
人材(派遣・人材紹介会社)業界のM&A動向
更新日
人材業界は、採用関連業務の代行や人材育成のための研修事業など幅広い形で展開しており、代表的なものとしては、「求人広告事業」「職業紹介事業」「派遣事業」「請負事業」に大別される。
「求人広告事業」は、主に求人提供者と就業希望者のマッチングを行い、ネットや雑誌などの媒体を利用することで、労働市場の下部構造として広く普及している。
「職業紹介事業」は、能力や人物評価などに関与し、よい高い専門技術を有する人材の確保したい企業をメインに、就業希望者とのマッチングを行う。
「派遣事業・請負事業」では、雇用主として直接、就業者と雇用契約を結んで、賃金や労働時間の管理を行う。

人材業界の特色のひとつとして、派遣先企業の要望に応じて労働者の派遣を行う人材派遣会社は、派遣先企業の業績や業界を取り巻く環境などにより、自社の業績に大きく影響を受けるという点がある。
また、競合企業との差別化が「派遣人材」であることから、派遣先企業の要求する水準に見合う人材をどれだけ多く、かつ安定的に確保できるかが重要となり、人材の見極めや教育、専門的なトレーニングなどのクオリティの維持が競争のポイントとなる。
加えて、法規制によって市場規模が大きく影響を受けることがあり、近年では2008年のリーマンショック後、規制強化で市場が大きく縮小した。

人材業界は、1986年の労働者派遣法施行を契機に業界が認知され、売上規模も拡大していった。それまで「終身雇用」が一般的な雇用形態とされていたため、人材サービスを受けるという発想が乏しく、新聞や雑誌に求人広告を出す程度で、雇用される側にとっても、転職はそれほど一般的でなかった。この法律施行を機会に、経営者・雇用者の双方の意識に変化が起こり始めた。
矢野経済研究所によると、
2017年度の人材派遣業、人材紹介業、再就職支援業の市場規模は事業者売上高ベースで前年度比23.5%増の6兆7,143億円となり、「人材派遣業」「人材紹介業」「技術者派遣ビジネス」「ネット転職情報サービス」「製造派遣・請負ビジネス」の各市場は前年度比で2桁のプラス成長を確保していると発表している。

2008年までは規制緩和や少子化、女性の人材不足などを背景に需要が拡大し、急速に成長を遂げていったが、同年秋のリーマンショックをきっかけに景気が後退し、売上が大きく落ち込み、派遣先企業が契約満了を待たずに一方的に契約解除を行ういわゆる「派遣切り」が社会問題となった。
2013年頃からアベノミクス等の影響で国内の景気が回復しはじめ、人材業界市場も徐々に堅実さを取り戻した。近年は、労働人口の減少や企業の事業拡大などが原因で、多くの業界が慢性的な人材不足に悩まされており、人材業界の需要は引き続き高まると考えられている。
転職率は1980年以降年々増加しており、現在も多くの企業が人材不足を抱えているため、成長産業とされている。
しかし、人材業界は法律やAIの進化、社会環境、景気などの影響を受け、状況が激しく変化する業界であるため、市場の需要を多角的に考慮し、事業展開できるかどうかが、今後のポイントである。
昨今では、働き方改革関連法や外国人労働者の受け入れがどのように進められるかなど、将来展望が大きく変化する可能性がある。
しかし、国内の就労人口の減少が増加に転じる可能性は極めて低いとされており、企業による人材の正社員化、および雇用を調整する手段としての有期雇用人材の活用は今後も拡大すると予想されている。
人材業界では、リーマンショック以降、中小派遣会社を中心に売却を希望する企業が増加し、M&Aが活発化。近年では、大手企業による海外企業の買収やエンジニア領域などのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)など、様々なかたちで業界再編が加速している。
―主な事例ー
・株式会社リクルートホールディングス(東京都)は、2018年6月、求人関連の口コミサイトを運営するGlassdoor社(アメリカ)を12億米ドル(約1,360億円)でM&Aを実施。同じく2012年に買収したIndeed社(アメリカ)と連携させることで、従来の求人情報サイトに求職者の口コミを加え、人材領域における立ち位置をより堅実なものにすることを目指している。
・テンプホールディングス株式会社(東京都、現パーソルホールディングス株式会社)は、2013年4月、総合人材サービスを展開する株式会社インテリジェンスホールディングスを約510億円で子会社化。多様化する企業や求職者ニーズに応えるため、自社が保有する豊富な求職者情報とインテリジェンスが持つ「DODA」や「an」といった強力なブランドをM&Aによって結びつけた。
・テクノプロ・ホールディングス株式会社(東京都)は、2018年10月、技術者の人材派遣業・紹介業を展開するOrion Managed Services Limited(イギリス)の株式のうち、60%を取得して子会社化。テクノプロ・ホールディングスは、中期経営計画で成長戦略として、グローバル化を掲げており、この買収で欧州の拠点獲得を実現し、在英の日系企業へのサービス提供や、インドのグループ会社との連携を目指している。
関連ニュース
-
2023-05-02
-
2023-04-24
-
2023-04-04
-
2023-03-07
-
2023-01-11
-
2022-11-16
-
2022-08-17
-
2022-07-28
-
2022-05-11
-
2022-04-20
弊社のM&Aご成約実績
-
詳細業種 海外進出支援 所在地 非公開 概算売上 1億円~2.5億円 -
詳細業種 半導体・自動車部品工場向け大型設備卸 所在地 中部・北陸 概算売上 5億円~10億円 -
詳細業種 BPO・スキャニングサービス 所在地 関西 概算売上 1億円~2.5億円 -
詳細業種 皮革製品製造・販売 所在地 関東 概算売上 2.5億円~5億円 -
詳細業種 衣料品開発・販売 所在地 関東 概算売上 5億円~10億円 -
詳細業種 タクシー・ハイヤー業 所在地 関東 概算売上 5億円~10億円 -
詳細業種 結婚式場 所在地 関東 概算売上 1億円~2.5億円 -
詳細業種 試験機メーカー(自動車) 所在地 非公開 概算売上 2.5億円~5億円 -
詳細業種 商業ビル管理 所在地 中部・北陸 概算売上 1億円未満
M&Aキャピタル
パートナーズが
選ばれる理由
私たちには、オーナー経営者様の
決心にこたえられる理由があります