
ガス業界のM&A動向
ガス会社とはガスを供給する会社のことを指す。ガスは電力に次いでメジャーなエネルギー源で、各家庭や企業にとって必須のインフラである。
ガスには都市ガスとLPガスがあり、都市ガスはガス管を供給地域に整備するインフラ整備が必要だが、一度整備してしまうと各家庭にガスを安く供給することができる。都市ガス会社は一般ガス導管事業者とも呼ばれる。
LPガスは、都市ガスが供給されていない地域で利用されているガスで、大きなガスボンベを定期的に入れ替えることでガスを利用することができる。都市ガスより割高だが都市ガスより火力が強く企業用にも利用されている。

ガス業界は、電力業界と同じように各地域で一社が独占する他業界とは一線を画す独特な業界である。電力は各家庭や企業には必須エネルギーだが、ガスに関してはオール電化住宅の増加により必須ライフラインではなくなってきている。
2016年の電力業界の自由化に続き、2017年に都市ガス市場も自由化された。都市ガス各社は電力への参入により増益を確保した。LPガスは以前より自由化されており、都市ガス各社は大規模工場など大口顧客に対して既に参入していた。
自由化の翌年2018 年での都市ガス販売における新規事業者数は19に留まっている。これは電気に比べ原材料の調達やガス配送の参入障壁が高いためだと考えられる。既存ガス会社が都市ガスの配送管を握っているためで、新規参入業者に都市ガス契約を奪われても、配送管の貸出料で利益を出せるのである。逆に電力は発電さえできれば送電業者と契約すればよいため参入障壁が低く、メガソーラー発電や風力発電などの再生可能エネルギー業者の参入が容易で、競争が激化している。
都市ガス各社は、火力発電所にエネルギー源を供給する補完関係にあったが、電力および都市ガスの完全自由化で、電力大手企業とガス大手企業は互いに顧客を奪い合うライバル関係に構造転換している。
業界動向サーチによると、2018年-2019年のガス業界の市場規模は4兆9459億円であった。
都市ガス業界には「4大ガス会社」が存在する。関東にガスを供給する「東京ガス」(売上高1兆9623億円)は、東日本大震災で急速に業績拡大し電力業界にも参入した。家庭用燃料電池エネファームなど開発に熱心な「大阪ガス」(1兆3718億円)は、中部電力と燃料調達協定を締結し、全長60kmにおよぶ天然ガスパイプラインを建設した。愛知・岐阜・三重にガスを供給している「東邦ガス」(4611億円)は、中部電力と共同で伊勢湾横断海底パイプラインを建設した。福岡・熊本・長崎・北九州地域にガスを供給している「西部ガス」(2034億円)は、不動産や損保・生保など多角化に熱心である。
プロパンガス(液化石油ガス)は、2016年総供給量が1396万トンだった。岩谷産業・エネサンスホールディングス・日本瓦斯・伊藤忠エネクス・東邦液化ガスなどが大手で業界をリードしている。
プロパンガスは、元売会社(輸入業者)→卸売会社(ガスを小売会社に卸している業者で小売りはしていない)→小売会社(ガスを直接消費者に届けている販売店で全国に2万社以上ある)を経て消費者に届けられている。
都市ガスに比べプロパンガスは多層流通で業者数が多く競争激化で最終価格にばらつきがあるようだが、横のつながりが強固で価格が安定している。
ガス業界は、スマートエネルギーや再生可能エネルギーが世界的に普及する中、ガス業界がこれからこれらの新たな市場にどう関わっていくかという課題が大きい。
石炭・石油・天然ガス・メタンハイドレート・シュールガスなど化石燃料は、地球温暖化・大気汚染・酸性雨・呼吸器疾患など深刻な環境問題を引き起こしている。この世界規模の問題にどう対応していくのかも大きな課題である。
現在は多くの原子力発電所が操業停止に追い込まれており、ガス業界にとっては追い風になっているが、これらの大きな課題を解決するにはガス業界の自助努力の他に、国内のエネルギー政策や環境問題を含めアジアなど海外とのネットワーク構築により地球規模で考える俯瞰的な視点が必要だと考えられる。
都市ガスと電力の相次ぐ販売自由化のあおりを受け、以前から自由化されていたプロパンガスの市場は縮小傾向にある。2006年に1814万トンあった総供給量は2016年には1396万トンと23%減少している。市場規模減少の対策としてM&Aが積極的に実施されている。
LPガス販売会社におけるM&Aの目的は、後継者不足・ガス配送ドライバーや点検員の不足・競争激化による経営悪化である。
2014年10月、日本瓦斯株式会社は、有限会社秋山商店の簡易ガスを6000万円で事業譲受した。日本瓦斯株式会社は、都市ガスやLPガス・電力などのエネルギー事業の他にもリフォーム事業など多角経営をしている。簡易ガスも以前からやっており埼玉県での事業拡大のためのM&Aであった。
2016年9月、岩谷産業株式会社は、冷媒缶・ブロワーなどの製造販売を行うエヌ・ケイ・ケイ株式会社の株式100%取得しM&Aした。岩谷産業は、1953年に日本で初めて家庭用プロパンガスの全国販売を始めた会社であり、MaruiGasブランドで全国310万世帯にプロパンガスを供給している。
2019年4月、株式会社東邦ガスがLPガス事業の株式会社ヤマサを子会社化した。東邦ガスは、顧客に都市ガス・LPガス・電気の3エネルギー最適提案と付加価値サービスの提供を目指しており、その一環としてのM&Aであった。
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