それぞれの選択
M&Aご成約者事例
#88
生死を分かつ大手術を乗り越えてのM&A。
早めの検討が、迅速な成約につながった
神奈川県横浜市で調剤薬局を経営している有限会社イデール。地元に根差した調剤薬局として20年以上にわたり、患者に寄り添った質の高いサービスを提供してきた同社は、2024年6月、総合メディカル株式会社へ株式譲渡によるM&Aを行った。M&Aまでの経緯とこれからの想いについて、有限会社イデール 前代表取締役 漆間 義一 様に話を伺った。
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譲渡企業
- 会社名
- 有限会社イデール
- 所在地
- 神奈川県横浜市
- 事業内容
- 調剤薬局1店舗の運営
- 従業員数
- 10名
- M&Aの検討理由
- 後継者不在のため
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譲受企業
- 会社名
- 総合メディカル株式会社
- 所在地
- 福岡県福岡市
- 事業内容
- 医業経営コンサルティング、医療モールの開発・運営、医業継承支援など
- 従業員数
- 20,452人(連結)
- M&Aの検討理由
- エリアの拡大のため
奥様の手術をきっかけに、本格的にM&Aを検討し始めた
まずは、有限会社イデールの事業内容、そして漆間様のご経歴をお聞かせください。
有限会社イデールは、2003年に設立し、神奈川県横浜市で調剤薬局を1店舗経営してきました。開局当初は、私を含めて常勤の薬剤師が2名、そしてパート社員が3~5名という体制でした。
私は元々、神奈川県藤沢市にある別の調剤薬局を経営する会社で取締役として勤務しており、そこで店舗経営などを含めて多くの経験を積みました。徐々に単独で経営者としてやっていきたいという思いが強くなっていき、ちょうどそのタイミングで横浜市内のクリニックから薬局開設の依頼がきたこともあり、有限会社イデールを立ち上げました。
薬局を開設した後は、私も薬剤師として勤務し、その店の責任者という立場で業務を行っていました。クリニックの先生方や事務長ともざっくばらんに相談させてもらいながら、一人でも多くの患者の方々を支えられるよう努めてきました。
M&Aをご検討されたきっかけや理由を教えていただけますか。
私には後継者がおらず、いつかは誰かに事業を譲らなければならないという思いは常に持っていました。息子はいるのですが、全く別の業界に勤めており、事業を引き継ぐことは難しい状況でした。そのため、生え抜きの従業員に譲れれば一番良いと考えていたのですが、経営ができる人材がなかなか育ちません。また、まだまだ自分ひとりでやっていけるという気持ちがあり、事業承継についてはあまり深く考えていませんでした。
そのような中で、妻が人工関節置換の手術を受けることが決まり、妻の生活をサポートすることが必要になる可能性があるという不安が生じました。それにより、経営に集中する時間が限られてくるため、本格的にM&Aを検討するようになったのです。
M&Aを検討し始めたところ、多くのM&A仲介会社から毎日のように手紙や電話がくるなど、本当にたくさんのアプローチがありました。
多くのM&A仲介会社から連絡がある中で、なぜM&Aキャピタルパートナーズから情報収集されたいと思ったのでしょうか。
実は、頂いたお手紙にはすべて目を通していたのですが、経営者の立場になって考えられる人がいないと感じていたこともあり、実際に話を聞いてみようという気持ちにはなれませんでした。そのような状況の中で、M&Aキャピタルパートナーズの牧野さんからお手紙を頂き、「この人なら話を聞いてみてもいいかもしれない」と思ったのです。牧野さんは自分で会社経営をしていた経験があり、経営者の苦しみや葛藤を感じ取れる人だと直感的に思いました。実際に牧野さんに電話をいただき、直接お会いした後、M&Aに関する情報収集を始めました。
4年前に初めて漆間様にお会いしたときの印象ですが、オーラのある方だと感じました。いつも従業員のことや患者様のことを考えていて、心優しい素敵な方だと思いました。特に印象的だったのは、漆間様が患者様とのコミュニケーションを大切にされている点です。単に薬を投薬するだけでなく、医師の処方意図を理解した上で、患者様の立場に立った説明をするという姿勢に感銘を受けました。
どんな提案をされたのでしょうか。
漆間様の薬局は、全国の他の薬局と比較してもとても優良であると感じました。多店舗展開している会社もありますが、量ではなく質という点で日本トップクラスの経営をされていると評価いたしました。特に、患者様との関係性や地域の医療機関との連携が非常に強いですね。
そのため、お相手先候補からも非常に魅力的に感じていただけるだろうなと考え、漆間様の希望に沿った形で、従業員を大切にし、漆間様の経営理念を継承できるような企業を探すことを提案しました。また、漆間様のご希望通り、すぐにM&Aを進めるのではなく、まずは情報収集から始め、じっくりと検討できる環境を整えました。
検討にあたって大切にされたお考えや、譲受のお相手先に求めたことはどんなことでしょうか。
最も重視したのは、従業員を守ってくれるということです。私が大切にしてきた経営理念や価値観を理解し、承継してくれる企業を探していました。
特に、患者様と医師の間のコミュニケーションを大切にし、薬剤師としての専門性を活かしてサポートするという姿勢を理解してくれる企業を求めていました。
また、組織力があり、何かあったときにすぐにサポートできる体制を持っている会社が良いと考えていました。私の薬局は1店舗のみの運営でしたので、例えば従業員が急に休んだ場合のバックアップ体制などが不安でした。
そういった面でも安心できる企業を探していました。
M&Aキャピタルパートナーズはこれまで調剤薬局のM&Aを多数支援しており、ご支援した店舗数は業界トップです。これまでのご成約の情報や、支援のノウハウを用いながら漆間様のご要望に会う候補先をリストアップしていました。漆間様の経営理念に共感し、従業員の待遇や育成にも力を入れていくことのできる先を、ご提案しました。
がん発症。譲渡を決断するまでに重ねた、3度の検討
譲渡を決断されるまでのお話を聞かせてください。
妻の人工関節置換の手術が無事に終わった後に、私の肝臓がんが見つかったのです。担当医師から5年後の生存率が50%だといわれ、事業を譲渡するか悩みました。「このタイミングで事業を譲渡してしまったら、生きる希望がなくなってしまうかもしれない」と感じ、その時は譲渡の決断に至りませんでした。
肝臓がんの手術は無事に終わり、その後も牧野さんとはやりとりをさせていただき、M&Aに関する情報収集は続けていました。実際に面談なども実施し、譲渡先として最適な企業を探し続けていました。
そこから少し時間が経ち、今度は肺がんが見つかったのです。早期発見だったこともあり、通常なら完治することは難しくない状態のはずでした。しかし、間質性肺炎という持病を持っていたため、抗がん剤や放射線治療ができないといわれてしまったのです。治療法としては手術しかないという状況だったのですが、肺を摘出してしまうことによって持病の間質性肺炎が悪化して命を落とすリスクがありました。手術をしなければ余命は2年間といわれ、一か八かで手術を受けることを決めたのです。
最終的に譲渡を決断したのは、肺がんの手術を受けると決めた直後。今までにM&Aを検討したタイミングは3度ありましたが、1度目と2度目は「まだ自分で経営を続けたい」という気持ちが強く、踏みとどまりました。今振り返ってみても、経営者であり続けることへの欲があったのだと思います。
漆間様の葛藤は本当によく理解できます。多くの経営者の方が同じような思いを抱えていらっしゃいます。特に漆間様の場合は、従業員や患者様との強い絆があり、その責任を感じていらっしゃったので、決断がより難しかったのではないかと思います。
最終的に譲渡することを決断できた理由は何だったのでしょうか。
肺がんの手術を受けることを決めて、自分の人生や会社の未来について真剣に考えざるを得なくなったためです。従業員や患者様のことを考えると、自分に万が一のことがあっても会社が継続できる体制を整えておく必要があると強く感じました。それが私の人生における責任だと思いましたね。そして、従業員や患者様を守る方法として、最も適しているのがM&Aだという結論に至ったのです。
実は、今回のM&Aでは手術前までに最終的な契約はできていませんでした。そのため、私は遺言証書を書き、従業員や総合メディカル株式会社、その他の関係者への手紙も用意しました。それほどの覚悟で臨んだ決断でした。しかし、このプロセスを通じて、やるべきことをやり遂げたという達成感と安心感を得ることができました。
漆間様のような決断は、本当に勇気のいることだと思います。特に、ご病気を患う中で会社の未来を決めなければならないというのは、非常に大きなプレッシャーだったと思います。我々としても、漆間様の思いを十分に理解し、できる限り迅速かつ丁寧にプロセスを進めるよう心がけました。
決め手になったのは「組織力」と「真摯な対応」
お相手先の総合メディカル株式会社に惹かれた点を教えていただけますか?
総合メディカルの組織力に強く惹かれました。私が大事にしてきた従業員のことを守ってくれる体制が整っている部分に大きな魅力を感じました。
また、実際に総合メディカルの副社長とお会いした際、私の話を熱心に聞いてくださり、価値観が合うと感じました。普段はあまり企業面談に出てこられない方だと聞いていましたが、私との面談のために足を運んでいただき、真摯に対応していただいたことは嬉しかったですね。
また、総合メディカルが私の薬局がある地域にも支店を持っていたことも大きな点でした。何かあったときにすぐに対応できる体制があることは、非常に心強く感じましたね。
総合メディカルは、我々も非常に信頼している企業の一つです。特に、地域医療への貢献や従業員の育成に力を入れている点が、漆間様の経営理念と合致すると考えました。また、漆間様がおっしゃるように、地域でのサポート体制が整っていることも大きな魅力だと思います。我々としても、漆間様の思いを丁寧に伝え、最良のマッチングができるよう努めました。
具体的に、どのような点に期待感を持ちましたか。
まず、従業員の待遇面が良くなることを期待しています。私一人では限界がありましたが、大企業のグループに入ることで、福利厚生など従業員により良い待遇を提供できると考えています。
また、有給休暇の取得や人材の融通など、より柔軟な働き方ができるようになると考えています。私の代では十分にできなかった働き方改革も、大企業の組織力があれば実現できるのではないかという期待がありました。
複数店舗を運営している企業のメリットとして、人材の融通が利くことが挙げられます。例えば、誰かが病気になって休まなければならない場合でも、他の店舗からヘルプを出すことができます。これは1店舗だけで運営している場合には難しいです。
得られたのは、人生の責任を果たせたという安心感
成約後の想い、心境の変化について教えてください。
正直、ほっとしています。人生の責任を果たせたという安心感があります。その一方で、もう少し続けられたのではないかという悔しさも多少はあります。それでも、自分一人では守れないものを、守る力を持っている会社に委ねることができたのはかけがえのない喜びです。また、従業員たちの将来を保証できたことも大きな安心材料です。彼らが困ることなく仕事を続けられると思うと、心から安心できます。
手術を受ける前にM&Aの話をある程度まとめることができたのは、本当に良かったと思います。もし何も決まっていない状態で手術を受けていたら、不安だったでしょう。方向性がしっかりと定まった状態で手術を受けられたので、精神的にとても楽でした。
漆間様が事前に情報収集をされていたことが、今回のスムーズな成約につながったと考えています。多くの経営者の方が検討を後回しにしてしまい、いざというときに慌てることがありますが、漆間様の場合はそこが決定的に違いました。
これからの人生のおける目標はありますか。
今はまだ具体的な目標は決めていません。まずは、生きていることの喜びを感じる時間を大切にしたいと思っています。妻が家庭菜園をしているのでそれを一緒にしたり、人の手伝いをしたりと、ゆっくりと過ごしていきたいです。この先、もし何かやりたいことが出てきたら、躊躇せずにチャレンジしていきたいと思います。
ただ、体力が手術前より落ちているので、無理をせずにできることから始めていきたいです。同じ景色を見ているだけでも幸せだと感じられるような、そんな時間を過ごしていきたいと思います。
大事なのは、早め早めの情報収集
M&Aキャピタルパートナーズ、担当アドバイザーの牧野はどのようにお役立ちできましたでしょうか。
牧野さんは最初から一貫して私という人間をしっかり見てくれたと感じています。どのような状況であっても、最終的には人と人との付き合いが大切だと考えており、そういう点で牧野さんは絶大なる信頼を置ける人だと感じていました。
特に印象的だったのは、どのような時でも牧野さんが私の話をよく聞いてくれたことです。単に数字や条件だけでなく、私の経営理念や従業員への想いをしっかりと理解しようとしてくれました。そして、それを踏まえた上で最適な提案をしてくれましたね。常に真摯に私に向き合い続けてくれた牧野さんには本当に感謝しています。
ありがとうございます。私も漆間様との出会いに非常に感謝しています。漆間様のような誠実で熱意のある経営者の方と一緒に仕事ができたことは、私にとっても大きな喜びでした。M&Aのプロセスは時に長く、困難なこともありますが、漆間様のお力になれて本当に良かったです。
ありがとうございます。最後に、M&Aを検討される経営者様に向けてのメッセージをお願いします。
経営者の方々は、いつかは会社を手放さなければならないということを分かっていると思います。その一方で、まだ自分でやっていけるのではないかという気持ちを持っている経営者の方も多いと思います。その気持ちを持って事業を継続するのはいいのですが、早めに自分の会社のことを知るということが大切です。世間から見て自分の会社がどう評価されているのか、自分の会社がどのような企業に魅力的に映るのかを知ることで、これから事業を続けていく場合でも、今後の経営の方向性が見えてくると思います。
そのためには、できるだけ多くの企業と話す機会を作ることをおすすめします。相手のことを知ると同時に、自分の会社のことも客観的に知ることができます。これは将来の安心感にもつながります。早めに動き出すことで、いざというときに迅速に決断できる準備ができるのではないでしょうか。
また、面談をしたからといってすぐにM&Aを進めなければならないわけではありません。経営者同士の話なので、「もう少し続けてみます」と言っても失礼にはならないと思います。大切なのは、自分を知り、つながりの可能性を探ることです。それが経営者自身の将来の安心感につながりますので、ぜひ早めにアクションを起こすことをお勧めします。
そうですね。情報収集は早めに行うことをお勧めします。何かあってから急いで検討を始めると、交渉力も落ちてしまいますし、どうしても納得できるご決断は難しくなってしまいます。情報収集だけは早めにしておき、ご自身の中で選択肢をいくつか持っておくことで、いざというときに迅速な決断ができると思います。
また、M&Aは単なる事業売却ではなく、自分の人生をかけて築き上げてきた会社の未来への重要な決断です。だからこそ、漆間様がおっしゃるように、自分の会社のことをよく知り、また相手の会社のことも十分に理解した上で決断することが重要です。私たちは、そのプロセスをサポートし、最適な選択ができるようお手伝いさせていただきます。
(左から)弊社牧野、漆間様
文:小町 ヒロキ 写真:壬生 マリコ 取材日:2024/6/24
担当者プロフィール
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