オーナー、入居者、従業員。
関わる人々の未来を託せるアドバイザーを探していた
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譲渡企業
- 会社名
- 株式会社ザイナスコミュニティ
- 所在地
- 大阪府吹田市
- 事業内容
- 不動産投資運用事業、不動産管理事業、不動産仲介事業、不動産コンサルティング事業、リフォーム事業
- M&Aの検討理由
- 更なる成長・発展のため
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譲受企業
- 会社名
- 帝国不動産株式会社
- 所在地
- 東京都中央区
- 事業内容
アパート開発及びプロパティマネジメント- M&Aの検討理由
- 事業拡大のため
知り合いから譲り受けた不動産管理業を着実に成長させてきた
まず創業に至るまでの歩みを教えてください。

私はいわゆる就職氷河期の世代で、職探しにはずいぶんと苦労させられました。最初に勤めたのは港湾運送会社で、船積みの責任者として非鉄金属の貿易に携わりました。需要が伸びていた時期で大変な激務でしたが、今振り返るとさまざまな経験を積ませてもらった時期だと思います。
その後、何社かを経て入社した総合不動産会社には、8年ほどお世話になりました。そこで転売や仲介、賃貸、デベロッパー業まで、不動産にまつわる仕事を一から十まで叩き込まれました。リーマンショックを経験したのもこの時期でした。実務の経験ができ、ありがたい環境だったと思います。このあたりから、いずれは自分で独立したいと考えるようになりました。
2011年にザイナスコミュニティを設立された経緯を教えていただけますか。
先に融資の目処を立て、内諾が取れた段階で法人化を実行しました。収益不動産の取引や保有も手がけながら、もう一つの柱として不動産管理を据えたのが始まりです。
独立して間もなく、お付き合いのあった会社の社長が高齢で引退されることになりました。「関わる方々に迷惑がかからないように」とのご意向を受けて、不動産管理を任せていただくようになったんです。最初はわずかな規模でしたが、前職で不動産管理に携わった経験があったため、そこまで運営に不安はありませんでした。その後少しずつ、お預かりする管理物件を増やしていったという次第です。
会社はどのように成長していきましたか。

基本的にはずっと右肩上がりの成長を実現できました。数年、伸び悩んだ時期もありましたが、そこからまた持ち直し、コロナ禍の影響もあまり受けませんでした。やはり管理業という安定した収入の土台があったことで、足元が揺らぎませんでした。
また物件を仕入れる際には、平均的な相場を頭に入れたうえで、過度な冒険はせずに、堅実志向でいました。最後に頼ったのは、感覚です。直感に従って下した決断がたまたま正解だったのがラッキーだった面は否めません。正直に申し上げれば、不動産投資は投機的な面もあり、自身で作ったとは言っても会社そのものへの執着はありません。
しかし管理業としての側面では、物件の先には、必ず人がいます。オーナー、入居者、そして管理業務に関わるザイナスコミュニティの社員たちです。その人たちに対して責任があることは常々感じていました。気がつけば管理物件は、大阪府内でも南北に増え、奈良県の物件も含めると数十棟、数千戸を超える総戸数になっていました。
社員の方々とは、どのような関係でしたか。
優秀な人材が揃った組織です。過去は、人材採用の広告を出して募集をかけたこともありましたが、せっかく採用できた人材がなかなか定着しないという難しさもありました。現社員たちは、それでも信頼してついてきてくれた人たちです。それぞれに生活があり、家族があるからこそ、従業員たちのキャリアは本気で考えました。
管理会社に求められる責任が拡大する中で会社規模に活路を求める
M&Aは、いつ頃から選択肢にあったのでしょうか。

最終的にM&Aという手段を選ぶかはともかく、会社または事業を譲渡するというのは、だいぶ前から選択肢の一つとしては持っていました。いつまでにと期限を設けていたわけではありませんが、複数の要因が重なったことから、譲渡を真剣に考えるようになったんです。
譲渡を考えた要因のひとつに、採用の難しさ、そして不動産業そのものの先行きの不透明感があります。金利が上がり、物件の価格も上がれば、物件を保有しながら家賃でインカムゲインを獲得する方法はだんだんと旨みが薄れます。一方、売買の差益を追求したいと考えても、結局のところ相場次第になるので再現性がありません。自分たちのビジネスがいかに足場が弱いかを感じるようになりました。
管理事業について時代の変化は感じていらっしゃいましたか。
法整備が進み、管理会社側で対応しなければならない事項が年々拡大しています。アスベスト調査などが端的な例ですが、将来的にこうした規制が増えることはあっても緩和されるのは考えにくいでしょう。となれば、不動産管理業を続けるのにある程度の規模が必要になってくるのは自然な流れです。私たちが当時の規模のまま事業を継続するのは、お客様であるオーナーに対しても誠実とは言えないのではないかと考えるようになりました。
以前からM&A仲介会社からは、さまざま手紙や電話などで連絡をいただいていましたが、こちらから関心を持ったことはありませんでした。ただM&Aキャピタルパートナーズについては、業界のリーディングカンパニーであることは把握していましたし、成果報酬の仕組みや業務の進め方も、事前に一通り調べていました。この会社なら誠実に取り組んでもらえるのではないかと感じていました。
初めて竹中とお会いいただいたのは2024年10月でしたが、お互いの印象はいかがでしたか。
竹中さんと一度お電話で話したあと、しばらく連絡を返さない時期がありました。それでも繰り返しアプローチしてこられるので、よほど熱心な人なのだろうと思い、再び電話を取ったんです。的確に話す好青年だという印象もあり、この電話を取った時点で、もうこの人と話を進めようと心に決めていました。

まず下中様には率直な尊敬の念を抱きました。一代でここまで会社を築き上げてこられた方だというだけでなく、財務について何をお聞きしても、即座に返答してくださる姿が印象的でした。ご自身で会社の隅々まで数字を把握されている方はなかなかいらっしゃいません。
それに先ほどご自身でも仰っていたように、当社の料金体系や他社の進め方との違いまで、事前に調べていらっしゃいました。通常なら初回の面談でこうしたM&Aの最終的な成約までの流れをご説明することが多いのですが、下中様には不要でしたので、早くご期待に応えたいと思いました。
M&Aは多くの人生を左右する仕事。その覚悟を緻密な仕事に感じた
どのような会社がパートナーになってほしいとお考えでしたか。
基本的には従業員をそのまま引き継ぎ、今後も大切にしてくれること。それが最優先でした。また管理会社としての実績とノウハウがあり、オーナーや入居者に影響がないことも当然のことです。途中で候補としてあがった会社には異業種の企業もいらっしゃいましたが、今から考えると、管理特化の会社とご縁がつながったことは、良かったと思っています。
いくつかの会社とお会いしましたが、決め手の一つは会社の規模です。管理に特化したプロフェッショナルであると同時に、必要な人員をしっかり確保していた点も安心材料でした。帝国不動産なら、オーナーにも、入居者にも、社員にとっても不安がないというのが確信でき、先方からもぜひ譲り受けたいという熱意がしっかり伝わってきました。

今回、譲渡のスキームが少し特殊な形となりました。当初、下中様が希望していたのは、不動産管理事業および不動産賃貸業、不動産売買などすべてを一括で譲渡することです。しかし、関心を持つ企業側は「管理業のみに関心がある」または「不動産売買や仲介のみを譲り受けたい」とニーズに差があることが分かってきました。そこで事業領域にフォーカスした分割譲渡スキームを実行する流れとなりました。
分割で譲渡することとなり事務手続きが複雑になったのは事実ですが、竹中さん、そして上司である松岡さん(M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 松岡 諒)がよく段取りをつけてくれたと思います。
株式譲渡契約書の条件調整など苦労はありましたが、最終的に下中様に納得いただける形にまとめることができ嬉しく思っています。
下中様は、こうした交渉の過程をどのようにご覧になっていましたか。
常に頼もしく感じていました。長年、不動産業をしている私のまわりにも「書類をきちんと見る人」と「ろくにチェックしない人」の2種類がいました。竹中さんたちは、言うまでもなく前者です。
最初に契約書の案が提示されたときも、竹中さんは先に内容を精読したうえで「この箇所はご意向に沿っていないため、修正を申し入れています」と報告してくれました。こうした対応ができる人は、そう多くありません。彼らは自分の仕事がどれだけ人の人生を左右するかをきちんと理解しているので、信頼できるとずっと思っていました。
こちらは大阪にいて、東京とは距離が離れているはずなのですが、いつも竹中さんは通勤しているかのような感覚で立ち寄ってくれるのも心地よかったです。ときには夜中でも、こちらが電話をかけてしまうこともありました。私たちのような経営者と相対する覚悟ができているのでしょう。

そう言っていただき、ありがたく思います。まさに百戦錬磨の経営者の方々とお会いするにあたって、人生経験の浅い私などは、徹底した準備でカバーするしかないと感じていました。
私は、竹中さんには、絶大な信頼と、「彼ならやってくれるかもしれない」という大きな期待を持っておりました。私自身、初回面談時は、M&Aキャピタルパートナーズという会社に信頼を持っていましたから、アドバイザーが誰かについては特に気にしていませんでした。しかし、初めて会った瞬間から、「彼は、誰よりも真剣に向き合ってくれるだろう」と思ったんです。ただ、人間ですから、時には、もう少しこうした方が良いのではないかと思う場面もありました。そうしたときは、こちらからも率直に要望を伝え、具体的な改善方法について意見交換をさせてもらいました。
複雑なスキームに変更になったタイミングで、松岡さんを交えて率直に意見交換をしたこともありました。その際も、私は、むやみに専門家を起用するのではなく、最後まで竹中さんに担当してほしいということを伝えました。それは、失敗をしてでも竹中君に成長してほしいという期待があったからです。この判断は、今でも大正解だったと思っています。彼は、将来的に、業界を引っ張っていく人材になると確信しています。
下中様には愛情をもって接していただき、感謝の気持ちしかありません。仕事を通じてたくさんのことを教えていただき、私自身が出会いに恵まれたと思います。
「知識は礼儀」この言葉は一生忘れません。
成約を迎えた充実感と新たな挑戦に向けた決意
成約を迎えたとき、どのようなお気持ちでしたか。
区切りがついたのは事実ですが、喜びよりも竹中さんと松岡さんとともに「3人でやり遂げた」という感覚が強かったです。その次に、従業員の未来を守り、活躍を見届けられること、管理を任せてもらったオーナーや入居者にとっても胸を張れる結末を迎えられたことに対する安堵感もありました。
決済が完了した瞬間の下中様の安心された表情は、今も忘れられません。私はそのお顔を拝見できたときに、心からよかったと思えました。
これからのご自身の展望についてもお聞かせください。
現在は引き継ぎ期間として、顧問という形でザイナスコミュニティに残っています。すでに別の新しい事業を始めていますが、当時の従業員が今もときどき事務所を訪ねてくれるのは嬉しいことです。事務所が近くにあるので、一緒に昼ご飯を食べて、細かな業務の相談に乗ることもあります。新体制はとても順調で、マネジメント層から各管理現場まで、誰もが打ち解けて、楽しく働けていると聞きました。これも譲受企業が温かく迎え入れてくれたからだと思っています。
私の新たな事業では、利回り追求型からの転換を図ります。評価できる資産を、最終的にどう手放すかまで設計したうえで作っていきます。最初から出口戦略を決めておくことで、偶発的な成功ではなく、再現性のある形に組み立て直したいと考えています。
それがこれまでの事業の経験を踏まえた新しい挑戦ということですね。
これまでも時の流れに翻弄されない仕組みを創り上げたつもりでしたが、振り返れば、成功自体が時代の追い風に支えられていたと言わざるを得ません。低金利の環境下で借りた資金をもとに、不動産価値が上がるのを待つという方法は、当時の環境だったからこそ、堅実にやっていれば右肩上がりでした。しかし金利が上がった状況では、そのやり方では通用しません。当時、自分のやり方に固執して、新たなアクションができなかったという反省も踏まえ、今度は市場評価の基準でビジネスを実行したいと考えています。
最後に会社の今後を考える経営者に向けたメッセージをいただけますか。
将来に対して、迷いや怖さがあるのは仕方ないことだと思います。現状を大きく変えることや、自身が経営者でなくなることもその要因です。特に長く成功してきた方ほど、超えるべき壁は高く、そして孤独なケースも多いでしょう。ただし自分一人で考えても、行き詰まったときの打開策はなかなか出てこないものです。そんなときは第三者の意見を聞いてみるだけでも、景色が変わるかもしれません。
今は資本提携、業務提携など、さまざまな選択肢の中から自由に考えてよい時代になりました。だからこそ相談相手は誰でもいいわけではありません。私が信頼できる相手に出会えたことは、本当に幸運だったと思います。
M&Aには、まだまだ心理的な壁があると感じています。だからこそ、もっと多くのオーナー様とお会いして、直接お話をお聞きしたいという想いがあります。それに下中様のご成約日に強く感じたことですが、オーナー様とのご縁は成約がゴールではなく、それから一生続くということです。末永く、良いお付き合いを続けていけたらと思っています。

(左から)弊社 竹中/下中様
文:蒲原 雄介 撮影:蔵屋 憲治 取材日:2026年5月22日
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