M&A成約事例・実績
ご成約者インタビュー 
それぞれの選択

M&Aご成約者事例
#15

「挑戦を続けるためにM&Aが必要だった」

譲渡企業
株式会社ミスズライフ
会長
小林 満

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譲受け企業
アイ・シグマ・パートナーズ
株式会社
アイ・シグマ事業支援
ファンド2号
副代表
高木 聡

「一株包装」「カットブナシメジ」など、数々のヒット商品を生み続ける、優良きのこ栽培企業、株式会社ミスズライフ。売り上げも利益も右肩あがりで、今もなお発展を続ける同社がなぜ、M&Aを決意することになったのか。これまでミスズライフをけん引し続けてきた現会長・小林満氏と、買い手側のファンドの副代表である高木聡氏に、これまでの経緯と未来についてうかがった。

チャレンジの連続だった

まずは、創業された経緯からお話しいただけますでしょうか。

この事業をスタートしたのは、私が35歳の時。高野豆腐で知られるみすずコーポレーションに勤務しているときのことでした。当時、豆腐を生産する際に発生した“おから”を、家畜の飼料として販売していたのですが、急激な円高の影響によって海外の飼料が安くなり、需要が激減。一夜にして産業廃棄物と化してしまったおからをどうにかしないといけないと思い、調べてみると、どうやらきのこ栽培におからが活用できるという研究が進められていることを知り、これだ!と思いました。

実は、私の実家はきのこを生産していましたし、友人の中にも生産者がたくさんいる。社長に許可を得て、試しにきのこを植える培地の中に“おから”を入れてみると、確かに品質が向上することがわかりました。噂を聞きつけた、周囲の生産者の方々が皆、“おから”を使うようになって広がっていって、おかげ様で工場から残渣として排出されていたおからの半分が消費されるようになりました。

やがて、事業責任者として任されるようになり、生産者のもとに営業に行くと、「きのこを作ったこともないのに、よくそんなことが言えるな」と言われるようになって、確かにその通りだと思いました。これ以上、事業を発展させるためには、「うちできのこの試験工場でも作ったほうが良い」と社長に提言したら、「実は、みすずコーポレーションでも以前、きのこ栽培に着手したことがあったが、あまりうまくいかなかった」とおっしゃいます。そんな苦い経験がある以上、従業員に対して今さら、もう一度やろうとはいえないというのです。だったら、私がやろうと決意した次第です。

35歳で独立して、未経験のきのこ作りをはじめるようと考えるのは、かなりチャレンジングな決断ともいえますよね。

私はみすずコーポレーションで、生産管理や原価管理の仕事をしていました。当時のきのこは、豆腐や油揚げと比べて非常に利益率の高い商材で、こんなに良い商売は他にないと確信していました。しかも営業活動を通じて、栽培に関するノウハウをたくさん持っていたので、生産量の確保はもちろん、品質の良いものを作れる自信はありました。

自己資金はそれほど持ち合わせてはいなかったのですが、前職のみすずコーポレーションの社長も出資をしてくださるという。なので、みすずの名を一部いただいて、株式会社ミスズライフと名づけることにしました。実家の土地はいくらでもありましたからね、何とか銀行から融資を引っ張ってきて、そこそこの規模の工場を建築して生産をスタートしました。スタートも順調でしたし、正直言って勝算はあったので、なんの不安もなかったのです。

ところが2年目になって、急にきのこの価格が大暴落して、半値になってしまいました。たくさんの企業が参入してきて過剰生産になってしまったのですね。もちろん、年に5%程度は下がっていくだろうと最初から見込んではいましたが、想定以上に打撃を受けてしまいました。

どうやって乗り切ったのですか?

先ほども説明したように、みすずコーポレーション在籍時代に原価管理をしていたので、生産量に対して投資額の比率をどうするべきか?というセオリーは理解していました。単純に言えば、工場の規模を変えないのであれば、生産量をアップするか、人件費を抑えるかしかないという結論となります。

作業工程を見直してみると、主力商品であったぶなしめじをカットする作業に時間がかかっていました。だったら切らないで、一株丸ごと包装して出荷しようと考えました。そして農協を通さず、一部直販をすることで、売り先も自分たちで探して利益を確保しようと考えたのです。

そうしたら、その一株包装のぶなしめじが大ヒットして、しかも直販だったので、どんどん市場が広がっていきました。その経験によって、会社の基礎体力がついたのか、そこからは順調に成長を続けていきました。

だいたい3年に一度のペースで新しい工場を立ちあげていったのですが、毎回、まったく新しいコンセプトの工場を作ってきました。栽培方式も換気方法も、前回の成功例を踏襲することなく、理論的に可能であれば、世の中にない方法であってもチャレンジしてみる、そんな精神で拡大を続けていきました。まあ、当時は、そこそこ利益もあがっていたので、例え3~4か月うまくいかなくても大丈夫なくらい体力がついていましたからね。だからこそ、そんな挑戦が可能だったのだと思います。

どうして、成功事例を踏襲することなく、まったく新しいコンセプトで工場を作ろうなんて考えたのですか?

単純に、同じものを作っても面白くないですよね。自分の中で“できるはずだ”とイメージしたものをカタチにできたときの喜びは大きいです。小さな会社からスタートして、資金力の差がありますから、他よりも競争力をあげるためには、同じことをやっていてもだめだろういう気持ちもありました。

ファンドを相手にM&Aするという選択

どうしてM&Aを意識するようになったのでしょう。

その後も会社は順調に成長を続けていったのですが、そのせいか取締役の皆さんも挑戦することを嫌うようになってきました。2011年に完成した西海工場と2014年に完成した能登工場ではそれほどの違いがありません。これはもうウチがやる仕事ではないと思いました。私の個人的な考えではありますが、利益というものは、イノベーションを生むために必要な資金であって、それを継続的に生み続けるのが事業であると。だから、経営陣が“これでもういいのではないか”と落ち着いてしまうことに私自身、ちょっとした閉塞感を覚えていました。

一方、数年前から、きのこの生産過程で発生するおがくずの再利用を目的とした研究がカタチになってきていました。おがくずを“ぼかし”という肥料にする技術ですが、これを使って私自身がもう一度、日本の農業を再生するアグリビジネスをやっていこうと、新しく大きなチャレンジがしたいと考えるようになっていました。

この新事業を『ミスズサステナブルアグリプラン』と命名し、地域で完結する循環型農業、自立できる農業ビジネスを展開し、各地の里山を元気にしようと考えていたのです。このアグリビジネスだけを切り出して分社化しようとも考えたのですが、切り出した方も切り出された方も経営的には厳しくなるだろうし、銀行もそれを良しとしないだろうということは目に見えていました。役員会でも「もっと、こちらのアグリビジネスを真剣にやろう」といっても誰も意見を言わないような状況でした。

さらに、私自身も年齢を重ねてきて60歳となり、会社の承継問題も考えなくてはいけない時期にも差し掛かっていると感じていました。息子がいるのですが、彼も既存のきのこ事業を受け継ぐよりも、自分がやりはじめた新しい野菜事業のほうが面白いといって、まったく継ぐ気などありません。まあ、私と同じで挑戦するタイプなのですね。では、どうするべきか?専門家に相談したいと考えていた時に、M&Aキャピタルパートナーズとの接点を持つことができました。

そのような状況を打破するために、どのようにM&Aという手段を活用しようと考えていたのでしょうか。

実をいいますと、当初はM&Aが解決策になるとは思っていませんでした。農地には譲渡制限があるため、自由が利きませんし、きのこ事業については、技術が確立しているので同業者に譲渡するという選択肢は、軋轢を生むだけだと思っていました。ところがM&Aキャピタルパートナーズの担当者のお話をしているうちに、熱心に話を聞いて、当社の将来について真剣に考えてくれる姿勢が伝わってきました。そんな中、彼が提案してきたのがファンドへの譲渡という手段でした。確かに、自分たちの弱点でもあるファイナンスや戦略に対する知見を持っている相手であれば、技術力を有する当社とフィットするかもしれないとは思いました。

実際にご縁をいただいたファンドの方と会ってみると、思ったよりも若かったので、最初は“大丈夫か?”と不安になりましたが、色々と話をしていくと、ものすごく真剣に私たちの会社のことを考えてくださる。下手をすれば、ミスズライフの社員より真剣に考えてくれるし、やはり経営視点で話をしてくれるので、私とも気が合うんですよ。この人になら会社を託して良いのではないかという思いが生まれてきました。

壁を乗り越え、ブレイク・スルーした瞬間

ここからは、買い手であるアイ・シグマ・パートナーズの高木聡様にも参加いただいて、お話を聞かせていただければと思います。最初にこの話を聞いた時、率直にどのように感じられましたか。

高木

当初、M&Aキャピタルパートナーズさんから話をいただいた時、正直言って、“農業は投資対象になりえないのでは?”と思いました。やはり、それほど儲かっているというイメージがありませんでしたし…。すぐにお断りするわけにもいかないので、とりあえず話だけは聞いてみようという、そんなスタンスで当時の小林社長にお会いしてみました。

すると、本当に良い会社だなと思いまして…もちろん、業績も良いですし、“循環型農業を推進して里山を再生したい”というコンセプトも素晴らしい。どうにかご一緒できないものかと思ったのですが、実は大きな壁が目の前にありました。

みすずライフは、アグリ事業を始める際に農地所有適格法人の指定を受けていため、株と取締役会の過半数を農業従事者で占める必要があったのですが、私たちが投資させていただく際には原則、過半数でお願いしていますから、ここがマッチしない。この法的な課題どう乗り越えるかという問題がありました。結局、そこはどうにも解決ができない大きな壁で、当初はどのようにしても乗り越えることはできないと思っていました。

小林

解決策が見つからずに、困っていたのですが、同時に、このメンバーで会っていると楽しいのですよ。経営者には、人にはいえない悩みがあるではないですか。あるいは、ここまで自分がやってきたことを自慢したかったりもしますよね。M&Aキャピタルパートナーズの担当者を交えた3人の関係性の中でなら、何でも話せるんですよ。いつも経営の話やきのこの話で盛り上がって、夜遅くまで飲み明かしたりもしました。でも、何度議論を重ねても打開策は見つからず…なんて日々が続きました。

高木

それがあるとき、小林会長のご家族の中から「農地を保有するアグリ事業だけ分社化して、ミスズライフだけを譲渡すれば良いのでは?」というアイデアが生まれたと電話があって、これでいけるのでは?と思いました。まさにブレイク・スルーの瞬間でした。そこからは一切の障害もなく、スムーズに事が進みましたね。

今後の目標についてお聞かせいただけますか。

小林

頼りになるパートナーが現れて心強く思っています。ミスズライフのほうはお任せして、私は分社したミスズアグリのビジネスに注力したいと考えています。今後、ミスズライフが拠点を増やしていったら、それに追従してミスズアグリも進出し、工程から生まれた廃棄物を循環させて、その地域の農業を活性化していきたいと思っています。ミスズライフという会社がきてくれたおかげで、この地域が良くなったという事例をどんどん作っていって、循環型農業の推進を加速していきたいと思っています。

高木

私たちはまず、小林会長からお預かりしたミスズライフという会社において、本当の意味での経営承継をきっちりやりたい。新しい社長のリーダーシップを確立し、従業員の皆さんが安心して働ける環境を整え、そこではじめて真の意味の事業承継が成立すると思っています。そしてミスズアグリとともに循環型農業を推進したい。きのこのマーケティングやセールス戦略の策定、さらにいずれは丸紅のネットワークを生かした海外戦略、物流戦略まで徹底的にサポートしていくつもりです。

さらに、ファンドが農業の世界に入っていくことの意義を、この成功事例をもって示していきたい。農業分野において投資を成功させることが、今後の試金石になると思っていますし、ひいては里山や農業分野の承継をサポートし、その可能性を切り拓けると思っています。

最後に、M&Aの意義について、思うところがあったらお聞かせください。

小林

はじまったばかりで、まだ結論は出ていませんが、今のところ選択肢としては、使わない手はないと思っています。これをせずに不幸になっている人はたくさんいると思います。農業分野においてもM&Aができるような仕組みが確立されたら、新たに農業に参入しようと考える人もチャレンジしやすくなるのではないかと思います。

高木

社内や身内で承継問題を解決できるのであれば良いのですが、なかなかそううまくはいかない事例もあるかと思います。その方々にとって、M&Aは非常に良い手段だと思います。日本ではどうしてもお金の話はタブー視されがちですが、創業の果実はきちんととっていただくべきですし、それで経済は回っていきます。そして事業が継続していけば、従業員も取引先も、お客さんも誰もがハッピーになります。

ファンドを相手としたM&Aというものは、これまでなかなかドアを開けてもらうことが難しかったのですが、最近は理解が進み、経営者ご自身が冷静に会ってくださるケースが増えつつあります。ましてや、M&Aキャピタルパートナーズの紹介ならば安心できるという方も多いので、機会創出という意味では、売り手にとっても、私たちのような買い手にとっても、お互いに意味があるのではないかと思っています。これからも、貢献性の高い投資を進めていきたいですね。

(文=伊藤秋廣 写真=伊藤元章)2018/11/20

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