紆余曲折の末にたどり着いた理想的な縁。
自社の強みを伸ばすM&Aの可能性
化粧品の企画・販売を手がける株式会社Stay Freeは、市場のトレンドを素早く読み解き、大企業には真似できないスピード感で次々と商品を世に送り出してきた。代表取締役の小森祐一氏は、10年以上にわたって堅実に実績を積み重ねる一方、かねてより「大ヒット商品を生み出したい」という夢を抱いてきた。その実現に向けてM&Aという選択肢に向き合い、5年にわたる模索と紆余曲折を経て、株式会社グロップとの提携にたどり着くまでの経緯について、詳しくお伺いした。
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譲渡企業
- 会社名
- 株式会社Stay Free
- 所在地
- 大阪府枚方市
- 事業内容
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フェイスマスクなどの美容企画商品の卸売りを主業とし、ネット通販での小売りや海外商材の仕入れ販売も手掛ける。
- M&Aの検討理由
- 事業拡大と商品開発力強化のため
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譲受企業
- 会社名
- 株式会社グロップ
- 所在地
- 岡山県岡山市
- 事業内容
- 各種アウトソーシング、人材派遣事業、人材紹介事業、テレマーケティング事業、発送サービス、事務サービスなどを手掛ける。
- M&Aの検討理由
- 事業拡大・成長のため
市場を読む目利き力と2ヶ月の商品化スピードで勝負
創業までの経緯を教えていただけますか。

私のキャリアとしては、親族が営んでいた会社に入社し、化粧品業界で働いていました。5人程度の小さな組織だったことが幸いして、商品企画から流通の仕組みまで一通り学ぶことができました。特に楽しいと感じたのは、自ら企画した商品がヒットして世に出回ることです。これは売れるに違いない、という予感が当たった時の喜びは、代えがたいものがあります。
商品企画の基本的な流れは、ECや小売店の店頭調査から始まります。自分の目で見て回り、ヒットの兆しが見られる商品をベンチマークするのです。もちろん、そのまま真似をするわけではありません。機能面で少しでも上回るにはどうすればいいか、安く提供する方法はないか、商品のデザインや訴求の方向性を変えることもあります。ゼロから一を生み出す商品開発は、零細企業にとってはあまりにリスクが大きく、すでに市場で実績のある商品を起点にすることで、売れやすい商品を狙うのがコツです。ただし、すでに大ヒットしている商品を追いかけても勝ち目はありません。まだ完全には浸透しきっていないタイミングで、先行している商品に追いつき、追い越せるかがカギになるのです。
独立後はどのような商品を手がけてきましたか。
角質ケアの商品は、10年を超えるロングセラーになっています。角質を取りたいというニーズは以前からあり、角質を削り取るための器具が大ヒットした時代もありました。それを化粧品で叶えられないかと考えたのがきっかけです。足を浸けておくと数日で角質が取れるという意外性が、多くの方々に受け入れられました。
もう一つの看板商品として、皮膚保湿剤の医薬部外品もあります。病院で医師の処方を受ける薬と同じ有効成分を配合したもので、かなりの販売量を記録しました。韓国で流行していたフェイスマスクをいち早く国内で生産したことで、トレンドの波に乗ることができたのも印象に残っています。
商品の企画立案から、店頭に並ぶまでの期間はどのくらいでしょうか。

だいたい2ヶ月程度です。大手企業は企画を通し、決裁を得て製造に入るまでの段階で、すでに半年から1年はかかるでしょう。その間にトレンドは変わってしまいます。一方、Stay Freeの場合は、私がやると決断したら、すぐに製造先を探し、価格を交渉します。長年お付き合いのある委託先も多く、また各工場の得意分野も把握しているので、価格など条件が合意できればすぐに製造開始です。小回りが効くというのは、小規模な会社の最大の武器だと思っています。
とはいっても、発売できるのは1年あたり8商品ほどです。もちろん、すべてがヒットするという甘い世界ではありません。それでも半数以上、7割ほどの商品は初回の製造分が売れて追加の生産を依頼するような割合でした。爆発的な売上にはなりませんが、リスクを抑えながら利益を積み上げることができていました。
現在の社員数は、パートをあわせて20名弱です。枚方市にある本社で在庫管理や発送も行っており、各地のお客様からの依頼にも細かく、迅速に応えることができています。
柔軟性と安定性をかなえる方法としてM&Aが浮上してきた
M&Aを考え始めたきっかけを教えてください。

創業した時点で、10年後の45歳頃には一度区切りをつけたいと意識していました。ただ、実際にその年齢が近づいてくると、まだやり残したことがあるという思いが出てきたのも事実です。
その一つが、大ヒット商品をこの手で生み出したいという願望です。ヒット商品と呼べるようなプロダクトはいくつか世に送り出せたとは思うものの、真の大ヒット商品はまだ生み出せていません。一方で、企業規模としての限界があるのも事実です。大手の資本やリソースを活用できれば、より大きな仕掛けができるのではないかという思いが芽生えたのが、最初のきっかけです。
数年前に右腕だった社員が退職し、売上が低迷した時期がありました。ドラッグストアや量販店などの得意先を回り、再び立て直すことができたものの、小規模な組織の不安定さを改めて実感する機会になりました。営業面に私の力が割かれれば、商品開発に遅れが出るのは否めません。組織の安定性を手に入れることで、本格的に商品づくりにチャレンジしたいという気持ちもありました。

最初にお会いしたのは、もう5年近く前になります。小森様はオープンに何でも話してくださる方で、第一印象からとても接しやすかったことを覚えています。当時は情報収集の段階で、「良い話があれば」という姿勢でいらっしゃいました。
M&Aをすると決めていたわけでもなかったので、可能性を知る意味でも、いろんな方と積極的にお会いしていました。仲介会社だけでも数社にお会いしたと思います。ただ、林さんは若いのに仕事ができる方という印象でした。全体的にベテランの方が多い中で、勉強熱心な林さんの人柄にも惹かれるものがありました。結局は人と人との付き合いですから、信頼できるかは一番大切だと思います。
林さんにお願いしていたのは、仮に譲渡したとしても、その後も自分が最前線で商品企画を続けられる形であることです。引退するためのM&Aではなく、もっと大きなステージで力を発揮するためのM&Aという位置づけでした。
実際にはどのような会社と面談されたのでしょうか。

当社のご紹介だけで8社とトップ面談をしていただきました。同業の会社、投資会社、さらに結果的にお相手となるグロップのような異業種もいらっしゃいましたね。特にグロップは、当初から積極的な姿勢を示されていたのが印象的でした。
ありがたいご評価をいただきましたが、ここに至るまでは、さまざまな紆余曲折がありました。最終契約の直前まで進みながら折り合いがつかなかったケースもありましたし、一度は別の仲介会社を通じて他社に株式を譲渡したこともあります。上場準備に入っていると聞き、将来性という点でも、その会社がより魅力的に映ったというのが正直なところです。
ただ、その譲渡先の状況が大きく変わってしまい、このままでは先行きが不透明だと判断して、自らの手で株式を買い戻したという経緯があります。時間を失ったのはもちろん、買い戻しにあたって資産は減ってしまいましたが、納得のいかない形で会社の将来を委ねるわけにはいきませんでした。ただ、一度他社の手に渡った株式を取り戻せたのは、幸運だったと思います。
予想外の再出発。しかし、待ち続けてくれたパートナーがいた
大きな決断をした後に、再びM&Aの道を模索されたのですね。
最後に林さんとコンタクトを取ってから1年近く経過していましたが、すぐに連絡がついた時はほっとしました。一度はお断りしているので身勝手な話ですが、良い条件を示してくださったグロップの意向を、再度確認してほしいと依頼しました。
私のことを思い出し、すぐご連絡をくださったことが素直に嬉しかったですね。M&Aのご成約後にもかかわらず、こうしてご連絡をいただくケースは初めての経験でした。もちろん、すぐにグロップに事情を説明し、先方に意向を確認したところ、熱意は1年前とまったく変わらないと、前向きなお返事をいただきました。

原田社長にお会いした際には、お人柄にも惹かれましたし、お話を聞いているのが楽しかった思い出があります。ただ、ご連絡を差し上げた時には、最初にお会いした時から2年が経過していました。先方の状況が変わっていても不思議ではありません。
覚えていただいたのもまず嬉しかったですし、興味を失うどころか、また「すぐ会いましょう」と言っていただいた時のありがたさは、言葉で言い表せないほどでした。今度こそ、原田さんとグロップに託したいという気持ちが強まり、改めてお会いした時にその決意は固まりました。
グロップの方々も、小森様の企画力や販売までのスピード感を高く評価していらっしゃいました。小売・卸売・ECそれぞれの販売チャネルに精通されている点や、収益・財務基盤が安定している点など、会社としての経営状況も魅力的に映っていたのは間違いありません。小森様が希望していた通り、引き続き最前線でヒット商品の開発に注力していただきたいという意向も強く、自走型の経営をそのまま続けてほしいというお考えです。
デューデリジェンスなどの手続きは、いかがでしたか。
なんのストレスもないと言っていいほど、スムーズでした。すでにM&Aを一度経験していたため、どのような書類が必要になるか分かっていたことは、やはり大きかったと思います。
この時は苦労もありましたが、林さんが時間をかけて当社のデータをよく理解してくれていたので、資料のやり取りも早かったのだと思います。以前の経験では、担当者が途中で代わったり、下の人に任せたりすることもあり、意思疎通がうまくいかない場面もありましたが、林さんはすべてご自身で対応してくださり、細かい点まで把握してくれていました。
担当者の退職などは仕方のない部分もありますが、会社が重要な岐路にいることを考えれば、同じ方が同じ思いで伴走してくれることの安心感はとても大きかったです。
自らの企画力を活かす未来へ、希望は膨らむ
グロップとの提携に、どのようなことを期待されていますか。

グロップは人材ビジネスが主力で、業種としては当社とは直接的な接点はありません。しかし、グループ会社も多数あり、当社の規模では到底できなかったことに挑戦できる可能性を感じています。特にポテンシャルを感じているのは、SNSの活用です。現在は、SNSでの発信力がそのまま売上に直結する時代と言っても過言ではありません。これまでその重要性を認識しながらも、マンパワーやノウハウの不足から、成果を生み出すほどの取り組みができていませんでした。グロップはSNS運用の代行をビジネス展開するほどなので、私たちもプラスとなるさまざまなメソッドを注入してもらえれば、新たなチャンスが開けるかもしれません。
同じく、人材採用の面でもプラスの効果があるのは間違いないでしょう。人手不足が加速しており、いくら求人を出しても小さい会社ではなかなか人が集まりません。採用についても実績があるグロップグループの力を借りられるのは心強いです。
経営体制については、どのような変化があるのでしょうか。
基本的にこれまでと変わりません。自分が商品企画の最前線に立ち続けることが、グロップとの約束でもあります。経営管理の面では、月次の数字をもう少し早く出す体制を整える必要はありますが、それはグループインしたからには当たり前のことです。こちらが慣れるまでは戸惑いもあるかもしれませんが、良き相談相手ができるのだと前向きに捉え、取り組んでいくつもりです。
最後に、M&Aを検討されている方々へメッセージをお願いします。
経営者自身が「今だ」と思える時が、最適なタイミングだと思います。早すぎて自分の気持ちが固まっていない状態で進めてしまうと、うまくいきません。同時に相手がいることなので、タイミングが遅ければマッチしない可能性があることも理解しておく必要があります。いずれにしてもオーナー一人で全てを判断できるわけではないので、信頼できるアドバイザーの助言をもらいながらも、最後は自分で決めると考えることが大事だと思っています。
小森様は終始オープンに話してくださいました。M&Aでは遠慮や見栄から本音を言わない方も少なくないのですが、小森様は率直な姿勢を貫いていらっしゃいました。これはサポートするアドバイザーの立場としても共感もしやすい点です。また固定観念にとらわれず、フラットな姿勢で情報収集を続けられたことで、さまざまな出会いのチャンスをご自身でつかんでいました。多くの会社が関心を示し、その方々の話にも丁寧に耳を傾けたからこそ、グロップという最良のパートナーを選ぶことができたのだと思います。
小森様ご自身の悲願でもある大ヒット商品のプロデュースを、心から楽しみにしております。

文:蒲原 雄介 写真:蔵屋 憲治 取材日:2026年2月27日
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