

雇用を守り社員の成長を持続させる約束のM&Aが
想定以上の成果を生み出した
大阪を拠点にシステム開発やシステムエンジニア派遣事業を展開してきた、株式会社ミニコンデジタルワーク。その経営を引き継いだ公認会計士・田淵 正信氏は、RPA事業への転換を図ってきた。RPA事業の拡大に向け、スキルのあるエンジニアを確保したいという株式会社パワーソリューションズとの目的が一致し、2023年にM&Aが成約。わずか2年で売上・利益ともに驚異的な成長を実現した要因を田淵氏、そして株式会社パワーソリューションズ 代表取締役会長 藤田 勝彦氏にお聞きした。
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譲渡企業
- 会社名
- 株式会社ミニコンデジタルワーク
(現社名:株式会社OLDE) - 所在地
- 大阪府大阪市
- 事業内容
- SES、ソフト受託開発、
システム運用 - M&Aの検討理由
- 後継者不在のため
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譲受企業
- 会社名
- 株式会社パワーソリューションズ
- 所在地
- 東京都千代田区
- 事業内容
- コンサルティング、DXソリューション、システム設計・開発、基盤構築、運用保守までを一気通貫でサポート
- M&Aの検討理由
- 人材獲得、事業発展のため
生命保険会社から公認会計士、大学教授、システム会社経営者へ
まず田淵様のこれまでのキャリアについてお聞かせください。

新卒で入社した生命保険会社を3年で退職し、その後会計士を目指すことにしました。当時はサラリーマンには向いていないと感じ、再就職するのも難しいと思ったため、資格を取得することがよいだろうと考えたのです。退職と同時に簿記を学ぶ学校に通い、27歳で会計士試験に合格しました。その後、大学の先輩の会計事務所に勤務しながら実務経験を積んだのですが、ここでの経験が、後の私の仕事のスタイルを形づくる大きなきっかけになったと思います。
私は担当する顧問先の業務に、つい深く入り込んでしまうタイプでした。私は好奇心が強く、凝り性なのも影響していたと思います。だからこそ、いつの間にか相談される内容もどんどん増えていきました。原価計算が不得意なお客様はやり方から一緒に考え、仕組みがない場合はその構築方法からご提案する──そんな対応が、自分のクセとして自然に身に付いていました。
そうして理解が深まるほど、もっとお役に立ちたいという思いが強くなっていったんです。もちろん提案すればするほど、お客様も喜んでくださいます。その過程を面白く感じていました。
やがて自分で事務所を開くと決めて、顧問でかかわった企業に退職の挨拶へ行くと、このまま私に依頼を継続したいと言ってくれた方が複数いました。これまでの姿勢を評価いただいたのだと嬉しくなりましたし、お客様を引き継いでの独立を認めてくれた所長の器の大きさに今でも感謝しています。
独立する時点で、しっかりとお客様がいらっしゃったのですね。
おかげで独立後も生き延びることができたと思っています。私の会計士としてのキャリアで特徴的だったのは、倒産した企業の再生を多く担当してきたことです。バブル崩壊や阪神・淡路大震災など、倒産が相次いだ時期と重なり、ご縁のあった弁護士さんから依頼を受け、ともに企業再生の仕事をたくさん手がけました。
内容が複雑で難易度が高く、他の会計士なら敬遠するような仕事も少なくありませんでした。ただ私は、そうした”難しい仕事”ほど燃える性格でした。時には会社の悪い部分を整理し、良い部分を救済するわけです。
企業再生は、単に帳簿上の数字を合わせるだけではありません。弁護士と連携して法律的な問題をクリアし、税金問題も解決して債権者に納得してもらえるプランを作ります。可能な限り、従業員の雇用も守りたい。その過程では、人間としての判断力や覚悟、価値観が問われます。全員を救えるわけではありませんが、それでも助けられる人は助けたい。そんな気持ちで取り組んでいました。深夜作業が連続し重圧も強く、誰にでもできる仕事ではないところにやりがいを感じていました。
また、会計事務所をしながら2003年から13年間大学で簿記会計の教育に携わり、授業だけでなく資格取得や就職支援も行い人を育てる素晴らしさに気づきました。この経験がシステム会社経営においても若いエンジニアの育成や従業員の新技術習得、やる気の醸成といった点でも非常に役に立ちました。
どのような経緯でミニコンデジタルワークの経営に関わることになったのでしょうか。

もともとミニコンデジタルワークは、私の会計事務所の顧問先の一つでした。創業者とは30年来の付き合いがあり、さまざまな相談を受けてきていたのです。ある時、その方が病気を患い、私に経営を受け継いでほしいと言ってきました。その時点で、すでに後継者として社長を任せた方が3人いましたが、いずれも思うようにいかず、退任を繰り返していた状況でした。承継がうまく進まない中で、私が4人目だったことになります。
2016年に経営を引き受けた決め手は、私が昔からコンピューターに興味があったことに尽きます。1985年、システム監査技術者試験が始まった年に、この資格を取得しました。情報処理試験の中でもトップレベルの難易度で、システムが正しく動作しているかを監査する資格です。
会計という手作業でアナログな世界に、コンピューターを持ち込んで一体化して仕事に生かそうと思って取得したんです。だから、いつか会計システムや業務ソフトを作ってみたいという思いがありました。2003年から続けていた大学教員の仕事を辞めたタイミングだったことも、プラスの要素でした。
ただ、実際に内部へ入ると、これまでいかに事業の表面しか見ていなかったかを痛感しました。財務内容は大まかに把握していましたが、詳しい事業の中身まで把握できていなかったことを知ったのです。まず事業の内訳を調べると、SESと呼ばれるエンジニアの派遣事業が売上の9割を占めていたことが分かりました。SES事業は短期的には売上が安定的に見込まれるものの、実は非常にリスクが高い側面があります。ある大きな案件が突然ストップになると、派遣していたエンジニアが大量に余り、戻ってきてしまうからです。ところが、一人一人のエンジニアはそれまでに従事していた仕事の技術しか知らないので、他の現場への転用が効きません。システムの仕事はエンジニアの技術力や人柄に大きく依存しています。その点は外から財務資料だけを見ていても全く分かりません。また、システムの仕事も開発から運用・保守といった上流から下流まであり会社がどの部分に関与しているか、各エンジニアがどのような技術と経験を持っているかに大きく依存しています。
こうした人材を別の業務、新しい技術のニーズのあるところにアサインするための再教育には、多くの時間とコストがかかります。元々が相場と比べて、単価を低く設定していたことも、利益を圧迫していることが分かりました。このまま事業を続けたとしても、成長性に乏しく事業の維持も難しいと感じて暗い未来しか描けない状況だったのです。
事業ポートフォリオを書き換えるために新たな挑戦を続けた
どのように改革に取り組んだのでしょうか。
すべてのエンジニアに対して、資格の取得や、古い「COBOL」から脱却してJava言語の習得を促しました。私自身、資格を取得したことでキャリアを築いてきた人間です。エンジニアも、資格を取ることで広い知識を習得し道が開けると確信していました。ただし、合格するには勉強を続けるだけの意志や、自己管理力が必要です。遊びに行くのも我慢しなくてはならないからこそ、資格を取得したら手当がつくように給与制度を改めました。勉強しろと言う限りはそれが成果(給与手当)に結びつかないと考え、取得時だけでなくずっと払い続けるという約束です。会社が奨励し指示するからには、成果への対価を支払うべきだということです。
ずっと前に主流だった「COBOL」言語で仕事をしている者も何人かいたのですが、それでは新しい開発ニーズに応えられない感じていました。そこで、社員の技術力向上を目的に、「Java」を使った開発にも挑戦し社内の勤怠管理システムを開発しようとゴールを設定して、勉強や残業にかかる費用はもちろん、懇親目的の焼肉の費用も全部会社で負担しました。すると、社員たちのスキルは着実に向上し、チーム力も生まれて中核を担う人材も育ちました。さらに会社全体に新たな言語や開発にも意欲的に挑戦する流れが生まれたのです。
そして、大きな転機となったのは2018年のRPA(ロボットによる定型的業務の自動化)との出会いでした。かねてから公認会計士の守備範囲である経理・総務・営業事務・在庫管理業務といったバックヤードの事務作業を効率化したいと思っていた私は、RPAを導入すればどれほど業務が楽になり、どれだけコスト削減ができるか、すぐにイメージできました。そこでRPAの習得にも会社で奨励金を設け、社員のスキルアップを後押ししました。いち早く希少なスキルを身につけた社員は、派遣先でも高く評価されるようになり、低迷していた売上単価のアップにもつながりました。
改革の成果が表れていたように感じますが、その中で、M&Aを検討したきっかけを教えていただけますか。
私が社長を引き継いだ2016年時点で66歳でしたので、早くから会社の将来について考えていました。できれば社内承継がよいとは思ったものの、経営権を社員個人が引き継ぐとなると、銀行の債務保証の問題が立ちはだかります。それだけの負担を強いるのは難しかったです。
さらに、2022年には自身の病気も重なったことで、いよいよ真剣に向き合わざるを得ませんでした。社内継承が難しいなら、M&Aという選択肢が浮上するのは自然な流れだったと思います。当時は、さまざまなM&Aの案内が封書で届いていました。あまりに数が多かったので、ほぼ目を通すことなく処分していたのですが、ある日ふと手に取ったのがM&Aキャピタルパートナーズの封筒でした。中を開けると、大木さんの名前の横に「公認会計士」と記されていたのです。私と同じく公認会計士なら話も通じやすく、信用できるだろうと思い、メールで連絡することにしました。

公認会計士の大先輩に失礼があってはいけないということで、いつも以上の緊張感を持ってお伺いしました。初回の面談としては長く、2〜3時間ほどご面会のお時間をいただき、率直にいろいろなお話をしてくださったことが印象に残っています。会社の成り立ちやご自身が引き継いだ時の思い、そして今後のお考えとともに、ご自身の病気の話も包み隠さずにしてくださいました。初対面にもかかわらず、さまざまなお話をしていただき、大変有意義な時間となりました。
田淵様から見た、大木さんの印象はいかがでしたか。
大木さんは、物腰が柔らかく、丁寧に仕事をしてくれそうな方だという印象でした。初回からそんなに長く話した記憶はないのですが、大木さんが話しやすい雰囲気をつくってくださったのかもしれません。込み入った話を社員に聞かれるのは避けたいと思い、たしか私の会計事務所に来ていただきましたよね。
おっしゃる通りです。私も田淵様とお話すればするほど、共通項が多くて心惹かれるものがありました。田淵様は、企業再生に長く携わられ、再生M&Aの経験も豊富でいらっしゃいます。また、私自身も前職でRPAシステム監査に関わっていたことから、田淵様がRPA事業に早くから取り組まれてきた経緯にも共感いたしました。

私はこのご支援をサポートする立場でしたが、田淵様とお会いしたあと、大木は「ぜひ自分の手でご支援したい」と張り切っていました。
私もビジネスモデルを詳しく伺い、非常に可能性のある企業だと確信しました。SES事業中心から、RPAへの転換を進め、社員教育にも積極的に投資されている点や、田淵様がエンジニア一人ひとりのスキルや性格を細かく把握し、成長を真剣に考えていらっしゃる姿勢がとても印象的でした。
パートナーの候補を探す上では、どのような点を重視されたのでしょうか。
田淵様からは明確なご要望をいただいていました。社員が成長できる環境が整っていること、RPAに知見があること、そして管理体制がしっかりしていることの3点です。良縁を紡ぐべく複数候補先をリストアップし、ご提案を進めてまいりました。
まず、さまざまな条件をもとに8社から3社まで絞り込ませてもらいました。たとえば「現状のままで自由にやってほしい」というオファーは、一見魅力的に思えます。しかし、今後の事業成長を後押しする力にはやや欠ける印象でした。また、SESを伸ばそうとする相手先さんは、他社からの受託を増やすために当社の人的リソースを当てにしていると感じられました。既存の取引先に影響が出る懸念もあり、ここ数年社員の成長を重視してきた経営方針にも逆行しかねません。
その中で、パワーソリューションズさんに惹かれた理由は、上場企業として財務基盤がしっかり安定しており、長期的な視点で投資を行えるだけの素地があることです。さらにRPAにも積極的で、私たちがこれから本格展開しようとしていた分野に狙いを定めていることが分かりました。タイミングとしても、方向性としても両社のニーズが合致するのを強く感じていたのです。
両者のパートナーシップは需要と供給が完全に一致していた
藤田様には、パワーソリューションズの会社概要のご説明をお願いいたします。

当社は、現在4つの主要サービスを展開していますが、最大のビジネスは企業のDX推進やDXコンサルティングで、売上の6割以上を占めています。このほかの3つは、インフラエンジニアリング、業務プロセスのアウトソーシング、そして業務プロセスの自動化を推進するRPAソフトウェアである「UiPath」のライセンス販売や導入サポートの事業です。
当社の上場は2019年、私の参画は2020年でした。コロナ禍以降も継続的に成長できた要因の一つは、積極的なM&A戦略だったと捉えています。私たちのミッションは、「あらゆるラストワンマイルにITで立ち向かう」です。ラストワンマイルとは、お客様が普段使っているITシステムに感じる理想の状態との少しのギャップです。お客様の想いを深く理解し、まごころ込めて「あと一歩足りないもの」を埋めて行くのが、我々のITです。
ミニコンデジタルワークは、パワーソリューションズの一員となった後、当グループ内の事業再編に伴い会社名を「株式会社OLDE」に変更しています。
なぜミニコンデジタルワークに関心をもったのでしょうか。
やはり最も大きかったのは、RPAという共通のキーワードの存在です。私たちはRPAの世界的プラットフォームであるUiPathのプラチナパートナーです。そのため豊富な案件がありますが、RPAに精通した人材が十分とは言えず、まだまだ体制も整っているとは言えませんでした。一方、ミニコンデジタルワークは、UiPathの高度なスキルを持ったエンジニアが何人も育成されていました。この人達と一緒になれば、ワクワクできるような仕事ができると直感しました。
実は、パワーソリューションズから以前より「RPAに詳しい優秀なエンジニア集団がいれば、ぜひ紹介していただきたい」という要望をいただいていました。その時点から、ミニコンデジタルワークにとってもRPAというキーワードを通じて、非常に良いマッチングになる可能性を感じていました。
初めて両者お会いになったときの感想を教えてください。
初めて藤田さんとお会いしたとき、出身校をお聞きして驚きました。私のようにずっと関西にいたわけではないのに、藤田さんは北野高校、私は天王寺高校と、いずれも大阪の伝統校の出身です。世代も近いことから、育った環境や若い時の思考法、ベーシックな部分で共通するものを感じ、それが大きな安心感につながりました。

田淵さんは高校同窓会の会長を務めておられました。私も同窓会幹事を経験していたのですが、歴史ある学校の同窓会会長は、誰からも信頼される人格者でなければ務まりません。それを聞いた時点で「この人は絶対に信頼できる」と確信しました。
ありがたいご評価ですが、藤田さんとお話しして、社員を育てることに本当に真剣に取り組んでいることが伝わってきました。パワーソリューションズさんの幹部の方々を丁寧に育ててこられた様子を見て、ここなら社員を任せられると思いました。
私も同席させていただきましたが、開始後すぐに柔らかな雰囲気になっていくのが感じられました。ビジネスの枠を越えた対話が自然に始まり、互いの価値観や経営哲学について深く語り合っておられました。両者とも中堅、中小企業のIT支援を懸命に追及してきたという共通点があったことも印象的です。この方向性の一致が、お二人の会話をさらに弾ませていたように思います。
千載一遇の好機を逃がさないという決意がスピードを速めた
その後、どのように成約に向けてすすんでいったのでしょう。

お話を詳しくお伺いするうちに、ミニコンデジタルワークの社員のスキルレベルは、情報処理の資格取得率から見てもかなり高いことが想像できました。それに、JavaだけでなくPythonといった新しい言語にもチャレンジしていることもお聞きしました。もし田淵さんが組織改革を行わず、今もエンジニアを派遣するだけのSES企業なら、今回のご縁はなかったでしょう。しかし、受託開発やRPAも含め、次々に新たなチャレンジを続ける土壌が整っていたのです。この社員たちは、自発的に成長し、進化できるだろうと確信しました。
また、失礼な言い方かもしれませんが、当時のミニコンデジタルワークの受注価格は相場に比べて安かったので、リスキリングによって単価をあげ、エンジニアの皆さんの給料を大幅に上げれると容易に想像できました。
そんな経緯もあったため、より正確にエンジニアの実力を把握したいという思いから、大木さんを通じて、スキルマップの作成を依頼しました。保有している資格、経験してきた言語、それからRPAをやりたいと思っているかどうか、お客様とのコミュニケーション能力などを項目として評価してもらいました。
RPAの仕事では、お客様の業務内容をヒアリングし、要件を聞き出す力が必要です。開発能力だけでなく、業務理解力、コミュニケーション能力の有無が問われるため、その評価もお願いしました。
ご依頼後、わずか1~2日だったかと思います。田淵様から提出されたスキルマップを見たときは、心底驚きました。40名のエンジニア全員について、詳細な情報がまとめられた完璧なレポートでした。資格や経験に加えて、RPAの適性やコミュニケーション能力に関する定性的な評価まで、率直に書かれていました。そこには、少しでも良く見せようとするような形跡がなく、適性のない項目についても率直に記載されていました。この透明性には、本当に驚かされました。
私はどんな質問にも、できるだけ早く返事をするように深夜作業もしました。かつてデューデリジェンスやM&Aに公認会計士として関わった経験があるので、レスポンスのスピードが大事だということは骨身に染みていました。仮に100%の回答でなくても、すばやくお返しすることで、議論は進みますし、追加質問を出してもらうこともできます。
私にとっては、一世一代の商談で、絶対に成功させなければなりませんでした。藤田さんとパワーソリューションズさんが重要なお相手であるのはもちろん、仲介者である大木さんと安田さんには、最後まで伴走してもらう必要があります。お二人が気持ちよく仕事をして私の味方になってもらうようにと、徹底しました。同じ釜の飯を食ってきたエンジニアの性格やスキルをまとめるなど、私にとってはすべて当たり前に知っておくべき情報でした。藤田さんたちは、エンジニアを受け入れて、彼らを成長させようとしてくれているのですから、何も隠さず正直に正確な情報を提供するのは私の責任です。
田淵さんが包み隠さず情報を出してくださった資料により、より、M&A後の成長シナリオの解像度が高まりました。

田淵さんの誠実さは、スキルマップだけでなく、完璧に正確な財務諸表にも表れていました。M&Aでは、譲渡側が情報を隠したり良く見せようとしたりすれば、後々トラブルの種になりかねません。田淵さんの透明性と正確無比な報告があったからこそ、デューデリジェンスもスムーズに進みました。今回のM&Aが成立した大きな要因の一つだと思います。
特に大木さんをはじめとするデューディリジェンスに関わってくださった公認会計士の皆さんには、細やかにサポートしていただき助かりました。成約させることを最優先にするのではなく、両者にとって良いご縁になるかどうか、一緒になった後のことまで真剣に考えてくれていることが伝わっていました。
ありがたいお言葉です。様々な観点において大先輩でいらっしゃるにもかかわらず、田淵様はいつも私たちを対等なパートナーとして接してくださいました。どんな質問にも真摯に答えてくださり、むしろ「こういう情報も必要じゃないか」と先回りして提供してくださることもありました。私たちも全力でサポートさせていただきたいと強く感じました。
成約はあくまでスタート 予想以上の成果を生み出した両者のシナジー
M&A成約から2年が経過しました。この間、どのような成果が生まれたのでしょうか。
かなりの目に見える変化がありました。旧ミニコンデジタルワークの事業規模で比較すると、売上は1.5倍に増え、利益率も大幅に向上しています。最大の要因はRPAへの人材シフトで、RPA関連の従事者が2名から17名に増えました。事業の要であるUiPath資格の保有者も、ゼロだったものが14名まで増えています。その結果、社員の市場価値・売上単価が上がり、賞与の増額、給与改定なども行えるようになりました。
社員の気持ちの変化も重要で、85%の社員がM&A後の変化をポジティブに捉えていました。「財務状況の改善」という安心感、「年収が増えた」という実感、「明確なビジョンによって目指すべき価値が明確になった」などの声が多く寄せられました。RPAの業務は、開発よりも上流工程から参加するため、社員の業務領域が拡大し、新たな適性も見えてきました。懇親会も増えて社員間の仲が良くなったという声もあります。
課題としては、上場企業グループになったことで申請ルールや事務手続きが増えたこと、管理職の重要性が増したが人材教育が追いついていないことなどが挙げられます。ただ、社員の給与も引き上げることができ、田淵さんから託された社員のスキルアップと給与向上という命題は、ある程度果たせたのではないかと思っています。

本当にホッとしました。最高の形でバトンをお渡しできたと感じています。RPAの営業力があり、資金力があり、社員を大切に育成する土壌があるパワーソリューションズさんにお任せしてよかったと心から思います。私の力だけでは到達できなかった場所に、社員たちを連れて行ってくれています。ミニコンの社員たちには、この素晴らしい舞台を存分に活かして、さらに成長してほしいです。
ご成約して終わりではなく、このように成果をお聞きする機会に立ち会えて、一番喜んでいるのは私たちかもしれません。私たちは、譲渡側と譲受側の双方にとって満足のいく結果を得ることを最優先に心がけています。ミニコンデジタルワークとパワーソリューションズのご縁を結ぶことができ、皆さまが喜んでくださるのは、仲介役の冥利に尽きます。
最後にこれからM&Aを検討する経営者の皆さまに向けたメッセージをお願いします。
M&Aは、いかに前向きに考えるかが大事だと思います。古くからの仲間には「会社を売却したのか」などとマイナスな意味で質問されたこともありました。しかし、私は逆の考え方で、最先端の生き残り策がM&Aだと考えて決断しました。
私たちは幸いなことに、成功だったと言えるM&Aを実現できました。その中で最も心がけたことは、私自身がプロセスにおいて誠実で正直であることです。私は譲受企業と仲介会社の双方に「味方になってほしい」と思いながら、すばやく、あらゆる情報を出してきました。中小企業の経営者には、他人から指示されることに不慣れで「なぜこんなことを質問するのか」と腹を立ててしまう人もいるかもしれません。しかし、会社という自分の大切なものを譲り渡すという一世一代の営業ですから、心から誠実に向き合うことこそ、M&Aを成功させる鍵だと思います。

怖がらずにチャレンジすることをおすすめしたいと思います。M&Aによって他社の力を得ることで、力をあわせて初めて実現できることもたくさんあります。その結果、企業価値が高まるだけでなく、社員が成長でき、社員のやる気も上がり、処遇も上げる、というとても素晴らしい、自社だけではできなかった結果をもたらすこともできるかもしれないからです。
ミニコンデジタルワークから加わってくれた社員の皆さんは、真面目で学ぶ意欲が高く、会社を大切に思う人材ばかりです。こうした出会いは、M&Aがなければ実現しませんでした。社員を大切に思うなら、その成長の可能性を最大限に広げることも経営者の責任です。M&Aは、その有力な選択肢の1つではないでしょうか。
今回のM&Aは、私にとっても特別なものです。今回のご良縁を紡ぐことができたことを心から光栄に思っています。数字で見ても、社員の皆さんの声からも、このご縁が成功だったことが分かります。私たちM&Aキャピタルパートナーズは、会社と会社をつなぐだけでなく、その先にある未来を見据えてご支援させていただきます。今回のようなご縁組みを、これからも実現していきたいと考えています。

文:蒲原 雄介 写真:蔵屋 憲治 取材日:2025/10/23
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