

地域に根ざした薬局同士のM&A。
福岡と首都圏、距離を越えた価値観の一致
福岡市を拠点に、53年間にわたり調剤薬局を展開してきた株式会社健康一家。創業者・正岡民次会長から、正岡玄光社長へ事業を承継し、地域に根ざした薬局経営を続けてきた。業界環境の変化を見据えて、さらなる成長のために選んだのは、首都圏で30店舗あまりの調剤薬局を展開する株式会社トラストファーマシーとのM&Aだった。刻々と変化する激動の業界で生き残ってきた薬局の歩みと、二代目社長が決断したM&Aの経緯について、両社のトップに伺った。
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譲渡企業
- 会社名
- 株式会社健康一家
- 所在地
- 福岡県福岡市
- 事業内容
- 福岡県福岡市内で5店舗の調剤薬局を運営
- M&Aの検討理由
- 将来の先行き不安、更なる成長・発展のため
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譲受企業
- 会社名
- 株式会社トラストファーマシー
- 所在地
- 東京都豊島区
- 事業内容
- 調剤薬局32店舗を関東で運営
- M&Aの検討理由
- 新規エリア(福岡)への進出のため
医薬分業への変化を先読みした薬局経営
まず薬局を創業するまでの経緯を教えていただけますか。

薬剤師として、はじめは製薬会社に入社しMRになりましたが、1年で辞めて独立を決意しました。あまりサラリーマンには向いていないと自覚していましたし、当時はそのような薬局の開業を選ぶ薬剤師の先輩も多かった時代です。私の後に続く人もたくさんいました。
その頃は「距離制限」という制度があり、既存の薬局の300メートル圏内では新規開業が認められませんでした。薬局で取り扱う商品も、医薬部外品や日用品が中心の時代です。そうした状況の中で、私たちの「まさおか薬局」は粒状漢方の処方と自家製剤からスタートしました。日本薬局協励会という志ある薬局経営者の先輩や仲間から、漢方薬についてもいろいろ教わり、相談薬局としての基礎が作れたように思います。
創業2年後には、個人商店が集まる公設市場内で2号店の出店を果たしました。これが現在で言うドラッグストア業態の始まりです。OTC医薬品の取り扱いを増やすことで、「町の薬屋さん」として地域に根ざす姿を目指しました。
薬局業界は法改正などで大きく変化してきたと思いますが、どのように対応されてきたのでしょうか。
法律が変わる可能性には、常に対処できるように準備しておかなくてはなりません。トータルのパイが決まっている中で、どのように生き残るのか、どのような位置取りが良いか、風を読んで動いてきた自負はあります。
つまり、変化を先取りしながらも、リスクを取りすぎない経営を心がけていました。医薬分業が本格化する以前から調剤の重要性については学んできましたが、だからといってOTCを軽視したわけでもありません。これが、どちらに風が吹いても対応できる準備だったのではないかと思います。
正岡 玄光社長は、いつ頃から家業を継ぐと意識していたのでしょうか。

小学生の時点ですでに薬剤師を目指すと決めていました。父だけでなく母も一緒に働いていましたし、家族経営が当たり前の環境で育ちました。強制されたわけではなく、父の背中を見ているうちに、自然とこの道を選んだと思っています。本来は、他の企業で経験を積みたい気持ちもありましたが、病気を患った母と過ごす時間を大切にしたいと思い、地元に残る決断をしました。
新卒社員として入社した後は、現場の店舗で厳しく鍛えてもらったのを覚えています。当時の父は地元の薬剤師会の仕事で精力的に活動していたので、後に役員となる者に店舗運営を任せていました。私にとって薬局の仕事そのものは、父より店長を中心とした現場のスタッフに教わった記憶が色濃く残っています。
2019年に社長を交代されました。この経緯を教えていただけますか。
区切りとしての社長交代は、私から提案しました。さまざまな経営者の方と交流する中、先代が退任しないと、やがて後継者も自ら退任できなくなるというジレンマをよくお聞きしていたためです。時期を逸しないほうが良いと考え、自分が代表を引き継ぎたいと会長に伝えました。
ただ、経営者としてのタイプの違いには、私自身だいぶ悩んできました。父は創業者に多い典型的なリーダーシップ型で、自ら先頭に立ち組織を引っ張るタイプです。一方の私は、あまり目立たず、みんなが走りやすい環境を整えて、後方から声をかけるようなイメージです。それが自分に合った経営スタイルだと思っています。来ている患者さんも、地域や店舗によって異なりますので、ニーズも変わってきます。それぞれの店舗の良さは、働いているスタッフにしか分からない部分もありますので、私がサポートすることを通じて、みんなが気持ちよく働いてもらえるようにすることが一番大事だと考えてきました。
そのため、社員は家族のような存在だと思い、職場の風通しの良さには特にこだわってきたつもりです。新しい店舗の形も、その挑戦の一つの成果だと言えるかと思います。
今回トラストファーマシーの方々にも高く評価していただいたカフェ併設型の今宿店では、近隣の医療機関と意気投合し、「地域全体を元気にしたい」という思いから、生地から手作りしたパンを提供しています。以前から採用に取り組んでいた管理栄養士が活躍する場を作ることにもつながりました。それまで医療事務として働いていた社員が管理栄養士の資格を活かし、処方せん対応の空き時間を利用して、メニュー開発をしたこと、それが地域の方々への健康的な食事の提供につながっているのはとても喜ばしいことです。

私が70歳になるので、社長交代はちょうど良い一つの節目になったと思います。ただ実質的にはその6~7年前から、会社経営の大部分をすでに任せていたため、不安はありませんでした。身内を客観的に評価するのは難しいのが本音ですが、若くして亡くなった母を思うとともに、私のことも支え続けてくれました。
気が優しい性格のため、社員や取引先のことを第一に考える経営方針は、非常に彼らしいと思います。多くの方々に支持していただいていることからも、経営スタイルの正解は1つではないと言えます。
薬局に押し寄せるかつてない激変の波に単独経営の限界を感じた
親族間で事業承継が実現した中、なぜM&Aという選択肢が視野に入ってきたのでしょうか。
自社の譲渡、M&Aを本格的に考え始めたのは、1年半ほど前からです。きっかけはいくつかありましたが、一つに絞るなら、業界環境の劇的な変化が大きかったように思います。Amazonの参入というニュースが駆け巡った時、巨大な物流の波が押し寄せることのインパクトを感じずにはいられませんでした。言わば、究極的な効率化のプロが黒船に乗ってやってくるわけです。業界の常識が塗り替えられ、なおかつ取り残される者、弾き出される者が出てくるのは当然だと考えました。
調剤報酬改定は2年に1回で、薬価改定は毎年行われます。1,000万円の在庫が、年間約10%前後目減りしていくのと同じ状況が起こっています。売上を維持するだけでも大変な時代なのに、在庫の価値まで下がっていくのは身を削られるような思いです。
「現状維持は衰退だ」と社員には常々話してきましたが、自分たちだけの力では限界があると感じ始めてもいました。その要因の一つに、リーダーである私には他社で勤めた経験もなく、何か新規事業を仕掛けたくても、人材を探すツテやノウハウもありません。自社単独のリソースで、ゼロから1を作るのは極めて困難です。
それなら、すでにそういう力を持っている会社と一緒になることで、社内研修の充実やモチベーションアップも含め、さらに伸びる素地を整えられるのではないかと考えるようになりました。
M&Aキャピタルパートナーズとの出会いについて教えていただけますか。
10年ほど前からお付き合いがありました。当初は譲受側として、店舗拡大のための情報収集が目的でした。特に薬剤師の雇用は年々厳しさを増しており、店舗とともにそこで働く人材を確保できれば効率的だと考えたためです。途中で担当者が交代されましたが、中里さんとは5年ほどのお付き合いになります。とてもコミュニケーション力が高く、いつも朗らかで、気が付くとなんでも話せる関係になっていたように思います。

正岡社長は、これまでのお話にあるように、誠実で優しい経営者だと一目で感じられました。そしてとても情報収集に熱心な方という印象でした。とても業績が好調の中で、困った状況になってからアクションするのではなく、業界の動きを先読みしようとされていらっしゃった姿が印象的です。M&Aによる株式譲渡は、まだ全く考えていないとのご意向だったので、山﨑と打ち合わせた上で、お役に立てる情報を絞ってご提供していたように思います。

最初にお会いした時は、代替わりをなさった直後で、これから事業を伸ばしていくという気持ちに溢れていらっしゃった印象が強いです。当時、薬局業界全体が活発に動いている状況でしたので、大手各社、特に上場企業の動向、株価推移などは力を入れてお伝えしていました。課題意識も明確で、だからこそ積極的に情報を収集されているのだろうと思いました。
何よりも、まず知ることが大事だと思っていました。たたき上げの父と比べると、自分の知識不足を痛感することもありました。だから薬局だけでなく、異業種の経営者とも積極的に交流して、さまざまな情報をキャッチしようとしていたのです。その中で、山﨑さんや中里さんからは、薬局業界の専門的な話にとどまらず、日々相当数の経営者と会っているからこそ見えてくる景況感や、人材・組織づくり、成長戦略の考え方といった“生の情報”を伺うことができました。他では得られない視点を熱心に提供してくださったことが、私にとっては大きな意味がありました。
今でこそ少しずつ認識が変わってきましたが、薬剤師会の中ではM&Aは悪というイメージがありました。そのため、最初はM&Aという言葉を聞いただけで、敬遠してしまう心理もあったと思います。ただ、お二人から世の中の動きを聞くうちに、「知らないよりは知っておいた方がいい」と思うようになりました。
健康一家は経営状態も良好ですばらしい会社であることは、広く業界内に知られていました。したがって、先ほど正岡社長がお話しになったように、譲受企業のパートナーを探る段階になった際には、多くの企業から手が挙がりました。これは事前に十分予想できることでしたので、特定の会社に偏ることなく、まずは多くの企業と直接お会いいただき、評価を聞くことが重要ではないかと考えました。
大手や有名企業からもオファーをいただいたことは、大変ありがたいことです。グループに参画することで、私や社員が誇りに感じられる選択肢もありました。ただ、最も重視したのは、社員と風通しのよさを守ってくれるかどうかでした。
私たちの店舗には、長年地域の医療を支えてきた歴史があります。患者さんとの関係や医師との信頼関係を守り、さらに発展させてくれる相手でなければ、M&Aをする意味はありません。幸いなことに多くの企業が、私たちやその先にいる医院などを大事にしてくれるであろうイメージは持てました。
付け加えると、健康一家がより発展するためには、同じ県内の同業者ではないほうが良いのではないかという方針はありました。というのも、すでに福岡市内のすばらしい場所に店舗があり、長い歴史も誇っているためです。同じエリアの競合同士が一緒になっても、大きな課題の解決に向かえるかと言えば疑問符がつきます。今後の業界の環境変動など、大きな課題に対応するには、むしろ異なる強みを持つ企業同士が組むことが重要ではないかとお伝えしました。
お二人が持参する資料は、いつも本当に丁寧でした。細かいところまで調べて、分かりやすくまとめてある。その仕事ぶりを見て、この方たちなら信頼できると感じました。
他の仲介会社からも連絡はありましたし、実際にお会いしたこともありますが、他社とは一線を画していると感じました。コンプライアンスの徹底ぶり、対応の速さ、そして健康一家や店舗の経営方針を理解しようとする姿勢には、感銘を受けました。
熱意と誠実さが引き寄せた最良のパートナーシップ
譲受企業であるトラストファーマシーの事業概要をお教えください。

トラストファーマシーは、一都三県に30店舗以上を展開しています。創業したのは父で、当初は後を継ぐつもりはありませんでしたが、2000年に途中入社しました。その時点では10店舗ほどだったものを着実に増やすことができたのです。
ただ、父から急きょ社長を任された時は苦労しました。経営者としての経験がなく、まだ家族経営の域を出ていませんでした。しっかりした人事制度や賃金制度がなかったのも、その表れだったかと思います。これを私と一緒につくり上げたのが、トラストファーマシー現社長の白水だったのです。2025年10月1日からホールディングス体制に移行し、現在は2030年までにグループ100億、5人の社長を作ることを目標に掲げています。

私は薬局とは全く畑違いの会社「レンタカー・カーリース業界」に新卒で入社して、営業所での下積みから始まり、ブロックリーダー、マネージャーと経験を積みました。管理部門では人事や予算管理などを司り、経営に近い業務にも携わっていました。
田中と出会ったとき、まさに「家族経営から企業経営へ進化するフェーズを一緒に支えてほしい」という口説き文句に惹かれ、入社を決めた経緯があります。ただ業態が異なるだけでなく、医療や薬剤師、調剤薬局という特殊さに慣れるまでは、かなり時間を要しました。
白水の存在により、人事評価や賃金などの制度基盤が整ったことは、会社の成長の大きな原動力になったと捉えています。完璧な制度ができたとは言いませんが、創業者から受け継いだ、感謝の思いを従業員に対して示すことはできたように思います。仕事の内容は厳しくても、まずは従業員に対して温かい会社でありたいと思います。そして、一人ひとりが輝ける会社を作りたいと日々考えてきました。
健康一家とトラストファーマシーをお引き合わせした経緯を教えてください。
もともと本件とは別の内容で、私が白水様とお話をしていた際、福岡でも良い企業があれば教えてもらえないかという話題が出ました。これは本当に偶然だったのですが、健康一家の内容をお伝えすると、想像以上に良い反応をいただいたのです。
話をお聞きした瞬間、直感的にぜひお会いしたいと感じました。福岡市内という条件は、かねてから私たちがずっと探していたためです。さらに、福岡大学との接点があることも予想外の良い情報でした。人口動態も毎年少しずつ増加している福岡市は、当社の第二の基盤としても「ここしかない」と思える場所でした。
福岡を意識し始めたのは、4~5年ほど前です。きっかけは福岡大学との教育提携で、年に1回、数名の薬剤師が福岡大学病院の薬剤部に入って、3泊4日の研修を受けさせていただいています。専門性の高い研修で、参加した薬剤師たちは大きく成長するきっかけになっています。
こうしたご縁もあって、採用面でも福岡大学の学生が入社してくれるようにもなりました。ただ、再び福岡に戻りたいという方もいらっしゃるのですが、育てた人材が地元に帰ったときに当社としての受け皿がないと離職せざるを得ません。だから、福岡に拠点を作り、引き続き活躍できる環境を整えた方がいいという思いもありました。
それまでトラストファーマシーの会社名は存じ上げなかったのですが、福岡大学との提携という話を聞いて、それは面白いと思いました。会長は長年にわたり、福岡大学薬学部の同窓会長を務めており、大学とも深い関係性を築いてきました。弊社の幹部のほとんどが福岡大学出身です。
福岡にいる薬剤師を多く輩出してきた福岡大学は、文字通り特別な存在なのです。なぜ関東の会社が福岡大学と連携しているのか、すぐに理由は分かりませんでしたが、不思議なご縁があるように感じました。また、同時にそれだけ九州でのビジネスを本気で捉えている証拠ではないかと考えたものです。
ただし、包み隠さずにお話をすると、その時点ですでに他社との交渉は進んでいました。条件面も良く、方向性はほぼ決まりかけていたのです。だからトラストファーマシーとお会いする時も、それほど期待はしていませんでした。
タイミングとしてはかなりギリギリでしたが、トラストファーマシーの熱意が強かったこと、そして健康一家との親和性も大きいと考えられることから、一度お会いいただくべきだと考えました。ただ、もう少し遅ければ、面談さえ実現しなかったかもしれません。
初めての顔合わせは、どのような雰囲気だったのでしょうか。
予定では1時間のところ、気がつけば1時間半が経過していました。話し始めたら止まらなくなってしまったのです。特に田中さんのパワーには、正直圧倒されました。これまでいろいろな企業の方とお会いしてきましたが、あのオーラは特別でしたね。引っ張っていく力を持った経営者だと、すぐに分かりました。私も同じ二代目の経営者ですが、本当に尊敬できる方だと感じたのです。

お二人にお会いして、まず感じたのは誠実さでした。経営者がどのような思いで会社を経営してきたか、従業員をどう大切にしてきたかは、話をすればすぐに分かります。
こうした経営者が率いる会社なら、従業員の皆さんもそういう文化の中で育っているのは間違いありません。この瞬間に「一緒にやりたい」と強く思いました。
カフェ併設の薬局のお話には、特に共感しました。私たちも重要な存在である管理栄養士の活用に力を入れており、薬局の新しい可能性を追求しています。しかし、難しさもあります。その中ですでに何年も前から先進的な取り組みをされていることに、強いシンパシーを感じました。
それに正岡会長の博多弁を聞いて、なんだかホッとしました。私も福岡生まれで、実家も現在福岡にあります。それがすべてではありませんが、方言のおかげで何か温かな雰囲気のあるトップ面談になったと思います。
私たちの姿勢を肯定し、一緒にさらなる飛躍を目指すトラストファーマシーの熱意は本物だと感じました。こんなに本気で向き合ってくれる会社なら、安心してご一緒できると心が熱くなりました。
熱意と価値観の一致、これがトラストファーマシーを選ばせていただいた最大のポイントです。条件や規模も大事ですが、やはり一緒にやっていく相手として、同じ方向を向いているかどうかが一番重要だと感じました。
スピーディな意思決定を陰で支えたハイレベルな仲介役の存在
一気に両者の距離が縮まったということですね。デューデリジェンス(企業監査)をはじめとするプロセスもスムーズだったでしょうか。
中里さん、山﨑さんには本当に助けていただきました。自宅兼倉庫に創業時、50年以上前の書類が眠っていて、どこに何があるか分からない状態でしたが、一緒に探してくれました。M&A仲介会社の方がこれほど汗をかいてくれるとは、想像していませんでした。

健康一家の歴史を私も一緒に振り返らせていただくような感覚でした。53年分の書類を探す過程で、健康一家がどれだけ丁寧に記録を残してこられたかも分かりました。これも会長をはじめ、経営の誠実さの表れだと思います。
私たちはこれまで薬局だけで350社以上のM&Aをご支援してきた実績があります。そのため、薬局ならではの事情や、どういった書類が必要かなどは深く理解しています。また、必要書類はクラウド上に書類を格納し、それをチェックしていただくようなシステムで、スムーズで迅速な確認作業をご支援しています。
正岡社長も常にスピーディに必要資料を準備してくださいました。そして白水様による確認済みのご連絡も早かったです。両者の熱意がともに高かったからこそ、スムーズに進んだのだと思います。多くの書類確認が必要になる中で、想定以上に早く進めることができました。

やはりM&Aキャピタルパートナーズの先導があってこその成果だと思います。仕事の質の高さは、最初から一貫して感じていました。初めて見る書類はIM(企業概要書)ですが、これもわかりやすく要点が整理されており、整然としています。レベルが明らかに違うのです。
これまで当社は何件かM&Aを実施してきましたが、今回の健康一家は過去最大の規模で、不安がなかったわけではありません。M&Aキャピタルパートナーズのサポート力や迅速さ、当社のカルチャーをよく理解した上での的確な提案力には、安心して任せられるという評価以外ありません。
単に紹介する感覚ではないのでしょうね。両社のシナジーまでもイメージして紹介していただいていることに、心から感謝しています。
嬉しいお言葉をいただいて、大変ありがたいです。まさに「伝書鳩」のような仲介役は必要ないと思っておりますし、貴重なお時間をいただく以上、ニーズや期待されるシナジーについて十分理解し、議論を重ねた上で取り組んでいます。そのことをご評価いただけたのは、報われる思いです。
成約後のアクションも非常に早かったとお聞きしました。
すぐに各店舗を訪問しました。1日で4つすべての店舗を回るのは強行スケジュールでしたが、どうしても自分の目で見たいという思いがありました。正岡社長にも同行していただき、門前の医療機関も一緒に訪問しました。そこで目の当たりにしたのは、医師との信頼関係の深さです。単なるビジネス上のお付き合いではなく、上下関係でもなく、本当に長年かけて築かれた深い信頼がすぐ分かりました。
医療機関の先生方と密に連携し、「どうやって地域の医療を良くしていくか」という思いを同じ方向で持ち続けてきたつもりです。その点を評価してもらえるのは、大変ありがたいことです。私なりに土台を作り、それを現社長やスタッフがさらに発展させてくれています。医療機関との関係は、一朝一夕には作れません。毎日誠実に対応し続けることでしか、信頼は得られないことをよく理解して、スタッフと一緒に地道に積み上げてきたのだと思います。

店舗を訪れると、従業員の皆さんが笑顔で迎えてくれる姿にも感銘を受けました。社長との距離も近く、気軽に話しかけている様子を見て、風通しの良い職場文化というのは本物なんだと実感しました。
田中さん、白水さんがわざわざ来てくれたことを、スタッフたちは本当に喜んでいました。遠いところから、わざわざ自分たちの店舗を見に来てくれたこと、しかもただ見るだけじゃなく、一人一人に声をかけてくれて、話を聞いてくれたことに感謝している者も多かったです。
私が一番大切にしているのは、年1回の全従業員との1on1面談です。できるだけ早く健康一家の皆さんとも実施する予定です。一人ずつと向き合い、何を考えているのか、どういうキャリアを描くのかを直接聞けることを本当に楽しみにしています。
東京と福岡という距離がありながら、トラストファーマシーの熱意には本当に驚かされました。ここまで短期間で、これだけ密にトップがアクションするケースは少ないように思います。それだけ距離を超えて健康一家の未来にコミットしているということであり、トラストファーマシーであれば、健康一家は間違いなく次のステージへ進んでいけると確信しました。
私たちだけではありません。正岡社長も新店の出店計画について、早速動いてくれました。地元の医師や医療機関との信頼関係が大きく作用するのは言うまでもありません。
新たな挑戦に向かって可能性と期待が膨らむ
今後のビジョンについてもお聞かせください。
ホールディングス体制に移行した当グループが2030年に100億円の売上を達成するにあたって、健康一家はその重要な一翼を担う存在です。正岡社長には引き続き代表として、福岡大学との基盤強化、そして九州展開の中核を担っていただきたいと思っています。
グループとして、首都圏に加えて福岡にも大きな拠点を持つことができました。それぞれの地域で培ってきたノウハウを共有しながら、お互いに成長していけることは、理想的な形だと思っています。
私は健康一家の代表として、これまで築いてきた地域との関係を大切にしながら、さらに発展させていきたいと思っています。美和台店の医療モール計画もそうですし、福岡大学との関係強化もそうです。同時に、トラストファーマシーのノウハウを学びながら、組織としてもっと強くなりたいと考えています。従業員研修の充実、マネジメント体制の強化など、今まで自分一人では難しかったことも、実現できる環境が整いました。
私もこれまでの紡いできた歴史を伝えていく役割があると思っています。どういう思いで薬局を始めて、どういう思いで地域に向き合ってきたか。その原点を忘れずに、新しい時代に進んでいってほしいです。
今思うと、最高の形で社長のバトンを渡せました。そこにトラストファーマシーという素晴らしいパートナーが加わり、これから健康一家がどう発展するか楽しみです。
最後にM&Aを検討されている経営者の方々へのメッセージをお願いします。
今回の件は偶然と幸運が重なり、奇跡的に良いお相手に巡り合えました。しかし、これは決して運任せだったわけではなく、情報収集を続けてきた賜物だったと思います。情報を知らないままでは選択しようがありません。業界がどう動き、他の経営者はどう考えているのかを知ることが、自社にとって最適な道を探る一歩になるのではないかと思います。
私自身も、常に変化を先読みすることを心がけてきました。そんな姿勢が今回の決断にもつながったなら、嬉しい限りです。社長がM&Aという決断をした時、それは正しい判断だと思いました。これからも薬局は、限られたパイの中で生き残れるポジションにいる必要があります。それを考え続けることが、経営者の仕事だと思います。
M&Aは、経営トップとの相性がほぼすべてだと考えています。経営者を見れば、会社の文化が分かります。数字や事業内容も重要ですが、最終的には人と人との信頼関係であり、自分の感じたことが一番の正しい答えだと思います。
M&Aは目的ではなく、手段の一つです。描く将来像に向かって最適な道に進むための選択肢の一つとして、M&Aを検討すると良いのではないでしょうか。重要なのは、会社を次の段階に進めるために何が必要かを見極めることです。
情報収集の一環として捉え、我々を積極的に利用していただきたいと思っています。最終的に必ずしもM&Aを実行する必要はありません。それでも可能性を知り、頭の片隅に置いていただくことで、経営判断の幅が広がるのは間違いないと思います。
価値観が合致する企業同士が出会うことは、私たちが想像していた以上のシナジーを生むことを学ばせていただきました。たとえ地域や規模、業態の違いがあっても、本当に相性の良い相手と出会えれば、素晴らしい未来が開けることを改めて実感しています。
これから九州の業界でさらに注目される存在となることを確信していますし、今後もさまざまな形でご支援できたらと思います。

文:蒲原 雄介 写真:一ノ谷 信行 取材日:2025/11/10
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