成長著しいリユース市場で飛躍を目指す。
規模の違いを乗り越えて、互いの強みを活かしていく
リユース市場において、後発ながら「出張買取型」の営業スタイルで業績を拡大してきたVOOM株式会社。創業者の強烈なベンチャーマインドと情熱的なリーダーシップが、その原動力である。同社がさらなる飛躍のために下した決断が、「店舗型」のスキームを強みとする大黒屋ホールディングス株式会社の連結子会社・ラックスワイズ株式会社への事業譲渡。創業者の遠藤裕次郎氏に、決断の背景やさらなる飛躍に向けた想いなどを伺った。
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譲渡企業
- 会社名
VOOM株式会社- 所在地
- 宮城県仙台市
- 事業内容
- 出張買取を行うリユース事業
- M&Aの検討理由
- 更なる成長のため
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譲受企業
- 会社名
- ラックスワイズ株式会社
(大黒屋ホールディングス株式会社の
連結子会社) - 所在地
- 東京都港区
- 事業内容
- 中古衣料品の販売等のリユース事業
- M&Aの検討理由
- 事業拡大のため
「人を大切にしたい」との思いを貫いて独立・創業
はじめにVOOMの創立の経緯について振り返っていただけますでしょうか。

私たちVOOMの設立は比較的新しく、2022年4月1日です。それまで私は関西のリユース大手企業で働いていました。同社が仙台市に支店を出す際に責任者を探していたことを知って、応募して入社したのです。ですから、この業界では支店長というポジションからスタートしたことになります。ただ、いずれは独立したいという志向はずっと以前から持っていました。
幸いオープンしてからは支店の業績も、私の支店長としての仕事も順調でした。右肩上がりの業績に合わせて、新しい人材も積極的に採用できましたが、営業マンの待遇をよりよくすることが事業拡大に繋がると考えるようになりました。
経営陣にはそんな思いを伝えたのですが、あまり受け入れていただけず、社員の人生に責任を持つには、自分が独立するしかないのではと考えたのです。
独立に際して苦労されたことはありましたか。
いえ、特にはなかったですね。創業の資金はすべて自己資金でまかなったので銀行の力は借りませんでしたし、オフィスも仙台駅の東口近くという好立地に確保できました。私が前職を退社したときに一緒についてきてくれた仲間が8人もいたので、採用に困ることもありませんでした。ちなみに、今に至るまで銀行の融資は一度も受けたことがないんです。
順調な滑り出しでしたね。胸中にはどのような思いがありましたか。
当時掲げた目標が、年商100億円です。それによってリユース業界No.1の会社を目指したいと社員には宣言しました。当時のリユース業界は今ほど盛り上がってはいなかったのですが、社会的なサステナ意識の高まりやコロナ禍後の景気低迷に伴う節約志向の高まりなどから、必ず市場は拡大していくと確信していたので、目標もかなりアグレッシブに掲げたわけです。私自身、それまでの経験から自分の営業力には自信があったので、創業した頃は自ら営業の現場に足を運びました。業界トップという目標は、いつか絶対に達成できると信じていたのです。
買い取るのはモノでも、決め手は人としての姿勢
VOOMの強みとは何でしょうか。

リユース業界のビジネスモデルは、スタッフが個人のお宅へ直接お邪魔して貴重品等の買取を行う「出張買取型」と、個人のお客様が店舗に貴重品等を持ち込む「店舗型」に大別できます。当社は前者の「出張買取型」に特化しており、そのノウハウが強みです。もちろん「出張買取型」を行う事業者は他にもありますが、当社の場合は仕入れ力を左右する営業力に絶対的な自信を持っています。
当社では、コールセンターがお客様のお宅にお電話をして、アポイントが取れたお宅へスタッフが直接伺います。コールセンターのアポインターは社員が務めており、外部への委託はしていません。お客様のもとへ伺ったスタッフはご自宅に上がらせていただき、貴金属や洋服、着物、バッグ、家電など買取希望の品を拝見し、値段を提示してご了承いただけたらその場で買い取らせていただく流れです。ポイントとなるのは、その際、お客様にいかに信用していただけるかです。
電話でアポを取ってあるとはいえ、見ず知らずの他人を家に上げたうえに大切な所蔵品を差し出すのですから、お客様の心が不安や警戒心でいっぱいなのは当然のことでしょう。私たちの仕事のポイントは、そうしたお客様の心を柔らかく解きほぐし、いかにして「この人なら信用できる」と思っていただける関係を築くかにあります。それには短くても1時間、長い場合は8時間以上もかかることがあります。
その代わり、いったんご信頼いただけると「実は…」とお客様のほうから別のお宝を見せてくださることも少なくありません。「店舗型」ですとお客様がお店に持ち込まれた物品しか買い取れませんが、「出張買取型」なら買い取れる物品はどんどん広がっていくわけです。お客様のご自宅はまさに宝の山。信頼していただいて「あなたに買ってほしい」と言われることは大きな喜びですし、それが当社の仕入れ力の強さにつながっています。
こうして仕入れた物品は、オークション等を通じて全国のバイヤー等に販売したり、全国の福祉施設に寄付したり、海外の途上国への支援に回したりしています。コールセンターから販売まで、一連の流れをすべて自社で行っているワンストップ型のサービスであることも、当社の特徴です。
お客様との信頼関係づくりのために、遠藤社長が力を入れているのはどのようなことでしょうか。
どんなビジネスでも、営業は最初、警戒されるものです。そこを乗り越えていくには、誠実かつ真摯に向き合うしかないというのが私の考えです。当社では経営理念に「礼儀、礼節、物を大切にする心、古き良き時代に敬意を持ちながら」という一文があります。これもお客様と接する際には、かくあるべしという思いを表したもので、お客様から「人間として信用できる」と思っていただくことが当社のビジネスの起点になります。
なお、当社の地元である東北はとても暖かい土地柄で、お客様も優しい方ばかりです。初めてお邪魔したのにお茶を出していただいたり、お漬物をいただいたり、畑でもぎたてのリンゴを食べさせてもらったりといったことが珍しくありません。
本気で業界のトップを目指すために選択した一手
そうした強みを活かして順調に事業が成長する中、どのような経緯でM&Aに至ったのでしょうか。
おっしゃるように事業は順調で、仙台を皮切りに横浜営業所、札幌営業所、金沢営業所と拠点も続々と増やしていくことができました。一方で、事業が拡大するにつれて私の心の中で大きくなってきたのが、このままではいずれ限界がくるという危機感でした。お話ししたように営業力には絶対的な強みを持つ当社ですが、それは要するに私自身の影響力によるものです。いわば“VOOM=私”が会社の実態で、いつか絶対に壁にぶつかると思いました。だからこれ以上会社を大きくするには自分以外の力をお借りするしかないと考え、M&Aという選択肢が頭に浮かんだのです。
そこで私の知人を含めて様々な方にM&Aについてのアドバイスを求めたのですが、その中の1社がM&Aキャピタルパートナーズでした。最終的には5社に候補を絞り、M&Aキャピタルパートナーズにお願いすることを決めました。
その際の決め手はなんでしたか。

仲介会社にとってはM&Aの成約がゴールなのではないかと、私は思うんです。事実、ほとんどの会社が成約に向けての道のりについて熱心に話してくれました。その中でM&Aキャピタルパートナーズの相澤さんだけが、M&A成約はゴールではなくてスタートであり、本当に大切なのはその後の戦略だということを強く話してくださり、実際に事業展開の具体的な未来像も真剣に考えてくれました。その姿に接し、お願いするならこの人だと思ったわけです。人として真摯に向き合い、信頼関係を築くことを何よりも大切にしてきた私たちにとって、相澤さんの姿には響きあうものがありました。

実はここに至るまで、紆余曲折があったのも事実です。ただ遠藤社長は「それでも従業員の成長や雇用の安定を考えて決断すべき」との一貫した信念があったからこそ、本件が成就できたのではないかと考えております。遠藤社長の思いとキーストーン社のVOOM社の出張買取事業の譲受を皮切りにリユース業界No.1になるという強い信念が、今回のM&Aの決め手になったことは間違いありません。
譲受企業として、大黒屋ホールディングス株式会社のグループ企業であるラックスワイズ株式会社に対しては、どのような印象を持たれましたか。
最初は大黒屋ホールディングスと資本業務提携している投資ファンドの株式会社キーストーン・パートナースをご紹介いただきました。その際に直感したのが、上場会社とのグループ会社の一員ならば、創業時に目標として掲げた100億円企業も夢ではないということでした。「出張買取型」の当社と「店舗型」の大黒屋ホールディングスが一緒になることでお互いの補完機能が生まれ、強力なシナジーが発揮できるのではないかと思ったわけです。
年商100億円で業界トップを目指すという壮大な夢は、現実的には自分1人では不可能です。でも、大黒屋ホールディングスと力を合わせれば、その不可能なことを可能にできる、自分1人では難しい挑戦も絶対にできる、VOOMが新しいブームの立役者になれると感じました。
また、これは本音でお話しするのですが、大黒屋ホールディングスのような大企業からのお話ということで、最初は“大が小を飲む”ような、率直に言えば上から目線でのお話ではないかと感じたのも事実でした。「今のビジネスのままで満足していていいのか」と問いかけられたような気がしたんです。実際、当時は自分1人の限界を感じている状況でしたから。だから、今回のお話を契機に「このままでは終わらない。もっと上を目指してやる」という気持ちも生まれました。むしろVOOMが一緒になることで、大黒屋ホールディングスも大きくしてみせると、反骨心にメラメラと火をつけられた思いでした。

リユース市場は成長を続けており、大黒屋ホールディングスのグループが業界トップを目指すうえで、今回のM&Aは大きな一歩になると考えました。本気で頂点を奪いにいくという熱意を私も強く感じています。両社がぜひ業界に旋風を巻き起こし、頂点へ上り詰めていくことを期待しています。
M&Aキャピタルパートナーズおよび担当の相澤のサポートについてはいかがでしたか。
正直なところ、すべて相澤さんに頼りきりでしたので、M&Aキャピタルパートナーズという会社の存在はほとんど意識することはありませんでした。大手だから信頼できるに違いないと思っていた程度です。その分、相澤さんには本当にお世話になりました。私という人間の考え方や価値観を早い段階で理解してくれ、私に寄り添って進めてくれたと感じています。おかげで私も気を遣わずに本音で接することができました。
ベンチャースピリットを共有したい
今回のM&Aに際して懸念されるような点はありませんでしたか。
VOOMはベンチャーですので、上場企業とはカルチャーが異なるのではとは思っていました。ただ、それを懸念したということはなく、むしろぜひ我々のベンチャースピリットをお伝えしたいと考えました。経営者である私がM&Aを通じて大手企業から教わることは間違いなくあります。同様に先方になくて我々が持っている強みも絶対にあるはずです。
先ほどご紹介した当社の経営理念にある「古き良き時代に敬意を持ちながら」の精神にあるように、大黒屋ホールディングスが昔から受け継いできた想いは絶対大切にしなくてはなりません。そのうえでプラスアルファの新しいスピリットを我々がお伝えすることで、必ずリユース業界に新しい風を吹かすことができると確信しています。
遠藤さんのアグレッシブな姿勢は、どのように磨かれてきたのでしょうか。

私は宮城県の七ヶ浜町という海沿いの町で生まれ育ちました。東北地方有数の小さな町として知られるところです。ここの小学校で始めた野球は大学まで続けました。ポジションはピッチャーです。ピッチャーというのは自分が強くなればチームも強くなると信じるものなので、経営者として自分が会社を大きくするんだという姿勢は、野球を通じて磨かれたのかもしれません。チームワークを大切にして仲間を信じる感覚も、同様です。
大学を中退した後は飲食店で働き、その後、コミッションセールスの世界に飛び込みました。最初に売ったのは“味噌”です。普通のお宅に飛び込みでセールスし、味噌をお勧めするわけですが、これがうまくいって十分に稼げました。その後は牛乳のセールスなども経験しましたが、何を売っても1カ月か2カ月でトップの成績を挙げることができ、営業力こそ自分の最大の武器だと気が付きました。そんなときに、冒頭でお話しした関西のリユース企業が仙台支店のオープニングスタッフを募集していたので応募し、採用されたわけです。
今後の展望について、お聞かせください。

まずは、社員ですね。今回は事業譲渡ということで従業員もラックスワイズに移ることになりました。上場企業のグループ会社という安定感のもと、彼らには今まで以上に存分に力を発揮してもらいたいですし、VOOMでは難しかったことにも挑戦してほしいと思います。大きい船に乗り込んだからこそ広い海に漕ぎ出せるわけですから、ぜひ新しい世界を目指してほしいですね。私自身もラックスワイズの代表者となりましたので、従業員のために環境を整えたいと考えています。
そのうえでさらに積極的に人材を採用し、買取出張のノウハウを活用しながら事業の幅を広げていきます。海外展開の拡大はその一例です。
これからM&Aを検討しようかとお考えの経営者に向けて、メッセージをお願いします。
私もそうでしたが、経営者というのは常にどこかで閉塞感を抱いているものです。「事業はある程度軌道に乗っているし、個人的にも経済的な不安はない。このまま何もせずに現状維持でも人生を平穏無事に歩んでいけるだろう。しかし、果たしてそれでいいのだろうか」と。私はそんな状態の自分に納得できず、常に心の底にはもっと勝負したいという思いがありました。今回のM&Aはそんな挑戦のきっかけを与えてくれたと思っています。自分より強い経営者、自社より大きな会社と一緒になることで、自分1人ではできなかったことができるようになるのは間違いありません。
私のように経営者として漠然とした閉塞感をお持ちでしたら、ぜひ一歩踏み出してM&Aを検討してみることをお勧めします。
再現性の高いスキームが魅力——譲受企業から見たVOOM

今回の成約の決め手となったのは、VOOMの営業スタイルが非常に洗練されており、再現性の高いビジネスモデルであると評価したためです。
「出張買取」は、チラシ・CM等の広告費を投下し、顧客からの自発的な問い合わせを促すインバウンド型営業が一般的です。一方で、VOOM社は自社のコールセンターを活用した独自の顧客開拓体制を構築しています。また、VOOMは営業管理ノウハウにも優れており、業界水準に比べて高い稼働水準を維持し、安定した営業成績を確保しています。
加えて、当社グループは『質屋・大黒屋』の屋号で全国展開しており、老舗かつ質屋唯一の上場会社として高い知名度と信頼を有しています。VOOMの有する再現性の高い営業モデルは、当社グループのブランド力・信用力と掛け合わせることでさらに強固なものとなり、営業拠点および人員の拡充を通じて、事業の拡大を加速できると考えています。
これにより、両社の強みを活かした展開が可能となり、リユース業界における存在感を一層高めていきます。
一方、懸念点がなかったわけではありません。それは、ベンチャー企業において課題となりやすいコンプライアンスやガバナンス面です。この点に関しては、遠藤社長との対話を重ねる中で、従業員を大切にする経営姿勢に加え、管理体制の高度化に対する考え方についても十分に確認することができました。上場企業グループとして当社は、コンプライアンスやガバナンスについて十分な知見を持っていますので、さらに強固な体制を築いていくことができると確信しています。
最後に、私自身、M&Aキャピタルパートナーズ様を通じたM&A案件は初めてであり、M&A仲介を通じて非常に多くの優良な候補先企業と接点を持てることに大きな驚きと学びを得ました。その中で、VOOM及び遠藤社長とのご縁をいただいたこと、ならびにM&Aに関する知見を深める機会を得られたことに感謝しております。
今後は、VOOMと当社グループの事業成長を着実に推進するとともに、さらなる買収機会の検討を継続し、グループ全体の成長加速を図ってまいります。

(左から)遠藤様/小田様/弊社 相澤
文:丹後雅彦 写真:手塚裕之 取材日:2026/5/1
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