

同業種だから実現できる強みとノウハウの結集。
“灯”を守り、受け継ぐためのM&A
東京で法人出張手配業を展開する旅行計画アルファ株式会社は、同業大手の株式会社アリーズカンパニーとのM&Aを選択した。今後は、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のさらなる発展を目指す。両者が「それぞれの特性を補強し合える」と口を揃える決断について、旅行計画アルファ株式会社 代表取締役 鈴木 実氏と、株式会社アリーズカンパニー 代表取締役 浅井 巨樹氏にお聞きした。
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譲渡企業
- 会社名
- 旅行計画アルファ株式会社
- 所在地
- 東京都中央区
- 事業内容
法人顧客の国内外出張・団体手配業務
- M&Aの検討理由
- 後継者不在のため
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譲受企業
- 会社名
- 株式会社アリーズカンパニー
- 所在地
- 大阪府大阪市
- 事業内容
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出張手配サービス「CosPro」の運営をメイン事業とし、さまざまな企業向けサービスの展開
- M&Aの検討理由
- 事業拡大・成長のため
顧客との信頼関係で築いた独自のビジネスモデル
ご創業から今日までの歩みについて教えてください。

旅行計画アルファは法人専門の旅行会社です。主な取引先はリクルートグループの出張、研修の交通宿泊手配をはじめ、公共放送局から民放各社及び大手ネット配信企業の取材、ロケ関係の交通・宿泊手配を主に行っています。 私自身のキャリアを振り返ると、28歳で独立し、最初は留学先を手配する旅行会社を20年間運営しました。その後、リクルートと全日本空輸(ANA)が出資する「旅行計画」という、通信販売を専門とする旅行会社で5年間社長を務めました。残念ながら任期中にリクルートが上場準備に入った際に、採算性の高くない事業ということもあり会社を清算する決定が下りました。その後、1年をかけて当時40~50名いた社員の転職先の相談、手配をし、事業の手じまいを行っていました。
やむを得ない事情とは言え会社をたたむことになったことに、前経営陣や社員に対し申し訳ないという気持ちが拭えず、どこか「敗北」を突きつけられたような気がして、このままでは終われないという気持ちが日に日に大きくなりました。
さらに法人のお客様から「辞められては困る」「今後も引き続き手配をお願いしたい」といったお言葉をいただき、2012年に立ち上げたのが、旅行計画アルファです。「旅行計画」をリボーン「reborn」させたい、「アルファ」は始まりと言う思いを込めて会社名にしました。
再起後は順調に事業を拡大してこられたと伺いました。
おかげさまで、リクルートグループ各社からの取引に加えて、テレビ局からのご紹介も増え、年々業績を伸ばすことができました。そのポイントの一つは、自社内でチケットを発券できる権利を取得できたことです。起業時はANAの発券だけでしたが、その後は日本航空(JAL)、そして全国のJRの特急券・乗車券の発券も自社でできるように権利を取得しました。今でこそチケットレスが進んでいますが、当時はスピーディにチケットをお渡しできることが、お客様に喜ばれたのです。
もう一つは、テレビ局関係のロケ手配というニッチトップを目指してきた戦略です。テレビ局の仕事の特徴は、なんといっても突発的な出張が多いことです。緊急報道もありますし、そもそも先々の予定が決まっていないことが多いのです。急な依頼も珍しくありません。だからこそ「明日から急きょ出張」「今から移動する」といった時間の感覚にあわせてサービスを提供することが肝です。
災害発生時には、取材スタッフがすぐに被災地に赴く必要もあります。たとえば熊本地震の際は、飛行機こそ飛んでいたものの、現地のホテルも被災していて、水や電気さえも止まっている状況でした。宿泊先が確保できていなくても、現地へ向かわなくてはいけません。取材クルーが現地に到着するまでに、宿泊施設と交渉し、必要な部屋数を確保しました。このような手配ができる旅行会社は数少ないと思います。
また、「今空港に向かっている」と連絡を受けて、到着までのわずかな時間でチケットを手配し、メールで送ることも多々ありました。-急なロケや取材で手配を頼まれたスタッフに「アルファに頼めばなんとかなる」と、テレビ局のディレクターから指示されたと聞きました。そうした評判が広がり、手配を頼まれたスタッフが昇格すれば、さらに次の担当者へと紹介の輪が広がっていきました。
お客様の満足度を高めることがビジネスの基本だということですね。

東京から大阪の新幹線切符1枚の手配であっても、確実にお届けすることを徹底してきました。こうした対応は、大手ではなかなかできない部分だと思います。突発的な対応が多いテレビ局は、一般企業のような前もって出張申請するような仕組みもなかったので、スタッフの皆さんが自分で手配する場合には、費用を立て替える必要がありました。しかし当社を利用すれば、請求書払いで処理できるため、お金の心配もなくなります。こうした使い勝手の良さも、利用が伸びた一因だと思います。
ただ、売上が伸びるほど、資金繰りへの不安も大きくなっていきました。法人の請求書払いということは、JR、航空券、宿泊代金をすべて当社が立て替える形になるわけです。月に1億円を超える立て替えを続けるのは、常に大きなプレッシャーがありました。売上が伸びるのを社員たちと喜びながらも、私だけは内心、支払いが滞らないか心配していたというわけです。
もちろん、コロナ禍も大変でした。出張もイベントも中止になり、大打撃を受けましたが、「この時期を耐え抜けばきっと回復できる」と信じて踏ん張っていました。実際に、現在はコロナ前に近い水準まで売上を回復できています。
60代を迎えて募り始める将来への不安―後継者不在という現実
業績が順調だったにもかかわらず、M&Aを検討された理由は何でしょうか。
私ともう1名の取締役が、今年そろって66歳になりました。彼は、前身の旅行計画の時代から苦楽を共にしてきた戦友です。この10年あまりは、彼にとっても“リベンジの戦い”だったのです。私自身、60歳を迎えた頃からひとつの区切りを意識しており、その想いは以前から彼とも話していました。しかし、社内には事業を託せる後継者がいない。この会社を未来につなぐには、M&Aという選択肢しかないのではないか、そう考えるようになったのです。
ところが、60歳を過ぎた直後にコロナのパンデミックが到来しました。事業の先行きが見えないあの状況では、M&Aを検討する余裕はありません。ここ2年ほどで業績がようやく回復してきたタイミングで、改めてM&Aという選択肢を考え始めました。再び取締役と話し合い「そろそろバトンタッチのタイミングではないか」と決断。一部株式譲渡も考えていましたが、最終的には「全て譲渡しよう」と決めました。
M&Aキャピタルパートナーズとの出会いについて教えてください。
以前より、多くの会社からDMや営業電話をいただいていました。その中の一社が、M&Aキャピタルパートナーズの宮下さんです。一度話を聞こうとお会いした時の第一印象は「真面目な人」でした。良いことだけでなく、留意点についても正直に話してくれる方だと感じました。
私は、何事も最終的には「人と人」だと思っています。宮下さんとお会いした時、直感で「この人ならしっかりやってくれそうだ」と感じました。ただ、その時点では考えが定まっていなかったので、「今は全く考えていない」と正直にお断りしました。宮下さんは、その後も頻繁に営業してくるようなことはなく、ちょうど良いタイミングで「その後の状況はいかがですか」と連絡をくれます。このタイミングと距離感が、私には心地よかったのです。

そのように仰っていただき、ありがとうございます。初めてお会いした時点では、将来のひとつの選択肢としてM&Aの情報を収集されようとしているのだと受け止めました。すぐに検討を開始するご意向がないお気持ちを受け止めたうえで、M&Aに関するメリットや留意点などを丁寧にご説明しました。
再び宮下さんとお会いしたのは、1年ほど経過してからだったと思います。継続的に社内で話し、ようやく意向が固まったタイミングで、ちょうど宮下さんから連絡をいただきました。
そこで、一部の株式譲渡ではなく、全株式を譲渡する意向を伝えました。宮下さんは急な展開に驚いたのではないでしょうか。
急な展開でしたので、たしかに驚きはありました。ただ、M&Aは誰かに急かされて決断するものではありません。ご自身のタイミングで判断することが何よりも重要だと、私は考えています。ご決断をお聞きして、鈴木様の想いの強さを感じた瞬間でもありました。やると決めたら迷わない姿勢は、経営者として尊敬できるものだと思います。一方で、検討が進む中でも、私は鈴木様に「いつでも白紙に戻せます」と常にお伝えしていました。違和感が生じたら、いつでも話をストップする覚悟を私も持っていました。
宮下さんの言葉は、特にありがたかったですね。正式に書類を取り交わす前なら後戻りできることを確認でき、気持ちが楽になりました。私たちのことを本気で考えてくれているからこそ出た言葉なのではないかと思います。
そのうえで、旅行計画アルファ様における、将来への漠然とした不安や課題をひとつひとつ整理していきました。5年後も従業員の幸せを追求できる状態を一時的なゴールとして設定し、M&Aや他に考えられるさまざまな選択肢を比較しながら検討を進め、どの道筋が課題解決につながるのかを一緒に確認していくプロセスが、鈴木様ご自身の考えを整理する一助になれたのではないかと思います。
旅行計画アルファにふさわしいお相手をどのように提案しようと考えましたか。
先入観を持たず、多様な事業会社とのマッチングの可能性を探りました。経営者の考え方次第ですが、同業が望ましい、逆に異業種がよい、ファンドには抵抗があるなど、さまざまなご意向があります。メリットとデメリットは表裏一体ですので、どのようなパターンのパートナーが新たな成長や発展につながるかを、鈴木様ご自身にご判断いただけるように、できるだけ選択肢を広くご提示したいと考えていました。
同業だからこそ理解し合えた両社―起業家マインドの共鳴
譲受企業であるアリーズカンパニーの会社概要を教えていただけますでしょうか。

弊社は、様々な企業向けサービスを展開しておりメイン事業として、旅行計画アルファと同じく、企業向けの出張手配サービスを行っております。
顧客に対して出張コストの削減や業務改善の支援を行っています。また、出張では不正が起こりやすいという課題もありますので、ガバナンス強化という面でもお役に立てるよう心がけています。
全国で1,300社以上に導入されている企業向け出張手配サービス「CosPro」の特徴は、Webやシステムによるオンライン予約と、365日対応のコールセンターを組み合わせている点です。デジタルとアナログ、どちらか一方に偏るのではなく、両方の良さを活かしたハイブリッド型を目指しています。電話一本で飛行機やホテルを手配できるようにし、人が介在することの価値も大切にしてきました。
こうしたアリーズカンパニー様の事業内容や強みを踏まえ、旅行計画アルファ様との親和性が高いと感じ、ご紹介させていただきました。同業であるからこそ、価値観や課題感を深いレベルで共有できる可能性があると考えたためです。
同様のサービスを提供している企業同士でありながら、アリーズカンパニーという存在は知りませんでした。関東と関西で商圏が分かれていたことが影響していると思います。ただ同じ法人を専門にしている業態ということで、宮下さんからご紹介いただき、強い興味を持ちました。
アリーズカンパニー様は、弊社と以前からお取引のある会社です。代表である浅井様のお人柄も存じ上げていましたし、同業だからこそ、旅行計画アルファの本当の価値を理解していただけると確信していました。
ただ、同業同士のM&Aには難しさもあります。旅行業は景気に左右されやすいという懸念もありましたし、鈴木様も当初は上場企業のほうが安心なのではとお考えでした。しかし、何度もお話しする中で、「やはり同業で、しかも起業家マインドを持った経営者同士だからこそ、本当の意味で理解し合える」という結論に至りました。
浅井様は、旅行計画アルファに関するM&Aのご提案を受けた際、どのような印象を持ちましたか。

資料を拝見した際の第一印象としては、なぜこれほどの売上を少人数で達成できているのかということです。不思議でなりませんでした。同業であるがゆえに理解できる、私たちの常識を覆すような数字が並んでいたのです。弊社も私たちなりに効率化を追求し、実現してきた自負はありましたので、いったいどのような秘密が隠されているのか、ぜひお会いしてお話を聞いてみたくなりました。
結果的にトップ面談だけで3回行ったと記憶していますが、面談を重ねるたびに、こちらの不安材料は解消されました。それどころか「なるほど」と唸らざるを得ない場面が多く、むしろプラスの印象になりました。
強い関心を持ちながらお会いしたのは、私たちも全く同じでした。これまで私たちはアナログな手法に頼ってきましたが、浅井さんはデジタル化を推進して合理化を図ってこられていました。私たちも独自のノウハウで利益を確保してきましたが、おそらく私たちが知り得ないノウハウをお持ちなのだろうと考えるのは当然です。話を聞けば聞くほど、双方の知見をかけ合わせることで面白いシナジーが生まれるはずだと、興味と期待が膨らんでいきました。
トップ面談の際は、終始和やかな雰囲気でした。双方の事業理解を深めるディスカッションが活発に行われ、お互いの長所を認め合い、褒めあう時間が続いたことが特に印象に残っています。ともに事業の強みに特徴があり、補完しあえる関係性であることが早期に理解できたので、実りある面談だったと思います。
お二人がお話しされた通りです。特に感銘を受けたのは、鈴木さんたちがこれまで大切に築き、守り続けてこられた“人間関係”です。宿泊先の確保に際して、無理なお願いをしなくてはならない場面があります。そんな時にものを言うのは、間違いなく旅行会社と宿泊施設側との信頼関係です。IT化が進む中で、多くの旅行会社がそうした無形の資産を失ってきた中で、旅行計画アルファには脈々と受け継がれていました。私たちが得意とするシステム化・IT化と、旅行計画アルファが持つアナログの人間関係の強みを融合できれば、他社が追いつけない会社に進化できると確信したのです。
私は26歳で起業し、鈴木さんの創業時は28歳だったと伺いました。いわゆる“起業家マインド”という点で通じ合うものがあり、苦労してきたポイントやお客様への向き合い方に共通点が多いことも確認できました。そうした価値観の一致が、今回のM&Aを前向きに決断する大きな後押しになりました。
話し合いの中で明らかになったそれぞれの強みについて、もう少し詳しくお聞きできました。
「人間関係」が重要な理由を補足して説明します。私たちは顧客から急なご依頼があった場合には、ホテルの担当者に直接電話を入れて予約状況を確認します。インターネット上では満室と表示されていても、実はホテルには予備の部屋が残っていることがあるのです。急な出張でお困りのお客様からしてみれば「泊まらせてもらえるだけでありがたい」という評価になるのです。
こうした通常は表には出てこない空き部屋を融通してもらう場面で、長年にわたって培ってきた人間関係があってこそだと思います。
多くの会社はインターネット上の情報だけで判断するため、「満室」と表示されればお断りするのが一般的です。しかし、アナログの人間関係があれば、本来ないはずの部屋も確保できることがあります。料金についても、インターネットのほうが高く表示されているというケースは決して珍しくありません。
私たちは「CosPro」を利用する企業から、その便利さや手軽さについて高い評価をいただいてきました。ここに旅行計画アルファの持つ宿泊手配のノウハウを加えると、出張の複雑化や柔軟性強化のニーズに応えられるようになるのは間違いありません。宿泊施設での空室交渉力、鉄道手配の迅速性、全国ネットワークの活用といった要素が、出張手配市場における大きな差別化要因となることと期待しています。
ご成約まで、順調に話は進んだのでしょうか。
大きな障壁はありませんでしたが、複数の会社をご紹介いただく中で、正直なところ悩んだ部分もありました。同業であるがゆえに、再びコロナ禍のような不測の事態が起きた時には、ともに大きな打撃を受けてしまう可能性も考えられました。また、ご紹介いただいた候補の中には上場企業もあり、その安定感に惹かれた部分もありました。それでも、浅井さんの「一緒にやりたい」という熱意を信じることにしました。お互いの強みを組み合わせれば、もっと伸ばせると思い、決断しました。

鈴木様は多くの候補企業と面談されましたが、その中には上場企業も含まれていました。それでも最終的にアリーズカンパニーを選ばれた理由は、相性という言葉に集約されるように思います。本当の意味でパートナーになれると感じられたのではないでしょうか。
単に規模を拡大するためのM&Aではなく、お互いの良さを活かし合えるM&Aであると、私自身も思っていました。だからこそ、良いご縁を実現するためにも、丁寧かつスピード感を持った対応を心がけていたのです。センシティブになりやすいデューデリジェンス(企業監査)の過程でも、双方の幹部同士が会社の成長について語りあっている姿を拝見した時には、改めてこのご縁が間違いないものだと感じることができました。
宮下さんの細かなサポートには、本当に感謝しています。正確で迅速なレスポンスにはいつも感心させられました。後日、宮下さんの評判を聞く機会があり、社内外で高く評価されているアドバイザーだとお聞きした時にも、宮下さんと出会えて本当に良かったと改めて感じました。
お褒めの言葉をいただき恐縮です。M&Aを検討する際、自社を少しでも良く見せようとする経営者もいますが、鈴木様は一切そういったことがなく、「この点は改善が必要」「ここが心配」ということも包み隠さずお話しくださいました。
リーダーに隠し事がなく、誠実であるというのは、互いの信頼関係を醸成するうえで必要不可欠な要素だと思います。
宮下さんについて補足すると、真面目な方の仕事というのはやはり信頼できるということです。仲介会社として両者の間に立ち、どちらの立場に偏ることなく、公正で冷静に対応している姿が印象的でした。話が盛り上がって私たちが前のめりの姿勢になった際にも、常に冷静さを失わない仕事ぶりは素晴らしいと思っていました。
アナログとデジタルの融合で実現する新たな成長
M&A成約後の率直な思いをお聞かせください。

一言で言えば、ほっとしています。社員に対しての説明もスムーズに進みました。私たちの年齢が60代半ばであることに触れて、この先に何かあった時のために会社を引き継いでもらい、従業員たちが守られる形にしたいという意図を説明したところ、納得してもらえました。
浅井さんとも面談や会食を重ねることで、すでに社員の不安も解消されています。ただ今でも「まだ手伝ってほしい」と期待の声をいただいているので、体力が続く限りは一緒に新たな成長を支えていきたいと思っています。
今後の具体的な計画についてはいかがでしょうか。
短期的には、お互いの強みを融合するプロセスが最優先だと感じています。まずは1〜2年かけて両社のアナログとデジタルの強みを整理し、組み合わせる。そのうえで、中長期的には、融合で生まれた新しいビジネスモデルを他の領域にも展開していきたいと考えています。
旅行計画アルファの培ってきた「どんな状況でも対応する力」は、もっと多くのお客様に価値を提供し、喜んでいただけるはずです。私たちのIT基盤と営業ネットワークで広げていけたら、今回のM&Aの価値も最大限に発揮できるでしょう。
成約後も鈴木様が引き続き経営に関わり、浅井様と二人三脚で会社を成長させるという点には、私自身もワクワクしています。単なる事業承継ではなく、真のパートナーシップが実現できた証ではないかと思います。今回のご支援を振り返ると、鈴木様が情報収集を行い、その後自ら一歩を踏み出したことがすべてでした。アリーズカンパニーとのシナジーや事業承継への本気度は、直接会って話さない限り、分からなかったはずです。時期的にも最適なタイミングで巡り合ったことが、素晴らしいご縁組みにつながったのではないでしょうか。
M&Aを検討している経営者の方々へ、メッセージをお願いします。
悩みがある場合は、まず専門家に相談されることをお勧めします。後継者不在により、優れた技術やサービスを持ちながらも、このまま終わってしまうのではないかという危機感をお持ちの経営者の方は多いと思います。プロに相談してアドバイスを受けてから判断されてはいかがでしょうか。
改めて、事業承継の重みというものを感じています。こうした優れたノウハウや人的資本は、受け継いでいかなければ社会から消えてしまうものだからです。一度失われれば、二度と取り戻せないものもあるでしょう。M&Aには、もちろん自社のためという側面もありますが、それに加えて、日本全体で価値を引き継いでいく意義もあります。これからも、良い部分を残すためのチャレンジを続けていきたいと思います。
M&Aは単なる企業の売買ではなく、事業の継続や発展、そして関係者すべての幸せを実現するための手段です。
私がM&Aアドバイザーとして大切にしていることは、3つあります。1つ目は、顧客理解を深め、自身が経営者・オーナーの次に会社を理解すること。2つ目は、経営者に寄り添い、一緒に悩み抜くこと。そして3つ目は、いつでも白紙に戻す前提でいることです。経営者は、従業員も含め“人生”という大きく多くの責任を背負っていると認識しており、だからこそこの仕事に失敗は許されません。弊社では、最初から最後まで担当者が変わることなく、常に経営者と一緒に悩みます。その結果、必要に応じて何件も白紙に戻してきた経験もございます。今後も、心から良いと思えるご縁と多く出会うために、多くの経営者様と一緒に悩みながら歩んでまいりたいと思います。

写真:松本 岳治 取材日:2025/10/29
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