それぞれの選択 #151 化粧品製造×化粧品容器製造

「断らない」精神で切り拓いた化粧品OEMの道。
従業員の未来を見据えた成長戦略とは

化粧品OEMメーカーとして、スキンケアからヘアケア、ボディケアまで幅広い製品を手がけてきた株式会社K&Sは、顧客からの要請を断らず、まずはチャレンジすることをモットーとしてきた。難しい案件にも果敢に挑み、成果を出すその姿が、顧客からの厚い信頼につながっている。従業員とともにさらなる成長を目指すための決断が、化粧品容器の製造を手がける三洋化学工業株式会社との資本業務提携。創業者であり、代表取締役の谷口眞一氏に、パートナーを選んだポイントや決断までの葛藤、今後に向けた決意をお聞きした。

  • 譲渡企業

    会社名
    株式会社K&S
    所在地
    大阪府和泉市
    事業内容

    関西エリアを主な商圏として、
    化粧品の企画・製造を行う

    M&Aの検討理由
    更なる成長発展のため
  • 譲受企業

    会社名
    三洋化学工業株式会社
    所在地
    大阪府大阪市
    事業内容
    プラスチック容器・キャップ・中栓などの開発設計、成形、製品管理、販売/
    食品・化粧品等の企画
    M&Aの検討理由
    化粧品事業強化のため

ものづくりに自身の手で挑みたいと考えて出会った化粧品OEMという仕事

ご自身の略歴と創業までの経緯を教えていただけますか。

谷口
株式会社K&S 代表取締役 谷口 眞一様(以下、敬称略)

大学で建築を学んだ後に、住宅メーカーで設計に従事していました。施主と打ち合わせを重ねて、一生に一度の買い物であるマイホームを形にする仕事にやりがいはありましたが、かねてから起業したいという思いがあり、独立を決めたのが30歳になる前のことです。
ただ、具体的な事業構想があったわけではありません。知り合いに洗剤などを開発する会社の経営者がいて「面白いものがあるから売ってみないか」と声をかけてもらったのがきっかけです。まずは企画会社や販売会社のような形でビジネスを始めましたが、建築しか経験のない私にとっては苦労の連続でした。

化粧品業界との出会いはどのようなものでしたか。

谷口

友人が通販会社で働いていて「シャンプーの企画があるからやってみないか」と連絡がありました。化粧品に関しては全く知識がありませんでしたが、言われたからにはやってみようと挑戦を始めました。とは言っても、男性の私1人で、どんな商品が女性に受けるのかもわかりません。
まずはドラッグストアで売れ筋商品を買い集めて、使用感を試したり、成分表示を研究したりしました。しかし、なかなか通販会社から合格がもらえず、20回、30回とやり直しを重ねて、プレゼンしてもまた作り直しです。その間は売上にならないので必死でしたが、向こう見ずなチャレンジ精神のおかげで諦めることなく、ようやく商品化まで辿り着きます。これが思いのほかヒット商品となり、自分の製造したものが人々から評価される喜びを知りました。

その後は工場も取得して、OEMメーカーとしての事業を拡大されました。

谷口
谷口

最初の成功体験をベースに、自社でできることを企画書にまとめ、さまざまな企業に対して飛び込み営業をしました。私は初対面でも距離を縮めるのが得意で、新規のお客様とも関係を築くことができました。お客様からのオーダーを断らないことをモットーとしてきたのですが、これがよかったのではないかと思っています。
OEMメーカーは他にも数多くありますが、化粧品の世界ではロットや製造技術の問題から、作りたくても製造の引き受け手が見つからないというケースは少なくありません。他社で断られた内容でも、うちは一旦受けて「一回やってみます」と答えるのです。新規のお客様でも「一度試しに依頼してみよう」と思っていただけたようですね。

他社がギブアップした難題をクリアするのは苦労されたことでしょう。

谷口

だからこそ、うまくいったときの喜びも格別なのです。思い出深いのは、100度もの高温状態で充填するという条件でした。一般的な自動充填ラインでは対応できず、大手メーカーの工場にある設備が使えればよいのですが、ロットが何万個という単位でなければ、引き受けてもらえないというものでした。そこで、当社の設備を改造することにしたのです。
ホームセンターで買ったアルミホイルや電線を充填機に巻き付けて、電気で温度が高まるような工夫をしました。ところが、樹脂が高温に耐えられず失敗し、数百万円もの充填機そのものも壊れてしまいました。最終的には耐熱性のある部品を特注で作ってもらい、なんとか求める条件がクリアできたのです。
開発にはずいぶんと費用がかかりましたが、お客様は私たちの荒技とも言える方法を見て驚いていましたね。この評判が広がって、他社で断られたお客様が次々と相談に訪れるようになりました。「K&Sの存在がなければ、この商品は世に送り出せなかった」と感謝の言葉をいただくのは、何よりも励みとなりました。1人で始めた会社でしたが、25名の組織になり、工場も2拠点に増え、スキンケア・ヘアケア・ボディケア・オーラルケアと、幅広い製品を手がけられるようになりました。

成長のボトルネックを感じていたから情報収集に力を入れた

順調な事業拡大の一方で、M&Aを検討したのはなぜだったのでしょうか。

谷口
谷口

ほんの1年前まで、M&Aを意識したことはまったくありませんでした。ただ、漠然とした社内の課題は感じ始めていました。経営というより、バックオフィスの仕事に私自身が追われるようになってしまっていたのです。私は営業が得意だという自負があり、ものづくりも大好きです。しかし、経理や管理業務をこなすことで精一杯になってしまい、新規顧客の開拓の時間が確保できなくなっていました。
営業を他の社員に任せてみたものの、商談の結果を聞くと、もどかしさや歯がゆさを感じることもありました。そんなことを社員に伝えても、やる気を失わせるだけなので、結局現状を改善できないという思いがありました。ただ、これがM&Aという決断に結びつくことは、当時は想像さえしていませんでした。

M&Aキャピタルパートナーズとお会いしたきっかけを教えていただけますか。

谷口

ある日、M&Aキャピタルパートナーズの三城さんから電話をもらったのが始まりでした。それまでM&Aにはあまりいいイメージはありませんでした。買収に伴うトラブルや不祥事などが報道では目立つため、M&A仲介業者と積極的にかかわろうと思ったことはなかったです。ただ、少しずつ周りでもM&Aが話題になる機会が増えたように感じていて、せっかくの機会だから一度話を聞いてみようと思いました。
三城さんと会ったときの第一印象は、とても良かったです。まずは、私が知りたかったM&Aの基礎知識を教えてもらいました。このとき初めて、M&Aと言ってもさまざまなスタイルがあり、必ずしも会社が吸収され、なくなってしまうわけではないと理解しました。巡り合わせによっては、当社のことを理解し尊重してくれるパートナーが見つかる可能性があると知ったのです。それに私の会社にどれほどの価値があるか、客観的に知りたいという気持ちもありました。

三城
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 三城 旭(以下、三城)

お会いするアポイントをいただき、初めて会社にお伺いしたとき、谷口様は作業着姿だったことが今も印象に残っています。本当にお忙しい中で時間を作っていただいたことに感謝すると同時に、お話いただいた内容からは、従業員の方々を大切にされていることが強く伝わってきました。特に「従業員がもっと活躍できる環境を作りたい」というお言葉が印象的でした。

本林
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 課長 本林 龍磨(以下、本林)

当初は情報収集したいというご意向でしたので、M&Aの目的やメリット、注意点などをしっかりご説明しながら、面談を進めていきました。谷口様は会社の成長や周りの方々のことを非常に大切に考えていらっしゃる一方、一層の成長を目指すには課題も感じていらっしゃいましたので、M&Aのもたらす可能性についてもお伝えできたかと思います。

M&Aに対して前向きな気持ちが芽生えたのはなぜだったのでしょう。

谷口

三城さんは初回の面会後も熱心に連絡をくれて、事務所に立ち寄っては、さまざまな事例を紹介してくれました。そのような丁寧な説明を通じて、だんだんM&Aの可能性を信じてみたいという気持ちになりました。M&Aによって仲間づくりができる、当社のことを理解してくれるところと手を組めば、最短で成長できるのではないかと思うようになったためです。

三城

今回M&Aをおすすめしたいと思った背景には、化粧品業界に対する注目の高さという点もありました。メンズコスメの流行など、今後もまだまだ市場の成長が見込まれるプラス要因があるなかで、K&Sのような独自の製造ノウハウを持つ会社は、M&Aにおいても人気が集中します。実際に、製造会社とのパートナーシップを検討したいというニーズは、当社のもとにも多く寄せられていることをお伝えしました。

「M&Aは仲間づくり」共鳴できるパートナーとの出会い

パートナー選びで重視したことは何でしたか。

谷口

まず、販売会社ではなく製造側の会社であることが第一条件でした。当社はOEMとして、さまざまなお客様の情報を預かっており、販売会社と情報を共有した場合、既存のお客様の信頼を損なう恐れがあります。だから、相手もまたメーカーでなければなりませんでした。そして規模感という点でも、すでに完成された大きな会社を選ぶよりも、これから成長を目指す会社と一緒に伴走したいというイメージを持っていました。
そのなかで三洋化学工業は、化粧品容器のメーカーで、お客様も当社と共通しているところが多いことが分かっていました。もし一緒になれば、容器から中身までワンストップで提供できるようになり、お客様のメリットにもなります。それに、お会いした時の前田さん(三洋化学工業 株式会社 代表取締役 前田 明大様)の人柄も魅力的だったことが決め手になりました。「M&Aは仲間づくりです」と、グループに仲間として迎え入れる言葉をかけてくれたのです。前田さんもまた従業員を大切にしたいという姿勢を強く持っていて、その点にもシンパシーを感じました。

三城

三洋化学工業の前田様の熱心なラブコールは、意向表明の段階から一貫していました。従業員がそのまま働き続けられ、なおかつ現在よりも活躍できる環境を整えることに谷口様がこだわっておられることをお伝えしていたので、初回面談のときから従業員第一主義を強調しておられたのでしょう。

谷口

終始、良い印象は持っていたものの、葛藤や不安はずっと消えませんでした。正直なところ、成約を迎える前夜も眠れなかったほどです。本当にこれで良いか、私一人の判断であれば、そこまで悩まなかったかもしれませんが、従業員の顔を思い浮かべると、何が正解なのかわからなくなり、揺れ動いていました。

その中で、M&Aキャピタルパートナーズのサポートはいかがでしたか。

三城・谷口
谷口

三城さんには本当に助けられました。夜遅い時間に、ふとメールや電話で連絡をすると、不安事項に対して、その場で答えをくれるのは、なんといってもありがたかったです。ただ、就寝前に納得したはずなのに、翌朝再び「あれ、本当か」などと疑問が頭をもたげてしまう繰り返しでした。迷惑をかけてしまったと思いますが、いつも丁寧に対応してくれました。守秘義務があるから従業員にも相談できない中で、相談相手がいてくれたのはありがたかったです。

三城

お役に立てたということが分かり、とても嬉しく思っています。谷口様はご自身でM&Aの窓口も担当されていましたので、ちょうどデューデリジェンス(企業監査)の時期が12月決算と重なったことで、普段にも増してお忙しい中でした。それでも真摯にご対応いただいたおかげで、実行までスムーズに進めることができました。

本林

いただいたご質問の多くは、これまで自社でできてきたことが、M&A実行後もその環境が守られるのかという内容でした。重大な決断ですから、ご不安になるのは当然のことです。三城と私ができることは、ご不安に思われることをできるだけ先回りして想定し、連絡をいただくときには、すぐサポートできるように準備をしておくことでした。

新たに会社がスタートする気持ちで早く成果を出したい

成約後の心境、そして従業員の皆様の様子はいかがでしたか。

本林・三城・谷口
谷口

ようやく新たなスタート地点に立ち、新しい会社になったような気持ちが強いです。今までは、個人商店の延長でやってきましたので、これからは新しい風を入れて、どんどん新しいことに挑戦していきます。そのチャレンジ精神こそが、従業員のためにもなると思っています。
ただ、従業員は戸惑っていました。M&Aの知識が何もなければ、私もおそらく同じように捉えた気がします。裏切られたのではないか、社長だけ逃げるのではないか、という反応もありました。ただ、従業員のためという動機はまったくブレていませんでしたので、そのことを繰り返し伝えました。営業もやりやすくなり、受注の確率が上がるイメージも明確にあります。今後は、化粧品そのものと容器を一貫して提供できるようになるので、お客様にとって便利になるのは間違いありません。共通のお客様も多く、共同で提案しにいく話も出ています。そうしたシナジーを早く形にするのが、私の務めです。
バックオフィスの部分をグループで一括して対応する方針なので、私の周辺業務を軽減できることで私が先頭に立って営業に専念できます。営業やものづくりに集中できれば、業績も向上し、従業員の待遇もよくなるでしょう。目に見える成果を出せば、「社長の言っていたことは正しかった」と言ってもらえるはずです。

最後に、M&Aを検討している経営者の方へメッセージをお願いします。

三城・谷口
谷口

決断が正解だったのかどうか迷いましたが、自分次第で正解できるのだと気づいてからは、前向きな気持ちになれました。慎重に考えるのは当然ですが、疑い出したらキリがありません。自分の決断を信じ、従業員の底力を信じて、前を向いて進んでいけば今よりもよい未来を切り開けると信じています。自分のためというより、周りの人たちを幸せにしたいという気持ちがあれば、絶対に間違わないはずです。

本林

谷口様が最も重視していたのは、従業員の方々の幸せでした。そこを軸に様々な選択肢を検討され、M&Aという決断をされました。何が一番大切かという問いに、はっきりとした答えがあり、こだわりを持ち続けたから、三洋化学工業のようなよいパートナーと巡り合えたのではないでしょうか。そうしたご縁組をサポートさせていただいたことを、光栄に思っています。

三城

私自身、今後の両者のご発展を心から楽しみにしています。一般的には、M&A=事業承継のイメージが強いかもしれませんが、今回の谷口様のように、成長発展のための戦略としてM&Aを選択される経営者様が増えています。そして、M&Aはあくまで選択肢のひとつです。ぜひ多くの経営者様にも、M&Aの情報収集から始めていただければと思います。その際には、経営者様に役立つ最新情報をお届けし、あらゆるご質問にお答えできるように努めてまいります。


 

文:蒲原 雄介 写真:松本 岳治 取材日:2026/1/15

担当者プロフィール

  • 企業情報部  三城 旭

    企業情報部三城 旭

    新卒で株式会社キーエンスに入社。製造業を中心とした企業に対し、生産設備の自動化・効率化に関する営業に従事。
    その後、企業の事業承継や成長戦略といった経営課題の解決により深く関わりたいとの思いから当社に入社。

  • 企業情報部 課長 本林 龍磨

    企業情報部課長本林 龍磨

    新卒で大手証券会社に入社し、上場・未上場企業オーナーの資産運用及びIPO支援・M&A支援に従事。当社入社後は建設業、サービス業、製造業等の幅広い分野でのM&A支援実績を有する。

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