M&A成約事例・実績
ご成約者インタビュー 
それぞれの選択

M&Aご成約者事例
#19

「セミナーに出席して、M&Aの認識ががらりと変わった。」

譲渡企業

織田商事株式会社

地域に根差した商売を60年以上にわたり続けてきた織田商事株式会社。
現在は木材や棚板のネット通販、およびホームセンターへの卸売りを通じ、DIYを日本の文化として定着させようと奮闘している。創業66年を数える優良企業がなぜ、M&Aを決意することになったのか。代表取締役である阿部真弓様に、その決断に至るまでの経緯についてお聞きした。

5代続く商家で生まれ育った

長い歴史のある会社と聞いております。
  まずは、社長職を承継することになった経緯からお話いただけますでしょうか。

織田商事は父が創業して、私が2代目になるのですが、もともとは5代前から代々、商売を続けている家系で、3姉妹の長女として生まれ育った私は、特に誰からも言われることなく、物心ついたころから“この商売を継ぐ”ことは漠然と意識していましたね。

6歳ごろから、父と一緒に得意先周りをするようになり、倒産した会社があったら連れていかれて、“会社がつぶれたらこうなるのだ”と教わったり、取引先の会社の前を通るときは頭を下げるようにと教わっていました。小さな頃から、父なりの経営哲学を教え込まれて、それが染み付いていきましたね。

会社も次第に大きくなっていたので、“自分がここを継ぐのだ”という意識はさらに明確に、そして強くなっていきました。なので大学は商学部を選び、母からは「卒業したら銀行に勤めるように」と勧められていました。ところが父はことあるごとに「死ぬまで自分が社長をやる。女に材木屋はできない」と口にするようになっていました。

小さな頃から娘たちに商売の哲学を伝えてきた父でしたが、実際に娘に継がせると考えると躊躇せざるを得なかったのでしょう。時代の変化に伴い、業界構造や市場のニーズも激しく変化。難しい局面を何度も乗り切ってきた父としては、娘に同じ苦労をさせたくないと、命ある限り自分がやらなければという意識を持っていたようです。

元々、父は会社の経営を血族で固めるという考えを持ってはいませんでした。したがって、織田商事を継続させるために、私以外にも社長になりうる候補者をちゃんと用意していました。

大学を卒業した私は、銀行には就職せず、福岡県商工部の出先機関に勤務。やがて福岡でサラリーマンの夫と結婚してからは、子供を2人育てながらパートで働いていました。5年間の主婦生活を終えて、正社員としてCADメーカーに入社。
その後、外壁材を取り扱う建材会社を知人たちと共同で立ち上げました。事業は順調に推移していたのですが、不渡り手形をくらったことをきっかけにその会社が倒産。そのタイミングで織田商事に入社することになりました。あれは私が38歳のときのことです。

その時まで、実家から「戻ってくるように」と言われたことはありませんでした。母は、声をかけたいと思ったことはあったようですが、福岡で子育てをしながら暮らす私を田舎に呼び戻すのは悪いと考えていたようです。私も、それまで好きなことをやってきましたし、やはりここが“戻るべき場所だ”と感じていたので、父と当時の専務に頭を下げて会社に入れてもらいました。

当時の会社の状況は?

九州各地にホームセンターが増えていって、新しい店舗ができるたびに木材や棚板を納入。店舗の設えもお手伝いしていたので、まさに“フル回転”の状態でした。私に与えられた最初の仕事は経理職。福岡に子どもを置いて、80キロの距離を車で通っていました。「子育てもあるので、週に2日だけ出勤して経理だけやっていれば良い」と言われていましたが、実は父や先代の専務に黙って販売先に訪問。誰かに指示をされていたわけではありませんが、自分でも注文をとって棚板を軽トラで運び、マンションまで納品するようになっていました。

当時は、正直言って、昔ほど“会社を継ごう”という意識を強く持っていたわけではありませんでした。父が言う通り、私にはこの業界は難しいかもしれない…と感じていたので、もしかしたら継ぐかもしれない…そんなレベルの思いでしかありません。しかし、やはり商家に生まれ育った血筋なのでしょう。そもそも商売が好きなので、経理だけでは物足りないと感じていたのです。


突然、父から社長職を譲られた

社長に就任したきっかけは、どのようなものだったのでしょう。

今から8年前に先代の専務や幹部の方々が次々と病に倒れてしまいました。社長だった父を支える側近が経営の第一線から退くことになったので、自然と“私が支えるしかない”と思うようになり、まずは取締役になりたいと自ら志願しました。その後、専務が亡くなり、私が後を継ぐことに。父は「死ぬまで社長を辞めない」と言っているので、私は専務の立場として、経営についてたくさん勉強をさせてもらおうと思い、積極的に交流の場や勉強会に出席するようになっていました。

役員になってから様々な改革に着手。これまで一度も実施されたことがなかった定例会議や研修や朝礼も導入しました。しかし、当初は一部の社員から批判を受けました。「わざわざお金を使って研修を受けさせたとしても、何も変わらない」と言われたこともありました。ところが私は信念を曲げずに挑戦を続け、若い社員を中心に一体感が生まれ、活気ある職場に変化していく、そんな手ごたえを感じていました。

ある時、商工会の雑誌に私のインタビュー記事が掲載。これまでも何度か、そういった機会はあったのですが、普段は気にも留めなかった父が、珍しく喜んでくれました。父のことも書いてあった、その内容が気に入ったのか、発刊された日の会議中、幹部たちの前で「私を社長にさせる」と急に宣言。それから1ヶ月間、急ピッチで準備を進め、平成27年5月1日に社長に就任しました。

お父様が急に社長を譲ろうと言い出したのは、その雑誌だけがきっかけだったわけではなさそうですね

そうですね。
8年前に新事業として始めたネット通販が好調で、“自分にはついていけない”と感じたことも理由のひとつにあったと思います。当初は社内でも「ネットで材木が売れるわけない」という声があがっていましたが、いざ始めてみたら順調に売れていきました。そういった時代の変化を実感し、父もいずれは私に社長の座を譲ろうと考えてくれていたとは思いますが、そのタイミングを見計らっていたのでしょう。

社長に就任してからも、それほど大きく方針を変えてはいませんでした。地域貢献を意識し、働きやすい職場環境を作ってきたので、従業員の定着率も非常に高くなっています。ネット通販を始めてから女性社員も増え、今では全体の3分の1にまでなりました。

私たちは「お客様に喜びを作れ」という言葉をモットーに、他の会社が嫌がるような仕事も引き受けてきた会社です。たとえ赤字の取引店であっても誠実に要望に応えていくことによって、「安定供給を厳守してくれる織田商事さん」と言ってもらえます。

私は材木屋の仕事がとても好きです。材木は人を幸せにする原材料です。家が被害にあったときでも木材を使って復興ができ、それでお客様の心を幸せにできます。なので社員には常に、誇りを持つように伝えてきました。

M&Aセミナーに出席して気持ちが動いた

どうしてM&Aをしようと考えるようになったのでしょうか。

私たち織田商事は「DIYを日本の文化にする」というビジョンを掲げています。日本には600万人の小学生がいますが、私はみんながDIYの技術を身に着け、“自分らしさ”を追求してもらえればと考えています。そしてその子たちがやがて大きくなり、自分の家を持つときに、アメリカがそうであるように新築ではなく、中古住宅を購入し、自分でリノベーションができるようにしてあげたいと思っています。選択肢も増えるし、何よりも誰かに押し付けられたものではなく、“自分らしい生活”を送ることができると、そう思うからです。

しかし、文化を作っていくには長い時間が必要です。私が言っていることなど砂漠の砂つぶのひとつに過ぎません。あまりにも壮大なビジョンとプロフィットを両方追求することは難しいですね。子ども向けのDIYワークショップは一種の社会貢献としてとらえ、採算度外視で開催。子どもの笑顔は見れますが、毎回赤字です。しかしそれでも私は続けていきたいと考えていました。

ネット通販は昨今の運賃上昇の問題で利益が落ちています。木材業界全体がリアル店舗運営に疲弊しているので、相次いで参入し、競争も過多になっています。ライバル会社がSEO対策に予算をつぎ込んで受注を伸ばし、価格競争も激化。さらに、二人の娘たちはすでに嫁いでおり、私には身内の後継者がいません。

そんな状況を打破するひとつの選択肢としてM&Aがあるという認識は、数年前から持っていました。もちろん、展示会に出かけたり、経営者との交流の中で新たなイノベーションを生み出すことができればという思いもありましたが、なかなかフィットする施策も見つかりません。

以前は、どうしても“吸収合併”というイメージがあったのですが、最近は、様々なケースがあるということも勉強会を通じて理解していました。M&Aについて学ぶセミナーの案内も数多く目にしていたので、一度話を聞いてみようと思いました。あまたある中でたまたま選択したのがM&Aキャピタルパートナーズのセミナーでした。

セミナーで話を聞いて、どのように感じましたか?

M&Aキャピタルパートナーズの中村社長の話がとても良かったです。こういっては失礼ですが、とても素朴で正直なお人柄が伝わってきました。セミナーに行くまではM&Aについて深い知識があったわけでもなく、“吸収合併されたら惨めな思いをするかもしれない…”とどこかで考えていたので、“友好的M&A”について丁寧に説明してくださった、その内容に目から鱗が落ちるような思いでした。話を聴き終わったときには、がらっと認識が変わり、具体的にM&Aについて考えてみようと気持ちが動いていました。それで、アンケートを書いて、直接、中村社長に手渡ししたら、すぐに担当の方が東京から北九州の弊社まで飛んできてくださいました。

私が最初に、M&Aキャピタルパートナーズに伝えたのは、“理念が同じ会社が良い”ということ。M&Aはいわば“社長同士の結婚”なので、それは絶対に譲れない条件でした。後日、ご提案いただいたいくつかの企業の中に、今回、ご縁をいただいた直方建材がありました。弊社にとっては申し分のない立派なお相手でしたが、果たして織田商事の理念に共感してくださり、受け入れてもらえるのか心配になりました。M&Aキャピタルパートナーズの担当者に詳しく聞くと、とても良い社長とのことだったのでぜひお会いしたいと伝えました。

実は、取引銀行からの勧めもあって、県の支援機構からもM&Aの相手先の提案を受けていました。ところが情報も希薄でなかなか良いマッチングはありませんでした。特に相手先の条件を出したわけではありませんでしたが、私たちがお付き合いをしている仕入先の会社とのM&Aを勧められたこともありました。後にその仕入先の方に「M&Aを考えていたのか?」と確認したところ、そういうわけでも無かったようで、情報が浅かったというか、単に地域性と業種だけで判断してピックアップしたのかもしれません。そういった経験からも、ますますM&Aキャピタルパートナーズの情報の量と深さに対する信頼性が高まりました。

直方建材様の杷野社長と最初の面談ではどのような印象を持たれましたか。

M&Aキャピタルパートナーズの担当者から杷野社長のお話は事前にお伺いしていましたが、お人柄が表情に出ており、お会いしてみてより印象が良くなりました。杷野社長自身が勉強熱心で、仕事に対して誠実に向き合っており、その姿勢が会社中に浸透している点に惹かれました。業績の良い会社は、結局、社長の人柄や姿勢が反映されるからこそ、結果が生まれるのだと改めて学ばせていただきました。

その後の話し合いや手続きは特に問題なくスムーズに進みました。実際に成約となったのは2019年の3月28日。ここまで順調に話が進んだのは、“会社を何とかしなければならない”という私の思いの強さがあったのと、的確な情報を提供してくださったM&Aキャピタルパートナーズの担当者のおかげでしょう。


反対する父を説得してくれた周囲の温かさ

M&Aに対するお父様や従業員の方の反応はいかがでしたか?

父にはものすごく反対されて、説得するのに大変苦労しました。それはある程度予想していたことではありましたが、最終的には、お付き合いのある税理士事務所のトップがわざわざここまで来てくださって、直接、説得されたことで父も納得したようです。その税理士の方が私の頑張りを理解してくださって、そこまでご協力してくれたという話を聞いて、とてもありがたく感じましたね。

父と同じように従業員から反対されることもある程度覚悟していました。皆の前で発表するにあたって、さまざまな意見に対する回答をシミュレーションしていました。一番腑に落ちたのは、稲森和夫さんの「動機善なりや、私心なかりしか」という言葉。何度も自分に問答し、それを心から思えたときに、従業員に伝えようと決心ができました。

しかし、従業員全体に伝える前に父が、従業員一人に話してしまっていたことが発覚。予定を前倒しして他の従業員を招集することになってしまいました。事前に心配していたような反対意見を述べる従業員もなく、皆、心から納得してくれているように感じました。質問も、給料面や待遇など想定内のものばかり。否定的な意見を述べるどころか、皆、父と私の関係を気にしてくれて、気遣いの言葉をくれました。絶対に泣くまいと思っていましたが、労いの言葉をかけてもらったことで、つい涙が出てしまいましたね。

実際に、M&Aを終えて約半年が経過しました。どのような変化を実感されていますか。

今のところ大きな変化はなく、M&Aの成果が現れていくのはこれからだとは思います。直方建材と一緒になったことで、会社が良くなるように指導をしていただいたり、“見られている”という負荷がかかることで、少しずつ会社が変わっていけば良いと思ってます。私自身も、直方建材の社長から、「織田商事の看板社長として引き続き頑張ってくれ」と言われているので、まだまだやるべきことがたくさんあるように感じています。

北九州の経営研究会で、このM&Aの経験について話したことがありましたが、周囲の方からは、私自身が悩みから解放され、「とても生き生きして見えるようになった」と言われました。講演をしてくださる著名な経営者も、「これからは、M&Aが当たり前になる時代が来る」と断言。もはや以前のように否定的な見方をする経営者も周囲に誰一人としていません。

この業界において、AIやIOTの時代の中で生き残り、打ち勝っていける会社はそれほど多くはないと思います。ですから将来のためにみんなでタッグを組んでグループ会社を作り、知恵を出しあったほうが良い。そうして従業員を守り、幸せにしていければと思います。それが、M&Aの本質的な意義だと感じています。

株がなくなったときは、正直言って“これでいいのか”という迷いもありました。しかし、この部屋に並ぶ歴代社長、すなわち祖父たちの写真を見ていると、「これでよかった」「この時代だったら私もそのような選択をしていた」と言って、私の選択を支持してくれているような気がしています。

(文=伊藤秋廣 写真=伊藤元章)2019/09/10

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