
設備工事業界のM&A動向
設備工事会社とは、高層ビルやマンションの建築、また駅前の再開発などの際に、建築物に付随する設備全般の工事業を主力とする事業を展開する会社のことを指す。代表的な設備工事の区分として電気設備工事、空調設備工事、衛生設備工事、消防設備工事などが挙げられる。
一般的に、工事一式を受注したゼネコンと呼ばれる総合建設会社から、各区分ごとに設備工事を受注するケースが多い。また設備工事会社は、大型工事の工事一式を請け負うゼネコンに対して、工事の一部を下請けという形で受託することからサブコンと呼ばれている。

設備工事業界は民間の設備投資と公共工事が収益の基盤となっている。その設備工事会社の仕事の受注方法だが、一般的に3つのパターンで仕事を受注する。
まず一つ目は一式請負と言われる、ゼネコンが工事一式を受注し、それを設備工事会社に設備工事の一部を発注するパターン。二つ目は別途工事と言われる、ゼネコンと設備工事会社が別々で工事を受注するパターン。そして三つ目はコストオン工事と言われる、発注者が設備工事会社を選定し、工事費も取り決めたうえで、その費用を上乗せしてゼネコンに工事の発注を行うパターンである。
これまで設備工事業界は、エネルギー問題や地球環境問題に対して、急速に拡大してきたエネルギー関連のインフラ整備の影響で需要が増えてきていた。さらに2011年の東日本大震災や現在も全国各地で起きている自然災害に伴う災害復旧工事の増加も設備工事業界全体の受注件数増加に影響を及ぼしている。
設備工事業界の特徴としては、仕事の発注者であることが多いゼネコンがこけてしまうと売り上げに大きく影響を与える可能性があるため、複数のゼネコンと関係を築き上げ、会社を経営していくことが多い。ゼネコンと設備工事会社それぞれが役割を果たして、日本の建設業界が成り立っている。
一般社団法人「日本電設工業協会」の電気工事受注調査(5年統計)によると、電気工事受注高は平成26年度から平成30年度の5年間で約2兆6890億7800万円から約2兆8226億8000万円と約1300億円増加している。これはオリンピック需要に加え、都市の再開発の影響によるものと考えられている。
オリンピック後に工事件数が減少するのではないかと懸念もされていたが、老朽化したインフラ設備の改良工事やオフィスビルなどの建て替え工事、賃貸物件のリノベーション工事も増加してきており、今後も設備工事の需要は継続して増加すると見られている。

電気設備工事会社で代表的な会社は、「関電工」「きんでん」「コムシスホールディングス」「九電工」「協和エクシオ」がある。また空調設備工事会社で代表的な会社には、「高砂熱学工業」「大気社」「三機工業」「ダイダン」「新日本空調」がある。
電気設備工事会社であげた5社に関しては売上高と経常利益ともに前年同期と比較してプラスである。 また、空調設備工事会社であげた「高砂熱学工業」と「大気社」の経常利益は前年同期比で30%超であり、非常に順調に伸びており、今後も市場規模の拡大が期待できるのではないだろうか。

設備工事業界は災害復旧工事の増加やオリンピック需要の影響で工事件数が増えている一方で課題も抱えている。まず第一に人手不足である。慢性的な人手不足は常々言われてきている。
また60歳以上の労働者がここ5年以内に引退することが見込まれているため、人手不足はより一層深刻化しそうだ。 また人手不足が原因となり人件費も高騰し経営を圧迫している。海外、特に中国や中東の建設ラッシュにより建築資材が高騰しているのも大きな問題になっている。
このように人件費の高騰や資材の高騰が、設備工事会社の工事コストの高騰に繋がっている。とりわけ人手不足は設備工事業界において大きな課題として取り上げられており、各企業は中長期的な担い手の確保に追われている。国土交通省も処遇の改善や社会保険未加入対策などを含む「6つの重点施策」や若者、中途採用、離職防止・定着促進、女性、高齢者のように「担い手5分類ターゲットに応じたきめ細かな施策」などの施策により官民ともにこの課題を解決できるよう取り組んでいる状況だ。
オリンピック後もしばらくは都市の再開発や災害復旧工事で設備工事業界に対する需要は安定して増加することが見込まれているが、上記の課題を解決できるかが分岐点になってくるかもしれない。
設備工事業界は中小企業が数多く存在し、非常に激しい競争が繰り広げられている。
2020年のオリンピック以降を見据え、多くの経営者が経営の見直しを迫られているなかで、規模拡大を目指したM&Aをはじめ、海外への事業展開を行う企業が増加している。
―主な事例―
2016年9月
株式会社関電工は佐藤建設工業株式会社の発行済株式を取得することでM&Aを実現した。架空送電線に従事する高所作業員は減少している中で、グループ全体で施工力不足の解消、また人材育成や技術の継承が目的であると考えられる。
2017年8月
株式会社ミライト・テクノロジーズは、西日本電工株式会社の株式を取得することでM&Aを実現した。この子会社化は、施工力の強化およびビル・エネルギー分野の事業拡大が目的と考えられる。
2018年7月、株式会社四電工はアイ電気通信株式会社の全株式を取得することでM&Aを実現した。東京や大阪などの都市圏で固い顧客基盤をもつアイ電気通信株式会社の子会社化によって、事業エリアの拡大、施工力の強化や多様化したニーズに応えられる総合設備会社としてのグループ力強化が図られている。
2018年5月、株式会社きんでんはインド企業であるアンテレック社の全株式を取得することでM&Aを実現した。このM&Aは事業体制の強化とともにインド市場への事業拡大が期待される。また、インド市場へ参入する日系企業に対しても国内と同様の品質を提供することでより高いニーズに応えられると考えられる。
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詳細業種 ネットワーク機器関連 所在地 関東 概算売上 10億円~30億円 -
詳細業種 農業・野菜栽培業 所在地 非公開 概算売上 10億円~30億円 -
詳細業種 潤滑油製造 所在地 非公開 概算売上 10億円~30億円