出演 株式会社Pros Cons 安部 恭子 夫人

今回は、AIを活用した外観検査システムを開発・提供する株式会社Pros Consの創業者・安部正一郎 様と公私ともに歩む安部恭子夫人です。
恭子様は企業に勤める傍ら、法務のプロフェッショナルとしてPros Consの法務や人事関連の業務も担っています。「ラーメン二郎」をきっかけに出会い、起業してコアコンセプト・テクノロジーとのM&Aに至るまで、どのような思いで正一郎様を支えたのか。AIベンチャー経営の苦労や、M&Aを決断するまでの想い、そして今後の展望を伺います。
目 次 目次をみる
「ラーメン二郎」から始まった二人三脚
まずは恭子様のこれまでのキャリアについてお聞かせください。

私はロースクールを修了しているのですが、司法試験に挑戦しながらも、最終的に企業の法務部門に就職することになりました。
タイヤメーカーの法務部でキャリアをスタートさせ、その後現在の会社に転職し、ゼネコンのデベロッパー部門で法務担当として働いています。
ゼネコンの法務というと、どのような仕事をしているのでしょうか。
会社の"リーガルの何でも相談屋さん"という立場です。主に契約書のレビューをしていますが、それだけではありません。土地の仕入れから売却までの全プロセスに関わり、プロジェクトのスキーム検討から実際の契約、最終的な売却まで、すべてのリーガル面での相談を受けています。
恭子様は企業に所属するかたちでキャリアを進めているわけですが、安部正一郎様とはどこで出会われたのでしょう。

夫は、前職のタイヤメーカーでの同僚でした。面白いのが、私たちの出会いの場が「マシマシ会」という「ラーメン二郎」を食べに行く会だったのです。当時の上司に連れられていった「マシマシ会」で出会い、偶然にも私の実家と夫が住んでいた寮が数十メートル先という近さだったこともあり、距離が縮まっていきました。
出会った当時の正一郎様の印象はいかがでしたか?
夫は同僚の中でも異質な存在でした。頭のキレる、問題解決能力の高い人という印象でした。先を読む力も抜群で、短時間でハイクオリティーの成果を出す能力には驚かされていましたね。
同時に、彼は本当に努力家でもあって。忙しい中でも常に情報収集をしていて、新しいことにも積極的に取り組む姿勢には感心させられます。
ラーメン二郎に始まり、そうしたお人柄にも魅力を感じていらっしゃったのですね。
そうですね。お互いに専門分野は違いますが、尊敬し合える関係性があったと思います。私は法務の専門知識を持っていますし、夫は経営や会計面で優れた能力を持っています。そういった互いの長所を尊重し合えていたのかなと思います。
結婚されたのは、お二人とも前職に勤めている時でしょうか。
結婚の話は転職前から出ていました。二人ともほぼ同じ時期に転職をしており、そのタイミングで籍を入れました。
「死神が見える」ほどの企業経営の苦難
正一郎様の起業について、恭子さんはどのように受け止められましたか

実は、夫が起業することは結婚前から聞いていました。「いずれ3億くらい借金するからよろしく」なんて言われていたくらいです。夫は私と出会ったタイヤメーカーを辞めたあとベンチャー企業に転職したのですが、それは起業するための準備だと理解していました。
ベンチャー企業での経験は、起業にどう活かされたのでしょうか。
スタートアップの運営方法、プロジェクトマネージャーとしての仕事の仕方の重要性を学んでいたようですが、一番大きかったのは、一緒に独立できそうなエンジニアと出会ったことだと思います。
ただ、最初から今の事業が決まっていたわけではありませんでした。アイデアを練り、市場調査を行い、少しずつ事業計画を固めていきました。
株式会社Pros Consの事業内容について、あらためて教えていただけますか。
夫の会社はAIを活用した外観検査の事業を行っています。製造業向けのソリューションで、製品の外観をAIが自動で検査するシステムを開発・提供しています。
この分野を選んだのには、夫のバックグラウンドが大きく影響しています。前職がタイヤメーカーだったこともあり、製造ラインや生産系に強い思い入れがあったようです。そういった背景があったからこそ、外観検査のAIという分野に辿り着いたのだと思います。
AIはここ1年半ほどで一気に市場が活性化した分野ですね。
夫は先を見る力が強いのです。AIの可能性にいち早く着目し、それを製造業に応用するという発想は、まさに彼らしいと思います。技術の進歩と市場のニーズを的確に捉えた事業だと私も感じています。
勢いのある分野だと思いますが、起業後、恭子様には正一郎様の姿はどのように映っていましたか?

経営者として、常にさまざまな課題に直面していました。特に苦心していたのは、従業員の入れ替わりや、技術的な課題だったように思います。
従業員については、単に技術力だけでなく、会社の理念や方向性に共感してくれる人を探すのが難しく、起業して4、5年経った今でも悩みは尽きません。技術面についても、AIの分野は日々驚くほどのスピードで進化していますから、ついていくのも大変だと思います。最新のビジネスや技術動向を常にチェックし、暇さえあれば情報収集をし、その知識を経営に活かしています。
夫はよく「いつもここらへん(目の前)に死神が見えてるから。何か起これば、いつでも会社はダメになる」と言っていました。それくらい経営の難しさを実感しているのだと思います。ベンチャー企業の経営は、常にリスクと隣り合わせです。資金繰りの問題や、大手企業との競争、技術の陳腐化など、さまざまな課題があります。
でも、夫は驚くほど冷静に対応しているように感じます。問題が起きても、すぐに解決策を考え出し、行動に移す。その姿を見ていると、本当に経営者としての資質があるんだなと感じます。
恭子様は法務の専門家ですが、どのようなサポートをされていますか。
まず、契約書関係の雛形は全て私が作成しています。また、定款や社内規則なども、作成を手伝っています。会社の基本的な仕組みを整えるのは、将来の成長のためにも欠かせません。リーガル面は全て見ているという感じですね。
人事関連の書類なども、できる範囲でサポートしていて、従業員との契約書や就業規則なども、法的に問題がないかチェックしています。私の専門知識が、少しでも会社の成長に貢献できていればいいなと思っています。
お子さんがお二人いると伺いましたが、正一郎様は自身の会社を経営し、恭子様は企業で働きながら正一郎様の経営をサポートしているとなると、家庭生活との両立は大変そうですね。
正直、かなり大変です。夫は夜遅いので、帰ってくる時間帯には子どもたちは寝ています。子どもと会えるのは朝か土日くらいですが、土日も経営者にとってはあってないようなもの。そのため、育児はほぼ私のワンオペ状態です。下の子はまだ1歳になったばかりなので、特に大変です。
そんな中で、仕事と家庭のバランスをどのように取っていますか。
子育てと仕事の両立は本当に難しいです。時間の制約も大きいですが、在宅勤務やフレックスタイム制度を利用し、バランスを取るようにしています。
私自身、大企業に勤めているのは家族としてのリスクヘッジという意味合いが強いのです。夫が起業することを前提に、安定した職を選びました。もし夫の会社が上手くいかなくなっても、私の収入で家計を支えられるようにと考えています。
法務のプロとして支える、創業5年目のM&A
仕事と家庭を両立させながら、安部さんは会社設立4年ほどでM&Aをされるわけですが、かなり早いタイミングですよね。M&Aのきっかけは何だったのでしょう。

最初にM&Aの話が出たのは、M&Aキャピタルパートナーズのアドバイザー岡山さんから家に手紙が届いたときでした。夫は常にさまざまな可能性を検討するタイプなので、その時もすぐに私に伝えてきてくれて。
でも、正直私は最初は反対でした。「本当にこのタイミングで売却するの?」と言っていましたね。会社を立ち上げてから、夫がどれほど苦労してきたかを知っていましたから、簡単に手放すのはもったいないと感じたのです。
毎日遅くまで働いて、休日も返上して頑張ってきた会社です。お客様との信頼関係も築けてきていました。そういった状況でのM&Aに抵抗を感じました。
その後、どのように考えが変わっていったのでしょうか。
夫と話すうちに、少しずつ彼の考えへの理解が深まっていきました。自己資本だけでの成長には限界があること、AIのビジネスがどんどん難しくなっていることなど、さまざまな課題があることがわかりました。
夫一人で抱え込むのではなく、協力者が必要だという思いもわかりましたし、M&Aが単なる「売却」ではなく、会社をさらに成長させるための戦略的な選択肢であることを理解することができました。
最終的にコアコンセプト・テクノロジーとM&Aに至るわけですが、決断した最終的な要因は何だったのでしょうか。
M&Aによるシナジー効果への期待が大きかったと思います。夫は単なる売却ではなく、一緒になってさらなる成長を目指せる相手を探していました。コアコンセプト・テクノロジーとの出会いがあり、AIの現実的な可能性を理解した上で、共に歩んでいける相手だと感じたようです。
「AIの現実的な可能性」というと。

確かにAIは素晴らしい技術ですが、完璧な精度の判定はAIという性質上難しいのが現状です。お客様のニーズに答えながらもAIができること、できないことを理解したうえで互いに協力していかないといけないのがAIビジネスの現実で、それを理解した上で、ビジネスを展開していく必要があると夫は考えていたようです。
夫は「AIの限界が今時点ではある」ということをよく言っていました。過度な期待や幻想を抱くのではなく、現実的にAIの可能性と限界を見極めたうえで、ビジネスを展開していく必要があると。そうした考えも含めて、コアコンセプト・テクノロジーの皆さんとは波長が合ったようです。AIの技術だけでなく、それをどうビジネスに結びつけるか、どう社会に貢献していくかといったビジョンも共有できたと聞いています。
また、もともと会社が持っている強みを活かしつつ、足りない部分を補完してくれる関係性が築けそうだという点も大きかったと思います。Pros Consが持つAI技術と、コアコンセプト・テクノロジーの幅広い顧客基盤を組み合わせることで、新たな価値を生み出せる可能性があるわけです。そういった相乗効果への期待が、M&A決断の大きな要因になったと思います。
恭子様はM&Aのプロセスでどのようなサポートをされましたか。

私は契約周りを全般担当しました。契約書の文言を一つ一つ確認し、法的なリスクがないか確認しました。M&Aの契約は通常の業務とは異なる部分も多いので、細心の注意を払いました。
子どもが寝て夫が帰宅してから作業が始まるのですが、一緒に今後のことをあれこれ話し合うのは楽しかったです。また、M&Aキャピタルパートナーズの岡山さんや角田さんのサポートの甲斐もあって、スムーズに進められたと思います。
心身ともに大変な時期だったと思います。M&Aキャピタルパートナーズのサポートは、恭子さんから見ていかがでしたか。
夫は岡山さんと角田さんのお二人にとても助けられたと思います。夫は連絡したらすぐに返信が欲しいタイプなのですが、素早いご対応に私も安心しました。
そもそも、シナジー効果を感じられる企業を紹介してくださったことも大きかったのですが、細かい対応も含めて丁寧かつ迅速に進めてくださりました。他のM&A会社と面談もしたようですが、岡山さん・角田さんペアとの相性が特に良かったと思います。
ピリピリからゆったりへ。M&A後の静かな変化
M&A後、働き方や生活に変化はありましたか。

あまり変わってないっていうのが現状です。私は引き続き会社に勤めていますし、夫も経営をしているので、働き方はほぼそのままです。夫は経営統合などの仕事が一時的に増えている分、以前よりむしろちょっと忙しくなっているかもしれません。
ただ、お互い以前より気持ちが楽になった気がしています。夫は起業してから、会社の未来に対する不安や責任感で、常に緊張状態だったように思います。M&A後はその重圧が少し軽くなった気がしますね。夫はずっと頑張り続けてきたと思うので、少し肩の力を抜いてもらいたいです。
ありがたいことに、金銭面でも余裕ができたので、時短のために躊躇せず外食を選択することもできます。でも、生活スタイルや感覚はそこまで変わっていないですね。
仕事への考え方や向き合い方についての変化はどうでしょうか。
これまで少ない人数の狭い世界の中で4〜5年経営をやっていたので、今は他の方たちとつながりができ、新しい話ができていると思います。夫と話していると、新しい刺激を感じているように思います。今後の会社の経営はこれからですが、新しい刺激によって、新しい考え方もたくさん出てくるのではないでしょうか。
恭子さんご自身は、今後やっていきたいことはありますか?
結婚してから今まで、忙しくて家族の時間がゆっくり取れていなかったですし、ピリピリしていない時がなかった気がするのですよね。なので、子どもたちも含め、時間的にも精神的にも家族とゆっくり過ごしたいです。
あともう一つ、かなり具体的ですが、夫とは世界一周船旅に行こうとずっと言っているので、それも叶えたいですね。ゆっくりとひとつずつ叶えていきたいと思います。
担当アドバイザーが語る、
安部恭子さんの素敵ポイント

恭子夫人は現在二人の子育てをされながら、大手ゼネコンのデベロッパー部門の法務担当でご活躍されております。初めてお会いさせていただいた印象では、恭子夫人は全ての面において、効率が良く子育てと仕事の両立を実現できていることに大変衝撃を受けました。自分も恭子夫人のように「子育て」と「仕事」の両立を完璧にできるようにもっと頑張らなければいけないと強く思った次第です。
また、恭子夫人はPros Consの創業時から法務面を中心にご担当されておりましたので、安部社長はもちろん素晴らしいですが、守りの面で恭子夫人という心強い存在がいらっしゃったからこそ、安部社長もご経営に専念することができ、創業以来黒字で急成長されてきたのだと認識しております。
ありがたいことにプライベートで互いの家族同士で交流させていただいた際にも、子育てや仕事面においてたくさんご相談の機会をいただき、貴重なご意見やお考えについて勉強させていただきました。お二方ともお人柄まで本当に素晴らしく、「子育て」と「仕事」を両立されながら、安部社長はキレキレの頭脳と経営手腕で素晴らしい功績を残され、恭子夫人は法務面でのプロフェッショナルとして活躍され、憧れのご夫婦でした。
私の家族もお二人のような素晴らしい家族になりたいと強く思っておりますので、引き続き末永くお付き合いさせていただきたいと感じております。
担当者プロフィール
- 企業情報部 主任 岡山 海斗
-
- 大手証券会社にて、上場・未上場オーナー及び法人の資産運用・事業承継コンサルティング業務に従事。
当社入社後は、幅広い業界で後継者問題の解決や成長戦略としてのM&A支援業務に従事。
夫婦で描くM&A後の成長
AI技術とともに進化を続けるため、力強いパートナーを選択
AI関連事業×株式譲渡

- 譲渡企業
- 株式会社Pros Cons
代表取締役 安部 正一郎
- 譲受企業
- 株式会社コアコンセプト・テクノロジー
「使えるAIを皆様のもとへ」をコンセプトに掲げ、AI導入検討から運用までを一気通貫で対応するトータルAIカンパニーである株式会社Pros Cons。同社は創業から5年目を迎える2024年2月16日、株式会社コアコンセプト・テクノロジーへの全株式の譲渡を実施した。なぜM&Aを進めようと考え、どのような未来を描いているのか。株式会社Pros Cons 創業者である代表取締役 安部 正一郎 様に話を伺った。
成約事例インタビュー
晴ればれ
社長を公私共に支え続けた社長夫人について取材し、M&A譲渡やM&Aによって感じられた変化など、
“社長夫人の視点”からのインタビューを「晴ればれ」としてご紹介しております。

「3代続く家業への挑戦。」
家族と歩んだM&Aまでの道のり。
- 出演
- 株式会社長谷川鉄工所
長谷川 由起子 夫人
創業から80年以上続く老舗の減速機・変速機製造をおこなう株式会社長谷川鉄工所。後継者不在問題を背景に、2021年に個人投資家である横川達也さんを譲受先としてM&Aを行いました。
「晴ればれ」第二回は、長谷川鉄工所3代目経営者・長谷川勉さんを公私にわたって支えた長谷川由起子夫人にインタビュー。代々続く家業に経理として携わってきた長谷川さんの想いを伺います。

コロナ禍、そしてがん発覚。
夫婦で乗り越えたM&Aまでの試練の壁
- 出演
- 株式会社アロマヒーリング
大石 純子 夫人
「晴ればれ」第三回に登場するのは、東京都内を中心にエステティックサロンを多数運営する株式会社アロマヒーリングの経営者・大石基二さんを公私ともに支える大石純子夫人です。
医療法人田本会とのM&Aまでの道のりは、コロナ禍での苦しい経営や大石社長の病気発覚、2度のM&A検討など、決して平坦ではありませんでした。この度のM&Aでの譲渡に至るまでの出来事や当時の想いを伺います。
M&A成約実績
弊社では、創業以来、累計1,000組以上のお客さまをお手伝いしてまいりました。国内No.1の調剤薬局業界のM&A成約実績の他、多種多様な業界・業種において多くの実績がございます。