

地域密着の“八百屋”として次のステージへ。
経営のプロとの戦略的資本提携で描く未来
鳥取県西部で約70年にわたり地域に愛されてきた有限会社岡田商店は、大手スーパーと一線を画す独自の品揃えと地域密着の経営に誇りを込めて、自らを八百屋と呼ぶ。盤石な事業基盤を築きながらも、人材採用や育成の難しさ、経営と現場業務の両立という課題に直面してきた。好調な今だからこそ永続的な成長を目指し、中小企業支援を専門とする中小革新基盤株式会社との戦略的資本提携を決断。その背景と展望を、有限会社岡田商店 代表取締役社長の岡田 信行氏、専務取締役の岡田 蘭氏、そして中小革新基盤株式会社 代表取締役の橘 芳樹氏にお聞きした。
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- 会社名
- 有限会社岡田商店
- 所在地
- 鳥取県境港市
- 事業内容
- 八百屋の運営
- M&Aの検討理由
- 更なる成長と発展のため
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- 会社名
- 中小革新基盤株式会社
- 所在地
- 東京都港区
- 事業内容
- 中小企業に対する永続保有を前提とした
出資・株式譲受。出資先の経営の支援 - M&Aの検討理由
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行商にルーツを持つ地域に根差した八百屋、三代にわたる70年
まず岡田商店の創業の経緯からお聞かせください。

創業は約70年前、私の祖父の代にさかのぼります。祖父は満州から引き揚げてきた後、境港で果物や魚の行商を始めました。リヤカーを引きながら、民家の一軒一軒を回るような、小さな商売からのスタートだったそうです。その後、1967年に店舗を構えるようになり、本格的な八百屋としての歩みを始めました。
1980年前後に米子空港が現在の場所に建設されたことは、岡田商店にとって大きな転機となりました。空港用地を確保するため、すでに境港周辺にあった商店は移転を余儀なくされたのですが、祖父の店もその一つでした。ただ移転するだけでなく、思い切って店舗の規模を大きくしたのだと聞いています。まだ5歳ぐらいだった私は、当時のことを直接覚えてはいません。
2代目として事業を受け継いだ父が法人化をしたのも同じ頃で、ここから本格的に多店舗展開を始めました。父は「とにかく良いものを安く、たくさん売る」という商売を貫いた人でした。当時は利益率を高めに設定する八百屋が多かったのに対して、薄利多売を徹底していたといいます。利益率を下げれば、その分たくさんのお客様に来ていただける。来店が増えれば回転率が上がり、結果的に商売として成り立ちます。現在の量販店のような発想を、個人商店としていち早く取り入れたのだと受け止めています。
その結果、商業施設や地域の方々から出店の誘いを受け、店舗が増えていきました。いずれも自ら出店を希望したわけではなく、新たな施設に岡田商店の集客力が必要だと思っていただき、誠実な商売のやり方を評価いただいたことを誇りに思っています。
岡田様ご自身は、いつ頃から家業を継ぐことを意識されていたのですか。
はっきりとは覚えていないですし、父から「将来継いでくれ」と言われた記憶もありません。小学校の高学年にもなると、休みの日には店を手伝うようになりました。中学生になり、少しですがアルバイト代をもらえるようになると、お金をもらえる嬉しさとともに、この仕事の面白さに少しずつ目覚めていったように思います。
地元の高校を卒業後、修行を兼ねて大阪の市場で働くこととなりました。いきなり家業に入って視野が狭くなるのを避けたい、という父の方針によるものです。豊中市にある昔ながらの活気ある市場でしたが、ここで青果の仕事を一から叩き込まれました。仕入れ方から販売方法まで、青果担当としての基本はこの時に教わりました。
なかでも私が面白いと思ったのは野菜です。品数も種類も多く、希少な野菜というのは仕入れルートも限られます。季節によって売れ筋が変わるのはもちろん、そう簡単には入手できない品もたくさんあるのです。私は、各地の生産者のもとを訪ねては、作り手の思いを知るとともに、取り扱いを任せてもらえる品目を増やしていきました。そして、各家庭の食卓だけでなく、飲食店などさまざまお客様のもとに、新鮮で価値の高い野菜を届ける仕事への愛着を深めていきました。
現在は社長を引き継がれ、同時に現場にも立たれていますね。

有限会社として岡田商店を法人化したのが、父が35歳の時で、私も35歳で社長を引き継ぎました。社長になったからといって、急に何かを変えることはせず、今でも店舗の青果担当として現場に立ち、毎日野菜と向き合っています。経営者として会社全体を見なければならない立場ではありますが、私はやはり、お客様の顔を見て野菜を売る仕事にこだわりたいと思い続けています。
岡田商店は、お客様の間では「八百屋」と呼ぶには規模が大き過ぎると思われているかもしれません。それでも私たちは、スーパーマーケットを目指すのではなく、一貫して八百屋でありたいと思い続けてきました。何でも品揃えのある便利なスーパーマーケットとは、違うのです。青果を中心に、地域のお客様が本当に求めているものを、私たちの目利きで選んでお届けすることこそが、八百屋の原点であり、追求すべき姿だと思っているためです。
長年かけて培ってきた人脈や信頼関係のおかげで、スーパーをはじめとする大手量販店では入手できないような品揃えも実現できていると自負しています。珍しい野菜、こだわりの産地のもの、旬の走りの品などを求めて、わざわざ足を運んでくださるお客様がたくさんいらっしゃいます。
成長を遂げたからこそ感じた、独力で壁を越える難しさ
岡田専務が経営に本格的に参画されたのは、いつ頃からですか。

役員として経営に加わったのは、4年ほど前です。それまでも、出産や育児などのライフイベントを優先していたので、繁忙期を中心にお店を手伝うことはありましたが、基本的には3人の子どもを育てることをずっと優先していました。ただ、社長業と現場を兼務するハードワークを長く続けている夫のことは、ずっと心配していました。年齢は今年50歳になったばかりとは言え、現場は体力の求められる仕事で、昔に比べると翌日まで疲れを引きずっている様子も、見ていれば分かります。
そこで、やはり自分も本格的に入り込まないといけないと感じ始めていたのです。事務方の高齢化という問題もあり、お金の流れは自分が把握しておくべきだという思いから、経理や総務といったバックオフィス業務に関わるようになりました。
私も一人の主婦としての目線を持っていますが、岡田商店の魅力は「あそこに行けば、いいものがある」という目的を持ったお客様に多くご利用いただいていることだと思っています。売り場を見ていただければ分かると思いますが、私たちの店は活気があり、飲食店を経営されているお客様にも多くご利用いただいているのです。プロの目にもかなう品揃えがあってこそだと思っています。

料理人の方々は目が肥えていますから、普通の野菜では満足してもらえません。「こういう食材が欲しい」というリクエストに応えられると、喜んでもらえるのはもちろんですが、そうした積み重ねが、結果的に品揃えの充実にもつながっていきます。ネットでも買える時代になりましたが、やはり自分の目で見て、手に取って選びたいという方も多いのです。
オーバーストアと言われる昨今ですが、私たちのような八百屋にも、生き残る道は十分に残されています。スーパーの真似をしていても、埋もれてしまうだけです。だからこそ、八百屋としての個性をさらに研ぎ澄ませていくことが、地域のお客様からの支持を受け続けるポイントだと考えてきました。
一方、岡田専務が経営に携わり、さまざまな課題にも感じられたとお聞きしました。
会社の規模が大きくなり、従業員も120人ほどまで増えてきたにもかかわらず、内部の組織体制は昔のままで、従業員の皆さんに負担をかけてしまっている状態だと気づきました。店長職のスタッフも、店舗経営を担いながら自分の仕入れ部門を持つなど、役割を兼務している状態です。社長も含め、会社全体のことを考えたり、組織を整えたりしている余力がなかったのです。
ここ数年は、人材確保がますます難しくなってきました。15年前なら、高校を卒業した新卒を毎年5名程度は採用できていましたが、近年はゼロという年が続いています。そもそも応募が少なく、中途採用した人材も定着しにくくなっているのです。
本来は、会社が大きくなるにつれて、経営者である私に求められる部分だったと感じています。人材育成だけでなく、評価制度の整備や経営理念の浸透といったことに取り組まなくてはなりません。しかし、現場の仕事も山積になっており、他の店舗まで目を配ることさえ難しかったのです。このままでは会社の維持が精一杯で、ただ維持することだけに努めていては、いずれ衰退につながりかねません。その間にも人件費や光熱費は上がる一方で、売価にはなかなか転嫁できず、外部環境はどんどん厳しくなるでしょう。業績は好調でしたが、ジワジワと漠然とした将来への不安が積み重なっていくのを感じていました。
戦略的資本提携を検討し始めたのは、いつ頃からですか。
本格的に検討を始めたのは、2年ほど前です。私も経営に入っていろいろ話し合う中で、社長の年齢や体力、組織の課題などをより解像度を高め、真剣に考えるようになりました。このタイミングで、さまざまな可能性を模索し、会社をより強くするための選択肢を検討してみようと決めたのです。
メインバンクとM&A仲介会社をあわせて、4社に話を聞きました。その中で、アドバイザリー契約を結んだのが、メインバンクとM&Aキャピタルパートナーズでした。M&Aキャピタルパートナーズは上場企業として実績があり、業界でも歴史のある会社です。機密情報の管理という点でも、組織体制やガバナンスがしっかりしていると感じられたことも大きかったです。
銀行と比較すると、担当である稲田さんのレスポンスはとにかく早く、最初から「直接お会いしてお話を聞きたい」と言ってくださいました。オンラインで済ませず、わざわざ米子まで会いに来てくれたスピード感にも驚きました。それに地元出身であることも好印象でしたね。
以前からダイレクトメールが郵送されていたので、会社名は記憶に残っていました。ちょうど私たちが話を聞いてみたいと考え始めたタイミングで稲田さんからお電話をいただき、私が偶然、電話口に出たというご縁も重なりました。

私は、鳥取県米子市の出身で、岡田商店には子どもの頃から何度も行ったことがありました。現在も両親や祖父母は、買い物で利用させていただいています。身近な存在だからこそ、自らサポートさせていただきたいという気持ちは、最初から強く持っていました。
岡田社長は、徹底した現場を重視する方です。時間を惜しんで、芋をすりながら私との打ち合わせに臨まれることも、少なくありませんでした。それほど八百屋の現場に向き合っている姿を見て、このご支援を形にしたいという想いはさらに強くなりました。
稲田さんは物腰がとてもソフトな方でした。こういったお話は緊張しますし、特に東京から来られたビジネスマンということで、身構える部分もあったのですが、稲田さんにはそういう怖さを感じませんでした。誠実で、私たちの話にしっかり耳を傾けてくださる方だという印象です。
パートナーを選ぶ過程で、特に重視していた条件はありましたか。
そこまで細かなこだわりはありませんでした。お願いしたことといえば、岡田商店という名前が残ることと、私たちらしさを失わずに経営を続けられる程度です。皆さんがイメージされるような一般的なM&Aですと、たとえば投資ファンドを選ぶと、会社の価値を高めても、やがては次の譲渡先を探すことになります。また、同業大手スーパーと提携するという選択肢もありましたが、これらは岡田商店らしさを失ってしまうのではないかという心配がありました。自分自身も現場で仕事をしやすく、この地域で八百屋としての価値をもっと高めていける形を求めていました。
岡田商店の強みを尊重し、さらに伸ばせるパートナーが最も適切だと考えました。そのような条件で、過去にも弊社が譲受を支援した中小革新基盤は一般的な投資ファンドとは異なり、共同経営のような立場を取り、ともに成長を目指すというスタンスです。岡田様の価値観に合致する可能性が高いと考え、ご紹介させていただきました。
永続的なパートナーとの戦略的資本提携が最善の策だと判断した
譲受企業である中小革新基盤株式会社の事業概要をお聞かせいただけますか。

私たち中小革新基盤株式会社は、社名にある通り、中小企業に特化した支援を行う会社です。創業したのは2022年で、数多くの優れた中小企業に成長をもたらし、日本全体や地域経済の発展に貢献したいと日々活動しています。
稲田さんのご説明にあったように、一般的な投資ファンドは出資した会社の価値を高めた後に株式を売却することによる、キャピタルゲインの獲得を目的としています。しかし、私たちは永続的な保有を前提とし、また、自己資金で出資しますので、株式を再売却し換金する必要はありません。
あくまでもその会社の経営を良くし、価値を高めることが目的です。経営レベルはもちろん、販路開拓やマーケティング、人材採用といった実務のレベルにまで深く関与して支援することも特色として掲げています。出資先企業の未来をよりよいものとすることにコミットする一方で、私たちが必要以上に前へ出ることはしません。あくまで主役は事業会社であり、私たちは裏方として支援していくという姿勢も「基盤」というワードに込められています。
岡田商店の内容が耳に入った時はどのような印象を持ちましたか。
「八百屋」とお聞きしたときは、家族経営の小規模な個人商店をイメージしたのが正直なところです。なぜこのような資本業務提携の候補として挙がったのか、はじめは不思議に思いましたが、財務資料を見た時はその業績規模に驚きました。
さらに店舗を見学させていただき、一般的にイメージされる八百屋とは全く異なり、独自のポジションを築いていることに強く惹かれました。大手スーパーとは全く異なる方向性であり、売り場を見ただけでお客様に愛されている理由が伝わってきたのです。
お客様が喜んでくれる良い品物を最適な価格で提供しているからこそ、買い物を終えたお客様は良いものを買えた喜びを感じ、信頼を寄せている様子が売り場から見て取れました。さらに見た目としても、売り場には活気があり、店舗内を歩いているだけで楽しくなれるのは、本質的な価値を持つ会社だと感じました。
初めて直接お会いになった時の印象はいかがでしたか。

お会いする前に本店の売り場を見ていましたが、それと岡田さんのイメージがぴったり一致しました。岡田さんの持つ雰囲気や青果にかける想いが伝わってきて、事前にイメージしていた経営者像と重なるような感覚でした。
私たちは、緊張していたのが本音です。橘さんの経歴を事前に伺っていましたので、すごい方が来られるのだろうと、身構えていました。ところが実際にお会いしてみると、とてもフランクな方でしたし、同じくランニングを趣味にしている話で盛り上がり、一気に親近感が湧きました。
それまで、投資ファンドも含めて何社かの方とお会いしていたのですが、橘さんの印象は全く違いました。私たちが最も求めていたのは資金力よりも、ともに経営課題に取り組んでくださる、伴走する力です。そのため私たちはもちろんですが、当社の従業員も含めて、フィットするかどうかが大切なポイントです。中小革新基盤が企業理念に掲げていること、そして橘さんのお人柄という点でも合いそうだという直感がありました。
初めて直接お会いする時は、どこか緊張感があるものです。ただこの日は、すぐに両者が打ち解けられていったのが、岡田様の表情からも感じられました。
中小革新基盤による具体的な提案内容をお聞かせいただけますか。

事前にうかがっていた課題の中でも、特に採用や人材の育成、評価制度の整備といった部分についての具体的な支援策をお話しさせていただきました。岡田社長の現場に対する思いや商売に対する考え方、理想はいずれも素晴らしいものがあります。それを組織全体に浸透させ、人を採用して育て、長く働いていただける会社にしていくことが、まず取り組むべきことだと考えました。
最終的に戦略的資本提携を決断した決め手は何でしたか。
まず橘さんとともに、中小革新基盤が以前支援した会社の社長にも当社までお越しいただき、直接お話を聞く機会をいただきました。わざわざ米子まで来てくださったことも大変ありがたかったのですが、支援を受けた前後で具体的に何がどう変わったのか、生の声を聞けたことで、不安を取り除かれただけでなく、未来に対して希望を描けたと思います。
株式会社瑞穂食品工業の知見社長ですね。このときもM&Aキャピタルパートナーズのご支援を受け、2023年9月から一緒に経営改善へ取り組んできました。私たちの伴走支援にご満足いただいており、経営そのものも順調です。その成功事例や、背景にあった思いを岡田社長に直接受け取っていただきたいと思っていました。私たちの説明よりも、同じく支援を受けた経営者の声のほうが、よりリアルな状況を把握できるはずです。特に会社がどう変わったか、当事者から聞いていただくことで、具体的なイメージを持っていただけると考えました。
選択肢がさまざまあったので、その後も迷いはありました。ただし、やはり自らが主導するパターンでは、私の役割が多いままで、根本的な解決にはつながりません。同業の事業会社の傘下に入った場合には、これまで大切にしてきた岡田商店「らしさ」が失われてしまう可能性もあります。自分自身のよさでもある、現場での仕事さえもしづらくなったかもしれません。
橘さんは、永続的な支援を繰り返し説明してくれました。やはり、この点が一番しっくりきました。私たちの価値観を理解した上で、一緒に成長を目指してくれます。私は今までどおり現場に立ちながら、足りない部分を補っていただけることが最大の安心材料となりました。
従業員の目線でも、中小革新基盤が一番安心できる選択だと感じました。これまで岡田商店のために尽力してくださった従業員の皆さんが、将来にわたって安心して働ける環境を作りたいと思っています。岡田商店の一員として地域の生活を支えることに誇りを感じながら、日々働けるようになる可能性が最も高い方法ではないか、そんな結論に達しました。
私たちは、すでに全従業員と個別にお話しさせていただきました。評価制度や理念の浸透といった課題が見えてきた一方で、同時に優秀で想いを持った人材が揃っていることも実感しました。私たちとしては、こうした素晴らしい会社、そして従業員の皆さんとご一緒できることに、大きな責任を感じています。まずは従業員の皆さんに安心していただくこと、そして正しく努力できる環境を整えることから始めていきたいと考えています。
これからも地域に愛される“八百屋”として成長を続ける
M&Aキャピタルパートナーズのサポートについて、率直な評価をお聞かせいただけますか。
成約式には、地元の新聞社やテレビ局も取材に駆け付けた
決断してからの必要書類の準備や資料作成は、想像を絶するほど大変な作業でした。成約を迎えた当日の朝まで、慌ただしく動いていたほどです。でも、稲田さんが細かくサポートしてくださったおかげで、なんとか乗り越えることができました。分からないことがあれば、すぐに答えてくださいましたし、何を準備すればいいのかを的確に指示していただいた安心感は、大きかったです。
稲田さんは、とても信頼できる方という印象です。表現するのが難しいのですが、よい意味で「M&A仲介会社の方らしくない」と感じていました。やはり交渉事ですので、判断の難しいさまざまな局面や、両者の意見が異なる場面もあったはずです。それでも稲田さんは、どちらか一方に偏るのではなく、客観的な立場から意見を言ってくれたように思います。
岡田さんに「最後はどのように決断したのですか」とお聞きしたら、稲田さんと壁打ちをしてもらったとおっしゃったんですね。私たちが岡田さんに伝えたかったことも、正しくくみ取って整理していただいたおかげではないかと感じています。
私たちが結論を出す際に迷ったのは、どんな選択にもメリットと留意点があるためです。稲田さんは、それを上手に整理してくれました。決して自分の意見を押し付けるのではなく、私たちが結論を下しやすい状況だけを作ってくれたのが、ありがたかったです。
提携後の体制についてはいかがでしょうか。
基本的に体制は何も変わりません。岡田さんには引き続き代表取締役として、会社のリーダーを担っていただきます。今までやりたかったけれど、やりきれなかったことを、私たちが一緒になって支援していく形です。永続的なパートナーシップが前提ですから、目に見える成果を焦って追求する必要はありません。社内にこれまでなかったインフラを作るわけなので、拙速にならず、順番を守ることも必要かと思っています。
私は今まで通り、現場で野菜と向き合う仕事を続けつつ、自分の思いや経営理念を社員に伝えていく時間も作っていきたいと思います。現場に依存するだけでなく、もう一歩引いた視点で会社を見られるようになれば、岡田商店の将来はもっと明るくなるはずです。

採用を強化し、教育体制を整え、評価制度を導入することは重要です。こちらから人員を送り込むスタイルではなく、私たちがさまざまなノウハウを提供しながら、岡田商店が主体となって、適した人材を採用していくのが良いと考えています。
そして、中長期的なビジネス成長のためには、店舗を増やすといった議論も出てくるでしょう。岡田商店の魅力ある売り場を、より多くのお客様に届けていくことも、私たちの使命です。
これからも、食を通して地域の皆様に喜んでいただける店でありたいです。お客様の中に眠っているニーズを引き出して、ワクワクしていただけるような売り場を作っていきたいのです。そうした個性ある八百屋として、地域のお客様に必要とされる存在であり続けるには、全員が成長を続けていく必要があります。それらを中小革新基盤とともに成し遂げられることに、私自身がワクワクしています。
戦略的資本提携を選択肢の一つに、自社の成長を模索する経営者の方々に向けてメッセージをお願いします。
私たちは、業績が好調な時期だったからこそ、こうした前向きな決断ができたと思っています。会社を維持しようとしているだけでは、いずれ衰退するのではないかという不安に正面から向き合ったからこそ、将来の成長のためにこの選択をしました。
これからも自分たちの強みを活かしながら、従業員や店舗も守ることができると確信しています。同じように悩んでいる経営者の方がいらっしゃれば、私の経験が少しでも参考になれば嬉しいです。
まずは、ここまでたどり着けたことにホッとしています。会社が困っているから提携を模索するのではなく、さらなる成長のための戦略的な選択として捉えることが大切だと感じました。社長や私に何かがあったら、この会社はどうなってしまうのか、といった不安から解放されるのは、とても大きな点です。このことで、従業員の皆さんに明るい未来を届けられることが嬉しいです。心強いパートナーを得て、これからも多くの仲間が誇りを持って働けるように、力を合わせていきたいと思います。
岡田商店のように、現在進行形で成長している素晴らしい会社でありながら、小規模だからこそ将来的な持続に不安を感じている会社は少なくないのではないでしょうか。経営者自身が経営を続ける前提で、さらなる成長を目指して資本業務提携を行うのは一つの選択肢であり、私たちの強みが活きる形だとも思っています。ただ少しでも多くの金銭的対価を得たいという経営者よりも、会社を良くしたい、成長させたいという想いを持つ方と経営者には当社はより貢献できるように思います。
ご両者が未来に強い期待を抱けるご縁組みを支援できたことを、本当に嬉しく思っています。私個人としては、出身地である鳥取県で、身近な存在だった企業をサポートできたことに、感慨深いものがあります。実際に岡田商店がこれからどのように成長していくのか、見守らせていただくことが楽しみです。

文:蒲原 雄介 写真:三島 徹 取材日:2025/11/28
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