り合うことで実現した素晴らしい事例だと思います。JALグループの企業ネットワークと企業基盤、そして中央保険プラザの組織的な営業力と地域密着のノウハウ。この組み合わせは、間違いなく保険業界全体にとっても、そしてお客様にとっても大きなプラスの影響をもたらすと確信しています。規模が大きく異なる企業同士でも、両社が真摯に向き合い、お互いの価値観を理解し合えたからこそ実現できました。このような意義深いお取り組みを支援させていただけたことを光栄に思います。
保険業界が大きく変化している中で、このような前向きなM&Aが一つのモデルケースとなり、業界全体の発展につながることを期待しています。私たちも引き続き、こうした価値のあるマッチングの実現に向けて尽力していく所存です。

文:蒲原 雄介 写真:平瀬 拓 取材日:2025/07/16
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