
建設業界のM&A動向
建設業の定義は、建設業法に基づく許可を受けて建設を行う事業のことである。建設業法では、工事を28種類に分類しているが、このうち土木一式工事または建築一式工事をまとめて請け負うものを「総合建設業(ゼネコン)」、大工工事、左官工事などの専門工事を部分的に請け負うものを「職別工事業(サブコン)」、電気工作物や空調などの設備部分を請け負うものを「設備工事業」と大別している。
建設業界は、1985年のプラザ合意による円高の拡大と、内需拡大の要請による地方への公共投資の増加によって、大きく市場規模を膨張させた。

1992年度には、84兆円と頂点に達するも、財政難を原因とする公共工事の発注量の減少や、民間設備投資の減少等を背景に、2010年度には42兆円と半減し、国内の建設業者は、上場・未上場問わず大型倒産が相次いだ。 2011年度以降は、東日本大震災の復旧や復興、安倍政権の経済政策、東京五輪に向けたインフラ整備等の影響もあり、足元50兆円前後で推移している。
国土交通省の調査によると、建設業界の市場規模は、前年度2.1%増の57兆 1,700億円と報告されている。
業界市場が復調している背景としては、バブル崩壊後やリーマンショック後、工事量が減少し、赤字でも受注せざるを得なかったゼネコン各社が、その後の景気回復や東日本大震災の復興需要により、工事量が急増したため、利益率の高い案件にシフトしたことが、好業績の源泉となっている。
しかし、復興需要による政府建設投資は増加が見込まれている一方で、民間建設投資については、急激な円高や海外経済の減速、企業の海外シフトの加速などが懸念されている。国内建設投資はピーク時の半分の水準まで縮小していくものと予想されているが、世界的な建設市場は日本の10倍程度と推計され、新興市場を中心に今後も持続的な成長が期待できる。

今後は、被災地における震災復旧の工事(インフラや防災強化)、被災地以外では、省エネ、耐震関連の需要(老朽ビルの建て替え、学校、医療・介護施設などの建て替えや新設)が増加することが見込まれているが、全体の工事量は増えておらず、影響は限定的で、競争がますます熾烈になることが予想される。
そのため、大林組や鹿島建設などのゼネコン大手各社は海外受注の拡大を打ち出しているが、海外進出に伴う、交渉や契約プロセスの構築、リスク管理体制の強化など課題は山積している。
建設業界の課題としては、都心と地方との業績格差が挙げられる。建設総合統計によると、2017年度の地域別建設活動の出来高ベースでは、地域別のトップは約20兆円(関東地方)で、最下位の約1.6兆円(四国地方)とは約12.5倍の格差がある。その背景には東京オリンピック・パラリンピック関連の大型受注などがあるが、スーパーゼネコン、準大手・中堅ゼネコンに比べて、公共工事の受注に必要となる経営事項審査の点数が低い地方の中小企業は、公共工事の受注が実質的に難しく、今後も格差は縮みそうにないと言われている。

また、深刻な人手不足も問題となっており、過酷な労働環境のイメージから若者の入職者が減少傾向にある中、高齢の就業者が引退していくため、今後も就業者数は減少することが予想されている。
建設業界では、長年に渡って業界特性により業界再編が起きにくいと言われていた。
主な要因としては、生産規模の拡大に応じて利益を得る「規模の経済」が働きにくい点に加え、2社以上の企業が合併し1社になることで、公共工事の入札参加機会が限定されるなどのデメリットが大きい点などが挙げられる。 過去のM&Aとしては、入札可能な営業エリアが限られていることから、同一地域または隣接地域でのM&Aや、優秀な現場監督や建設業免許を獲得するために同業者の中小企業をM&Aするケース、海外展開や事業承継を目的としたケースがある。
―主な事例ー
・協和エクシオ(東京都)は、2018年5月、電気通信工事で一気通貫した施工・保守体制を構築するため、シーキューブ(愛知県)、西部電気工業(福岡県)、日本電通(大阪府)の上場電気通信工事3社を経営統合した。また、2018年8月にも、塗装工事のコーケン(神奈川県)を子会社化しており、既存の事業を強化・拡大するためにM&Aを活用している。
・新興プランテック(神奈川県)は、総合プラントメンテナンス企業である。2018年9月に、JXエンジニアリング(神奈川県)と合併すると発表した。
JXエンジニアリングの技術を新興プランテックのプラントメンテナンス事業に活用することで、事業拡大を狙っている。
・ハイアス・アンド・カンパニー(東京都)は、後継者不在という問題を解決するため、事業承継を目的として、住宅会社のアンビエントホールディングス(香川県)及び子会社のハウス・イン・ハウス(香川県)から、「R + house事業」「アーキテクチャル・デザイナーズ・マーケット事業」などを2018年1月に取得した。
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詳細業種 不動産開発 所在地 関東 概算売上 5億円~10億円 -
詳細業種 損害保険 所在地 九州・沖縄 概算売上 1億円未満 -
詳細業種 映像記録メディア買取販売 所在地 関東 概算売上 2.5億円~5億円 -
詳細業種 webマーケティングサービス開発・運用 所在地 関東 概算売上 2.5億円~5億円 -
詳細業種 ネットワーク機器関連 所在地 関東 概算売上 10億円~30億円 -
詳細業種 潤滑油製造 所在地 非公開 概算売上 10億円~30億円 -
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